洋ナシ(ブランディ) 追熟と予冷

我家に苗木を植えて25年くらい経つ洋ナシがあります。 品種はブランディです。
植栽後4~5年経った頃に主幹が折れたことと、場所を陽当たりの良い場所に移し替えたことで元の状態に戻るまで数年かかり、その後収穫できるようになったのは植栽後10年以上経ってからです。
洋ナシは樹上では熟さず収穫後しばらく置いて追儒させてから食しますが、以前は収穫したものをガレージに置いていました。 1週間もすると追熟が進んできたことを示す洋ナシの果皮が黄色くなってきます。しかし、それと同時に洋ナシの表面に茶褐色の円形状の模様出てくる、腐りが出始めるのです。 2〜3日後にはそれが全体に広がって全く食べられる状態でなくなっているのです。 30個程収穫してもまともに食べられるのは1個か2個、年によっては全く食べられない年もある状況でした。
2016.9.23
そんな年ががしばらく続いたので、これなら伐採して他の果樹を植えようかと考えていたのですが、洋ナシの追熟の仕方を最も確実で正確に教えてくれるのは生産者と思い、ダメ元と思いながらも果樹の産地である余市農協さんにメールしてみました。そうすると、丁寧に以下のような回答を頂きました。

お問合せありがとうございます。

 ブランデーワインの件ですが、収穫が遅れると、追熟しない、内部褐変の発生が心配、早すぎると果実が小さい、糖度が低いなどの品質や収量に大きく影響します。

満開後の日数や種子の着色などを確認しながら、適期に収穫をすることが大切です。余市町では満開がだいたい5/15〜5/20くらいです。収穫初めがだいたい満開から120日後となっており(9/15日頃)、果実の中の種を切って、黒く着色が始まり始めると収穫適期となってきますので、目安にしてみてください。

種を切って真っ黒になりすぎていると、収穫遅れとなりますので、追熟しない等の影響が出る可能性がありますので注意が必要です。

収穫後は速やかに予冷が重要で、収穫した果実は直後に呼吸量が急速に多くなり老化が始まりますので、野積みなどは避ける事が必要です。

速やかに冷蔵庫や冷暗所に保管し、熟度のそろいが良い環境で追熟させる事が大切です。

(冷蔵庫で1週間〜10日程予冷し、その後暑すぎない風通しの良い所(常温)で保管し1週間程度たてば食べ頃になるのではないかと思います。(個体差はあります。)

それで、余市農協さんの説明通りに、9月中旬にまず種の着色を確認しました。 2019..9.15
我家の洋ナシも例年の満開時期は余市町とほとんど同じ5月中旬~下旬なので、9月15日にタネの色を確認したところ黒くなっていました。

それで、その日に収穫しマジックで洋ナシに 収穫日を記載し、ビニール袋に入れて冷蔵庫に保管しました。
8日後の9月23日に冷蔵庫から取り出して室内(常温)に置いておきました。 早いものは5日程で果実の表面が黄色くなってきて、手で持つと表面が少し柔らかい感じ、手触りになっているものも出てきますが、1週間~10日後から黄色くなったものを順次食べていきました。 しかし、10個の内1~2個くらいの割合で、2週間以上置いても黄色くならないで、それを食すると洋ナシ特有のジューシーでまろやかな食感がなく、水気のないぼそぼそした感じの美味しくないものや、黄色く着色したと同時に腐ってくるものもありました。 それでも10個の内8個は美味しく食べられました。
洋ナシを美味しく食べるには、適期に収穫し、老化を防ぐために収穫後すぐの冷蔵庫での保管(予冷)が大事なようです。
試しに、本州の親戚に冷蔵庫で8日間予冷したものを送ったのですが、美味しく食べられたのは10個の内6個ほどで、果実の表面が黄色くなるときに出る褐色の模倣が出来るものも出てきたようです。 札幌に比べ10月に入っても暑い?本州では、洋ナシの常温での追熟に影響を与え、腐りがでやすいのでしょう。

<余談>
 
2015.9.115                                        2013.9.17

2枚の写真は、シンクイムシの入った洋ナシ。
左の写真は、シンクイムシが果肉を食害して果肉下部が黒くなっているものです。黒く見えるのはシンクイムシが出した糞。そこを食害したようです。 また、果実の上部右側から果実中心の種の部分に向かって筋が見えます。 これは、果実の表面で卵から孵ったシンクイムシの幼虫がそこから侵入したのでしょうか?、それとも、そこから脱出しするためにできた痕跡なのでしょうか?(写真を拡大すると道筋が分かります)
左の写真は、シンクイムシの入った果実の果肉が腐って表面が茶褐色になったものです。白い粒々状のものはカビです。

 

 

 

