クリ  樹木の寿命(衰退〜枯死) 追記

クリの大木について
「クリ 樹木の寿命(衰退〜枯死)その2」で、北海道と市町村の保存樹から掲載しましたが、北海道の巨樹・銘木150選(今田秀樹著)には、以下のものがありました。

‘ 名称      所在地  幹周     樹高     樹齢
・義経神社のクリ 平取町  440cm  20m    330年
・茅部の栗林   森町   508cm  17m    250年
・荒井のクリ   蘭越町  431cm  15m    330年

樹木の寿命(その2)で掲載したもの
・江別市 野幌森林公園内  455cm  18m    500年
・一本栗地主神社 七飯町  480cm  15m    600年
・相馬神社    札幌市  382cm  15~20m 300年以上
・個人所有    江別市  298cm  12m    136年
・文京台小学校   〃   180cm  20m    91年
記載漏れ
・湯川公園    江別市  241cm  20m    116年
・湯川公園     〃   288cm  20m    116年

以下は「クリの寿命(その2)」でクリの大樹について記載したものです。
この数値を見ていると、本当に大まかなのですが、樹齢が100年前後になると幹周は約300cm、300年で400cm、500〜600年で450〜500cmで、幹が太くなるのは100年前後までのようです。 ピーター・トーマスは「オークは成長するのに300年、成長を止めて300年、死ぬまで300年」と言っていますが、これを道内のクリに当てはめると、「生長するのに100年、生長を止めて200年、死ぬまで200年」といったところでしょうか。

以上のように書いていましたが、新たに加えたクリの大樹の数値を見ても、前回書いたものがそれほど間違ってはいなかった、大筋で合っているように思います。

・ クリ  樹木の寿命(衰弱から枯死へ)

・ クリ  樹木の寿命(衰退から枯死へ) その2

 

 

 

クリ  樹木の寿命(衰退から枯死へ) その2

樹木の寿命(その2)を書こうとしたのですが、このクリの樹齢はいくつなのか?、という基本的なことが分からないと話が進められないという思いになりました。 しかし、この樹を近くに行って確認したいと思うのですが、個人のものなのか?、それとも河川管理者のものなか?が分からないのでどうしようか迷っていたのですが、とりあえず、河川管理者に問い合わせてみると、現地を確認したいというのです。 その結果、河川管理者のものだということがわかりました。 それで切株の計測と近接での写真撮影ができたという次第です。
2020.4.24
その計測結果は以下の通りです。
・クリの切株の高さ    :1.6m
・幹径(高さ1.2m)  :84cm ✖ 86cm。
・大きい切株の直径と年輪:65cm ✖ 60cm、82年
・小さい切株の直径と年輪:46cm ✖ 43cm、71年
・主幹にはカミキリムシなどの穿孔虫によってできる穴は確認できなかった。

南の沢川沿いのクリの大きさが分かると、道内の大きなクリの樹齢や樹高、幹周はどれくらいなのだろう と比較をしてみたくなりました。 道内でクリの自生は道央以南で、樹齢と樹高及び幹周が分かったのは以下のとおりです。
◎ 道内にあるクリの大木(北海道及び市町村の保存樹木)との比較
・江別市 野幌森林公園内  推定樹齢500年 樹高18m、幹周455cm
(北海道保護樹木)
・七飯町 一本栗地主神社 推定樹齢600年 樹高15m、幹周480cm
(北海道保護樹木)
・札幌市 相馬神社  推定樹齢300年以上 樹高15~20m、幹周382cm
(札幌市保存樹木)
・江別市野幌代々木町 樹齢136年 樹高12m、幹周298cm(直径95cm)(江別市保存樹木)
・江別市文京台    樹齢91年 樹高20m、幹周180cm(直径57cm)
(江別市保存樹木)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・南の沢川      樹齢82年 樹高15m以上、幹周267cm

