こぶ病(その3) サクラ類こぶ病

樹木にできるこぶで、(その1)では、人為的な行為、剪定でできるコブについて、(その2)では昆虫が原因でできるコブについて書きました。
今回は、細菌が原因でできるコブについてです。  2016.5.15
写真は、エゾヤマザクラについたこぶです。
今から30年程?前に、中央区の円山公園周辺にある街路樹などサクラにこぶ病が蔓延して酷いことが話題になったことを憶えています。
エゾヤマザクラは札幌市内の公園に数多く植えられてきましたが、その後もこの病気は拡がり続けています。
エゾヤマザクラの植わっている身近な公園に行って、まだ新葉の出ない春先にそれらを注意深く観察すると見つけることができます。 それぐらい広範囲に拡がっている病気です。
この病気の始末が悪いのは、発病してこぶが目立つようになっても樹勢が急に衰えて花が咲かなくなり、枯れそうになるわけでもなく、徐々にゆっくりと?拡がっていく病気なのです。
個人の庭木のように1~2本程度なら、病気を見つけ次第その枝を除去して殺菌剤を塗布・散布するなどの処置ができますが、公園となると本数も多く、先程も述べたように発病したからといって花が咲かないわけでもないので、対応したいがなかなか出来ないというのが現状です。

それでは、このサクラに発生する “ こぶ病 ” とはどのような病気なのでしょうか? 「樹木の病気・虫害・獣害」によると
➀ 病名 サクラ類こぶ病

➁ 学名 Pseudomas.syringae pv.scerasiocola (シュードモナス シリンガエ PV セラシオコーラ)
このシュードモナス シリンガエは、カビ・キノコなどの仲間、菌類ではなく細菌です。 樹木ではライラック枝枯細菌病やイヌエンジュがんしゅ病などを引き起こします。 さらに、樹木だけではなく、穀物、野菜、果樹などあらゆる作物に発生する病気のようで、農業関係者にとっては最も一般的、広範に拡がるやっかいな病気のようです。

③ 病徴 枝に発生し、はじめは小枝の片面に、表面が粗い裂開した紡錘形のふくらみができる。 罹病枝はすぐには枯死しないため、このふくらみは枝の生長につれて年々大きくなるが、罹病枝はやがて枯死する。 患部からはヤニが滲み出る。 ヤニは乾燥時には目立たないが、雨後には良く目立つ。 激害木では、樹冠全体にこぶが鈴なりについてように見える。

④ 備考 罹病枝が少ないときは、切除して焼却し、切り口にはチオファネートメチルペースト剤(トップジンM)などを塗布する。 罹病枝が多くなってからでは防除が困難なので、幼齢期からこまめな観察と罹病枝の切除が需要である。 本病に対する感受性は個体差が大きい。

日本さくらの会によると、
こぶ”についてはまだ感染経路、“こぶ”の形成過程、伝染方法など不明な点が多いのが現状です。
というように樹木、サクラについては、その生態はまだはっきりと分ってないようです。

 

 

 

こぶ(その2) 虫こぶ

こぶ(その1)では剪定という人為的な行為によって、樹木にこぶができたのですが、今回は虫(昆虫)によるこぶです。
 2011.10.8
写真は、ヤナギについたこぶ、虫えいです。
病名?こぶ名?はヤナギエダマルズイフシ、寄生主はヤナギマルタマバエです(おそらく)。
2011.10.23
ケヤキの葉についたこぶ、その名前はケヤキハフクロフシ、寄生主はケヤキフシアブラムシです。

大通公園西6丁目に大きなケヤキの樹が数本植わっていますが、それらの樹の葉にも夏場になるとびっしりとこのこぶが付いているのを見ることができます。

このこぶは、樹木では細い枝や葉に付くことが多いようですが、草本にもつくそうです。 そして驚いたことに、こぶをつくる原因者は、ハエやハチなど昆虫類だけではなく、ダニや線虫類、カビや細菌、ウィルスもこぶをつくるのだそうで、広範囲の生物が植物にこぶをつくるようです。 昆虫がつくるこぶを “ 虫えい ” といいますが、それ以外の生物もこぶをつくるので、それらを含めてこぶのことを “ ゴール ” と言うそうです。

