シンジュ(ニワウルシ)  樹皮・樹肌

   
幹径:13cm        幹径:20cm       幹径:30cm

ベージュ色というか白っぽい?灰色の樹肌に縦の裂け目が入って、樹皮はジグザクの縞模様のように見えます。

  
左の写真は、中央区の南4条線、薄野(ススキノ)から石山通にぶつかる間に植わっているシンジュ。 樹高が20m近く、幹径は1m前後ある大きな街路樹が並んでいます。
地際から高さ約1.5mで樹皮の模様が変化しています。 上の方は比較的平滑ですが、地際の方は裂け目が少し深く、樹肌が荒々しくなっています。

右の写真は、豊平公園内にあるシンジュ。 樹肌は黒光りしていますが、これは雨に濡れたためです。 このような模様ができる樹肌を持つ樹をたまに見かけるのですが、それは必ずシンジュ(ニワウルシ)なのです。 この面白い模様は、金網のようにメッシュ状に筋が入り、その一つ一つがこんもりとひし型状に膨らんでいます。 その模様のできる位置は地際近くから高さ4〜5mまでの太い主幹の部分です。

どうしてこのような模様ができるのでしょうか?
日本植物生理学会「みんなの広場」には、
「樹木には、形成層を挟んで内側に木部、外側に師部がありますが、樹種によってそれらの成長する度合いが違うので、それが樹皮・樹肌のパターンを決める1つの大きな要因であるという研究発表があります」 と記載されています。

 

<余談>
この樹の和名はニワウルシで、別名がシンジュです。 私の住んでいる札幌では、シンジュの方が通りが良く一般的です。 ニワウルシというと、「かぶれる」の代名詞、ウルシの悪いイメージが思い浮かびますが、シンジュはそのような悪いイメージもなく、言葉の響きもいいので、個人的にもこちらの名前を好んで使っています。

シンジュ=神樹ですが、どうしてこのような立派な名前がついたのでしょうか? ハルニレのように太い枝が縦横に伸びて、その樹姿にある種荘厳さみたいもを、また、イチイ(オンコ)のように何百年も経た樹姿に重厚さを感じるわけでもありません。   夏の終り頃になると、樹上に果実(翼果)をつけるのですが、その色が濃赤に朱色を混ぜたような色のものがあり、樹冠にこの色を見ると、この樹は日本の樹じゃない、何か場違いのような、異様さ、不自然さを感じます。 この樹にはこのようなイメージを持っているので、シンジュはいいのですが、神樹ではない、と思っていました。 調べてみると、朝日百科 “ 世界の植物 ” に以下の説明がありました。

中国に樗(シユー)という木がある。 臭椿という別名が示すように、葉をもむと臭気を放ち、また大木になるが、木材はとくにすぐれた用途もないことから、古来いやしい不用な木、つまり、悪木のひとつとされてきた。 この樗という字が日本に伝わったとき、実物を知らないまま、たとえば、『平家物語』 では樗(あふち)、つまり、いまのセンダン(センダン科)に当てはめた。 どちらも羽状複葉という点では似ている。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところで、悪木の樗がどのようにして神樹になったのか? インドネシアのモルッカ諸島原産で、同じ属のアイランツス・モルッカナAiranthus moluccana CD. が、現地名でアイラントとよばれ、それが天にも届く大木、つまり天の木という意味であったため、この仲間がヨーロッパに伝えられたとき、ツリー・オブ・ヘブン(天の木:tree of heaven) と英訳された。 1752年ごろ、遅れてイギリスに入った中国の樗が、しだいに庭園樹、街路樹として広まって、ドイツに入ったとき、さらにゲッタバウム(神の木)と転訳された。 明治の初め、オーストリアで育てた苗が導入されて、はじめて樗の実物が日本に伝えられたわけだが、そのドイツ名を訳して神樹と名付けられたのである。

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シンジュ(ニワウルシ) 冬芽

シンジュ : 冬芽
シンジュ2012.11.24
冬芽は、3/8らせん生で、扁平な半球形をし、小さく、長さ3~6mあり、下半部は葉痕に囲まれる。芽鱗は2~3枚あり、紫褐色ないし赤褐色をし、無毛である。 枝痕は明らかで、大きい。 仮頂芽は上位の側芽とほぼ同じ大きさで、しばしば二股分枝の枝ぶりとなる。下位の側芽は小さいか、欠ける。
シンジュ2011.3.21

シンジュ2011.5.30
開葉時期は、5月下旬。 他の樹種に比べても遅い。

 

