◉未熟堆肥とはどのようなものか?
堆肥とは、菌類などの微生物が有機物(落ち葉や剪定枝、生ごみ、家畜のふん)を分解してできたもので、植物がそれを使って自分の体を成長させる栄養源です。未熟堆肥はその分解が不十分な状態のものです。葉や枝などの原型が残っていたり、強い臭いが残っていることもあります。 ※CN比で25~30以上の数値の堆肥
※CN比30とは、堆肥の中に炭素と窒素の比率が炭素(C)30に対して、窒素(N)が1の割合で存在することを意味します。
◉ なぜ、未熟堆肥を畑に入れると良くないのか?=なぜ、窒素飢餓を起こすのか?
未熟堆肥を畑に大量に入れることは、樹木の枝や落葉など炭素(C)を大量に内在している物質を土に入れることになります。菌類などの微生物はそれらを餌にしてエネルギーを得たり、自分の細胞を増殖して成長します。そのときに炭素(C)、水素(H)、酸素(O)は必要ですが、それとともに窒素(N)も当然に必要です。それではなぜ窒素(N)が不足(飢餓)するのでしょうか?
それは、樹木や落ち葉などのCN比は50~100に対して、微生物の体自体のCN比 は8~10と言われています。なので、土の中には自分の体をつくる炭素(C)などは周りにたくさんあるけれど、窒素(N)は自分の体のCN構成比を満足させるだけありません。そのために、微生物は元々土壌中に存在する窒素を利用することになります。このことは、野菜苗や花壇苗が利用するはずだった土壌中の窒素を奪うことを意味するので、苗類にとって窒素不足=窒素飢餓になるのです。
それでは、具体的に未熟堆肥を畑に入れた場合、どれくらい窒素が不足するのか、言い換えると、菌類など微生物はどれくらい土壌から窒素(N)を取り込んでいるのか?を計算してみます。
〇 条件の設定
・2kg/㎡ の堆肥を入れる(毎年2kg/㎡を畑に入れることが推奨されている)
・堆肥の全炭素(C);60%
・堆肥の全窒素(N);2%
※この堆肥のCN比は30、 60 ÷ 2 = 30
・微生物のCN比を10と仮定 菌類など微生物のCN比は8~10といわれている。
以上の条件で計算すると、
①投入された炭素と窒素の量(1㎡当たり)
・炭素量;2kg × 60% = 1200g
・窒素量;2kg × 2% = 40g
②微生物がこの炭素を使って増殖するために必要な窒素量
・微生物のCN率;10 なので、
→ 必要な窒素 = 1200g ÷ 10 = 120g
③不足する窒素量
・必要窒素;120g ー 堆肥中の窒素;40g = 80g
・窒素80gを化成肥料8-8-8に換算すると、この化成肥料は100g中に8gの窒素(N)が入っているので、1000gの化成肥料8-8-8に相当
結論
この条件(CN比30の未熟堆肥を投入)では、微生物が堆肥中の炭素(C)を分解する過程で、土壌中から約80g/㎡の窒素(N)を吸収することになる。
それでは、
◉DCMホーマックで販売されている牛ふん堆肥はどうでしょうか?
〇 条件の設定
・2kg/㎡ の堆肥を入れる(毎年2kg/㎡を畑に入れることが推奨されている)
・堆肥の全炭素;18.9%
DCMホーマックの牛ふん堆肥の袋には炭素量(%)が記載されていないので、以下の計算式から推測
全炭素 ÷ 全窒素 = CN比 なので、
X ÷ 0.9 = 21
X ≒ 18.9
・堆肥の全窒素;0.9%
・微生物のCN比を10と仮定
以上の条件で計算すると、
①投入された炭素と窒素の量(1㎡当たり)
・炭素量;2kg × 18.9% = 378g
・窒素量;2kg × 0.9% = 18g
②微生物がこの炭素を使って増殖するために必要な窒素量
・微生物のCN比;10 なので、
→ 必要な窒素 = 378g ÷ 10 = 37.8g
③不足する窒素量
・必要窒素;37.8g ー 堆肥中の窒素;18g = 19.8g
結論 DCMホーマック の牛ふん堆肥のCN比は21で、堆肥として十分に使えるものですが、それでも、微生物は土壌から約20g/㎡の窒素を吸収しています。
◉剪定枝の場合
〇 条件の設定
・2kg/㎡ の堆肥を入れる(毎年2kg/㎡を畑に入れることが推奨されている)
・堆肥の全炭素;5.75%
・堆肥の全窒素;0.47%
・微生物のCN率を10と仮定
以上の条件で計算すると、
①投入された炭素と窒素の量(1㎡当たり)
・炭素量;2kg × 5.75% = 116g
・窒素量;2kg × 0.47% = 9.4g
②微生物がこの炭素を使って増殖するために必要な窒素量
・微生物のCN比;10 なので、
→ 必要な窒素 = 116g ÷ 10 = 11.6g
③不足する窒素量
・必要窒素;11.6g ー 堆肥中の窒素;9.4g = 2.2g
結論 CN比が12.4の完熟堆肥 でも、菌類など微生物は土壌中からの窒素を必要としています。しかし、その量は未熟堆肥(CN比;30)やDCMホーマックの牛ふん堆肥(CN比;21)に比べて少ないです。
◉ まとめ
1㎡あたり2kgの堆肥を入れた場合、
| 名称 | CN比 | 不足した窒素量 | |
| 堆肥未熟 | 30 | 80g | |
| 牛ふん堆肥 | 21 | 19.8g | |
| 剪定枝堆肥 | 12.4 | 2.2g |
〇上表で分かったことは、
・完熟堆肥でも窒素の量は少ないが 、菌類は土壌から窒素を取り込んでいる
・堆肥が未熟なほど、菌類など微生物は土壌中からの窒素の取り込み量が多くなる
しかし、上表の数値は投入された2kg/㎡の堆肥すべてを分解した場合で、実際に畑に入れた堆肥がすぐにすべての炭素を分解するわけではないのです。
たとえば、
札幌で5月上旬に堆肥を畑にすき込んだ場合、
・札幌の5月上旬:平均気温は10~15°くらい
・土壌温度もまだ低めなため、微生物の活動はゆっくり始まる
・堆肥は未熟で、CN比が高い ので、分解に時間がかかる
以上のことから、
・窒素の半分が吸収される時期は、6月中旬~下旬頃
・窒素の全量が吸収される時期は、7月中旬~8月上旬(盛夏)
以上のように投入された堆肥2kg/㎡の全量の窒素が微生物に吸収されるのは、お盆前で5月上旬に堆肥を入れてから約4か月かかることになります。
なので、市販されている牛ふん堆肥を前年の秋に、または植付け3週間前にすき込むなど、一般的に言われているような農作業をしていれば問題は起こらないのです。私は家庭菜園を40年近くやっていますが、植付け前日に堆肥(化成肥料と併せて)をすき込むこともたびたびあります。葉が黄色くなる、成長が芳しくないなど窒素飢餓と思われる現象を経験したことはないのです。
それでは、どのような場合に窒素飢餓が発生するのでしょうか?