堆肥(13) 植物の根と菌類の関係(その2)

植物と菌類は、どのようして共生関係を持つようになったか?

🔵 地球の誕生から植物が陸上に進出するまで

地球の誕生は、46億年前に超新星の爆発がきっかけで太陽系の形成が始まり、それから1,000~3,000万年の時間をかけて現在の地球の大きさになったようです。 その頃の地球は火の玉で、それがゆっくり冷えていって水蒸気ができ雨となり海ができます。海ができるまで1~2億年かかったと考えられています。
その海に原始生物が誕生し、次に有機物を生成する生物、つまり、光合成を行う生物(シナノバクテリア)が現われます。その生物は有機物をつくる過程で酸素を出します。 それが海に供給され、海が酸素を持ち切れなくってやっと海の外に出てきます。 そして、大気になるのですが、その密度になるまでの時間の長さはおおよそ30億年。 現在からすると約16億年前に現在私たちが吸っている空気、大気が出来上がったことになります。
地球が誕生してから30億年という途方もない年月をかけて陸上に生物が進出できる環境が整ったのです。植物が実際に陸上に進出したのはそれから11億年の年月を要します。現在から約5億年弱前です。地球誕生から約41億年が経っています。

🔵 最初に陸上に進出したのはどんな生物だったか?

生物が陸上に進出し始めたころ、海の中では三葉虫やオウムガイが生息し、コンブなどの藻類が繁茂していました。海の中はすでに生物で溢れて?いたのです。
一方、陸地は植物が存在しないので有機物などはなく、岩石の塊がごろごろしている火星や月のような状態だったのでしょう。 しかし、波打ち際など海岸線では海中で繁茂していた微生物の遺骸が岩の表面にマット状にあり、また、海中で育っていたコンブなどの海藻類や魚類等の死体が打ち上げられて有機物が存在していたのです。
実は、植物が陸上に進出する数千万年前には、菌類が陸上に進出していたと考えられています。菌類は細い菌糸を伸ばして岩石を酸で溶かしてミネラルを吸収する能力を持っていましたが、自らエネルギー(糖)を作り出す光合成はできませんでした。

🔵 それでは菌類はどのようにして生き延びていたのか?

菌類が陸上に進出したときには、既に海中には細菌や菌類などの微生物が大量に存在し、海藻類や三葉虫などの節足動物もいました。それらの遺体や残骸が波打ち際に打ち上げられ、特に微生物の遺骸が海岸などの水際や岩などにへばり?ついていて、菌類はそれを分解してエネルギーを得ていたようです。

植物が陸上に進出する時点で、海には既に大量の生物が存在し、海岸線にはそれらの遺骸が岩などにへばりつき、菌類はそれらをエサに繁殖していたのです。
このような条件の中で、植物が陸上に進出する形態がどのようなものであったのか?、現在最も有力な説は、地衣類が陸上に進出したのではないかと考えられています。

🔵 地衣類とは一体どんな植物なのか?

菌類が藻類(またはシアノバクテリア)を体内に住まわせてできた「二者一体の共生体」で、菌類が体の形をつくり、一方、藻類が光合成で糖を合成し菌類に提供していました。
2015.4.8
アオダモの樹皮についている白や灰色の模様が地衣類と思われるもの。 AIにこの写真を添付して尋ねると、地衣類と回答。

地衣類は植物の祖先ではないのですが、陸上生態系のごく初期に出現した 重要な生物のひとつです。菌類と藻類が共生することで乾燥に強く、 栄養の乏しい岩肌でも生育できたため、岩石の風化や初期の土壌形成に 大きく貢献しました。 このような地衣類や菌類の活動によって陸上環境が整えられたことが、 後に植物が陸上へ進出するための重要な土台となったのです。

🔵 陸上に最初に進出した植物

最初に陸上に進出した植物は、少しじめじめした日陰に育つゼニゴケのような形状したコケの仲間だったようです。
植物が陸上に進出した頃(今から約5億年弱前)には、既に菌類や地衣類が陸上に進出していました。
海に生息するコンブやワカメは海水で生きていけますが、陸上の植物は真水が必要です。しかし、内陸には海のように有機物はほとんどなく無味乾燥な石の世界です。
しかし、ゼニゴケに似たコケ類は、菌類や地衣類が増殖することによって有機物が堆積した場所、河川の岩場・河原や湧水の傍など常に水分があって湿気っている場所、そんな場所で生き延びていたのです。

