ゴボウ くっつく

2016.8.23
8月に入ると道端にゴボウをよく見かけるようになります。 草丈は1.0~1.5mほどで、その先にかわいい赤い花をつけます。   2017.8.27
アザミの花に似ていますが、ゴボウはキク科ゴボウ属です。  2016.7.7
根出葉は大きく、長い葉柄に心形の葉をつけ、株上部の葉は根出葉に比べて小さく葉柄は短いです。 葉に触るとふわぁとした感触で、葉裏は白い綿毛がびっしり生えています。

2017.6.18
中央区円山墓地近くの歩道沿いに生えているゴボウ。

2016.8.23
衣服にゴボウの果実がくっついて、取ろうとするのですが衣服にしっかり付いていて、思いのほか取り難かった経験はありませんか? それは、写真で分かるように、細長い針のようなもの(総苞片)の先が鉤状に曲がっています。 これが集団で衣服に引っかかるためなのです。

2015.10.6
写真は、清田区真栄地区か有明地区で撮った栽培ゴボウです。 ちょうど収穫時期で、写真左側の1列が抜き取られた直後のようです。

栽培ゴボウは、春にタネをまいて秋収穫します。 は種後150日くらいで収穫できるそうです。 写真で見える葉は根出葉だけです。 ゴボウは※2年草なので、この株を収穫しないで越冬させれば、来年夏に花を咲かせます。

※2年草
ゴボウの2年草については諸説いろいろあるようですが、以下のページが丁寧に説明しています。 → 日本植物生理学会 みんなの広場 ゴボウ

 

 

 

ゴボウ

オカノリ、オカヒジキのように、水生植物に形態の似ているところから命名された野菜があります。 この花をファインダーでのぞいたとき、「まさしくオカマリモだ」と思いました。
ゴボウは、キク科2年生の植物。 通常春にタネをまいて秋に収穫しますが、とり残されたものは、冬を越して翌年7月ころから花をつけます。 有柄球状の頭花は、鮮やかな緑、直径3~4cmくらい。 両性花で花弁は筒状で赤紫色。 1株に100個以上もつけ、1頭状花の開花期間は2日といわれています。 総包片は針状で、先端はかぎのような形をしていて動物体によく付着します。

ゴボウ 2011.7.13
田舎では、人家の近くに逸脱して野生化したものが群生していて、放牧馬や、めん羊の体にくっついて始末に悪いものです。 かつて悪童のころ、誰かが、お下げ髪の女の子にこれを着けたから大変。 先生に知れて彼は終日廊下に立たされてしまいました。
-- タンポポのわた毛が空に舞うのを見て、この植物は、横着にも動物に付着して移動することを思えたのでしょう --。

<薬草として渡来・食用化したのは日本人>
野生種は、ヨーロッパや中国に広く分布しているといわれていますが、わが国には見当たらず中国から1000年ほど昔に渡来したもののようです。 しかし、中国ではほとんど食用にされていないこから、当時は薬用植物として導入されたらしいとのこと。 これを改良して食用に供したのは日本人。 ゴボウは、わが国固有の野菜ということになります。

<戦争にまつわる話も>
こんな話もあります。 敗戦後横浜の軍事法廷で、アメリカの捕虜に木の根を食べさせたかどで、終身刑の判決を受けた陸軍将校がいました。 あのころは、日本人とて食糧難の時代。 多分彼は職務に忠実で、懸命に捕虜の食糧確保に努めたのでしょう。 食習慣の違いが生んだ悲劇でした。
新聞などでご承知のことと思いますが、札幌と姉妹都市・中国の瀋陽(旧奉天)から、現在3人の研修生が札幌の農家で野菜の実習をしています。 私は、この人たちに野菜の話をする機会に恵まれ、ゴボウ(牛蒡)の話をしたところ、現在は中国でもつくられているとのこと。 聞くところによると、戦時中に軍や開拓民が持ち込んだというのです。 いまわしい戦争でしたが、ゴボウは彼の地に残って中国人の食卓をうるおしていることを思い、心の安らぎを感じました。 また、くだんの軍事裁判のことにふれると、「薬草を食べさせたことは、よいことです」とユーモラスな返事。 言葉は通じなくても心は通じるもの。 ほのぼのとした1日でした。

<平凡で地味、ふるさとを思う野菜>
ゴボウは、ほかの野菜のように大量消費されることもなく、栄養野菜としてもてはやされもせず、平凡で地味な野菜です。 でも、きんぴらに、けんちん汁に、地方色豊かで、ふるさとがしのばれ、母の顔が目に浮かぶ野菜ともいえるでしょう。
ミンナニデクノボウトヨバレ
ホメラレモセズ クノモサレズ
宮沢賢治の詩のような、目立たないゴボウが、私は大好きです。
(札幌市農業センター 林 繁)

ゴボウは、お通じを良くする食物繊維やオリゴ糖の含有量が野菜の中でもトップクラスだそうで、下のウェブページにはその栄養素を保つ料理法が書かれています。
→ ゴボウの新常識
http://www.white-amily.or.jp/healthyisland/htm/sapuriment/repo68.htm