円山のカツラ

カツラは渓谷に点在するあまり目立たない落葉樹である。
大きな群落をつくらず、渓谷の谷底などに点在する。
大群落をつくらない樹木は、少数派ならではの苦労もある。
カツラの姿からは苦戦しつつも
独自に生き延びてきた戦略が浮かび上がってくる。

〇 森の中では少ない
森の中を歩いていても、カツラを見かけることはあまり多くない。カツラの稚樹の耐陰性は中庸で、発芽すれば森の中で育つようだが、どうやら渓谷以外の一般の斜面では種子による更新があまりうまくいってないようである。その一因は、種子が小さいため定着しにくいことだ。 カツラは翼のついた種子を風で散布する。その種子は非常に小さく、風に乗れば散布距離は大きい。ことろが、種子から発芽した実生はサイズが小さく、特に落葉が積もった場所では根を地中に入れることができず、死んでしまうことが多い。カツラの実生は、倒木の上や粒子の細かい土壌の上など、ごく限られた環境でしか育たないという。カツラが更新しているのは、一般の斜面よりも、むしろ渓谷だ。

〇 流される稚樹
冷温帯の渓谷を歩いていると、時々カツラの大木を見かける。カツラもサワグルミと同じように洪水によってできた攪乱地で更新するタイプの木である。河原には、小さな種子でも定着できる粒子の細かい土砂が堆積している。ただし、種子の小さいカツラは、サワグルミに較べて稚樹の競争力が劣る。このため、サワグルミが更新するような数十~数百年に一度起こるような大きな土石流でできた河原では、競争力の強いサワグルミやシオジに負けてしまう。この結果、カツラは、どちらかというともっと煩雑に起こる中小洪水によってできた谷底の河原で更新しているようだ。
2021.9.15
円山の裾野を流れる円山川 この川の両サイドにはカツラの稚樹や幼樹が列状に生えています。
2021.9.15
円山川の護岸は空石積なので、石と石の隙間に落ちたカツラのタネが発芽し生き延びて幼樹がそこから根を伸ばして成長しています。 この石と石の隙間が上述の「小さな種子でも定着できる粒子の細かい土砂が堆積している」環境と似通っているのでしようか?、とにかく、円山の登山道の入り口に当たる八十八か所大師堂付近の円山川上下流の石積護岸にはにはカツラの稚樹・幼樹がたくさん生えています。

2011.7.24
小金湯のカツラ  車の台数で大きさをイメージしてください。
2012.3.8
小金湯のカツラ冬姿。雪を乗せた横に広がる太い幹が目を引きます。

このカツラは北海道の記念保護樹に指定されています、 樹高は20m強くらい、樹冠は縦横20mを超し、樹齢700年を超える老大樹で、生えている場所は小中河川の川沿いではなく豊平川の近く。
所在は、国道230号線を定山渓に向かって行き、小金湯温泉(道路反対側には小金湯さくらの森)の信号を右に降りていくと、その大木が待っています。

2011.7.24                                      2012.3.8
根元から萌芽樹が何十本と立ち上がり全体の直径 は数メートルになる。

700年の時を越えて(その1:冬)
700年の時をこえて(その2:春)
700年の時を越えて(その3:秋)

〇 風任せの送粉形式
カツラにとって、繁殖において不利な点は他にもある。カツラの花は春に咲く。雄しべや雌しべの垂れ下がるだけの(花びらのない)原始的な風媒花である。
左:雄花 右:雌花
カツラの花は、花弁もがくもないので、雄花(左)は葯で、雌花(右)の細いひょろっとした4本は雌しべ なのでしょう。

風ませで花粉を運ぶ方式は、大群落においては効率的だが、個体数が少ない小群落の場合には効率の悪い送粉形式だ。
そもそも花粉をやりとりしないと種子ができないという繁殖方法(有性生殖)はじつに面倒くさい方法である。別の個体に花粉を送らなければ子孫を残せないとなると、個体数が減少すると種の絶滅の危機に瀕することになる。タケのように根で増える、つまり無性生殖という方法で繁殖するほうがはるかに簡単で、コストもかからない、確実な方法に見える。
カツラは中生代の白亜紀(1億年くらい前)に取り残されたように生き延びている一族である。どうやらカツラの一族はかつての繁栄から見ると衰退の途上にあるらしい。