シンジュ(その5):赤い種子

1-007 シンジュ2014.9.6
場所:環状通沿い南25条付近?
この時期(9月上旬)に、藻岩山の裾野で大きな樹の樹冠いっぱいに赤い花が咲いている? 何の花だろう? 花でないとすると、葉?、何なんだろう? まだ紅葉の時期には早いし・・・・・・。
これはシンジュの種子です。初めて出くわすと、写真ではそれほどでもないのですが、“きれい”というより、その赤さはちょっと異様な感じを受けます。 藻岩山の山肌にはなじまないというか、浮いている感じがします。
1-008 シンジュ2014.9.6
この写真は、赤いシンジュの右斜め下にあるシンジュの種子です。
シンジュは中国原産で、日本には明治初期に移入されています。札幌にもそれと同じ頃に来ているようです。そのため、シンジュは、札幌の中心部(中央区)でよく見かけます。
シンジュの種子の色は白っぽいものからこのような赤いものまでありますが、淡いグリーン(黄緑)のものが割合的に多いので、たまにこの手の赤いシンジュに出会うと、一種ドキッとするというか、「なぜこのような異様な赤さのものが付いている樹があるのか?」というような、この樹がそこにあることを拒絶するような、ある種、受け入れがたい感覚を覚えます。
この樹は繁殖力が旺盛で少しの裸地があると、そこから発芽して、しかも成長が早いので、2~3年?もすると2~3mくらいにはなるのでしょうか? 人間が意図的に植えたのではなく、自然に大きくなった(野生化?)樹が街中でも見られます。
この赤いシンジュの樹もその類です。

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シンジュ(その4)

札幌はここ4~5日で数十センチの降雪があり、積雪深は80cmになっています。札幌の積雪が最も深くなるのが3月中旬です。それまでは雪が降るごとに積もっていきます。
晴れた日の雪景色は一種透明感のある美しさで、それは人々の気持ちを一時的に晴れやかにしてくれますが、それ以外の多くの日々は、空は日本海側特有の低く立ち込める雲に覆われ、雪が降るたびに雪はね(雪かき)に追われ、そして、1月、2月と積雪が高くなるにつれて、その雪はねのつらさも増していきます。これらのことは、毎年の当然わかりきったことで仕方がないこと(受け入れざる得ないこと)なんですが、それでもそんなことを考えると気分が自然と滅入ってくるのです。
余計な話をしてしまいました。今回はニワウルシ(シンジュ)です。
1-021 シンジュ2012.3.6
今頃の公園や街路樹で、このような花のようで花でない、枯葉のようで枯葉でないものをつけている樹を見つけたら、それはシンジュ(ニワウルシ)と思ってもよさそうです。
①冬芽
1-096 シンジュ(赤字)2012.5.6
・冬芽 上の写真ファイルの冬芽は、5月上旬に撮っていますので、大きく膨らんでいます。下のが冬芽です。形は山形の半球形で、触るとこりっと硬いです。キハダの冬芽に似ています。
・葉痕 下の写真ファイルは、落葉直後に撮っているので、表面の色が白っぽいです。形は卵形で冬芽の部分が凹んでいます。
・皮目 皮目は斑点状で多数。
・維管束痕 維管束痕が明瞭にわかります。エジプトの古代遺跡で発見された遺物の象形文字のようですね。
シンジュの枝先は、赤っぽくてこのように先細りになり、新葉を展開する位置は枝先から少し(10cm?)下がったところのようです。
1-023 シンジュ(赤字)2012.11.24
1-095 ヌルデ2012.5.27
5月下旬、新芽の展葉です。展葉時期は最も遅い部類に入ります。
1-048 シンジュ 真駒内川2012.6.2
少し赤味を帯びた新葉が太陽に映えて美しさを増しています。
②名前の由来
・ニワウルシは、ウルシに似た、庭植えにできる樹というころから来ているようです。
・シンジュは神樹で、英名の tree of heaven の直訳です。
牧野新日本植物図鑑では、
神樹は、tree of heaven という西洋の俗名を直訳したもので、この樹に対してわが国で最初につけた名である。庭は、ウルシに似た葉の木で庭園に見かけるからである。
③Data
科名 ニガキ科
属名 ニワウルシ属
学名 Ailanthus altissima 属名Ailanthus はMolucca島(どこだかわからない)の方言で、天の樹を意味
花期 6月下旬~7月中旬

④余談
9月12日のブログで「都市の中で野生化するシンジュ」の話をしましたが、最もわかりやすい事例を見つけました。
1-011 シンジュ 南15西11?2012.10.27
これは、南15条前後?西11丁目、国道230号線(石山通)に面するところにある、見たところ普通の住宅のようです。そんなに古い建物ではないのですが、何かの事情でここ数年?空家のようです。玄関の周りにむぞうさにシンジュが数本生えています。これらのシンジュは植えられたものではなく、自然に生えてきたものでしょう。
樹齢は6~7年?なのでしょうか?おそらくそれくらいと思います。あと5年もするとこの倍くらいの大きさになるのではないでしょうか?
1-025 シンジュ2012.3.6
シンジュは、どの樹木の種子よりもこのような環境(都市の中にあるちょっとした裸地)で、発芽して成長する能力は抜群です。
この住宅の裏にはシンジュの樹が大きく枝を広げています。