道内のクリの保存樹(クリの中では数少ない超エリート的存在)を見ると、樹高は15~20m、最高樹齢で500~600年、樹齢が100年くらいなってくると、その地域では有名?貴重な存在(保存樹)になり得るようです。
幹周は樹齢を重ねるほどに大きくなる?長くなる?、これは当たり前ですが、
・600年 480cm
・500年 455cm
・300年 382cm
・136年 298cm
・ 91年 180cm
・ 82年 267cm
この数値を見ていると、本当に大まかなのですが、樹齢が100年前後になると幹周は約300cm、300年で400cm、500〜600年で450〜500cmで、幹が太くなるのは100年前後までのようです。 ピーター・トーマスは「オークは成長するのに300年、成長を止めて300年、死ぬまで300年」と言っていますが、これを道内のクリに当てはめると、「生長するのに100年、生長を止めて200年、死ぬまで200年」といったところでしょうか。
南の沢川のクリの年輪を見ると、生長が盛んで年輪の幅が広いのは40年くらいまでで、その後は年輪の幅はだんだんと狭くなっています。 この観点から、この樹の生長幅の最大域(高さと樹幅)は樹齢70年頃にはその域に達していたように思われます。 ピーター・トーマス流にいえば、この樹の生長期は70年で、所得の収支(光合成量と呼吸量)が赤字にならないまでも、徐々にプラスマイナスゼロに近づいてきている段階、なのではないでしょうか。

上記の新たに得た知見をもとに南の沢川沿いのクリの衰弱~枯死について迷想したいと思います。

2013.7.13
最初に写真を撮った7年前のこのクリは、一見健全で元気に育っているように見えます。 しかし、ピータートーマスのいう「死んだ枝がシカの角のように樹冠の先から突き出ている(写真赤丸の部分」ことから、人間で言えば40~50歳の中年のおじさんで、体のあちこちに不具合で出てくる頃で、樹木では樹体が一番大きく伸びきって生長が止まるころ、所得収支がとんとんか赤字(呼吸量が光合成量を上回っている)が始まる頃、終焉に向けての旋回が始まる段階のように見えます。
2014.9.6
その翌年は、前年に比べて樹冠全体の葉数が少なくなってきているように見えます。 病気か、害虫による食害か、それ以外の何かによるもので、成長期から停滞期への移行による現象、自然な衰退のようには見えないのですが。 2015.7.6
枝先の細枝の枯れが増えてきて、樹幹全体の葉のボリュームも少なくなっています。 2年前の同じ開花期の写真と比べて、明らかに枝葉が少なく全体がほっそりして衰退が始まっているように見えます。
この現象は、病害虫などによるストレスではない自然な衰弱へのサイクル(成長300年、生長を止めて300年、死ぬまで300年)からすると、その速度は極めて速く、おそらく何らかの病害虫の被害を受けている可能性が高いように思うのです。 2017.8.6
2015年7月6日から約2年後の樹姿。樹冠上部の枝葉の枯死が目立つようになり、明らかに枝葉のボリューム感がなくなっています。 そして、樹幹中央部に胴吹きが見られます。 樹木が胴吹きを出すということは、前回のブログで述べたように、樹幹上部の枝葉が少なくなって光合成量が減り、それを補うために胴吹きが出てくるのです。 このクリは完全に衰弱から枯死への道に進んでいるようです。

クリの大木を4~5年?数年かけて樹冠上部の枝葉を枯らせて衰退させるような病気又は害虫とは、どんな種類があるのでしょうか?

・このクリの切株にはカミキリムシなどの穿孔虫が空けた穴のようなものはなかったので穿孔虫の幼虫の食害による衰退ではなさそうです。
・樹木が枯死する原因で一番よく見かけるのは胴枯れによるものです。 アメリカにおけるクリの胴枯病は有名ですが、札幌周辺ではサクラやナナカマド、ツリバナなど樹肌が滑らかな樹種でよく見かけます。 この病気は、菌が形成層を破壊して起こるもので、それが幹や枝の全周に及ぶと上部に水が供給されなくなるため、その上部が枯れ上がり枯死するのです。 この病気が発生すると1~2年で樹木は枯死するので、このクリの衰退の原因には当たらないです。
・2014年8月に札幌周辺でマイマイガが大発生し、公園や自然林の樹木が丸裸にされる現象を見ています。 しかし、写真で見る限り、このクリにはその影響はなかったようです。