洋ナシ(ブランディ) 追熟

幸水などの和ナシは収穫して直ぐに食べることができますが、洋ナシは収穫後ある一定期間追熟が必要です。 追熟の必要な野菜や果物は意外と多く、サツマイモは収穫後1ヵ月以上、カボチャも2週間~1ヵ月くらい必要です。 両者とも収穫時には果肉はでんぷん質なのですが、それが時間の経過とともに糖分に変化して甘味を増すのだそうです。
追熟が必要な果実には、バナナ、メロン、モモなどがあります。 しかし、それらは樹上で完熟するのですが、輸送中の傷みなどを考慮して熟する前の少し硬めの果実を収穫しているのです。 ところが、洋ナシは樹上では完熟しないのです。 あのジューシーで滑らか、とろっとした舌触りを味わうためには、追熟という工程を必携とします。

ところが、これがなかなか上手にいかなかったのです。
我家には植えて20年以上経つ洋ナシ(品種:ブランディ)があります。 毎年9月上旬〜中旬に30~40個収穫しています。 それをガレージに保管(追熟)しているのですが、10日程するとそれらの肌が黄色味を帯び始め、そろそろ食べごろのものが出始めるのです。 ところがちょうどその頃からナシの肌の一部に茶褐色の部分が出来てきて、包丁で割ると果実の中が黒味を帯びて痛み始めているのです。 食べられないのです。 あのまろやかでとろっとした食感の洋ナシは、収穫した果実、30~40個の内1個あるかなしかだったのです。 2013.9.14
そんなことを10年以上続けていたので、ここ2~3年、洋ナシは追熟が難しいのでそれを伐採しようと思い始めていました。 しかし、もったいないという気持ちもあり、何か良い方法がないかと悩んでいいました。 とりあえず、誰かに聞いてみようと思うのですが、誰に聞いていいのか分からない状態がしばらく続いていていました。 一番良いのは、安定的に洋ナシを出荷している生産者に聞くのが良いだろうということを思いつき、JA余市のサイトにメールをしてみました。 そうしたら、丁寧な回答を頂きました。 それが以下のものです。

お問合せありがとうございます。
ブランデーワインの件ですが、収穫が遅れると、追熟しない、内部褐変の発生が心配、早すぎると果実が小さい、糖度が低いなどの品質や収量に大きく影響します。
満開後日数や種子の着色などを確認しながら、適期に収穫をすることが大切です。
余市町では満開がだいたい5/15〜5/20くらいです。
収穫初めがだいたい満開から120日後となっており(9/15日頃)、果実の中の種を切って、黒く着色が始まり始めると収穫適期となってきますので、目安にしてみてください。
種を切って真っ黒になりすぎていると、収穫遅れとなりますので、追熟しない等の影響が出る可能性がありますので注意が必要です。

収穫後は速やかに予冷が重要で、収穫した果実は直後に呼吸量が急速に多くなり老化が始まりますので、野積みなどは避ける事が必要です。
速やかに冷蔵庫や冷暗所に保管し、熟度のそろいが良い環境で追熟させる事が大切です。
(冷蔵庫で1週間〜10日程予冷し、その後暑すぎない風通しの良い所(常温)で保管し1週間程度たてば食べ頃になるのではないかと思います。(個体差はあります。)

で、JA余市の方の説明通りやってみました。

2019.9.5
・9月5日(6個)、10日(12個)、18日(3個)の3回に分けて収穫。
・それぞれを収穫する前に、試し切りしてタネの色づき具合を確認。 2019.9.10
・タネの皮(表面)は黒くなっているが、その中は白く、収穫遅れではなかった。
・それらをビニール袋に入れて冷蔵庫にそれぞれ10日間ほど保管(予冷)。
・冷蔵庫での保管中に内部褐変しているものが、9月5日収穫で2個、9月10日収穫で4個。
・冷蔵庫から取り出して室内で保管(追熟)。
・1週間程すると果実の肌が黄色味を帯び、匂いを嗅ぐと洋ナシ特有の香りを放つものが出てくる。
・それらを順に食す。
・実際に食することができた数は12個(腐敗果が6個、お裾分け3個)で、その内8個がジューシーで甘みがあり、あのとろっとした食感(舌ざわり)の美味しい洋ナシ(ブランディワイン)。 予冷の重要性を実感。
・残りは少し硬めで舌にざらつく感じというか、要は美味しくない、用なし。

ということで、12個中8個が美味しいもので、その確率は7割近かったので 樹は伐採せずに栽培を続けることにしました。 JA余市さんには感謝です。

<蛇足>
収穫時に樹上には収穫できそうな洋ナシが35個くらいはあったのですが、実際に収穫できたのは20数個に止まりました。 その理由は、この時期になれば虫も来ないだろうと思って徐袋を8月25日に行ったのです(農薬をかけなかった)。 そうするとその後腐るものや落下するものが出てきました。 シンクイムシの幼虫に侵入されたり、スズメバチに食害されたりしたのです。


2019.9.18                  2015.9.15
褐変している中心部に小さな穴があり、         シンクイムシが果実を食害
そこから果汁が滲出   おそらく、シンクキの入った箇所

