エゾニワトコ  冬芽

1-RIMG0029(赤字)
2012.12.15
冬芽は対生。 エゾニワトコの冬芽は混芽(こんが;葉と花が両方入っている冬芽、例:ナナカマド、アジサイなど)。
混芽は枝の中位につき、卵形で、長さ10~15mm、幅7~10mmある。 芽鱗は葉柄きげんであり、帯紫褐色、紫色ないし帯緑褐色をし、無毛で、2〜3対がゆるく重なる。(落葉広葉樹図譜)
1-025 エゾニワトコ
2012.4.12
葉芽は長さ7~18mmあり、だ円状卵形ないし紡錘形で、枝先のものは発達せず、下位に発達する。(落葉広葉樹図譜)020 エゾニワトコ2011.4.30
展葉直前の冬芽。 芽鱗の間から新葉が顔を出す。078.jpg2011.4.24
079.jpg2011.4.30

048 エゾニワトコ
2012.4.12
花蕾は紫色で、つぼみが大きくなるにつれて白っぽくなる。
2012.5.26
5月下旬に開花。025 エゾニワトコ
2012.7.22
7月中旬には赤い実をつける。

 

 

キミノエゾニワトコ  豊平川

豊平川のサイクリングロードを自転車で走っていて見つけました。
場所は豊平川を河口に向かって西側のサイクリングロードを豊水大橋か雁来大橋を越えてしばらく行ったところの河床(サイクリングロードの横)です。
別の言い方をすると、札幌新道の豊水大橋又は雁来大橋の下流左岸(西区側)で、サイクリングロードを走っていると右手に見つけることができます。
2018.8.2
普段見かけるのはエゾニワトコの赤い実で、黄色のものは初めてです。
2018.8.2
エゾニワトコ(Sambucus.sieboldiana var.miquelii)は、ニワトコの変種になりますが、キミノエゾニワトコは、エゾニワトコの品種(Sambucus.sieboldiana var.miquelii f.areocarpa)になります。

<余談:植物分類学での品種と栽培品種の違い>
ちょっと難しい話(マニアック的)になりますが、植物分類学上の品種と栽培品種の違いについて調べてみました。

〇 品種
自然(野生)状態で、形態などにおいてははっきりと区別できるものの、同じ地域の同種個体群とは生殖的に隔離されていない個体群を指す。 植物のみで使われる。多くの顕花植物に見られる白花品種などはこのように扱われる。

〇 栽培品種
農業や園芸利用のためにつくられた(育種)、有用な形質を保持する分類群である。栽培品種は、種より下位に位置する分類階級である。園芸品種とほぼ同じ意味で用いられる。
(ウィキペディア)

 

〇 学名に、CVと付くのが栽培品種、が品種です。

ラテン語 英語 略号 区別
varietasヴァリエタース varietyヴァライエティ var. 変種
cultivarクルティヴァール cultivarカルティヴァー cv. 栽培品種
formaフォルマ formフォーム f. 品種

 

エゾニワトコ   満開

所用で札幌市の郊外、厚別区山本へ行ってきました。 山本排水路沿いにヤチダモの並木が続くところです。 その近辺で、満開のエゾニワトコを見つけました。
2017.5.23
樹高は4.0~5.0m、樹幅は7.0~8.0m。 地際から枝分かれして、扇状をなし、エゾニワトコとして大きなものです。
普段見るエゾニワトコは道路縁や空地などで、このように立派な樹姿のものはなかなか見かけません。 思わず車を止めて写真を撮りました。
2017.5.23
ちょうど満開。