迷想をより深めるために病害虫の参考書をいろいろ当たってみると、それらしきものを見つけました。 以下は「果樹の病害虫診断事典」のクリタマバチに関する記述です。

クリの芽は3月下旬になると出芽し始め、4月になると展葉し始める(札幌市周辺では5月中旬以降に出葉)が、この時期に寄生を受けた芽は伸長せず、虫えいは平滑で光沢がある。  はじめ緑色であるが、日がたつにつれ赤みを帯びてくる。虫えいには矮化した葉が数枚集まってついている。
 この虫えいから、のちに成虫が穴をあけて羽化して出てくる。 その後虫えいは枯れてしまう。 このため、新梢が発生せず、雌花をつける結果枝ができないので収量は低下し、樹勢も弱くなり、年々衰弱する。 芽の位置によって、虫えいを生ずる比率が異なる。 頂芽および新梢の先端に近い脇芽では少なく、それより下部の脇芽で多く発生する。 
 新梢の基部に大型の虫えいができるもの、葉柄や葉脈上に小型の虫えいができるものなどいろいろである。

実際に近くでこのクリを見ていないのでただの推測でしかないのですが、クリタマバチがこのクリを衰退させる原因の重要な容疑者ではないかと思っています。
2019.6.23
2017年から2年後。 6月下旬での段階で樹冠の一部にしか葉がない状態です。
樹体の衰退が急激に進んだようです。
2018年9月上旬に台風21号が北海道西部沖を北上しています。 この台風は胆振東地震前日に北海道を通過した台風、札幌で最大瞬間風速33mを記録した台風、1954年の洞爺丸台風や2004年の台風18号にも匹敵する台風なのです。
樹木にとって9月上旬という時期は、そろそろ葉の養分を樹体内に引き戻す時期、 来年の芽出しから新葉を展開するために大切な養分を樹体内に蓄積する時期に当たるのです。 それが始まる時期に台風がやってきて、大小の枝をへし折り葉を引きちぎって通り過ぎたのです。
このクリにとって、数年来の病害虫による養分の蓄積が十分に出来ていないうえに、台風で決定的な追い打ちをかけられたのです。 2018年はこのクリにとってほとんど養分の蓄積が出来なかったのではないでしょうか? その結果が写真に写っている2019年6月の樹姿です。 枝先から葉を出す元気は当然、胴吹きさえも出せない状態になってしまったのです。
2020.4.17
南の沢川のクリは、樹冠(樹高と樹幅)が最大域に達し、成長期もそろそろ終わりを迎え成長を止める時期に入った頃で、もし、病害虫などに害されなければ、、ピーター・トーマスのいう成長を止める時期に入って、これから後100年や200年は生きることができたかもしれません。 しかし、その段階で致命的な病害虫に襲われて体力を失い衰弱が始まり、そんな中で、強烈な台風に襲われて完全に衰弱して枯死に至ったのではないか と迷想しました。

 

 

クリ  樹木の寿命(衰弱から枯死へ)

2013.7.13
今から7年前、2013年夏、写真を撮ったのがちょうどクリの開花時期で、樹冠が白っぽいのはクリの花。 このクリは樹高約15m以上?、樹幅もそれくらいありそうな大木。 豊平川にそそぐ南の沢川沿いに生えています。
この大木の衰弱の兆候を探すとすれば、樹冠右側中段の枝の葉が少ないことと、樹幹上部左側に枯れた細枝が飛び出しています。 それぐらいでしょうか。
2014.9.6
その翌年(2014年)の9月。 樹冠右側中段の枝につく葉数が明らかに少なくなっています。 それと、昨年に比べ樹冠内の枝葉が少なくなって樹冠内部に隙間が多くなっている感じがします。
2015.7.6
その翌年(2015年)の7月。 クリの花が咲いています。 樹幹全体の枝葉、ボリューム感がないというか、人間で言えばやせ細ってきた という感じです。 樹幹上部の細枝の枯れが多くなってきているように見られます。 2017.8.6
その翌々年(2017月年)の8月。 明らかに葉数が少なくなってきました。 樹冠上部の細枝の枯れが目立ってきています。 はっきりとは判りませんが、写真を見る限りでは主幹や太枝から大量の胴吹きを出しています。 これは、樹幹上部の枝が枯れたり病気になったり、又は強風で太枝が折れたり強剪定された場合に出てくるものです。 理由は樹冠上部の葉が減少して光合成が出来ない分、それに代わって養分をつくるために樹幹に眠っていた芽(休眠芽)が突然起こされて出てきたものなのです。 このクリは正常な状態での養分の作り方から幹に芽を出させ、それで新たに養分製造場所を確保しようとしているのです。
2019.6.23
写真はその翌々年(2019年)の6月。 胴吹きという緊急養分製造装置では対応しきれなかったようです。 2年前に比べると急激に衰退しています。 一部の枝に葉が出ているだけになっています。 その前年(2018年)9月に北海道を襲った台風21号による影響が大きかったのでしょうか?  2年前の段階では、まだ助けようがあったのでしょうが、こうなるとどのような手当をしても無駄なように思います。
2020.4.17
そして、今春。 地上1mくらいでバッサリと切断された切株が残るのみでした。 昨年の秋ごろには完全に枯れ上がっていたのでしょう。

