堆肥 (9) 有機物を分解すると最後に何が残るのか?

家庭菜園の片隅にブロックで囲いをつくり、そこに夏の間に除草した草、野菜の残渣などを少量の土を間に挟みながら順次積んで置き、思い出したころに切り返しをする(2回程)と、翌春には黒褐色の土になっています。 少量ですが堆肥として畑にまいています。
この黒褐色の土(腐植化した土)は、
「微生物が有機物を分解し、再合成し、安定した高分子に変換した状態の土壌有機物」です。その主成分はフミン酸、フルボ酸、ヒューミンといった腐植物質で、これらは分解されにくく、数十~百年単位で残るという特徴があるそうです。

〇 有機物を分解すると最後に何が残るか?
微生物が有機物を分解するということは、自分の体の増殖と自分の体を維持するためエネルギーを得ることですが、その分解が進んで最後の物質が水(H₂O)と二酸化炭素(CO₂)になるのです。堆肥も有機物ですから、長い時間をかけて、最終的には水(H₂O)と二酸化炭素(CO₂)になります。
しかし、植物は根から窒素(N)やリン酸(P)、また、鉄(Fe)、マグネシュウム(Mg)といった微量要素(ミネラル)を吸収しているので、それらは土壌中に残ります。これらの物質は、他の鉱物と結合するなどの化学反応を経て沈殿するものや、土壌中の水の中を浮遊するものなど様々な形態があるようです。

ここで注目すべきは、堆肥の成分であるフミン酸、フルボ酸、ヒューミンといった腐植物質です。しかし、これらの物質も長い時間をかけて最終的には水と二酸化炭素に分解されるのですが、これら3種の腐植物質は、長期間に渡って堆肥の本質部分である、
・団粒構造を形成・維持する
・団粒構造ができることによって、土壌の保水性、排水性の改善
・団粒構造ができることによって、肥料(N・P・K 、微量要素(ミネラル)を土壌中に保持する力が高まる
※N・P・Kや微量要素は、土壌中で酸化や沈殿などの化学変化を起こすと、それらの物質は植物の根から吸収されなくなるが、フミン酸、フルボ酸、ヒューミンといった腐植物質に吸着した物質は根から吸収される
・堆肥は微生物の「えさ」であり、その微生物が増えることによって土壌の多様性が増し、乾燥や過湿、低温や高温など外部からのストレスに対する耐性が増す

というように、フミン酸、フルボ酸、ヒューミンといった腐植物質は堆肥の本質的価値を担っているのです。

次回は、
➀ 微生物(菌類や細菌 )が有機物を分解する過程で、団粒構造はどのようにして形成されるのか(微生物と団粒構造の関係)
➁ フミン酸、フルボ酸、ヒューミンといった腐植物質はどのような働き・作用があるのか?

を検討したいと思います。

 

節分 冬と春を分ける日

節分は二十四節季の一つで季節を分ける日という意味です。
1年に4回あり、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれの前日です。しかし、昔から節分は立春の前日、2月3日前後を指します。

それでは、なぜ立春の前日だけが節分になったのでしょうか?
新暦(現在使っている暦)が始まったのが明治6年で、それ以前は、立春が一年の始まり(旧暦の正月)とされていて、今日でいうお正月です。
その前日、つまり節分は現在の大晦日で、「新しい年を迎える前に邪気を払う日」として、特に重要視されていました。豆まきで「鬼は外、福は内」ってやるのも、まさにそのためなのです。

しかし、これは本州、特に関東以西の話、そこから遠く離れ遥か北に位置する札幌に生活する者にとって、
「冬と春を分ける」といわれてもピンと来ないというか、
「春はまだまだ先のこと」、
「節分なんて札幌のような北国には関係ない」
という感覚です。
しかし、面白いデータを見つけました。

このグラフは、札幌の1月~2月の過去30年間の平均気温(朝9時頃の気温)。
〇 表の見方
・左側の縦に並んでいる数値(0~-4)は気温
・上の小さな数値は月日

この折れ線グラフ、気温の流れを見ると、
・1月14日~1月30日まで半月の間、-3.5℃を一定間保った後、1月31日~2月3日の節分まで-3.6℃とその冬の最も低い温度を記録して、その翌日の立春に-3.5℃と0.1℃の気温が上昇。それ以降は気温が急上昇していく。