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都市の中で野生化するシンジュ

1-001 シンジュ 北1条駐車場横2012.8.10
場所は札幌の中心部です。駐車場とブロック塀の間に生えているシンジュ(ニワウルシ)です。ブロック塀と道路のちょっとした隙間からも芽生えています。
1-002 シンジュ 北1条駐車場横2012.8.10
1- 053 シンジュ 国道362012.8.10
民家とブロック塀の隙間のちょっとしたスペースに種が落ち、4~5年でこれぐらい大きくなるようです。このような光景はよく見かけます。シンジュの成長の早さはニセアカシアと同じように早いです。 もしかしてそれ以上かもしれません。
1-019 シンジュ2012.7.29
豊平川の右岸道路で、遮蔽板とガードレールの間から顔を出しているシンジュです。どうしてこんなところから生えてくるのと思います。この道路沿いには、このようなシンジュはこれだけではなく、イタドリと競合しているシンジュがまだまだあります。
1-005 シンジュ 北大農場2012.8.14
北大の農場に生えているシンジュです。新川通から撮っています。この大きなシンジュは、人間が植えたものではなく、どこからともなく飛んできた種子が発芽して大きくなったものではないでしょうか。
1-036 シンジュ2012.7.14
道路の植樹帯に生えているシンジュです。街路樹が枯れて取り除かれた後に何も植えられなかったために裸地となり、そこに種が落ち、芽を出して大きくなりました。これで2年目でしょうか。放っておくと直ぐに大きくなり、意図しない街路樹になってしまいます。
1-033 シンジュ 2年生2012.8.8
郊外の住宅地(藤野)に生えているシンジュです。この写真では、所有者が宅地の隅に植えたように見えますが、樹高が25m、目通幹径が1m以上なる樹を、建屋と2mも離れていないところには植えるとは思えません。この若いシンジュ(2年生?)は、飛んできたのか、持ち込んだ土に入っていたのか、何らかの理由で種子がここに落ちて芽生えたのでしょう。
1-075 シンジュ 西20丁目線
2011.10.9 西20丁目線の街路樹シンジュ(中央区北4条西20丁目)
シンジュは明治初めに日本に移入されて、札幌でもそれと同じ年代に入ってきているようで、豊平区の経王寺のシンジュはその頃植えられたと言われています(北海道の樹木:鮫島惇一郎著)。戦後、札幌市の道路整備が進む中で、シンジュは街路樹としても植えられ、中央区の西20丁目線にはシンジュの立派な街路樹があり、南4条通(ススキの~石山通)にも、嘗ては目通直径が1mを超える街路樹が道路沿いに並んでいました。平成16年の18号台風以降枯れる樹が多くなり、現在では、それら巨大な街路樹が少なくなって、しかも樹形も乱れて、昔の面影はすっかりなくなっています。
都市の中には、ニセアカシア、プラタナス、イチョウ、シダレヤナギ、ナナカマド、ハルニレ、オオバボダイジュ、シラカバなど多くの樹木が公園や街路樹で、いたるところで見ることができます。これらの樹木もたくさんの種子を成らしますが、上記写真の場所に自然に芽生えているのをあまり見かけません。都市の中で、ちょっとした隙間の裸地を見つけて芽を出し、勢いよく成長する能力は、シンジュには全くかなわないようです。
*郊外では、道路の法面や放棄地にシラカバやニセアカシアが自然に繁茂しているところがいたるところにある。
シンジュの野生化は、シンジュが中国原産の外来種ということと、今までの経緯で街の中心部に植えられていることもあって、主に街の中で進行しています。これらの地域では、人間の生活の場に近いところで成長していますので、ある程度コントロールがききますが、これが、郊外に拡がるようになれば、ニセアカシアと同じような問題を起こす可能性がありそうです。ニセアカシアは、元々治山事業で用いられ、また養蜂業者にとっては重要な資源であり、その良否が問題となっていますが、シンジュの場合、成長が早いだけで、8月にできる種子、あの黒味を帯びた真っ赤な種子の塊が樹冠全体を覆っているのを見ると、何か不気味な感じがします。
1-012 シンジュ 種子 南こども公園
2011.10.13 南こども公園(南区) 真っ赤に実った種子の写真がなかったので、それらしき雰囲気が出ている写真を載せています。この時期に街中で、樹上に異様に赤いものを見つけたら 、それはシンジュの種子です。
*シンジュの種子の色は、赤や黄緑と個体によって違いがあります。
一つの例として、南区役所の近くを流れている真駒内川の土手にシンジュがまとまって生えています。現在は3~5mの大きさですが、数年もするとその倍の大きさになりそうです。そして、若木でありながらちゃんと種子を付けています。シンジュの繁殖能力の高さと成長の早さを考えると、今後、この周辺のシンジュ化が懸念されます。

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