それにしても、この虫えいはどのようして出来るのでしょうか?
虫たちが小枝や葉に卵を産み付け、その卵が孵化し幼虫になると、その幼虫がオーキシンやサイトカイニンなど植物ホルモンを自己生成し、植物体を吸ったり食べたりして植物を刺激すると、植物の細胞が異常増殖して、写真のようなこぶができるようです。
「虫こぶ入門」によると以下のように説明しています。
⓵寄生生物の影響で、植物の細胞、組織、器官が病的に、過成長や過増殖したもの、
⓶動物や植物の寄生により、植物に生じた成長と分化の異常
つまり、生物の寄生の影響で、植物体の細胞に生長や分化の異常が起こり、結果として奇形化したり、過度の肥大化あるいは未発達に終わるような組織や器官が “ ゴール ” ということになる。

<余談>
このこぶの名称は長くて読むことさえ面倒なのですが、タマバエ類、タマバチ類、アブラムシ類の場合、規則的に命名されている場合が多いのだそうです。

寄主植物名 + 虫こぶの産する部分 + 虫こぶの形態的特徴 + フシ(虫こぶ)

ヤナギエダマルズイフシの場合、
ヤナギの  + 枝についた   + 丸い(ズイは不明)+フシ(虫こぶ)
ということになります。

ケヤキハフクロフシの場合、
ケヤキの  + 葉についた   + 袋状の      +フシ(虫こぶ)
となります。

 

春を待つ大通公園

3月16日?に、我が家の周辺は30cm前後の雪が積もって街中は真っ白になり、一時真冬に戻ってしまったのですが、 立春も過ぎて、この何日間は天候もよく、雪もだいぶ溶けてきました。
今日(3月25日)は、好天で最高気温も10℃まで上がるとの予想だったので、今年初めて、自転車で街の中心部まで行ってきました。
歩道は、日陰の部分にはまだ薄汚れた氷状の雪が残っていたり、溶けだした雪で自転車のタイヤが取られたり、水たまりができて足元や自転車に泥が跳ね上がったりで、サイクリングには快適とは言い難いものでしたが、まぶしい太陽と頬にあたる心地よい冷気はそれらに勝るもので、昨年11月以来、約4か月ぶりのサイクリングを楽しんできました。

2018.3.25
左は、大通西4丁目。 正面奥に見える塔は、札幌テレビ塔。
右は、大通西6丁目。 横に大きく枝を拡げている樹はケヤキ。
園路は溶けだした雪で水浸し、その脇に積まれた雪は薄汚れています。その表面には、冬場雪の上に投げ捨てられて隠れていた空きカン、ビニール袋、吸い殻などが顔を出しています。
薄汚れた雪とその上に現われたゴミ、この時期の避けられない雪国札幌の現象です。 雪が溶けて地面が乾く4月に入ると、順次清掃と冬囲いの撤去が始まります。
本格的な春を迎えるにはもう少し時間が必要ですが、それでも春は着実に近づいてきています。

2018.3.25
豊平川。 幌平橋から南方面を撮影

 

 

こぶ(その1) 剪定こぶ

街路樹は、⓵道路と建物の間に挟まれた狭い歩道に植えられていること、⓶上空には電線や通信線が走っていること、⓷電柱や街路灯・標識など道路の付帯施設が不規則な間隔で並んでいるために、その生育空間は極めて限られています。
2011.11.3
写真は、市街地に植えられている街路樹プラタナスです。
枝の形状を見ると、枝先が丸く膨らんでいたり、枝の途中にもこぶのように膨らんだ部分があります。 このこぶのように膨らんだ部分が剪定こぶです。 これは、同じ位置で長年剪定を繰り返し行ってきたことによってできたものです。