札幌の気温は、節分(立春)に底を打ってから、立春から急上昇していくのです。
12月20日に1年で最も昼間の短い冬至を、その約1カ月後の1月20日に1年で最も寒い大寒を迎えます。そして、その約2週間後に節分・立春があります。札幌ではこの期間が最も暗くて最も寒い時期に当たります。
そして、その期間が終わる節分から気温が下降から上昇する転換点なのです。正に季節の変わり目です。その変わり目の2月4日が「さっぽろ雪まつり 」の初日になります。

ちなみに、東京で最低気温(過去30年間の平均気温)を記録するのが、1月21日と1月22日です。気温は5.1℃。ちょうど大寒辺りになります。

 

 

 

堆肥(8) 未熟堆肥と窒素飢餓 その2

狭い面積で栽培する家庭菜園で、未熟堆肥が問題になるのは、どのようなケースが考えられるでしょうか?
畑に有機物を入れるのは、未熟堆肥だけではなく、生の有機物を入れる場合もあります。
未熟堆肥は有機物の分解が途中の段階もの、若しくは、分解が不十分な堆肥のことを指します。
それで思い出すのが、料理から出る野菜くずを家庭用コンポスターで堆肥をつくろうと思ったときのことです。

家庭用コンポスター
プラスチック製で、下の底部分が抜けていて畑の片隅に10cm程埋め込む。上部は蓋になっていて、そこから野菜くずを投入

野菜くずはほぼ毎日出るので、その都度コンポスターに入れていたのですが、1ヵ月も経たない 内にコバエが大量発生して蓋を開けるのも嫌になってしましました。 5月半ばに入れ始めて6月半ばには止めてしまいました。その都度かき混ぜて少し土をかければコバエの発生を抑えられたと思うのですが、それが出来なくて、それ以降野菜くずを入れずにそのまま放っておき、翌春畑に混ぜ込みました。

家庭菜園で未熟な堆肥を使うケースは上述の家庭菜園用コンポスターが頭に浮かぶくらいです。それよりも、収穫後に出る野菜残渣、米ぬか、コーヒーかす、落ち葉などの生の有機物を畑に入れることが多いように思うのです。
それで、今回は上述の3種、米ぬか、コーヒーかす、落ち葉をそのまま畑に入れる場合について検討してみます。 収穫後に出る野菜残渣については、連作障害や病原菌の問題もあり、別の機会に改めて投稿します。

米ぬか
家庭菜園をする方は、化学肥料を使わない有機栽培で甘味のある美味しい野菜をつくりたいという理由で、米ぬかを植付時に施用する場合があると思います。

〇 なぜ米ぬかは野菜に良いのか?
米ぬかは玄米を精製して白米にするときに取り除かれる外皮や胚芽の部分のことで、栄養分がとても豊富。 胚芽とは芽と根を出す部分で、イネが成長するためのすべての栄養素が詰まった部分。なので米ぬかには、窒素(N)リン酸(P)、カリ(K)や微量要素がバランスよく入っている。

〇 しかし、生の米ぬかを植付前に施用すると、
米ぬかは微粉性なので、微生物は増殖を活発化して自分の体(CN比;8~10)をつくろうとするが、米ぬか内にある窒素(N)分では不足するので、土壌中の窒素を取り入れようとし窒素飢餓が現われることになる。 米ぬかのCN比は18~23だが、園芸店で販売されているのものは脱脂されているのが多く、CN比;20~23と高い。

〇 植付前の米ぬか施用が窒素飢餓を起こしやすい原因
米ぬかの微粉性とそれに伴う微生物の増殖の活発化(微生物が土壌中の窒素を急速に取り込み、作物が利用できる窒素を一時的に不足させること)が大きな原因である。

〇 窒素飢餓以外に、米ぬかの大量施用が作物に与える影響
施用直後に微生物が急激に増殖するため、土壌中の酸素を大量に消費する。これが根の呼吸障害(酸素不足)や根腐れの原因となる。

