ニセアカシア  台風と自転車のパンク

自転車のペダルが重いというか何か普段と違うので、タイヤに触ってみると柔らかく簡単に凹みます。 パンクのようです。 それで行きつけのサイクルショップに持っていったのですが、先客がいてちょうど修理が終わって代金を払っているところでした。

「パンクしたようなんです」
「ちょっと見てみますか」
と言ってタイヤを外し、中からチューブを取り出しながら、
「先週の連休(15~17日)は大忙しでした。 この前の台風が原因らしいのです。 先ほどのお客さんも、タイヤがパンクしたので自分で直そうとしたそうなのですが、穴が1つではなく、いくつもあって修理をあきらめて、チューブの交換に来たのです。」と真駒内上町にある自転車屋さんが話してくれました。

自転車のパンクは虫ゴムなどでも起こりますが、今回の自転車屋さんの話では、ニセアカシアのトゲに原因があるようです。
2012.2.5
台風の翌日に地震が起こったので、台風被害についてはテレビでほとんど報道されませんでしたが、札幌市内の街路樹や公園樹は相当な被害を受けました。 平成16年の最大瞬間風速50mを記録した18号台風以来の大きな被害をもたらしました。

南区真駒内は公園や自然林が多くニセアカシアの大木も多数存在します。 また、郊外の道路や河川の傍には野良生えのニセカシアを多数見かけます。 それらの樹木が今回の強風で折れて幹枝が道路に散乱したのでしょう。 それらは比較的早く道路から取り除かれるのですが、ニセアカシアのトゲのような細かなものまでは取り切れないのです。

ニセアカシアのトゲは以前から自転車のパンクの原因になるといわれ、街路樹として欠点の一つではあるのです。 しかし、それだけの理由で大きく育ったニセカシアを取り換えることもできないので、札幌市内の道路・公園にはニセアカシアは多く存在します。

私自身、サイクリングが大好きなので、1~2年に1回くらいパンクの被害に遭っていますが、ニセアカシアのトゲが原因でパンクしたという経験は思い当たらないというか、パンクした場所やその周辺にはニセアカシアが生えてなかっために、ニセアカシアがパンクの原因になるということはあまり実感としてなかったのです。

しかし、今回のパンクはおそらくニセアカシアではないかと思っています。 ニセアカシアの生えている道路脇や真駒内のサイクリングロードを先ほど通ってきたのです。 そんなことで、自転車屋さんの話を聞いてからは、ここしばらくニセアカシアが街路樹として植えられている道路や、道路淵に大きなニセアカシアがある公園へはなるべく近づかないように自転車を走らせています。

 

 

ハナアカシア  ローズのニセアカシア

「今から30年以上前でしょうか。 街路樹のニセアカシアは、トゲがある、台風などの強風で倒れやすい、成長が早く、剪定を年に2回しなければならない などの理由で、街路樹を管理する側にとっては、それほどありがたい存在ではありませんでした。 そんな背景も合ってか、当時、それに代わるものとして、ピンクの花の咲くニセアカシアが街路樹に植えられました。 それは、樹高約3~4m、幹径10cmで、丸太状のニセアカシアの先に4ヶ所?ほどピンクの花の咲くニセアカシアを接木したものでした。 パラソルアカシアと呼ばれていたように記憶しています。 6月上旬には、まん丸い樹冠にピンクの花がきれいに咲いていました。 しかし、数年もすると、樹形が乱れ花も咲かなくなり、その街路樹自体もなくなってしまいました。 その理由は、札幌は雪が多いので、接木した枝が成長するとそれだけ雪を被る部分が多くなり、その重みで接木部分から折れてしまったのです。

ハナアカシア
2015.6.12  道路の右手は石山緑地。 歩道の左手は急斜面
ピンク色の花のニセアカシアが地面を覆うように生えています。 ニセアカシアを伐採すると、その周りに根萌芽があちこちに出てくるのですが、このアカシアもニセアカシアと同じように地下茎で繋がっているようです。

ハナアカシア
2013.6.15
歩道左下崖地にもこのように、地下茎が伸びてきて萌芽しています。

ハナアカシア
2012.7.15
このニセアカシアの特徴は、茎や葉柄にびっしり赤褐色の毛が密生することです。

ハナアカシア
2013.6.16
石積擁壁の天端から垂れ下がるピンクのニセアカシア。 この使い方は洒落ていて、管理の行き届いたところに植えることが出来れば、なかなかのものになりそうです。