このクリについては、遠くから眺めて写真を撮るだけで近接して見ているわけではないので、病気が発生したのか?害虫に食われて衰弱に至ったのか?、それともこの樹が持っている寿命なのか?については判りません。 しかし、10年近くをかけて徐々に衰弱していって枯死に至っていることは明確です。

樹木は動物と違って主幹がバッサリ切られても、その切り口からまた新しい芽が伸びてきます。 動物で例えれべ胴体を真っ二つ切られても、その切り口から新たに失った部分が再生するようなものです。 さらに、樹木は師部と木部の間に毎年新しい形成層を作り太っていきます。 師部は内樹皮とも呼ばれ毎年形成層の外側に作られ古い物から外に押し出されて外樹皮となり、最後は剥がれてしまいます。 一方、形成層の内側にできる木部は数年?は水分を通す管としての役割(辺材)を果たすのですが、その後は生きた組織が存在しない心材となります。
以上のように樹木は、切断されても再生する能力があることや、毎年形成層という新しい組織が出来て、それに伴い活動を終えて死ん組織が増えていくことが併存する生物で、そもそも動物でいう寿命という概念は樹木には当てはまらないようです。

しかし、ピーター・トーマス著、“ 樹木学 ” では、樹木の寿命について 以下のように説明しています。 少々長くなりますが、興味のある方はお読みください。

樹木の生存にとって重要なのは木の大きさである。 樹木は成長していずれ樹冠の極大点に達する。 樹高の方は主として水輸送(木部の導管で水分を上に揚げる)の関係で無制限で大きくなれないし、側枝を伸ばそうとすると、それを支えるのに大変なコストがかかる。 したがって1本につけられる葉の数にも上限があり、それはまた食糧生産(光合成量)の制約を意味する。 ところが樹木の方は樹皮の下に毎年木部に新しい層を加えていくので、木が大きくなるにつれ樹木全体の木部の量は年々多くなっていく。 木が大きくなると呼吸に必要な養分も増え、成熟木ではそれが光合成で出来た養分の2/3を消費する。 所得(養分)は固定されいるのに支出(呼吸と新しい木部)は増え続ける。 樹木はその対策として当分は年輪幅を縮めていくことになるが、これにもおのずと限界がある。 何かを犠牲にしなければならない。 その対象となるのは普通、最大のストレスを受けている先端部の枝条である。 死んだ枝がシカの角のように樹冠の先から突き出ている光景がその結果である。 枝がなくなれば葉がすくなくなり、新しい木部も形成されない。 終焉に向けての旋回が始まったのである。 ただし、多くの樹木はこのプロセスを遅くすることができる。 不定芽のある樹木は幹から新しい枝を伸ばし、先端部でなくした分を十分補うほどの葉をつける。 しかもその枝は細いのであまり木部を必要としない。 これらの樹木は、上部の幹と太い枝の維持に費用をかけないで葉面積を維持してきたのである。

不定芽の寿命はあまり長くない。 オーク(ミズナラやコナラの仲間)は100年、セイヨウシデやブナは60年くらいで、カンバ類やヤナギ類はさらに短い。 しかし、オークやヨーロッパグリ(特に大きなこぶのあるもの)のように、不定芽のたくさん出す樹木は新しい枝を次々と供給し、何世紀にもわたって死を逃れることができる。 昔から、「オークは成長するのに300年、成長を止めて300年、死ぬまで300年といわれてきた。 オークの頂上の枝が枯れ始めるのは、人間でいえば中年になって少し髪の毛が薄くなった年代に相当するのだろう。 とはいえトネリコ類(ヤチダモやアオダモの仲間)やブナなどはこうした「費用削減」があまり得意でないため、衰退が急速に進んで、比較的若くして死んでしまう。