植物が陸上に進出したときには、海には既に菌類、一時的に海水に浸かるような海岸には地衣類が生息していました。 しかし、陸上に上がるには、塩分を含んだ海水ではなく真水が必須です。両者は陸上に上がる前に海水から真水に適応する必要があったのです。 その場所は、川が海に注ぐ河口付近や湖でした。そのような汽水域で徐々に真水に適応していったのです。

ゼニゴケに似たコケ類は、自身を体を定着・支えるために仮根を出し、その仮根は栄養源を吸収できないと言われていたのですが、最近の研究で、リン酸を始めとする栄養源を吸収できることが判ってきました。 なので、ゼニゴケ様コケ類は仮根を含めた体全体で栄養を吸収していたようです。

そして、ゼニゴケ様の初期陸上植物=コケ類は、すでに陸上にいた菌類と共生し、リン酸などの栄養吸収を助けてもらうこと、言い換えれば、菌糸が植物の根の役割を果たすことで陸上生活が可能になったのです。

🔵 最初に陸上に進出した植物と共生した菌はアーバスキュラー菌根菌(AM菌)。

 

堆肥(12) 植物の根と菌類の関係(その1)

植物は光合成で有機物をつくり、それを使って自分の体を大きくしています。一方、菌類は植物がつくった有機物を利用して菌糸の増殖とそれの維持をしています。樹木がボロボロになるということは、物が腐る、分解するということで、菌類が有機物(樹木)を分解して、その中の栄養を利用していることです。馬や牛が草(植物)をエサにして生きているのと同じ関係にあります。
これは、与える側(植物)と搾取する側(動物)の関係ですが、植物と菌類の関係はそれ以外の側面も持っています。 それは「共生」の関係です。 菌類は有機物を分解するだけではなく、植物に土壌から取り込んだ栄養を植物に供給し、反対に植物からも必要な栄養をもらっています。

植物と菌類の関係を大まかにまとめると以下のようになります。
① 枯死した植物を分解し、そこから栄養分を得る菌類(腐生菌)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・70~80%
② 生きた植物と共生する菌(共生菌;相互に栄養交換を行う)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10~20%
③ 生きている植物に侵入して栄養分を得ることで、植物を病気又は枯死させる菌(うどんこ病やえき病菌)・・・・5~10%

植物に悪さをする菌類はごく僅か(5~10%)で、その他多くの菌類は枯死した植物を分解して自分の栄養にしています。その割合は菌類全体の70~80%です。残りの10~20%の菌類が植物と相互に栄養を交換する共生の関係にあるのです。ちなみに、地球上に存在する菌類の種類は約15万種といわれています。これは正式に名前がついているもの、ちゃんと学名があるものです。推定では、まだ知られていないものがおおよそ300万種あるといわれています。

次回からは、
・植物と菌類がどのようして共生関係を持つようになったのか?
・共生菌にはどのような種類があるのか?
・植物と菌類は具体的にどのように共生しているのか?
などを調べてみたいと思っています。

 

 

チューリップ 芽出し

地下鉄南北線の平岸駅を降りて、平岸通を北に向かって歩き、豊平公園緑のセンターへ行く途中、店先にチューリップが芽を出し、少し大きくなっているのを見つけました。みぞれ交じりで、鉛色の空に覆われた重苦しい天気の日でした。
札幌は3月に入ったとはいえ、道路の両脇にはまだ雪がうず高く残っており、春を感じるにはまだまだの時期です。そんなときに、思いもよらず小さな緑を見つけると、気分がすこし明るくなります。
2026.3.7
容器の大きさは、長さ1m弱、 奥行40cmほどの石膏?でできた発砲スチロール箱形状の入れ物にチューリップの球根が植えられています。
2026.3.7
球根の植える間隔が狭く、葉が1枚のものもあり、ポツポツと咲く感じです。
大きいもので葉丈が5~6cm伸びています。
この時期にこれだけ伸びているということは、おそらく、2月下旬には芽を出していたのではないでしょうか?