〇 雌雄異株の問題点
大群落をつくらないカツラとって、風媒花という以外に不利な点がある。
カツラは、雄株(雄花だけがつく木)と雌株(雌花だけがつく木)に分かれるタイプつまり、「雌雄異株」である。雌雄異株は、同じ木に雌花と雄花が共存しないために、自家受粉を防ぐというメリットがある。自家受粉は健全な種子がなりにくい(近交弱勢)ので樹木としてはできれば避けたい行為だ。しかし一方で、雌雄異株は、個体数が減少してしまうと受粉効率が低下してしまう可能性がある。というのも、せっかく風に乗って花粉が飛んで、別のカツラにたどり着いても、その木が雌株(雌花をつける)とは限らない。また、雌雄の比についても、雌株だけが増えすぎても、雄株だけが増えすぎても受粉効率が悪くなるだろう。
個体数が減少してしまった場合、じつは自家受粉ができたほうが種の絶滅を逃れる可能性が高くなる場合がある。たしかに自家受粉だけに頼ってしまうと、近交弱勢という問題が生じる。しかし、絶滅の危機に瀕している際に、そんな悠長なことは言っていられない。自家受粉は、たとえ健全な種子が少なくても、とにかく一部は健全な種子ができるわけで、絶滅を防ぐための最後の手段として有効である。この点で、雌雄異株で自家受粉できないカツラは、種の維持という観点からは不利な立場に立たされている。

〇 有性生殖の不利
カツラなどの木が、雌雄異株、つまり雄株と雌株に分かれている形式をとるのは自家受粉を防ぐためである。自家受粉を防ぐ理由は、有性生殖を徹底するためである。なぜそこまでして、有性生殖を徹底しているのだろうか。それは遺伝子を多様化するためである。
有性生殖は、環境が激しく変化し続ける状況下では、生物にとって有利である。遺伝子を多様化で切るからだ。その変化とは気候変動などのようなゆっくりとしたものよりむしろ、ウィルスなど非常に早く進化するものである。 敵(ウィルスなど)の早い進化に対抗するために。生物の側もどんどん遺伝子構造を変化させようとするわけである。樹木など寿命の長い生物は、世代交代がゆっくりなので、特に有性生殖は有効なのかもしれない。おそらくは、樹木が生き延びてきたb歴史の中で、有性生殖が有利に働いた場面がたくさんあったのだろう。
しかし、有性生殖には(無性生殖に比べて)欠点もある。それは、一つの個体だけでは繁殖ができず、ある木の花粉が他の木の雌花(めしべ)に到達する必要がある(動物ならば配偶者を探さなければならない)ことである。有性生殖は、特に個体数が少ない状況下で種を維持しようとしたり、新たに分布を広げる際に不利である。絶滅しやすくなってしまうのだ。
また、花粉などのコストがかかる、とか、有性生殖は遺伝子を組み替えるので、せっかく獲得した有利な(優れた)遺伝子が失われることがある。といったデメリットもある。このため、無性生殖で反映している植物も少なくない。カツラも有性生殖の不利な部分を補うかのように無性生殖をおこなている。

〇 不利を補う無性生殖
有性生殖の対極にある生殖方法が、無性生殖でsる。樹木の無性生殖はおもに、生殖器官である花以外の器官が分化して繁殖する方法で、萌芽、むかご、地下茎などがある。無性生殖は、有性生殖と違って、1個体だけで可能な繁殖方法である。
カツラが行う無性生殖とは、萌芽による更新である。カツラは、太い幹が根元から枝分かれ(株立ち)している立派な姿をよく見かける。 2014.7.27
真駒内公園の真駒内川沿いに生えているカツラ。 萌芽枝が円形状に生えていて、その中央の主幹は見当たらない。