〇 どれくらいの量を畑に入れると、窒素飢餓の症状がでるのか?
米ぬかに関するサイトでは、
「1kg/㎡入れると窒素飢餓がでる」
と書かれている。 米ぬかの比重を0.5とすると、1kgは2リットル。2L/㎡を撒いてしまう可能性は十分にありうる。畑にまいたときは土の表面が真っ白になり、まきすぎたかな?と思うが、剣先スコップですき込めば白い粉が散らばる。
AIに尋ねると、
300g/㎡以上は危険と言っている。
それではどれくらいなら大丈夫なのか?
⇒ 100~200g/㎡
この量は少ないように思えるが、植付まで日数、土壌の質、施用時の気温、乾燥しているか?降雨後か?など様々な状況や変動を考えると、100~200g/㎡が妥当な数値になるのか。

この100~200g/㎡は、
・100g/㎡;畑の表面にうっすらと白っぽい粉がかかったような状態
・200g/㎡;表面がうっすらとベージュ〜白っぽく見えるくらいで、地面の色がうっすら透けて見える程度

コーヒーカス
緑の相談で、
「コーヒーかすが相当貯まっている。 畑にまきたいが大丈夫か? 」
という相談を受けることがあります。 相談者はやはりコーヒーのあの苦み成分が作物に害を与えるのではないか?と危惧しているのです。

〇 コーヒーかすの特徴
・コーヒーかすのCN比;約20~25
・pH;5~6(やや酸性)

〇 コーヒーの苦み成分(カフェイン)は作物にどのような作用(影響)をするか?
・カフェインはアルカロイドの一種で、コーヒーの他にお茶、カカオなどにも存在し、他の植物の種子発芽や初期成長を抑制する作用がある
・なので、生のままコーヒーかすを畑に施用すると、タネをまいても発芽しなかったり、根の成長を抑制・阻害する可能性がある

〇 生のコーヒーかすを畑にまく場合、タネまきや野菜苗を植付ける何日前に、どれくらいの量をまくのが安全か?
・施用時期  ;最低でも3~4週間前(他の堆肥と併せて)
・施用量の目安;100~300g/㎡に抑えるのが無難

〇 コーヒーかすを落ち葉などと混ぜて堆肥化すれば、発芽抑制など原因となるカフェインは分解されるので問題なく使える

〇 コーヒーかすにあるカフェインは、害虫を寄せ付けない効果がある。 これを「害虫忌避・摂食抑制効果」という。
・しかし、この効果もコーヒーかすの分解が進むと薄れるので、施用時期と量がポイントになる。
・施用時期;野菜苗の植付直後から数日以内
・施用場所;株元周囲に薄くまく、揮発性成分の効果を生かすために畑土と混ぜない
・施用量 ;5~10g/株(ティースプーン山盛り1~2杯程度)

〇 コーヒーかすを
・堆肥として利用する場合
・害虫の忌避剤として使用する場合
では施用量・使用方法が異なるので注意が必要。

〇 おまけの話
コーヒーカップ1杯に使うコーヒー豆、又は挽いたコーヒー豆の重さは約10g。 毎朝欠かさず1杯飲むとすると1年間で貯まる量は、
・10g/杯 ×365日 = 3650g/年
・畑に200g/㎡をまくとすると、
3650g ÷ 200g/㎡ ≒ 18.25 ≒ 18㎡
・毎日1杯づつ飲んだコーヒーの残りかすを1年間貯めておくと、約18㎡の畑にまき・すき込むことができる。

落ち葉
11月に身近な公園などで集めた落ち葉をそのまま畑にすき込む方もいると思います。これも生の有機物を畑に入れることになり、その量が多くなると窒素飢餓の可能性が出てきます。それでは、どれくらいの量を入れると、その可能性が出てくるのでしょうか?