このチューリップの植えられている箱が3月上旬までどのような状態に置かれていたか?を推察すると、
平岸通は南北に通っているので、東側の歩道は午前中建物で日陰になり、昼前から夕方まで太陽が当たります。反対の西側は、午前中に太陽が当り、午後は日陰になります。
このチューリップの箱は東側の歩道に置かれているので、正午少し前から夕方まで陽が当り、しかも、建物の前で箱の周りは常時除雪されるので、比較的早めの時期から雪がない状態にあったのでしょう。
なので、3月上旬にこれだけの生長をすることができたのだと思います。

札幌の公園や街路樹桝で見かけるチューリップは、3月中下旬まで雪の下にあるので、見頃は、だいたい5月中旬頃になります。
では、この平岸通のチューリップは芽だしが早い分、開花もその分だけ早く咲くのでしょうか?

🔵  チューリップの花芽の形成と成長
チューリップの花は5月に咲きますが、その花芽は球根の中に既に出来上がっています。なので、秋に植え忘れて、翌春植えても花は咲きます。
それでは、チューリップの花芽はどのようにしてできて、どのように大きくなるのでしょうか?
・夏(札幌の場合、6月下旬から7月)の堀上時には球根内部で葉の元ができる。しかし、この時点ではまだ花芽はできていない
・ 秋(札幌の場合、10月に入ってから)の植付け後に、温度が低くなると、それがスイッチとなって、花芽が球根内に形成される。
・この時期に、雄しべや雌しべの元が作られる
・冬、地中で休眠しながら、花芽はゆっくりと成長
・春、気温が上昇すると休眠が解除され、芽が伸び始める。
・冬に作られた花芽が茎の伸長と共に大きくなる。

以上がチューリップの花芽形成の過程です。平岸通のチューリップは、晩秋にできた球根内の小さな花芽がちょうど今この時期から少しづつ少しづつ大きくなり始めているのです。

🔵 いまちょうど、豊平公園緑センター展示温室のアザレアが見頃の時期を迎えています。

2026.3.7
2026.3.7

コチョウラン 花が咲かない

約7年前に花が咲いていない透明のビニールポットに入ったコチョウランの株を買ったことがあります。 このコチョウランは、大輪系の白い花が咲くタイプです。

早速、ミズゴケで素焼鉢に植替えて、リビングの窓際で育てました。新葉も出てきて株は順調に育つのですが、1年経っても、2年経っても一向に花茎が出て来ない、花が咲かないのです。

ちょうどその頃に、何かのお祝いにコチョウランをいただきました。それは6月初め?頃のことです。小輪系タイプで薄ピンクの花が咲いていました。白の大輪系のコチョウランと同じ窓際に置いて育てました。白の大輪系コチョウランは相変わらす花が咲く気配を全く見せないのに、薄ピンクのミニタイプのコチョウランは6月に花が咲いてから半年後の、12月に再び花茎が伸びて1月から咲き始めました。 1年も経たない内に2度花を咲かせたのです。このコチョウランは、毎年、夏と冬に2度花を咲かせるのです。

2024.1.25    ミニコチョウラン
同じコチョウランでも、それぞれの株によってその開花習性は違ってくるようです。このような開花習性の違いはどのような理由によるものなのでしょうか?
その前に、コチョウランの自生地はどこで、どのような環境で生育しているのか調べて見ました。

🔵コチョウランの生育環境

〇 コチョウランの自生地
フィリピンやインドネシアなど東南アジアを中心とした高温多湿の熱帯地域

〇 コチョウランはどのような場所で育っているのか?
・コチョウランは樹木に着生するラン(着生ラン)で、地面ではなく、樹の幹や枝に根を張って、又はぶら下げて生育
・熱帯雨林の樹上で、強い直射日光を避けながら、言い換えると、ジャングルの木漏れ日の柔らかい光が注ぐ、森の中でも風が通る場所に生育
・熱帯雨林なので、年中暖かくて、昼と夜の温度の差がない環境

この温度環境は札幌のリビングルームと似ています。 気温は年間を通して20~28℃(最近は30℃を超える日も多くなったが)で、コチョウランにとって札幌のリビングは温度的にまあまあの環境といっていいのではないでしょうか?