例年はこれほどでもないのですが、今夏は特に暑かったので、虫の活動も盛んで、それが影響したのでしょう。 来年からは徐袋せずに収穫し追熟しようと思っています。
その理由は2つ。 一つは、洋ナシは徐袋後の太陽に充てることによる甘味を増す効果より、追熟方法と追熟適期の確認の方が重要であること、もう一つは、徐袋後に樹上の果実にスズメバチが寄ってきたり、果実が落下して腐敗するのでその処分がまた面倒(それにもスズメバチが寄ってくる)なのです。

 

 

 

ナシ  冬芽

   2017.4.7                                                            2017.4.7
洋ナシ 品種:ブランディの冬芽(花芽)。
写真左は、太枝に短果枝が連続で並ぶ。ここ3年くらい着蕾する。

短果枝: 短果枝とは実のつく短い枝のこと。 長さによって短果枝、中果枝、長果枝と分けられるが、短果枝は10cm以下の枝を指すことが多い。 短果枝は花芽がつきやすいので、果樹剪定ではこれを増やすことがポイントとなる。 リンゴやナシでは短果枝に数年(3~4年?)続けて花芽をつける。


2016.3.29

和ナシ、幸水の葉芽。 花芽と違い、小さくて細い。

冬芽(花芽)は卵形ないし長卵形で、長さ5~12mmあり、下位の側芽は小さく、頂芽はやや大きい。 芽鱗は帯赤暗褐色をし、内側に軟毛が生え、7~10枚が重なる。(落葉広葉図譜)

 

 

ナシ(幸水) ヤチネズミ

3月20日頃から好天とこの時期としては暖かい日が続いて、庭に積もっていた雪も一気に解けて、一部土が見え出しました。 それで、土の感触を味わおうと庭に出てみると、
2018.3.30
ナシ(幸水)の幹が地際から高さ40cm弱まで、かじり取られていました。しかも、中間部分は全周きれいにかじり取られています。 ネズミにやられたようです。
このナシは4年前の春に植えています。 昨年は小さいながらも3個収穫、味はまあまあでした。 今年も4~5個花芽がついているので、袋かけをして農薬防除もしっかりして美味しいものを収穫しようと楽しみにしていたのですが、残念です。
2018.3.30
この憎き加害者は?と「樹木の病害・虫害・獣害」で調べてみると、
エゾヤチネズミでは、切断面に細かい切歯痕(幅2mm以下)がみられる。 剥皮された面に多方面から入り乱れた細かい切歯痕がみられ、かじり落された外樹皮が被害木の周りに落ちている。
とあり、被害木の切断面にできた歯痕のつき方とかじり落された外樹皮が根元に散らばっていることから、これは正しくヤチネズミの仕業だと確信しました。

<余談>
この被害を受けたナシ(幸水)の前には、同じ場所にプラムを2本植えていました。 これらは被害を受けなかったのです。 また、我が家には、リンゴ、プルーン、洋ナシがあるのですが、これらも被害を全く受けていません。
おそらく、ヤチネズミの生息域にこのナシがあったから被害を受けたのでしょうが、それでもこれを見ると、ナシ(幸水)は果実だけでなく、樹皮も甘くておいしいのかな? と思ってしまいます。

 

 

洋ナシ(ブランディ)  シンクイムシ

2017.9.25
洋ナシ(ブランディ)の食べごろは、収穫して室内(常温)に置いて1週間~2週間くらい追熟してからです。 食べごろになると、果実は収穫した直後の緑色から少し黄色味を帯びてきて、洋ナシ特有の甘い香りがします。 これが食べごろのサインです。

写真の洋ナシ(ブランディ)は、9月10日に収穫したものです。 9月23日に見たときに果実の表面が少し黒みがかっている部分があるな?と思いつつ、そのままにしておいたのです。 二日後、捨てようと手にとって見ると、ウジムシのような幼虫が果実の表面を這っているのです。 シンクイムシのようです。 大きさは1cmほどで、今夏収穫前に落果したプルーンの中にいたシンクイムシとそっくりで、おそらく、同一種なのでしょう。

この洋ナシは6月下旬に袋かけをしています。 ので、虫は入らないはずなのですが・・・・・・。5~6個、袋をかけ忘れたので、その1個かも知れません。

この時期のシンクイムシの幼虫は、果実から出ると、地面に降り、地中の浅いところで越冬し、そして、来春、幼虫から蛹になり羽化するそうです。

→ すももの害虫スモモヒメシンクイの発生形態と被害の特徴

〇洋ナシ(ブランディ)の栽培履歴
・5月14日  開花
・5月22日  農薬散布
・5月31日~ 摘果
・6月 2日  農薬散布
・6月27日  農薬散布
・6月27日  袋かけ
・7月23日  農薬散布
・8月31日  除袋
・9月 2日  農薬散布(オウトウナメクジハバチ)
※通常の年はこの時期に農薬撒布はしない。
・9月10日  1回目収穫
・9月17日  2回目収穫