樹木の食糧の収支は備蓄のあり方によっても影響される。 食糧は辺材の生きている細胞に蓄えられる。 樹木が大きくなり、食糧生産が赤字(光合成で合成された養分より呼吸によって消費される量の方が多くなる)になってくると、備蓄用食糧のゆとりが少なくなる。 それと同時に、新しい木部が成長しない(辺材から心材に変化)から食糧の貯蔵室も少なくなる。。 さらに腐れや感染部分が蓄積すると、患部を封印すべく形成層にバリアーゾーンが敷かれ、貯蔵能力はさらに失われる。 樹木の生きている部分は壁に囲まれますます薄くなり樹皮の下に押し込まれるからだ。 呼吸もいくらかは減少するが十分ではない。 予備のエネルギー生産と備蓄が細るにつれ、木は弱っていく。 また、損傷部と新しい木部の間にバリアーができにくくなる。 おまけに新しい木部が狭くなることから、菌による腐れが簡単に樹皮に到達する。 樹木のこの部分は死ぬだろう。  新しい不定芽を出して寿命を延ばすこともできるが、大きな老木からは新しいシュートは出にくい。 これはおそらく不定芽の蓄えが尽きてきているのと、厚い樹皮の下では芽が動けなくなるからであろう。 あるいは新しい枝から根の間が病気になり、枝は枯れてしまう。 こうなると疲弊した老木は粛々と退出するしかない。

少々長くなったので、この続きは次回に回します。 南沢川沿いのクリの衰弱から枯死を、ピーター・トーマスが言っている「樹木の寿命」を踏まえて考えてみたいと思います。

 

 

クリ  冬芽

  
2015.2.26                                               2015.11.21

冬芽は、二列互生し、やや開出する。 側芽は卵形ないし広卵形で、やや先がとがり、やや扁平し、長さ3~4mmある。
芽鱗は帯赤褐色ないし赤栗色をし、ほぼ無毛で、4~6枚が覆瓦状に重なる。 仮頂芽は側芽よりやや大きい。(落葉広葉図譜)

写真でも分かるとおり、枝先の仮頂芽は側芽より明らかに大きく、側芽も含めて、クリの冬芽はふっくらと丸い。
アカナラ、コナラ、ミズナラなどクリと同じブナ科の樹種は、冬の間も葉(枯葉)をつけたままの樹をよく見かけます。

<余談 その1>
クリ材は 科学的にはタンニンの含入量が多く、耐久性や保存性が大変高く、かつ耐湿性も大きいため、現在の鉄道の枕木はコンクリート製ですが、ひと昔前まではクリ材が使われていました。
2018.3.21
写真は、エドウィン・ダン記念館の周りに設置されている木柵です。 この材が確かクリのはずです。 私の記憶では、昭和の末ころには現在の姿をしていたので、30年以上は持っているのでしょう。

<余談 その2>
クリは他の果樹に比べ、土質への要求度が少なく、寒地や暖地のいずれにも生育し、山の傾斜地や他の果樹に不向きな地でも問題なく、管理がしやすい。 専門的な技術も必要でなく、クリタマバチを除いて病害虫は少なく、食用となる堅果を生ずるので、古来より栽培されており、縄文時代の遺跡からはクリ材が大変多く出土している。 元々野生種が栽培されて大きい果実を得るようになったのであるが、野生種をシバグリと呼び、栽培種のうち特に大きい果実を産するものは古来よりタンバグリとして知られる。(日本有用樹木誌)

札幌市内にも、北海道の開拓が始まる以前から自生していると思われるような大きなクリの樹が存在しますが、名前を「シバグリ」と表記しているクリがあります。 それは、豊平区平岸、相馬神社の境内にあります。 → 相馬神社のシバグリ

 

 

クリ 冬芽

2015.11.21
冬芽は二列互生(枝がジグザグになる)し、やや開出する。 側芽は卵形ないし広卵形で、先がやや尖り、やや扁平し、長さ3~4mmある。 芽鱗は帯赤黒色ないし赤栗色をし、ほぼ無毛で、仮頂芽は側芽よりやや大きい。 枝には、クリタマバチの寄生によるゴール(枝球状に膨らむ:虫えい)がしばしば見られる。(落葉広葉樹図譜)

冬芽はおむすび形で、クリの実に似る。 正面から見える芽鱗は2枚。 葉痕は半円形。 野生品の枝先は細いが、栽培品の枝は太い。 冬芽がつく部分に球状の虫こぶがつくことも多い(冬芽ハンドブック)

2015.2.26