ハナエンジュ:Robinia.hispida(ロビニア ヒスピダ)
北アメリカ原産の低木で、高さ0.5~2.0m。樹形は伏生状で、地下をほふく枝が走り、周辺に新株を生ずる。 枝、葉柄、花序などに赤褐色毛を密生する。 花は大きく、淡紅色または淡紫紅色で、5~6月に開花する。 性質は強健で、排水のよい土壌と十分な日照を好む。増殖には挿し木を行い、また地下より生じた株を分ける。庭木として植栽される。 八重咲種もある。(園芸植物大辞典)
上3枚の写真の樹種は、園芸大辞典の記載のとおり、ハナエンジュのようです。
ハナアカシア2015.6.16  百合が原公園
樹高は約8m、幹径は20~25cmの立派なハナアカシアです。 このような高木を見たのは、写真の百合が原公園と滝野すずらん公園の2ヶ所です。 ハナエンジュは背が高くならずに地面を這う性質だと思っていたので、 この樹に近寄って見たとき、先ず接木の箇所を確認しました。 ところが、見当たらないのです。
調べてみると、「ニセアカシア (R.pseudoacasia:ロビニア プセウドアカシア) の根茎に接木され4~5mの木に作り変えられそれが出回っている」とウェブサイトに載っているのです。
「あぁ そうなんだ。 でも、台木はニセアカシアでも穂木はハナエンジュなのだから、その性質は残るというか、出てくるのでは? でも、作り方で高木にできるんだ」 と、疑問を持ちながら納得した次第です。

ハナアカシア2015.6.16
普段、白い花のニセアカシアしか見ていないので、ピンクのニセアカシアを見ると、一瞬ハッとします。     ハナアカシア
2015.6.16
近くで見ると、ニセアカシアの花房より大きいようで、豪華に見えます。

ニセアカシア 谷間に拡がる白い花

ニセアカシア2015.6.12
5月下旬に咲き始めたニセアカシアの花は満開を過ぎて、公園や街路樹などでは、花びらが地面を白く覆っているのを見かけます。 美しいという花ではないのですが、街中には高い樹が多いので、遠くからでも目立ちます。

ニセアカシア
2015.6.14
この写真は、南区豊滝、国道230号沿いから撮ったものです。国道から北側を撮っています。
写真中段左から右へ、山沿いに豊平川が流れています。 そして、写真全体に白っぽい樹林が見えます。 花が咲いたニセアカシアです。 写真手前から豊平川に注ぎ込む支流に沿って繁茂しているようです。
普段、この道路はよく通るのですが、このような景色、ニセアカシアの花が谷間を埋め尽くすように咲いているのを見るのは初めてのことです。
夏場にこの辺りを見ると何の変哲もない青々とした普通の樹林地帯に見えるのですが、このように眼下に遠くまで拡がるニセアカシアの花を見ると、
「えっえっえっ!!、こんなにニセアカシアが生えていたの?」
とある種驚きの気持ちで見てしまいました。 おそらく、豊平川に流れ込む支流の上流で治山事業が行われ、そこでニセアカシアが植えられて、それが大きく育った樹の種が流れたてきたものなのでしょう。
しかし、この樹林を国道縁からほとんど真横に見ているので、ニセアカシアの花が樹林全面を覆っているように見えますが、これを真上から見ると、ニセアカシアの密度はどれくらいなのか、全体の何割くらいをニセアカシアが占めているのか?、それほどでもないかもしれません。 それでも、この景色を見ると、ニセアカシアがもともとこの地域に自生している樹々を凌駕して蔓延ってしまったように見えてしまいます。

ニセアカシアは、北アメリカ原産で約100年以上前の明治初期に日本に移入されています。また、マメ科に属し、空気中の窒素を固定するバクテリア、窒素固定菌を根に持っており、自ら肥料を作ることができることや、成長が早いことから、街路樹・公園樹として、また密源として利用され、特に森林の保全、治山事業に多く利用されてきました。

しかし、ニセアカシアは在来植物を駆逐するという理由で、2002年に日本生態学会によって“日本の侵略的外来種ワースト100”に認定され、2006年には環境省によって“要注意外来生物” に指定されています。 これに呼応するかのように 全国各地の河川などでニセアカシアの除去を目的に伐採がなされています。

