ナス半身萎凋病の台木 トルバム・ビガー

写真は我家の家庭菜園で育てているナスです。 草丈は1m弱に育ってすこぶる元気です。 半身萎凋病の兆候は全く見られません。 理由は、今年はトルバム・ビガーという半身萎凋病に耐性のある台木に接ぎ木した苗を植えたからです。
そのトルバム・ビガーが台木から芽を出し、大きく成長しました。 写真では、ナスの株元からカシワに似た大きな葉が数枚出ています。 ナスの葉は色濃く少し紫色を帯びるのですが、トルバム・ビガーの葉は普通の緑色です。

2024.7.2
このトリバム・ビガーの茎葉は成長が旺盛で、このまま放置しておくと本体のナスが凌駕されそうなので、根元から切除しました。

⇒ ライラックの台木:イボタノ
(イラックはイボタの台木に接ぎ木するのですが、台木からイボタの芽が出て、それが大きく成長して、最後はライラックがイボタニに負けてイボタの木になっているものを、時おり、公園で見かけます。)

2024.7.26
このトルバム・ビガーには、茎と葉にバラ似た鋭い棘があって、触ると大変痛いです。

〇 トリバム・ビガーについて
以下の1~6の項目は、農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター  農林品種認定データベースより抜粋したものです。
以下の1~7を読むと、トリバム・ビガー台木は土壌病害には最強の耐性があり、収量も従来の台木に比べて1割ほど増収するそうです。i

1.従来台木よりも多収となるが、発芽と初期生育が遅く、育苗に長期間を要するところが欠点である。
2.茎葉にはトゲがあり、花は白く、果実は約1.2cmの球状で、1株に数百個着生し、1果当たり約200粒程度の種子が得られ、繁殖力が高い。
3.この台木を用いた接木ナスは、青枯病、半身萎凋病、半枯病及びネコブセンチュウのすべてに対して抵抗性を有する。特に半枯病には免疫性で、決して発病することはない。他の病虫害に対しても従来の台木に比べはるかに耐病虫性が高い。
4.総収量は「ヒラナス台木」より10%強、“耐病VF茄”台木に比べ約8%の増収となる。
5.発芽と初期生育が遅く、育苗に長期間を要するのが欠点である。
台木自体は「ソラナム・トルバス(和名:セイバンアスビ又はスズメナスビ」という、亜熱帯から熱帯に分布するナス科の常緑小高木に属す
6.接木ナスの果実品質は、外観、食味、アルカロイド成分を含めて、自根ナスや従来の台木を用いた接木ナスとの間に差は認められない。

 

 

ナス 半身萎凋病

今年はナスの生育が順調です。 9月上中旬?まで収穫できそうです。 30年以上の家庭菜園歴でナスを数回植えました。しかし、いずれの年も病気にかかりました。 その理由は、7月の中旬から葉がしおれてくる半身萎凋病に罹ることです。

以下は、令和2年(2020年)にナスの半身萎凋病対策として、殺菌剤のベンレートを土壌濯注したときの経緯を書いています。

ナス  半身萎凋病(ベンレート)

⇒ ナス  半身萎凋病(ベンレート)(その2)

⇒ ナス  半身萎凋病(その3)

しかし、今夏は大丈夫のようです。 2024.7.24
7月下旬になっても、半身萎凋病の病徴は全く現れていません。 ナス特有の大きな葉を拡げて育っていて、以前の苗に比べると草勢は確実に良いようです。

今までは園芸店でナスのポット苗を買っていました。 当初は接ぎ木をしていない単価の安い苗を買っていたのですが、それが✕だったので接ぎ木苗に変えてみました。 それでもやはり✕だったのです。

今回は、園芸店ではなく種苗店でナスの苗を購入しました。 その店主に今までの我家のナスの育ち具合を説明すると、
「ホームセンターで売っている接ぎ木苗は必ずしも半身萎凋病に対応している苗を売っているとは限らない。 当店は※トルバム・ビガーという半身萎凋病に最も強い台木を使っている。
この台木は温度が高くなると育ちが良くなる、今売っているポット苗は葉が丸まっていて草勢がないように見えるが、植えてしばらくすると(6月中旬以降寒さも来なくなると)、葉は拡がって元気に育つ」
と教えてくれました。

※トルバム・ビガー:タイ原産のナス科の植物のようです。 半身萎凋病には最強の台木と言われています。

店主からこの話を聞いて、ナスの台木について調べてみました。

ナスには我家の畑で発病する半身萎凋病だけではなく、青枯病や半枯病などの土壌病害があり、それぞれに対応する台木が必要なようです。
以下の表は半身萎凋病などの土壌病害とそれに対応する代表的な台木です。

