カンボク(その4):冬芽

本州は2週続けての雪、それも例年にない大雪のようです。 原因は“南岸低気圧”。低気圧はその中心に向かって風が吹くので、本州の南側を通ると、日本海側からの冷たい北風(雪雲)が本州にまともに入ってきます。
テレビで飛行機や電車など交通機関の混乱状況を見ていると、朝夕の通勤・通学も大変だろうなと想像してしまいます。12月~3月まで雪の降る札幌でも、雪が多く降った翌朝の通勤・通学は、降らないに日比べて、出勤時間が20~30分、帰宅に要する時間はそれ以上に余分にかかります。冬の通勤・通学は大変です。さらに付け加えると、そこに暮らす多くの人々にとって、寒くて長い冬の間、玄関前の除雪、交通渋滞でのいらいら、冬道の歩きづらさなどなどなど、雪は厄介者です。そうは言っても、当の本人は何も気にせず、毎年遠慮なく空から降ってきます。北国の人々はそれに耐えるしかないのですが、それでも来てくれなければそれに越したことはない招かざる客なのです。
そんな中でも、雪の降った翌朝、太い幹から細い枝先まできれいに雪の積もっている樹々の姿、辺り一面の銀世界とその上に広がる真っ青な空は、とてもとても清清しくて、雪国でないと味わえないすばらしい一瞬なのです。
今回の冬芽は“カンボク”です。
1-004.jpg2014.2.14
冬芽は対生して、卵形ないし長卵形で、やや扁平し、先がとがり、長さ5~8mm、仮頂芽が2個つく。芽鱗は葉柄起源であり、無毛で、赤褐色をし、基部は褐色をして、1枚に見える。(落葉広葉樹図譜)
※仮頂芽:寒くなると、伸張していた枝先が枯死して、そこに枝痕が残り、最上位の側芽が頂芽のようになる.
013 カンボク2014.2.13
ナナカマドは2月に入っても赤い実をつけている樹をよく見かけます(公園や街路樹にたくさん植えられているため)。ある日突然その実がなくなっているのに気づきます(当ブログ、“ナナカマドの実は苦かった”を参照)。カンボクも同じように2月まで赤い実をつけている樹を見かけます。小鳥たちにとってカンボクの実もナナカマドと同じように、苦味があるというか、美味しくないのでしょうかね?

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カンボク(その3)

寒暖の差が激しいです。昨日は8月のような暑さで、夜、窓を閉めていると蒸し暑かったです。ところが、今日は一転して、涼しいを通り越して寒いくらいです。3時過ぎまでは暖かだったのですが、夜10時過ぎ外に出てしばらく立っていると冷気が体にまとわり付いてくるように寒くなっています。“暑さ寒さも彼岸まで”という諺も、21世紀の10年代には当てはまらなくなってきているのでしょしょうか?
そんな気まぐれな天候にも惑わされずに、遠くの山々や身近にある公園の樹木は、すぐそこまで来ている冬に備えて、日1日とその姿を変えています。
今日は、公園や個人の庭でときたま見かける“カンボク”です。
006 カンボク(アカジ)2013.9.23
カンボクの実は、同科同属(スイカズラ科ガマズミ属)のガマズミと同じ9月頃に同じようような大きさの赤い実(少し大きめ?)をつけます。ガマズミの実が深い赤色で、カンボクは少し朱色味を帯びた赤色という感じがするのですが、どうでしょうか?
RIMG0022(カンボク)2013.9.29
公園や個人の庭に見る潅木は1~2mくらいの大きさのものがほとんどです。これは森林総合研究所にあるカンボクです。高さは4mくらいでしょうか。
032 カンボク(アカジ)2013.7.24
6月に白い花を咲かせて、7月に青い実をつけます。
019 カンボク(アカジ)2013.8.26
そして、8月末になると赤味が出てきます。
007 カンボク(アカジ)2013.9.23
8月2日のブログにカンボク(その2)を取り上げているのですが、今回と同じように葉の形態が異なる写真を載せていました。この樹を見ていると、気づいてしまうというか、カンボクの葉の形が異なることに目がいきます。

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カンボク(その2) 