このような樹形は、何本かの萌芽枝が成長した結果だ。また、カツラの萌芽は、主幹が損傷を受けていなくても、普段から根元に多くの萌芽枝を出している。カツラは長寿であり、萌芽枝によって、主幹を交代させながら、個体によっては500年以上生きるという。萌芽は、同じ個体が再生しながら寿命を延ばしているとみることもできるが、味方を変えると、萌芽枝という子孫を新たに生み続けることによって、自らの遺伝子を継承しているという見方もできる。萌芽による更新(あるいは延命)がうまくいけば長い年月にわたって種子を散布し続けることができ、種子による更新も増えるだろう。カツラが絶滅せずに生き残っているのは、この強い萌芽による更新に負うところが大きい。カツラは有性生殖の形を守りつつ、その不利を無性生殖によっ補っているのかもしれない。

上の文章(ゴシック体)は、渡辺一夫著「イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか」のカツラに関する記述です。 上文を簡単にまとめると、
① 今から約1億くらい前に生まれた樹木で、植物の進化から取り残された、その当時の姿を残したままの化石という単語が似合う植物
② 自生地は中国と日本の東アジアに限られ、かつての繁栄から見ると、衰退の途上にある種
③ 群落を形成しない、谷筋の湿気った場所にぽつんぽつんと点在して生える樹
④ 雌雄異株で原始的な形態の花を持つ風媒花
⑤ 萌芽枝を多数出して、主幹を交代させながら、500年以上生きる長寿の樹

円山のカツラ
2016.4.21
中央区の環状通(南20条~南10条辺り?から見える山肌で、ぼやっと赤くなっている部分がカツラの開花若しくは新芽の吹き出し。
2016.4.21
円山公園、坂下グランド(野球場)から円山を撮影。 ぼやっと赤くなっている部分がカツラの開花若しくは新芽の吹き出し。

2013.5.4
豊平川に架かるミュンヘン大橋から西に向かって行き、230線(石山通)を越えた当たりから撮影。 ぼやっと赤く見える部分がカツラの開花若しくは新芽の吹き出し。 撮影日が5月4日なので新芽が赤く見える可能性が高い。

上の3枚の写真を見てもわかるとおり、藻岩山から円山にかけての山肌にはカツラが多く生えています(群落を形成している)。 南29条から南1条までの環状線(道路)から見える藻岩山の裾野と円山にはカツラの群落を見かけます。 夏になるとカツラと他の樹木の区別は出来なくなるのですが、4月の開花や新芽の吹き出す頃は、山肌がぼんやり赤くそまり、カツラの存在を確認することが出来ます。
 2013.10.5
この写真は、円山の登山道の入り口に当たる八十八か所大師堂から少し入った円山川沿いの斜面を撮ったものです。 写真左側に見える大木はカツラです。 その奥にも株立ち上になった大きなカツラが2~3本見えます。 2013.10.5
写真のカツラは、上の写真の左端のカツラを正面から撮ったものです。 樹高は分かりませんが幹周は20mを超えると思います。 主幹がなくなり回りの萌芽樹が大きく成長して、その根元の直径が1mを超すほどになっています。 根張りは数メートル先まで伸びています。 萌芽樹の太さ・大きさ、その威厳・壮大さから、このカツラは小金湯のカツラより一回り上手で、その樹齢は1000年を越しているのではiないでしょうか?
2016.7.31
上と同じカツラで一番太い萌芽樹.。 平成16年(2004年)の、札幌で最大瞬間風速50mを記録した、台風18号で折れたのでしょうか?
2013.3.24
同じカツラの冬姿。 カツラ(写真中央)の左横を人がスキーを担いで歩いています。

藻岩・円山の森林は明治中頃には一部は伐採されていたが、その貴重さが見直されるきっかけとなったのは、サージェント教授の影響によるところが大きい。サージェント教授はアメリカのハーバード大学の高名な教授で、明治25年(1891)に日本の各地を訪れ、「日本森林植物誌」(英文)を著した。 この中で藻岩山のの森林についてふれ、この山と同じような気候の土地で、しかもせまい地域に、これほど樹木の種類が多くあるところは、世界的にも珍しいとの折り紙をつけた。
サージェント教授は、とくに日本のカツラには興味をひかれたようで、藻岩山の山麓の巨大なカツラを写真におさめて紹介している。
ところがこの後このカツラの大木は切られてしまった。宮部金吾博士など心ある人々は、この伐採を深く悲しみ、貴重な森林が失われるのを憂えた。・・・・
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そして、大正8年に国の天然記念物保存制度が成立すると、円山原始林、藻岩山原始林は、北海道における第1号の天然記念物として、大正10年(1921)に指定され、いっそうの自然保護がはかられるようになったのである。 ところで、❝原始林❞ といえば、古来からまったく人手が入らぬ森林が創造されがちであるが、藻岩・円山はすでに記したように若干の伐採はまぬがれなかったのである。 また、藻岩の南斜面(天然記念物区域外)を中心とした部分は、明治時代に数回の山火事にあって林相が悪化した。しかし、いずれにしても、原生天然保存林となった大正4年以降、現在にいたるまで70年近く(現在に換算すると107年)は、戦後のアメリカ進駐軍スキー場などの局部を除き、ほとんど人手が加えられていないので、藻岩・円山は都市近郊の豊かな ❝原始林❞ として、誇るべき存在であるということができる。
(さっぽろ文庫12 藻岩・円山)