〇 落ち葉の特徴
・CN比は50~90と高め
・これが高いということは、落ち葉を分解する微生物はより多くの窒素を必要とする

〇 落ち葉の害が出やすい投入量
AIに尋ねると、
・5kg/㎡以上入れると、微生物が落ち葉を分解するときに必要な窒素の量が増え、窒素飢餓の可能性が高まる
・特に、気温が上がる5月中旬以降のタネまき・苗の植付時に影響が出やすい

〇 適正投入量はどのくらいか?
・乾燥した落ち葉2~3kg/㎡が目安

〇落ち葉を化成肥料袋(20kg入り)に入れた場合の重さ
・落ち葉の乾燥状態や詰め方で重量が変わるので、
・乾燥した葉でしっかり詰めたば場合 → 1.5~2.5kg
・葉に湿り気があってしっかり詰め込んだ場合 → 3~4kg

札幌の場合、11月前後なると地面は常時湿気った状態になり、乾燥した葉ばかりではないので、
・公園などで集めた落ち葉を化成肥料袋(20kg入り)に詰め込んだ場合、概ね約3kg/袋と推定。
・畑に入れる落ち葉の適正量が2~3kg/㎡で、化成肥料袋(20kg入り)に詰め込んだ落ち葉の重さは約3kgなので、
・1㎡当たり化成肥料袋(20kg入り)を1袋入れることになる。

〇 我家の家庭菜園で落ち葉を入れていみた
以下は、10年前に公園で集めた落ち葉を我家の畑に入れたときに投稿したブログです。

⇒ 落葉堆肥(その3)

久しぶりに読んでみて、今回の内容とそれほど違ったことを言ってないことに安心しました。

 

 

 

 

ミニシンビジュウム

以前からシンビジュウムを育てて花を咲かせたいと思っていました。しかし、シンビジュウムは家庭で育てるには少し大きすぎて鉢を持つことをためらっていました。しかし、ミニタイプのシンビジュウムがあることを知り、それなら育てても良いかな?と思っていたところでした。
そんなときに、園芸好きの方からミニシンビジュウム(テーブルシンビジュウム)をいただくことができたのです。それが一昨年の秋で、それから約1年3か月程過ぎます。 2026.1.7
正月明け?から咲き始めました。 10cm弱?に伸びた花茎に気づきいたのが昨年12月中旬で、その約1ヵ月半後に開花しました。このシンビジュウムは、花芽が伸びだして約2ヵ月で花が咲き始めるようです。その間に別に2本の花茎が伸びてきて合計3本になりました。

この株は4~5年は鉢替えをしていないようです。3本の花茎すべてを咲かせると株を弱らせそうなので、それぞれの花茎のつぼみが8割ほど咲いたら、順次切り取って花瓶で楽しみます。2026.1.11
最初の1本目を玄関に飾っています。玄関は温度が低いので、しばらくの間、2月末まで楽しめるでしょうか?

その理由はシンビジュウムは冬場でも比較的涼しいところを好むためです。それで置き場所は、室温が低めの日光の当たる南向きの部屋にしています。その部屋は暖房の温度設定を最低にすると12月~2月にかけての室内温度の最高気温が約15℃前後、最低気温が13℃前後に保たれます。
余計な話ですが、この部屋で10月に収穫したサツマイモを保管しておくと翌春5月まで美味しくいただけます。
⇒ 焼き芋 

同じように比較的低めの気温を好むデンドロビウムを開花期間中だけ暖房の効いたリビングに置いたことがあります。 そのデンドロビウムはその後新芽が伸びなくなり、最終的に枯れてしまいました。 そんな経験があるので、シンビジュウムは暖かいリビングに移動しないで、切り花にして花瓶に生けて楽しみます。置き場所を替える(温度・湿度・光などの環境が突然変わること )ということは、植物にとって生死にかかわるストレスになる場合もあるようです。

シンビジュウムは花は大きくて見応えがあるのですが、草丈が1m近くに、花茎も50cm以上にもなり、一般家庭で鑑賞するには大きすぎるのです。 2026.11
豊平公園緑のセンター展示温室のシンビジュウム。草丈は70~80cmあり、斜めに伸びたピンクの花茎も50cm以上はあります。鉢は8号の深鉢で、鉢底から葉先までの高さは1mほどに。1個のつぼみも6㎝前後の大きさに。