あざやかな緑の新芽が、まだ葉にならない前、こずえにあわい黄緑色の細かな花が群をなして盛り上がるように咲く。 花言葉を「あわれみ」、「同情」というが、この半開きの花をとってきて、乾かしたものを接骨木花という。 この時にはエゾニワトコもニワトコも区別しない。 この花をせんじた汁はよいかおりがする。 これを内用したり、打撲傷の湿布などに使う。 ニワトコに接骨木(せっこつぼく)という字を当てるのは、花のせん汁や材の黒焼きが骨折の治療に効果があるからだ。 葉や茎を干したものは、発汗剤や利尿剤としてよくきくことが古くから知られ、家のまわりに植栽されていたらしい。 若葉を食用にすることがあるが、水洗いが不足だと、下痢をおこすことがある。
エゾニワトコは北海道の広葉樹林帯に多いが、どうかすると針葉樹林帯の林のふちに姿を見せることもある。 森のなか、林のふち、道ばたなど、日当たりのよいところに多く、分布は全道的にひろい。 実が赤くなり始めるも早く、夏の初め、青い葉にまじって赤い小さな実が密集し人目をひく。 カラスがよく食べ、うまそうに見えるが、味はまずい。
(北方植物園 エゾニワトコより抜粋)

上の文章をパソコンで打っていて気づいたことが二つあります。
一つは、新芽と花の関係です。 上文では、新芽が出て葉が大きくなる前に花が咲くように書かれていますが、実際は新芽と同時につぼみが出てきて、花が咲くときは葉も十分大きくなっています。
二つ目は、この北方植物園が発刊されたのが昭和43年で、今から49年前、約半世紀前のことです。 その当時は札幌の人口も今よりぐっと少なくて、自然林も身近にあり、エゾニワトコの実をカラスがつつくのを見る機会も多かったのでしょうか。
今見るカラスは、ゴミステーションを荒らすか、豊平川河川敷の広い芝生地で地中にいる虫を捜している姿か、道路の電線にとまって、そこからクルミ等硬いものを落し、通行する車がそれをタイヤで押しつぶした後、電線から降りてきてついばむ姿をよく見かけます。 半世紀経つと、カラスの食生活も人間同様、昔とは相当様変わりしているのでしょうかね。 

それともう一つ、アイヌの人々はエゾニワトコをどのように思い、どのように利用していたのでしょうか? 更科源蔵著「コタン生物記」にはエゾニワトコの項目はあるのですが少々長いので、北海道大百科大辞典に同氏が同項目で以下のように記しています。

アイヌ名で、この木をソコニシ(シコニの訛りで糞を持つ木)というのは、イヌエンジュと同じように固有の悪臭があるからである。 ところによって死者の木というところもある。 この木の髄が枯れ腐ったように見えるからで、人間が死ぬのは脊髄が腐るからといわれていた。 死者を包んだ筵(むしろ)を閉じる串にこの木を用いたのは、糞のようないやな匂いのする木であるため、死者が自分で閉じ込められた串を抜いて、死の世界から戻って来られないようにしたのもである。 
ところによっては、あの世について行くつえである墓標も、あの世に持って行く副葬品の小刀とか、火打石、女性には機織器などをこの木でつくった。  またあることろではソコンニ・カムイ(ニワトコ神)といって、家の入口の守り神にしたり、病気のときにこの木で木幣をつくり、病気の神を遠くに連れて行ってもらったり、心配事のあったときには身体をはらって川に流したりした。
春の芽出しのときの若葉を陰干しにしたのを腹痛の薬にしたり、赤く熟した実を酒に入れて肺病の薬にもしたという。 サハリン(樺太)ではこの木でセニシテ・ニポポ(それで丈夫になる木の子供)という人形をつくって、子供のお守りにして、その木特有の悪臭で魔物を近づけないようにした。

書き方によって、エゾニワトコのイメージが随分と変わるものですね。
更科源蔵氏がいう「糞のようないやな匂いがする木」を実際に嗅いで見ました。 上述の文章を読んでから嗅いでいるので、自分の中に相当臭いという先入観があるのか、手にとって嗅いで見ると、それ程でもないのです。 「クサギ」という名前の木がありますが、その木ほど臭くはなく、独特の臭さまで行かず、少し臭いかなという程度です。 糞の臭いというのは言いすぎのように思えます。 しかし、今は若葉の時期で、これが夏場になって成熟した葉になるともっと臭ってくるのでしょうか?

