コムラサキ(その2)  ムラサキシキブとの違い

コムラサキとムラサキシキブの違いは、樹形を見ればすぐにわかります。 コムラサキは枝が垂れてコンパクにまとまり、一方、ムラサキシキブは立性です。
ムラサキシキブ
2015.10.20  左:コムラサキ(1枚)、右:ムラサキシキブ(2枚)
コムラサキはそれぞれの葉に違いは少ないのですが、ムラサキシキブの葉は幅に広いものや狭いものがあるようです。
鋸歯については、コムラサキは葉の上半分に鋸歯が、下部は鋸歯がない(全縁)のですが、ムラサキシキブは鋸歯があります。 写真右端の葉(ムラサキシキブ)では、下半分は全縁のようにも見えますが・・・・・。

ムラサキシキブ
2015.10.20
左:ムラサキシキブ、右:コムラサキ
果実は、ムラサキシキブの方が少し大きいです。

最も大きな違いは花芽の付け方です。 ムラサキシキブは前年枝に花芽を付けて、翌年開花します。 コムラサキはムクゲやバラと同じように、その年に出てきた枝、当年枝に花芽をつけて、それが開花します。 これはコムラサキの枝先を見れば一目瞭然で、実が紫色に色づいている先に花が咲いており、枝の先の方まで蕾が連続して続いています。
花芽の付け方は、枝の剪定に大いに影響します。 次の年にムラサキシキブの美しい紫色の実を見たければ、その年の夏に花芽を付けた枝を残さなければなりません。 一方、コムラサキはある程度切り詰めても次年度に新梢が出れば、花が咲き実を付けます。 極端な言い方をすれば、紫色の美しい実を見終わった後、今年出た枝を全部切り詰めても、春に新梢が出て、それが十分成長すれば、花芽をつけて実もなります。枝を強く切り詰めても次年度に花や実が見られるということです。 また、株を小さくコンパクトに出来るので、宅地の狭い日本の庭に適しています。

〇 自生地
・ムラサキシキブ : 北海道(南部のみ)、本州、四国、九州、沖縄、中国、台湾
・コムラサキ    : 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、中国

〇 学名
・ムラサキシキブ : Callcarpa.japonika (カリカルパ ヤポニカ)
・コムラサキ    : Callcarpa.dichotoma(カリカルパ ディコトマ)
※ 属名のCallcarpaは、ギリシャ語 kallos(美しい の意)と karpos (果実 の意)に由来する。 (園芸植物大辞典)

 

 

 

 

 

コムラサキ ムラサキシキブ(紫式部)の名前で売られています

10月に入る頃から、個人の庭にコムラサキの実がきれいな紫に色づいているのに気づきます。
コムラサキ
2013.11.13
しなやかに、気ままに垂れ下がる枝。 数珠のようにつながる紫の果実。  玄関前に植えられたこのコムラサキ、ちょっとしゃれています。 デザインフェンスにナツヅタを絡ませ、後方にアメリカハナミズキを配し、その間にコムラサキが植えられています。 高さは1.5mくらいです。 フェンスの内側を覗くと、細い3本の幹が真っすぐ立っていて、柄の短いビーチパラソルのような形に仕立てられています。
この庭には、バラを中心にオヒョウモモ、キタコブシ、ナツツバキなどいろんな種類の庭木が所狭しと植えれています。 ここのご主人?奥さん?は相当園芸好きな方のようです。

コムラサキ
2013.11.11
コムラサキの葉は対生で、 そのそれぞれの葉柄基部に紫の果実をつけます。

コムラサキ
2013.11.11
2mm程の小さい実を多数つけます。

コムラサキ
2011.6.5
6月上旬は少し遅い芽だしです。 この写真は、豊平区西岡にある森林総合研究所で撮っているので、街の中心部より少し遅れます。

コムラサキ
2011.7.16
つぼみを撮ったつもりがピントがずれて紫の細枝にいったようで、ボケてしまいました。 枝のつぶつぶは星状毛。
「枝は紫色を帯び、はじめ※星状毛があるが、のちに無毛」(樹に咲く花)とあるので、おそらく、それなんでしょう。 この写真では毛が生えているようには見えないですが・・・・・。
※ クリック  →  星状毛

コムラサキ
2011.8.12
花は7月に開花し、9月末まで咲き続けます。
「葉腋のやや上から集散花序を出し、淡紅紫色の花をつける。 花冠は長さ3mmほどで、上部に4裂し、裂片を平開する。 雄しべは4個、雌しべは1個、ともに花冠の外につきでる。(樹に咲く花)

<余談:ムラサキシキブの名前で売られています>
インターネットで 「ムラサキシキブ 苗木」で検索すると、きれいな紫色の実のついた写真やポットに入った苗木の写真が出てきます。 その葉のつき方や樹姿はコムラサキの苗が多いようです。 また、別の種苗会社ではコムラサキシキブという名前で売っている場合もあります。 本物のムラサキシキブを売っている会社もありますが、多くはコムラサキを売っているようです。 個人の庭で見かけるのも、ムラサキシキブではなく、コムラサキです。

追記 2015.10.24
“樹に咲く花” や “園芸植物大辞典” ではコムラサキがで載っていますが、“牧野新日本植物図鑑” ではコムラサキシキブです。 ので、コムラサキシキブは別名でもなく正しい名前でもあるようです。 ちなみに、3つの図鑑とも別名は、“コシキブ” です。