チシマザクラ(その2)

チシマザクラは、北海道の山地に生える、タカネザクラ(ミネザクラ)の★変種とされるサクラで、高木になるエゾヤマザクラやソメイヨシノと違って縦より横に枝が伸び株立ち状になり、高さは3~5m程になる。
2016.5.5
写真は、我家から少し離れたところの個人の庭に植えられているチシマザクラ。高さは2~3m弱?、樹幅は6~7m。
個人の庭で見かけるものとしてなかなか?かなり?立派なもの。
2016.5.5
花の大きさは2cm程。 エゾヤマザクラやソメイヨシノと比べなくてもその差異は歴然。

★変種;「日本のサクラの種・品種マニュアル」では、タカネザクラ(ミネザクラ)とチシマザクラの違いを以下のように記述。
タカネザクラの小花柄、葉柄、葉の両面あるいは片面等に毛のあるものがチシマザクラで、かっては変種とされたが、母種と混成しており、毛の多少だけの差異であるので、タカネザクラ(ミネザクラ)として扱った。 強いて言えば、北地のチシマザクラの方が本州のものより多毛の個体が多いようである。

以下 の記述は、北海道立総合研究機構(道総研)のホームページで紹介されている「チシマザクラの魅力」のページです。 これは、佐藤孝夫氏(北海道樹木図鑑の著者)が講演されたときの要約の一部です。

「北海道に自生するチシマザクラの特徴は、幹が立ち上がらす、根元から分かれて横や斜め上に伸びること、花はエゾヤマザクラやソメイヨシノよりも小さく、香りがすること、そして、花の色や木の形に変異が多いことです。

チシマザクラの変異について少し詳しくみていくと、枝の伸び方については、横に伸びるもの、斜め上に伸びるもの、横にも斜めにも伸びるものがあり、これによって樹形の変異があらわれます。また、花については、花びらが紅色や白色のもの、中央に赤い筋が入ったもの、まるいもの、細長いものなど色や形に変異がみられるほか、八重に咲くものや小手毬のように咲くもの、ブラシのように枝にびっしりと咲くものなど咲き方にも変異がみられます。

このように、じつに個性的なチシマザクラは、根室管内では、公共施設の前庭や神社仏閣、学校などに広く植えられていますが、札幌市や三笠市、幌加内町、和寒町の公園などにも植えられており、道内各地の山にも自生しています。

この中で、もっとも有名なものは、根室市の清隆寺の境内に植えられている個体で、根室管内に植えられているチシマザクラは、この木の種子から広まったものと言われています。また、もっとも大きなものは、別海町の野付小学校に植えられている個体で、高さが6m、枝の広がりが15mにもなります。」

⇒ チシマザクラ :北方のサクラ
 (豊平区平岸の寒地土木研究所内にあるチシマザクラ)

 根室市青隆寺のサクラ https://www.tabirai.net/sightseeing/column/0000512.aspx

 

チシマザクラ :北方のサクラ

 5月も下旬近くになってサクラの話題を取り上げると、本州の人、特に関東以西の人にとっては、「今頃サクラの話?」という思いを抱かれると思います。しかし、北国札幌は、今週週末の土日がサクラの見頃で花見の季節なんです。例年に比べると2週間遅れです。旭川市の最も遅い開花(観測史上)は1980年5月16日だそうですが、今年はそれを抜くという話です。
5月14日(火)に豊平区にある独立行政法人 寒地土木研究所へ立ち寄ってきました。同研究所のホームページに、敷地内にあるチシマザクラを期間限定(5月11日~17日)で一般公開するお知らせが出ていたからです。
1-014 チシマザクラ2013.5.14
写真中央に流れるのが精進川です。並木に沿ってチシマザクラをじっくり観察しながら写真を撮っていると、すぅーと甘い香りがします。「漂う」と表現するほど強くはありません。サクラで香りを感じるのはあまり記憶がないのです。