この豊平川で、河川の流れを阻害するということでニセアカシアを含めて樹木を整理する伐採は行われていますが、ニセアカシアの除去を目的に伐採が行われたという話は聞いたことがありません。 それでも、インターネットを見ると、札幌市中心部に街路樹としてニセアカシアを植えることについて、それの撤回を求める著名活動がウェブページに載っているので、札幌でもニセアカシアは在来生物を侵略・駆逐する悪しき樹木で、それらは取り除かなければならないという活動はあるようです。

ニセアカシア
2015.6.14 豊平川上流方向の山間

しかし、この写真で見るように、これらのニセアカシアを伐採除去することは、膨大は費用がかかることもありますが、物理的に不可能のようです。 その理由は、これらの樹木は、その上流に植えられたニセアカシアの種から育ったもので、これからもその樹がある限り、種子は供給され続けて、伐採しても伐採してもニセアカシアは育ち続けるからです。

ニセアカシアが生えているところは、耕されなくなった農地や道路整備に伴い既存樹木が伐採された法面など人間が土地を改変したところか、河川など土地が安定していないけれどもいつも開けて明るい土地のどちらかです。

ニセアカシアは北アメリカ原産ですが、そのアメリカで、原産地以外において耕作放棄地などに現れたニセアカシア林は、次第に在来の広葉樹に置き換わり、当初の現れた面積よりも縮小しているということを書物で読んだことがあります。

この事例からすると、豊平川の支流に治山事業で植えられたニセアカシアも、この地域に多く生えているイタヤカエデやオニグルミなどの既存樹木に次第に置き換わっていき、最後には、その下流にも種子が供給されなくなっていくだろうと思います。
蜜源などとして利用され人間の生活に密接に係わっているニセアカシア、人間が良しと思って植えたニセアカシアも移入されてから100年も過ぎると良い面ばかりだけではなく、悪い面も出てきてしまいました。 しかし、人間が一度その土地に植えてしまった以上 、この問題は、100年、200年、いやそれ以上の長いスパンで捉える必要があるように思います。

ニセアカシア 冬芽

ニセアカシア : 冬芽
冬芽は、仮頂芽型であり、ほぼ2/5らせん生で、しばしば予備芽を持ち、隆起した※1葉沈内に隠れる(隠芽)。
※1葉沈 : 葉柄の基部あるいは小葉の基部にある肥厚した部分。 葉の運動(就眠運動なそど)に関係する。 オジギソウなどによく発達する。(三省堂 大辞林)
ニセアカシア2012.2.5
ニセアカシアの芽は、葉沈内に隠れて見えない。

ニセアカシア 真駒内川緑地2012.5.14
ニセアカシアの芽だし

 

 

ニセアカシア(その6):自衛隊隠蔽緑地

車で豊平川に架かっている五輪橋を渡って、左手にアイスアリーナを、右手に広々とした緑地が広がる真駒内公園を眺めてから国道453号を横切り、しばらく走ると地下鉄南北線高架手前約400mから左手に自衛隊真駒内駐屯地が見えます。その道路沿いに樹高15m前後ある大きなニセアカシアが立ち並んでいます。これに加えて、自衛隊真駒内駐屯地西側は真駒内曙団地と接しているのですが、そのジグザグに曲がった道路沿い約700m渡って大きなニセアカシアが立ち並んでいます。この自衛隊真駒内駐屯地の南西側を取り囲むように植えられているニセアカシアの列植を“自衛隊隠蔽緑地”と呼んでいます。