前回、7月31日に取り上げたカンボク(ハムシに葉を食害されて丸裸の枯木同然になったカンボク)の続きです。
1-036 カンボク テマリカンボク(akaji )2011.6.11 北大植物園 手前はテマリカンボク
カンボクと同じスイカズラ科で、同じような大きさになる潅木で、同じように白い花を咲かせるガマズミは、郊外の道路沿いなどに生えているのですが、一方、カンボクは郊外の林縁など野生で出会うことはほとんどなく(ただし、北海道に自生)、もっぱら個人の庭でよく見かけます。ガマズミは山の樹でカンボクは庭の樹のようです。
1-037 カンボク(akaji2011.6.11 6月開花
花の大きさは10cm前後で、小さなつぶつぶ(両性花:雄しべと雌しべがある花)のまわりに白い大きな装飾花をつけます。
038 カンボク(akaji )2011.6.11
032 カンボク(akaji )2011.7.24
花が終わって、9月に入ると赤い実をつけます。7月下旬頃には実も大きくなり、8月に入ると実の中に赤味を帯びたものも出てきます。
012 カンボクの葉(akaji )2010.9.20
テマリカンボクは同じ樹でも部位によって違った葉が出てきます。多くの葉は、写真中央のように3裂するのですが、葉縁の鋸歯がほとんどないもの、それが粗いものなど色々あるようです。イチョウやヤマグワの葉は、1枚1枚の葉が全て違う形をしており、それを“異葉性”というのだそうですが、カンボクもその傾向が少しあるのでしょうか。
<余談>
一見、花の形態が同じように見えても、元をただすとそれぞれ違った器官が変異?進化?したものであったりします。装飾花は、雄しべ・雌しべが退化し、花びらや萼(がく)が発達した花のことですが、アジサイの仲間はがくが変化したもので、スイカズラの仲間(カンボク、オオカメノキ、ガマズミ、テマリカンボクなど)は花弁が変化=大きくなったものだそうです。
植物のありとあらゆる部位で、周辺環境の変化で?勝手に?偶然に?変異が起こり、それが子孫を残すことに悪い影響がなければ、それはそれなりに生き続けることができるようです。それが生物の多様性なのでしょうかね?

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カンボク:

我家から1km程離れたところに、“石山ふれあい”という名前の公園があります。国道に面しているのですが、間口が狭くて両サイドに住宅が建っているため、ハルニレなどの大きくなる樹を避けて、アジサイやツツジ類などの中低木が植えられています。その中に、カンボクが5~6本あります。
このカンボクの葉は昆虫類にとって美味しいのか、それとも、栄養価が高いのか、葉がよく食害されています。しかし、昨年は特に酷く、5月上中旬に芽を出して、葉が大きくなりだしたころには
1-013 カンボク(赤字)2012.6.10
葉がまったく無くなって完全に丸裸状態でした。どんな虫がこのカンボク食害したのか、探したのですが、見つけることはできませんでした。まだ食害が進行中の他のカンボクを探してみると、いました。
1-011 カンボク 3組脚(赤字)2012.6.10
写真のピントが少しずれていますが、この虫です。昆虫は、卵、幼虫、成虫とその成長段階で形態が異なるので、その種類と見分け方についてほとんど知識がないですが、とりえず、図鑑で調べてみました。、ハムシの仲間で、“サンゴジュハムシ”のようです。
図鑑によると、
①加害樹種:サンゴジュ、ガマズミ、カンボクなど
②特徴:終齢幼虫は体長約10mm、成虫は体長7m、成虫、幼虫ともにニレハムシやイタヤハムシに似るが、加害樹種が違う。
③年1回発生。卵で越冬。幼虫は新芽のころに孵化し、葉に孔をあけて食害する。5月末~6月中旬頃土中に潜り蛹になる。2~3週間で羽化し、葉を食害する。秋に若枝に卵をまとめて産み付ける。(樹木の病気・虫害・獣害より)
石山ふれあい公園のカンボクに起こったことを振り返ると、以下のようになります。
その前年秋、2011年秋に、若枝に産み付けられた卵がその翌年の5月上中旬に孵化し、そして、その幼虫が新芽が出るか否かの時期からカンボクの新芽を食害したのです。
そして、6月中旬、美味しい葉を食べつくしたサンゴジュハムシ?の幼虫は、蛹になるためにこの樹の下にもぐってしまったのです。だから、この樹を探しても、1匹も幼虫がいなかったのです。
それから1ヶ月経った7月に、この樹を見ると、この時期で通常の葉量に比べるとぐんと少ないのですが、とりあえず新しい葉を出していました。自分の樹体内にある養分を使って、貯金を引き出して、再度、新芽を出したのです。
さらに、1ヶ月が過ぎて、8月下旬に見てみると、
1-007 カンボク(赤字)2012.8.25
まったく葉がありません。再度、何者かに食害されたのです。地下に潜っていたサンゴジュハムシの蛹が成虫になって、幼虫ではなく、今度は成虫が、カンボクの葉を食い尽くしたのでしょうか? おそらく、そう考えるのが一番理に適っています。
通常、樹木の大小はありますが、全葉量の70%が食害されても樹木は枯死することはないと言われています。しかし、このカンボクは100%葉を食い尽くされています。それも2回もです。
そのとき、このカンボクは枯死すると思いました。
1-002 カンボク(赤字)2013.7.14
2012年の翌年、2013年7月14日現在のカンボクです。生きています。細い枝は枯死していますが、太めの枝から大きめの葉、通常の葉に比べて大きめの葉を出しています。徒長枝につけるような大きな葉をしています。体力を回復するために、体内に再度養分を蓄えるために、このカンボクは必死になって光合成をしているのです。樹木はこれくらい食害されても、大丈夫のようです。昆虫に食害された場合、1年の内ほとんど葉がなくても枯死しないようです。樹木はこれくらいの食害は想定内なのでしょうか? 樹木のしたたかさ、耐える力、底力には驚きです。

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