 

 

エゾノワトコ(3) 意外に太くなる幹

南区にある真駒内川緑地沿いを自転車で走っていると、青い葉をつけている樹を見つけました。 種類は何だろう?と思って近づいてみると、
エゾニワトコ 
2015.4.19
エゾノワトコです。
エゾニワトコ
2015.4.19
蕾みも膨らんできています。
この地域(南区内)で、最も早く芽だしする樹です。
今日のテーマは、エゾノワトコの 芽だしの話ではなく、幹の太さです。

普段、道路の脇や自然林で見かけるエゾニワトコは、高さ2~4m程の大きさで、下草や周りに低木類が生えているので、地際からの幹を見ることはほとんどありません。
それで、自分はエゾノワトコの樹形をウツギ類のように地際から幹枝が叢生する樹というイメージを持っていたのです。
エゾニワトコ 25
2015.4.19
ところが、ここに生えている樹の幹径は25cmもあります。 樹肌は荒々しく波打っていて、根元の樹皮は半分ほど朽ちていています。 老木というより、枯死が近い、やっと生きているように見えます。

動物は、ある一定回数以上の細胞分裂は出来ないように出来ているようですが、樹木は死んだ細胞の上に毎年新しい細胞を作るので、生存に適する条件を整えてやれば、寿命はないといわれています。 このエゾノワトコも、普段見慣れているものより、幹が太くなれる環境条件に育った樹なのでしょうね。

樹齢は、この緑地が整備されたのが平成の初め頃なので、植えられたものならば20年そこそこです。 幹径や樹皮・樹肌から推測すると、元々この地に生えていたものを残した可能性が高いようです。 このエゾニワトコは樹齢何年くらいの樹なのでしょうかね。

→  エゾニワトコ(その2)

 

 

エゾニワトコ(その2)

エゾノワトコは、ほかの樹木よりいち早く芽吹き(4月上中旬?)、まだ夏の真っ最中の7月に赤い実を生らせます。何かにつけて早いのです。
1-002 エゾニワトコ2012.4.25
4月下旬には、花芽も大きくなり始めています。
1-024 エゾニワトコ2011.5.28
1ヶ月後の5月下旬に開花します。
1-010 エゾニワトコ 福住桑園通2012.7.22
そして、真夏の7月下旬には赤い実をつけます。
①冬芽
1-RIMG0029(赤字)
・冬芽 葉の付き方は対生。花芽は丸くて大きい。大きさは1cm強~1.5cm弱?
・葉痕 葉痕は大きい(少しピンボケで残念)
・皮目 縦長の楕円形で真ん中に線が入る。
1-025 エゾニワトコ
②名前の由来
牧野新日本植物図鑑 : 語源ははっしきりしない。
樹に咲く花     : 別名のセッコツボクは接骨木という漢名の音読み。ニワトコの枝や幹を煎じて水あめ状にしたものを、骨折などの幹部にあてて湿布すると効果があるという伝承と関係があると思われる。
インターネット   : 和名は、ミヤツコギ(造木、宮仕う木)、またはニハツウコギ(庭つ五加木)が転じたとする説がある。古来、神事に用いた木幣を、ニワトコから作ったので宮仕う木となったとする。接骨木は、中国のトウニワトコ(漢名=接骨木)と似ているため。

③Data
科名 スイカズラ科
属名 ニワトコ属
学名 Sambucus sieboldiana var.miquelii
・小種名 sieboldiana は日本植物の研究者シーボルトの という意味(江戸時代末期に来日し、日本に近代医学を伝えた学者)
・花期 5月中下旬~6月上旬
④余談 分類学上の品種(form)について
ニワトコは小葉の数、形、大きさや果実の色などに変異が多く、多くの品種(form)があるのだそうです。この品種(form)は、通常私たちが使っている、バラやシャクナゲなどの品種(cultivar:栽培品種:人間が作ったもの)ではなく、分類学上の品種で、その意味は、
「自然(野生)状態で、形態などにおいてははっきりと区別できるものの、同じ地域の同種個体群とは生殖的に隔離されていない個体群を指す。植物のみで使われる。」
ということだそうですが、どうも植物分類学で使う品種(form)の具体的なイメージがつかめなくて困っています。
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