1-006 チシマザクラ
昭和59年に苗木が植えられていますので、樹齢は約30年くらいでしょうか。樹木の大きさは、大きいもので7~8m、多くのものが3~5mくらいです。樹木の形態は、幹が地際から数本に分かれて叢生いるものがほとんどで、樹冠もコンパクトにまとまりチシマザクラらしい樹形をしています。しかし、ウェブサイトの写真で見るような、背の低い幅が高さの何倍もあるような、ツツジ類のような株状をしたチシマザクラは見かけなかったです。
1-017 チシマザクラ2013.5.14
当研究所のホームページによれば、
現在、寒地土木研究所には、構内を流れる精進川沿いに約200本の千島桜が植樹されています。この千島桜は昭和59年、当時の職員が「構内美化のためにも皆が末永く楽しめる植物を植えたい」という願いから、道東の厚岸郡浜中町霧多布(きりたっぷ)の苗木を植樹したのがはじまりでした。植樹当初は幼木だった桜も、現在は3~4mの大きさにまで成長し、例年5月初旬には一斉に開花して、見る人の目を楽しませてくれます。
千島桜は北海道では道東や道北を中心に、本州では中部以北の亜高山帯、そして千島、サハリン等に自生している落葉低木で、2~2.5㎝程度の淡紅色または白色の花をつける北方系の桜です。日本で最も遅く桜前線がたどり着く名所として根室の清隆寺が有名ですが、清隆寺の桜もこの千島桜です。
1-003 チシマザクラ  1-009 チシマザクラ  1-012.jpg  1-019 チシマザクラ2013.5.14
(いつも使っているカメラが故障して別のカメラで撮っているため、いまいち鮮明さに欠けるのですが・・・・。)
単木で植えれているチシマザクラを見ていても気付かないのですが、200本をいっぺんに見ると、その違い(花色、花の形態、花の咲き方<花が先に咲くもの、出葉と同時に咲くもの、葉が先にでるもの>)に相当幅があることに気づきます。同じ種(種類)とはとても思えないです。葉については、まだ出葉していない樹が多く、違いを見ることができません。
ソメイヨシノは江戸時代末期に江戸の染井村(現東京都豊島区)の植木屋さんたちによって作られたサクラで、エドヒガン系のサクラとオオシマザクラをかけ合せて作られた園芸品種と言われています。全てが接木などの栄養繁殖(クローン)で増やされているために、鹿児島のソメイヨシノも札幌のソメイヨシノも同じ遺伝子を持っていて、基本的には花の形態や花色、葉の形状は同じになります。
ところが、チシマザクラは写真のように、花の形態、花色、咲き方など個々の樹によってその違い(変異)が大きく、一つの種(しゅ)とは思えないくらいです。エゾヤマザクラも一つの種(しゅ)ですが、公園などに植えられている樹を見てもその違いをほとんど意識しません。 先程の寒地土木研究所の説明で、道東の厚岸郡浜中町霧多布(きりたっぷ)の苗木を植えたと書いてありますので、ここのサクラは道東の各地域から集めたものではなく、限定された樹から採取した種(たね)で育てた苗木なんでしょう。それでも、これほどの違いが出るのですから驚きです。これがチシマザクラの大きな特徴なんでしょうね。
1-044 チシマザクラ(赤字)2013.5.12 北大植物園 樹高:3m弱
1-IMG_3619(赤字)2010.5.18 豊滝公園  樹高:2m
〇 名前の由来ほか
牧野新日本植物図鑑より
この桜は古くから南千島エトロフ島に産することが知られ、千島桜と名付けられた。
北海道や本州中北部の亜高山帯にはえる落葉の小形高木、時には盆栽として植えられるミネザクラの変種で、葉柄、花柄及びがくに直立した毛が多いので区別できる。
(牧野先生は区別できると言い切っていますが、寒地土木研究所のチシマザクラを見て、「それってほんと?」と疑問に思い、調べてみると北海道林業試験場でミネザクラとチシマザクラの葉柄及び花柄の毛の有無を調べています。結果は毛のないものはミネザクラ、毛のおおいものはチシマザクラと言えるが、両者の間に明確なラインを引くことは難しい と結論付けています。)
http://www.hfri.pref.hokkaido.jp/kanko/kitam/pdf/kitamd15.pdf
〇 Data
・科名 バラ科
・属名 サクラ属
・学名 Prunus nipponica var.kurilensis kurilensisは千島列島の と言う意味。ミネザクラ:Prunus nipponica
・花期 4月下旬~5月上中旬

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