一方、ミニシンビジュウムは、別名テーブルシンビジュウムという名前が付くとおり、従来のシンビジュムに比べて一回り小さく、室内に置いても威圧感のない大きさです。 2026.1.7
草丈は30cm程で、鉢(5号深鉢)の底から葉先までの高さが50cmほど。花茎の長さは約50cmで、花のボリューム感はシンビジュウムに比べて劣ります。

2026.1.7
一昨年の秋から我家で過ごしてきた、このミニシンビジュウムは、室内に置きっぱなしで、初夏に5mm程の粒状化成肥料を与えただけで、水やりも乾いたらやる程度で、管理らしい管理はしていません。それでも今冬3本も花茎が上がってきました。育てやすいタイプなのでしょう。 パソコンで調べると、ミニシンビジュウムは初心者向きらしいです。
3本の花が終わったら、4月に株分けも兼ねて鉢替えをしてやろうと思っています。

〇 シンビジュウム
・ラン科シンビジュウム属
・常緑多年草
・自生地;主にアジア(中国南部、インド、ネパール、東南アジアなど)の北緯20~30℃の高地に自生
・生育環境;標高1,000〜2,000mの冷涼で湿度の高い森林地帯に多く見られる。木の根元や岩場、落ち葉の堆積した場所などに着生または地生。

 

 

堆肥 (7) 未熟堆肥と窒素飢餓

◉未熟堆肥とはどのようなものか?
堆肥とは、菌類などの微生物が有機物(落ち葉や剪定枝、生ごみ、家畜のふん)を分解してできたもので、植物がそれを使って自分の体を成長させる栄養源です。未熟堆肥はその分解が不十分な状態のものです。葉や枝などの原型が残っていたり、強い臭いが残っていることもあります。 ※CN比で25~30以上の数値の堆肥
※CN比30とは、堆肥の中に炭素と窒素の比率が炭素(C)30に対して、窒素(N)が1の割合で存在することを意味します。

◉ なぜ、未熟堆肥を畑に入れると良くないのか?=なぜ、窒素飢餓を起こすのか?
未熟堆肥を畑に大量に入れることは、樹木の枝や落葉など炭素(C)を大量に内在している物質を土に入れることになります。菌類などの微生物はそれらを餌にしてエネルギーを得たり、自分の細胞を増殖して成長します。そのときに炭素(C)、水素(H)、酸素(O)は必要ですが、それとともに窒素(N)も当然に必要です。それではなぜ窒素(N)が不足(飢餓)するのでしょうか?
それは、樹木や落ち葉などのCN比は50~100に対して、微生物の体自体のCN比 は8~10と言われています。なので、土の中には自分の体をつくる炭素(C)などは周りにたくさんあるけれど、窒素(N)は自分の体のCN構成比を満足させるだけありません。そのために、微生物は元々土壌中に存在する窒素を利用することになります。このことは、野菜苗や花壇苗が利用するはずだった土壌中の窒素を奪うことを意味するので、苗類にとって窒素不足=窒素飢餓になるのです。

それでは、具体的に未熟堆肥を畑に入れた場合、どれくらい窒素が不足するのか、言い換えると、菌類など微生物はどれくらい土壌から窒素(N)を取り込んでいるのか?を計算してみます。
〇 条件の設定
・2kg/㎡ の堆肥を入れる(毎年2kg/㎡を畑に入れることが推奨されている)
・堆肥の全炭素(C);60%
・堆肥の全窒素(N);2%
※この堆肥のCN比は30、 60 ÷ 2 = 30
・微生物のCN比を10と仮定 菌類など微生物のCN比は8~10といわれている。

以上の条件で計算すると、
①投入された炭素と窒素の量(1㎡当たり)
・炭素量;2kg × 60% = 1200g
・窒素量;2kg ×  2% = 40g
②微生物がこの炭素を使って増殖するために必要な窒素量
・微生物のCN率;10 なので、
→ 必要な窒素 = 1200g ÷ 10 = 120g
③不足する窒素量
・必要窒素;120g ー 堆肥中の窒素;40g = 80g
・窒素80gを化成肥料8-8-8に換算すると、この化成肥料は100g中に8gの窒素(N)が入っているので、1000gの化成肥料8-8-8に相当