台木の種類 青枯病 半身萎凋病 半枯病    備     考
ミート
耐病VF
台太郎
赤虎
赤ナス
トルバム・ビガー 接ぎ木までの生育は遅いので注意
トナシム

タキイ種苗より

青枯病・半枯病は半身萎凋病と同じ土壌病害で、病原菌が茎の維管束を侵すので、その菌に侵された茎の上部の葉は萎れ、最後は枯れる。

家庭菜園でナスを植えても7月に入ると葉が萎れて、最後は枯れてしまったという経験のある方は、上記トルバム・ビガー若しくトナシムという台木で接いだポット苗かどうかを確認して購入することをお勧めします。 それは、園芸店ではなく、種苗店で購入することです。

 

 

ナス  半身萎凋病(その3)

我家の家庭菜園では、ナスを植えると必ず7月中旬から半身萎凋病に罹っていました。 それで今年はその対策としてベンレートを土壌潅注することにしました。 その経緯は下記の投稿を読んでください。

 ナス  半身萎凋病(ベンレート)
 ナス  半身萎凋病(ベンレート)(その2)

2020.7.15
写真は、毎年症状の出始める7月中旬でも順調に生育しています。 ベンレートを6月中旬に土壌潅注したことによる効果があったように見えます。 しかし、7月下旬に1株に半身萎凋病の症状が現れました。 その株は8月上旬に引っこ抜いて捨てました。
2020.8.20
そして、8月のお盆前に2株目がやられてしまいました。 上の写真のようになってしまったらもう回復は不可です。 投げるしかありません。

ナスの半身萎凋病に対するの農薬使用基準は、
1株に500倍液を200~300ccを土壌潅注するのですが、今回は同じ希釈倍数で使用基準の2倍の量、500ccを潅注しています。 土壌潅注の処理の時期についても、農薬使用基準では定植後14日以内にと書かれていたので、定植4日後に行っています。 農薬の使用方法に問題がないにもかかわらす、4株植えて2株が病気に罹りました。

それじゃ、どうすればいいのでしようか。

半身萎凋病の病原菌は、ナスの根(根毛)が土壌中にいる菌(菌核)の近くに伸びてくると、菌核が発芽し、根の表面から侵入して、根から吸い上げた水や養分を通す管、導管で増殖し、それを詰まらせ半身萎凋病を発現させます。 また、定植時の植え傷みや土壌中の虫等が根を食害することから出来た傷は病原菌の侵入をしやすくさせます。 要は、半身萎凋病を防ぐには、土壌中の菌の密度を低くすることしか方法はないのです。
なので次年度は、購入したポット苗にもベンレートを土壌潅注します。 この方法は潅注量が少量でも薬剤を十分に土と根にしみ込ませることができるので効果が高いように思えるのです。 そして、定植後ではなく、定植時に土壌潅注することです。

とりあえず、次年度はこれをやってみます。

ナス  半身萎凋病(ベンレート)(その2)

2020.7.15
写真は5月29日に定植したナスです。草丈は約60cm 。 最初につけた果実(1番果)はとりあえず落としました。 理由は半身萎凋病に罹る確率を低くするために、実を生らすより株の充実を優先させました。  昨日(7月20日)、2番果を収穫しています。

ナスの半身萎凋病は決まったように必ずこの時期、札幌に本格的な夏がやってくる7月中旬にその姿を現します。 下葉の縁が内側に少し巻いてきて、本来の濃い緑色である葉の一部が褪色して淡緑色に変わるのです。

今年は、殺菌剤のベンレートをかけたので、写真のとおり半身萎凋病の兆候は全く見られていません。 しかし、ナスの収穫期間はまだ1ヵ月半ほどあるので油断はできませんが、それでもとりあえず、ベンレートの土壌潅注は効いているようです。

今夏は、ナスの浅漬けが楽しめそうです。

〇 半身萎凋病の病徴と対策(原色 野菜の病害虫 診断事典より)
はじめ下葉のところどころの葉脈間に周縁不鮮明な褪色斑が生じ、葉はしおれ、葉縁は上面に軽く巻き上がる。 褪色部は1~2日後には黄白色となり、しだいに病斑の中央部から枯死する。 発病は徐々に上の葉にすすみ、発葉病はしおれて垂れ下がり、最後には落葉する。
初期の症状は枝の片側の葉だけにかぎられ、1枚の葉では、主脈を中心として片側の葉だけにかぎられ、一枚の葉では、主脈を中心としてだけがしおれることが多い。 病勢がすすむと反対側の葉も発病し、さらに健全であった枝も発病して株全体が枯死する。 茎を切断してみると、導管が褐変している。 発病株は生育が非常に悪く、着果と果実の肥大も不良となる。