枝の中程にあるこぶは、一度その場所で剪定を繰り返したためにできたものですが、その後、その場所から出てきた徒長枝を伸ばして枝を長く(樹冠大きくする)したために途中のこぶになったようです。
樹冠をそれ以上大きくできなくなった場合やこぶが大きくなって醜くなった場合などは切り戻し剪定を行います。 これは、こぶを切り取って、切り口付近から出てる徒長枝を伸ばす方法です。 2012.5.26
枝先のこぶに、20cm程で切り取られた徒長枝が4本見えます。 来春、ここから枝をの伸ばして葉をつけます。 写真左側の大腸のふくらみのようなこぶ状の枝は、何年かその位置で剪定を繰り返し、少し枝を伸ばして、また何年かその場所で剪定を繰り返したためにできたこぶのようです。

それでは、どうして同じ位置で剪定を繰り返すとこぶができるのでしょうか?

ある枝を中途で切断すると、それまで頂芽優勢で休眠状態にあった切り口付近の潜伏芽が起き出し、シュート(徒長枝)が数本形成される。シュートには各節ごとに脇芽が形成されるが、シュートの基部近くには極めて小さな芽が多数あり、それがほとんど潜伏芽となる。 
そのシュートが基部近くで切除されると、切断部と基部の間にあるごく小さな潜伏芽がいっせいに起き出すので、シュートの数はさらに増える。 シュートが発生すると、そのシュートを支えるための枝の組織がシュートの組織と複雑にからみあいながら基部に被さってくる。 また、枝先から放射状に伸びた各シュートは光合成産物を基部に送るので、枝の先端部に光合成産物が集中して供給されるかたちとなり、きわめて高いエネルギー状態になっている。 ・・・・・・・・(絵でわかる樹木の知識)

上の写真で枝先のぼこぼこに膨らんだこぶは上述の説明を端的に表しています。

 

クリ  冬芽

  
2015.2.26                                               2015.11.21

冬芽は、二列互生し、やや開出する。 側芽は卵形ないし広卵形で、やや先がとがり、やや扁平し、長さ3~4mmある。
芽鱗は帯赤褐色ないし赤栗色をし、ほぼ無毛で、4~6枚が覆瓦状に重なる。 仮頂芽は側芽よりやや大きい。(落葉広葉図譜)

写真でも分かるとおり、枝先の仮頂芽は側芽より明らかに大きく、側芽も含めて、クリの冬芽はふっくらと丸い。
アカナラ、コナラ、ミズナラなどクリと同じブナ科の樹種は、冬の間も葉(枯葉)をつけたままの樹をよく見かけます。

<余談 その1>
クリ材は 科学的にはタンニンの含入量が多く、耐久性や保存性が大変高く、かつ耐湿性も大きいため、現在の鉄道の枕木はコンクリート製ですが、ひと昔前まではクリ材が使われていました。
2018.3.21
写真は、エドウィン・ダン記念館の周りに設置されている木柵です。 この材が確かクリのはずです。 私の記憶では、昭和の末ころには現在の姿をしていたので、30年以上は持っているのでしょう。

<余談 その2>
クリは他の果樹に比べ、土質への要求度が少なく、寒地や暖地のいずれにも生育し、山の傾斜地や他の果樹に不向きな地でも問題なく、管理がしやすい。 専門的な技術も必要でなく、クリタマバチを除いて病害虫は少なく、食用となる堅果を生ずるので、古来より栽培されており、縄文時代の遺跡からはクリ材が大変多く出土している。 元々野生種が栽培されて大きい果実を得るようになったのであるが、野生種をシバグリと呼び、栽培種のうち特に大きい果実を産するものは古来よりタンバグリとして知られる。(日本有用樹木誌)

札幌市内にも、北海道の開拓が始まる以前から自生していると思われるような大きなクリの樹が存在しますが、名前を「シバグリ」と表記しているクリがあります。 それは、豊平区平岸、相馬神社の境内にあります。 → 相馬神社のシバグリ