話が少しそれてしまいましたが、円山のカツラに戻ります。
サージェント博士が藻岩山と円山の樹木の多様性を評価したことがきっかけで藻岩・円山が天然記念物に指定されることになったのですが、
今から100年以上前にサージェント博士は、円山の道なき道を上って、突然目の前に巨大なカツラに出会ったのです。 それは直径が数メートにも及び、萌芽樹が何十本も生えていて、その根元には直径が数十センチもある根が縦横に重なり合いなが四方八方に数メートル先までうねり伸ばしているのです。 そんなカツラの重厚さに圧倒されながら?、サージェント博士は、故郷の北アメリカには存在しない、極東の島国に生えてるカツラにどんな思いで見上げ佇んだのでしょうか?

円山にはそんな巨大なカツラが円山川沿いに幾本も生えているのです。そして、その裾野を流れる円山川の石積護岸にはカツラの稚樹や幼樹が列をなして生えているのです。 上述の著者 渡辺一夫氏によれば、 カツラは沢筋にぽつんぽつんと点在していることが多く、群落をつくることは少ないことのようですが、円山は群落を形成できる環境が整っている場所のようです。
このことは、カツラが生える場所の特性から、遠くであろうと近くであろうと山に登ってもカツラの花に出会える機会はなかなかないように思えるのです。 ところが、円山のカツラは群落を形成していて、それが身近に見えて、接するてことができ、大都市の公園の野球場からも見られるということは、カツラがユーラシア大陸の東端、中国の一部と日本の限られた場所だけに生息する種類という意味で、カツラの花を身近でしかも山肌を赤く染めるのを見ることができるのは、世界中でここ円山だけではないかと思っているのです。
そう思うと、カツラの花にもし花弁があれば、たとえ小さくても花弁があれば、坂下グランドから見る4月下旬から5月上旬にかけての円山の山肌はもう少し鮮やかで別の景色、色模様があったのに、と空想してしまうのです。

 

 

カツラ 並木

カツラ 車窓側:25本(8m)、コンベンション側:28本(6m)、 イチョウ:25本  歩道幅6m、園路5m 樹高:10m前後、幹径:20~30cm弱 2016.5.22
コンベンションセンター(白石区東札幌6条1丁目)南側にあるカツラ並木。 延長は約200m。
樹高は10m前後。 幹径は20cm~30cm弱。

カツラ 2016.5.22
カツラが2列(車道側:25本、中央:28本)、イチョウが1列(25本)、3列の並木。 並木の間隔は、車道側のカツラが8m、コンベンションセンター側のカツラとイチョウは6m。 カツラとイチョウの植樹桝にはメギを植え付け。
コンベンションセンターがオープンしたのは平成3年です。 ですのでカツラが植えられたのはおそらくその前年、平成2年頃で、植えられて26年経ちます。 樹齢は36年前後になると思います。
カツラ 2016.5.22
札幌市内には、カツラは街路樹としてたくさん植えられています。 しかし、この場所ほど、街路樹にとって環境の整っている場所はありません。 その理由は、街路樹の成長を制約する電柱・電線や近接する大きな建物がないので、無用な剪定をする必要がなく、樹木は自由に枝を伸ばして伸び伸びと生長できるからです。 樹齢に相応しい樹形を保っていて並木としてなかなかのものです。 コンベンションセンターの広々とした芝生地を横目に見ながら、カツラの並木に沿って歩くのは気分が和みます。