発生条件と対策
地温22~26℃の時期に発生しやすく、18℃以下の低温や30℃以上の高温では発病しにくい。 したがって、施設の前進型栽培や冷涼地の露地栽培で多発する。 平坦地の露地栽培の場合に、夏の高温期に発病が一時休止し、秋口から再発するのも温度の影響である。 土壌湿度は乾燥より湿潤状態で発病しやすく、日照不足は発病を助長する。 トマト、イチゴ、ウドなどとの輪作頻度の高い畑で発生しやすい。

⇒ ナス  半身萎凋病(ベンレート)

ナス  半身萎凋病(ベンレート)

5月29日に、ナス(購入苗)を畑に植え付けました。
現在の家に住んで30年以上経つのですが、その間に数回程、3回? 4回?ナスを植え付けました。 当初は接ぎ木をしていない苗を植えて半身萎凋病に罹ってダメにしてしまったので、その後は接ぎ木苗と接ぎ木していない苗の両方を植えたのですが、やはり、両者とも病気にやられてしまいました。
2014.7.13
7月中旬、ちょうど一番最初の果実が大きくなり始める頃、株の片側半分だけに、下葉の一部が少し内側に巻く葉や、葉の一部の緑色が抜けて黄化ないし淡緑色になる葉が出てきます。 そして、その症状に気づいてから何日後に雨が降った翌日にそれを見ると病徴が急激に進んでいるのです。その日は気温が高めで太陽が降り注ぐ夏の日なのです。 その後の病徴の進行は株の片側だけからが全体に広がり、葉は垂れ下がって枯死します。 それらは引き抜いて処分するしかないのです。
2014.7.13
それで、我家の家庭菜園ではナスをほとんどつくっていなかったのです。
ところが今春、ある園芸好きの方から、トマトの半身萎凋病に効く薬があることを教えてもらいました。

写真の箱の中には、0.5g/袋が10個は入っている。 正味5g。
ベンレート(殺菌剤)を土壌に潅注する方法です。
ナスの農薬使用基準を見ると以下のように書かれています

希釈倍数     使用液量
500倍     200〜300cc/株
1000倍     400〜600cc/株

その方いわく、希釈倍数500倍で、液量を使用基準の2倍使えば効くというのです。 それで、定植後4日目の5月2日に1株に500倍で500ccの液をジョウロで株元に土壌散布しました。

とりあえず、農薬をかけて半身萎凋病対策は行ったので、7月中旬にその症状が出る?出ない?を待つばかりです。
農薬の商品名ベンレートの取扱い説明書には「土壌潅注は定植後~収穫14日前まで」と書かれているのですが、潅注(ジョウロで土壌散布)を行う一番適切は時期は、定植直後のように思います。 その理由は、定植後日数が経つと根が伸びてしまいます。しかし、定植直後なら根鉢周りにたっぷりかけられるので、薬の効果も高いように思うからです。

<余談>
最寄りのホーマックに行ってベンレートを買ってきたのですが、0.5g/袋が10個入っていいる1箱の値段が640円?でした。
農薬液をつくるときにその必要量を計算すると、
1株に500倍液を500cc潅注するには、べーレートの粉が0.5g必要です。 今回は4株植えたので2g(4袋)となります。 農薬代だけで1株に64円かかることになります。 今回4株植えているので合計256円かかったことになります。 これで確実に効くのならいいのですが、葉にそれらしき兆候がでてきたなら、再度かける必要が出てきます。 そのときはナスの株も大きくなり、それだけ根の範囲も広くなっているので、薬をかけるとなると1回目の倍以上かけないと効かないように思います。 そう考えると、この農薬代はたとえ少額であっても割高のように思えるのです。
それで、もし今夏ナスに半身萎凋病が出なかったら、ベンレート1回の土壌灌注で効果があると判断できるので、栽培農家が使う業務用の100g/袋で1000円前後のものを使おうと思っています。 それにしても、小袋に分けたものは使い勝手は良いのですが、業務用に比べるとべらぼうに割高です。

ナスの半身萎凋病(愛知農業試験場)
 https://www.pref.aichi.jp/byogaichu/seitaitoboujyo/3-nasu/nasu-hannsinnityou.html