大きな地図で見る
ここのニセアカシアは道路の反対側にある住宅地とある程度の距離が保たれているために、剪定の機会も少なくニセアシア本来の樹形がよく保たれている植樹帯です。植栽後年数が経ち下枝がなくなって、自衛隊を隠蔽する本来の目的は果たしていないのですが、街中の豊かな“みどり”、緑地帯の機能は十二分に果たしているようです。
031 ニセアカシア 自衛隊隠蔽緑地2012.5.20
札幌市の街路樹台帳によれば、1974年(昭和49年)の調査時点で、樹木の大きさは、高さ(H)が8mで胸高直径(C)が8㎝のものが2本、H=10m・C=15㎝:86本、H=10m・C=25㎝:149本、H=10m・C=35㎝:38本と合計275本となってます。自衛隊隠蔽緑地の総延長が約1kmですので、全体を均すと植栽間隔は約3.6mになります。街路樹の植栽間隔は通常8mを基本としていますので、ここの植幅は街路樹に比べると1/2以下で、自衛隊を隠蔽しようとした意図がはっきりとうかがえます。
現在は、台風による倒木や病虫害が原因で伐採された樹も多く、全体の本数は相当減っています。
樹齢は60年生のニセアカシアが多いようです(平成20年度街路樹診断)。通常、街路樹で植える規格は幹周が10~15cm(直径(C)が3~5cm)、高さが3~3.5m位のものが多いのですが、その規格の実生からの樹齢は大体7~8年経っています。概算すると、ここの隠蔽緑地のニセアカシアは1960年代後半に植えられたことになります。
082 ニセアカシア 五輪通 赤字2012.6.17 五輪通沿いのニセアカシア
その当時は、1960年の安保闘争に始まり、その後次第に反戦・反政府を唱える学生運動が盛んになります。学生と機動隊(今ではほとんど使われなくなった言葉)との衝突をテレビニュースでたびたび見るようになります。そして、1969年の東大安田講堂事件、テレビの視聴率が70%を超えたと言われる1972年の浅間山荘事件で学生運動の終焉を迎えます。1960年代後半は学生運動がピークに達した時代でした。これらの時代背景を下に、行政が反戦・反政府を唱える学生運動の標的・破壊すべき象徴である自衛隊を少しでも目立たないようにするために樹木を植えたのでしょう。また、その当時は大気汚染など環境の悪化も社会問題化しており、1967年には公害対策基本法が制定された年であり、大気の浄化など環境を改善する意味でも、街中に「みどり」増やすことが緊急に必要とされた時代でもありました。これらのことが重なり合って、1960代後半に植栽されたのではないでしょうか。
020 ニセアカシア 自衛隊隠蔽緑地2012.3.1
では、なぜニセアカシアだったのでしょうか? 隠す目的からすると常緑系の樹木、夏冬問わず隠すことのできる、札幌ならニオイヒバやアカエゾマツ、トドマツなどのマツ類を植えるのが妥当と考えます。その理由は今となっては想像するしかありません。早急に隠蔽できて(これは早急に緑を増やすと同意語になる)、同一規格の樹木を大量にそろえられる樹種はニセアカシアしかなかったのではないでしょうか?昭和40年代は公害問題や自動車の排気ガスなど大気汚染が社会問題となり国を挙げて緑化に取り組み始めた時代でもあり、街路樹が大量に植えはじめられました。その当時、札幌で多く植えられた樹種は、ニセアカシア、プラタナス、ネグンドカエデ、ヤナギなどの成長が早く大気汚染など環境につよい樹種が植えられています。そのような背景と経緯をもとに、最も適した樹種がニセアカシアであったのではないでしょうか?
<追記 2014.1.28>
1960年(昭和35年)、札幌の木を選ぶために人気投票が行われました。ニセアカシアは、第1位で札幌の木になったライラックにおしくも僅差で2番目でした。現在は外来生物法で要注意樹種に指定され、邪魔者扱いにされがちなニセアカシアですが、その当時は人気があったようで、このことも、ニセアカシアが選ばれた理由の一つなのでしょうね
003 ニセアカシア 自衛隊隠蔽緑地 赤字2012.3.10
このように高さを抑える剪定がされることもあります。
しかし、今にして思えばもう少しいい名前を付けられなかったのでしょうか。時代背景があるにせよ、あまりにもあからさま過ぎます。その当時は現在の名称で全く違和感はなかったのでしょうが、時代は過ぎて、今はその当時のように自衛隊の存在意義を問うこともなくなっており、現在の中国や北朝鮮など近隣諸国の関係からすると、その重要性が増しているように思えます。いいかどうかは難しいところですが・・・・。実際、現状のニセアカシアは自衛隊を隠蔽していないし、それが問題なっているわけでもありません。街中の豊かな“みどり”として大いに貢献しているように思えます。“隠蔽”という言葉は、国のために働いている自衛隊さんに失礼だし、その意味でも名称を見直してもいいのではないのでしょうか?

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