結論
この条件(CN比30の未熟堆肥を投入)では、微生物が堆肥中の炭素(C)を分解する過程で、土壌中から約80g/㎡の窒素(N)を吸収することになる。

それでは、
◉DCMホーマックで販売されている牛ふん堆肥はどうでしょうか?
〇 条件の設定
・2kg/㎡ の堆肥を入れる(毎年2kg/㎡を畑に入れることが推奨されている)
・堆肥の全炭素;18.9%
DCMホーマックの牛ふん堆肥の袋には炭素量(%)が記載されていないので、以下の計算式から推測
全炭素 ÷ 全窒素 = CN比 なので、
X   ÷ 0.9    = 21
X   ≒ 18.9
・堆肥の全窒素;0.9%
・微生物のCN比を10と仮定

以上の条件で計算すると、
①投入された炭素と窒素の量(1㎡当たり)
・炭素量;2kg × 18.9% = 378g
・窒素量;2kg ×  0.9% = 18g
②微生物がこの炭素を使って増殖するために必要な窒素量
・微生物のCN比;10 なので、
→ 必要な窒素 = 378g ÷ 10 = 37.8g
③不足する窒素量
・必要窒素;37.8g ー 堆肥中の窒素;18g = 19.8g

結論 DCMホーマック の牛ふん堆肥のCN比は21で、堆肥として十分に使えるものですが、それでも、微生物は土壌から約20g/㎡の窒素を吸収しています。

◉剪定枝の場合
〇 条件の設定
・2kg/㎡ の堆肥を入れる(毎年2kg/㎡を畑に入れることが推奨されている)
・堆肥の全炭素;5.75%
・堆肥の全窒素;0.47%
・微生物のCN率を10と仮定

以上の条件で計算すると、
①投入された炭素と窒素の量(1㎡当たり)
・炭素量;2kg × 5.75% = 116g
・窒素量;2kg × 0.47% = 9.4g
②微生物がこの炭素を使って増殖するために必要な窒素量
・微生物のCN比;10 なので、
→ 必要な窒素 = 116g ÷ 10 = 11.6g
③不足する窒素量
・必要窒素;11.6g ー 堆肥中の窒素;9.4g = 2.2g

結論 CN比が12.4の完熟堆肥 でも、菌類など微生物は土壌中からの窒素を必要としています。しかし、その量は未熟堆肥(CN比;30)やDCMホーマックの牛ふん堆肥(CN比;21)に比べて少ないです。

◉ まとめ
1㎡あたり2kgの堆肥を入れた場合、

名称 CN比 不足した窒素量
堆肥未熟 30 80g
牛ふん堆肥 21 19.8g
剪定枝堆肥 12.4 2.2g

〇上表で分かったことは、
・完熟堆肥でも窒素の量は少ないが 、菌類は土壌から窒素を取り込んでいる
・堆肥が未熟なほど、菌類など微生物は土壌中からの窒素の取り込み量が多くなる
しかし、上表の数値は投入された2kg/㎡の堆肥すべてを分解した場合で、実際に畑に入れた堆肥がすぐにすべての炭素を分解するわけではないのです。
たとえば、
札幌で5月上旬に堆肥を畑にすき込んだ場合、
・札幌の5月上旬:平均気温は10~15°くらい
・土壌温度もまだ低めなため、微生物の活動はゆっくり始まる
・堆肥は未熟で、CN比が高い ので、分解に時間がかかる

以上のことから、
・窒素の半分が吸収される時期は、6月中旬~下旬頃
・窒素の全量が吸収される時期は、7月中旬~8月上旬(盛夏)

以上のように投入された堆肥2kg/㎡の全量の窒素が微生物に吸収されるのは、お盆前で5月上旬に堆肥を入れてから約4か月かかることになります。
なので、市販されている牛ふん堆肥を前年の秋に、または植付け3週間前にすき込むなど、一般的に言われているような農作業をしていれば問題は起こらないのです。私は家庭菜園を40年近くやっていますが、植付け前日に堆肥(化成肥料と併せて)をすき込むこともたびたびあります。葉が黄色くなる、成長が芳しくないなど窒素飢餓と思われる現象を経験したことはないのです。

それでは、どのような場合に窒素飢餓が発生するのでしょうか?