それなのに白の大輪系は花を咲かせてくれません。
🔵 白の大輪系のコチョウランが花を咲かせない理由(ミニ系と大輪系の温度感受性の違い)
・ミニコチョウランは、低地の熱帯雨林に自生する原種が多く、夜間もあまり温度が下がらない環境に適応している。なので、温度変化にあまり敏感じゃなくて、比較的温度差が大きくない安定した環境でも花芽をつけやすい。
・一方、大輪系のコチョウランは、標高の高い場所に自生する原種(Phalaenopsis amabilis;ファレノプシス アマビィリス)の血を引いていて、昼夜の温度差がある環境で花芽を形成する性質が強い。  特に夜間に18℃前後まで下がるような環境が、花芽形成のきっかけになる
・札幌のリビングのように年間を通して温度が安定している環境では、大輪系は「季節が来た」とは気づかず、花芽をつけるタイミングを見つけられない可能性が高い

🔵 大輪系のコチョウランに花を咲かせるには?
秋〜初冬にかけて、夜間だけ少し涼しい場所(18℃前後)に2〜3週間置くと、花芽ができやすくなる。 具体的には、夜だけ玄関や廊下に移動させるとか、窓際で冷気が届く場所に置くなど、ちょっとした工夫・配慮が必要。

一つ付け加えると、大輪系のコチョウランは、花が大きいので株が充実していないと花芽をつけづらいので、夏場にしっかり育てることも重要

 

 

堆肥(11)団粒構造はどのようにして形成されるのか?

団粒構造がしっかり発達した畑土は、
① 色は黒々としており、
➁ 握ると湿り気を感じ、ぎゅっと締まるが、手を開くとほろっと崩れ、
③ 湿っていてもべたつかず、
④ つまむと粒粒とした感触があり、指先で押しつぶすと、しっとりと指腹に沿ってやわらかく広がる

というような感じの土です。
そして、その働き・作用は前回の投稿で説明したとおりです。

⇒ 堆肥 (9) 有機物を分解すると最後に何が残るのか?

では、本題の「団粒構造はどのようにして形成されるのか?」
についてです。

土壌の「団粒構造」は、単なる土の塊ではなく、微生物や植物、そして、それらが作り出す物質が複雑に絡み合ってできる「ミクロの建築物」で、それは、細菌や菌類、植物の根などの相互作用によって作り出されていくようです。

🔵 細菌(バクテリア)の役割
・最小単位の粘土や砂の粒子をくっつけるのが細菌の仕事。
・細菌はエサ(有機物)を分解する際や、自分たちの身を守るために「バイオフィルム」と呼ばれるネバネバした物質を放出。
・このネバネバ物質が接着剤となり、バラバラだった粘土粒子などをつなぎ合わせ、ごく小さな塊(ミクロ団粒)を作る。

🔵 菌類(カビ・キノコ)の役割
・細菌が作った小さな塊を、さらに大きく、丈夫な「団粒」へと成長させるのが菌類の役割。
・菌類は土壌中に細長い菌糸を縦横無尽に張り巡らせ、これがネットのように土の粒子やミクロ団粒を包み込み、物理的にバラバラにならないよう縛り上げる。
・特に植物と共生する「菌根菌」は非常に分解されにくい粘着性のあるタンパク質を放出し、これが強力な「防水性ワニス」のように働き、水に濡れても崩れない強い団粒(マクロ団粒)を作り上げる。

🔵 植物の根の役割
・根が土の中に伸びていくとき、周囲の土を押し固め、また、根が水を吸うことで土が一時的に乾燥・収縮をする。この「押す」「縮む」の繰り返しが、土を適度な塊に成形するプレス機のような役割を果す。
・植物の根の先端からは糖やアミノ酸などの「根端分泌物」が放出され、これが微生物(細菌や菌類)にとっての重要なエサとなり、根の周り(根圏)で微生物の活動が爆発的に活発になる。

以上のことをまとめると、

植物の根が伸長するとき分泌物を出し、また周りの土を押す。その分泌物が細菌のエサになり、ネバネバを出し、小さな粒を接着し、菌類の糸(菌糸)がその粒を網で包み込み、大きな塊にする。
ミミズなどの小動物がそこを通ることで、さらに隙間(団粒間孔隙)が生まれ、ふかふかの土になる。
団粒構造とは、微生物(菌類や細菌)と植物が織りなす、土の中の小さな芸術作品です。

しかし、
団粒構造は一度できたら終わりではなく、微生物が活動し続けることで維持される「動的な構造」です。耕しすぎたり、化学肥料だけで微生物のエサ(有機物)がなくなると、この「接着剤」や「網」が失われ、土は再びカチカチの単粒構造に戻ってしまいます。

野菜を育てるための家庭園芸の書物には、堆肥(完熟堆肥)を毎年2kg/㎡入れることを推奨しています。
病気が出にくい、しっかり根を生やせる土、別の言い方をすると、畑が痩せるのを防ぎ、安定して作物が収穫できる土を保持することは、団粒構造を保つことを意味します。