カツラ  芽だし

4月中旬に山肌をほんのりと赤く染めたカツラの花は、
カツラ 2016.4.27
いつの間にか褐色の樹冠に変っています。 新芽が吹いたようです。

カツラ 2016.4.27
場所は、中央区と南区の境界、南29条辺りで、藻岩山の裾野を撮影。

カツラ 2016.4.27
新芽から展葉へ。 赤みを帯びた暗褐色の葉は緑色へ変わってきています。
この時期、真駒内公園や中島公園を散策すると、まだ辺りは枯野で、新芽を吹いている樹はほとんど見かけません。 しかしよく見ると、多くの高木に先駆けて、カツラの新芽が吹いているのを見つけることが出来ます。

カツラ 開花

カツラ 円山公園 坂下グランド  ストローブマツ 2016.4.21
カツラの花が満開です。 山肌を薄ぼんやりと赤く染めているのがカツラの花です。 円山公園坂下グランド(野球場)から撮っています。
中央の常緑樹はストローブマツ。

カツラ 2015.4.14
国道230号(石山通)、南16条札幌トヨペット屋上駐車場裏から伸びるカツラ

ちょうどこの時期、南35条辺りから国道230号を北上し、南29条の信号を左に曲がって福住桑園通り沿いの藻岩山の山肌を見ると、ほんのりと赤く染まった部分がところどころに見つけることができます。 カツラの花が咲いているところです。 その道路をさらに北上して南21条で環状通に入り、南9条辺りまで進むと円山が近くに見えてきます。 この辺りからほんのりと樹幹を赤く染めるカツラの樹が多くなります。 そして、南1条で左に曲がり円山公園にある坂下グランド(野球場)から見る山肌にはほんのりと赤く染まっています。 藻岩山から円山にかけて北東から北斜面の山肌には、カツラが数多く生育し群落を形成しています。

森林の中で、落葉広葉樹(高木)の群がり(生え方)は、シラカバやブナのように大きな群生をつくるもの、ハルニレやミズナラ、コナラなど中くらいの群生から点生(飛び飛びに生える)するもの、そして、多くの樹種が属する小さな群生~点生するものに分けられ、カツラは最後の小群生から点生する部類に入るのだそうです。

カツラは、本州の方では他の樹種に比べると密度の低い、森林ではそんなに出会わない樹のようで、“イタヤヤカデはなぜ自ら幹を枯らすのか(渡辺一夫著)” という書物の中で、
「カツラは渓谷に点在するあまり目立たない落葉樹である。 大きな群落をつくらず、渓谷の谷底などに点在する。 ・・・・・森の中を歩いていても、カツラを見かけることはあまり多くない。・・・・・・ 」、
また、“樹に咲く花”では、
「生育地は山地の谷沿い。 渓畔林の重要な樹種のひとつ。個体数はそれほど多くなく、点々と離れて生えていることが多い。また、樹林内で実生や稚樹、小径木を見かけることもあまりない。これらのことから、カツラはまれに生じる大規模な崩壊や土石流のときに更新し、いったん定着すると萌芽によって長期間固体を維持し続けると考えられている。」と書かれています。

さらに、カツラは1科1属で、自生地も中国と日本のみで生育地は限られています。 札幌では平成の初め頃から公園や街路樹でカツラが植えられるようになり、カツラの花を見ることができるかもしれませんが、奥深い山に入ることもなく都心部に近い市街地から、山肌全体がカツラのほんのりと赤い花で染まられる場所は、世界中を探してもここしかないのではないでしょうか?

カツラ 冬芽

カツラ:冬芽
カツラ2011.3.3
冬芽は対生して、三角錐形ないし円錐形で、長さ3~4mmある。仮頂芽は2個つき、側芽とほぼ同じ大きさである。 芽鱗は無毛で赤紫色ないし赤褐色をし、2枚あって、外の1枚が背面で割れ目をみせる。短枝では、1個の頂生芽がつく。(落葉広葉樹図譜)

この枝は1年生枝ではなく、3~4年生で、冬芽は短枝についている。

 

カツラ2012.3.11
小さな赤褐色の冬芽がみえるが、褐色の細長い筒状のものは実殻。