プラタナス:炭疽病(その2)

札幌は寒い日が続いています。3月下旬~4月上旬の気温の日(おおよそ最高気温が10℃で最低気温が0℃)が続いている感覚です。今日(4月29日)初めてエゾムラサキツツジの花が咲いているのを見ました。例年より相当遅いように感じます。4月を振り返って、天気が良くて暖かい日は1日あったかどうかです。関東以西では例年の春のようですが、札幌(北海道)では、まだ例年の春は来ていません。昨年の晩秋から「変な天気」が続くと思っていましたが、4月末まで続くとは全く予想外です。こちらに住んでいると、気候(気象)そのものが変わってきているという印象を受けます。
プラタナス炭疽病の後半です。「プラタナス炭疽病がなぜ大発生したか」について、4つの要因に分けて推論しています。少々長いですが、読んでいただければありがたいです。
先ず最初に、平成9年当時のプラタナスには、樹木に抵抗する体力(樹勢)があった。もしかして罹病していたかもしれないけれど、その当時は樹木が炭疽病と十分に闘える力、または、新芽が低温によって炭疽病に罹り枯死してもすぐに回復する体力(新芽を出し直す)があった。平成9年当時の街路樹プラタナスは植栽されてから20年前後のものが多く、定期的剪定が行われてから10年程度で、樹木自体にまだ様々なストレスに耐えうる力があった。一方、平成18年のこの病害の主因は当然日平均気温が12~13℃の低温が続いたことですが、それを起こさせる背景(誘因)として、街路樹では夏場の強剪定や除雪作業によってできる傷などの人為的な作用や排気ガスなどが、公園樹では夏場の剪定や踏圧による土壌硬化など、悪影響=環境ストレス、これら長年の人為的・環境的ストレス等がプラタナスの体力を奪い、炭疽病を引き起こさせる大きな要因になったのではないか というものです。
二つ目に、植栽されてから40年という歳月=時間であるとも考えます。ある程度の樹齢を過ぎると樹木自体にも病原菌に入りやすい個所を作ってしまうなど、人間と同じで、病気に罹りやすくなるのではないでしょうか。
三つ目に、プラタナスは外来種で北海道に移入されてから日が浅く、しかも、そのほとんどが昭和40年代半ば以降に植えられたものであるため、樹齢の似かよったプラタナスが多くの割合を占めていたことが被害を拡大させた要因と考えます。樹齢の異なる世代の違うプラタナスが万遍なく植えられていたならば、これほどの大発生にはならなかったように思うのです。
四つ目は、少し話はずれているかもしれないですが、街路樹や公園樹を剪定する技能士さんの話では、しばらく剪定していないニセアカシアを剪定するとほとんど棘がなく、作業がしやすいという話を聞きます。一方、毎年剪定される街路樹ニセアカシアは1cm前後にもなる棘を出します。これは、ニセアカシアが毎年枝を切られるのはたまらん というメッセージで、その対抗策として棘を大きくして自分を守ろうとしているのです。これと同じように、平成9年前後に寒い時期が続いていますが、その当時は、樹木に体力があり、炭疽病に罹らなかった、罹ったかもしれないですが、我々は気づかなかった、その時に、ある種炭疽病に対する対抗手段:免疫システムのようなもの(人間のような抗原抗体反応のような免疫システムがあるかどうか知りませんが・・)が出来て、菌に対する抵抗力が増したのではないか?と考えるのです。別表によると、平成9年から数年後の平成13~17年までの数年間は比較的暖かい年が続いています。そして、平成18年の久しぶりの寒さに襲われた時には、平成9年頃に獲得した菌に対する抵抗力が失せてしまっていた、弱まったのではないでしょうか?剪定をされなくなったニセアカシアの棘が小さく少なくなるように、比較的温暖な年が続くと、プラタナスも炭疽病に対する抵抗力が弱まったのではないでしょうか。 炭疽病を大発生させる要因としては、上述の三つに比べると小さい(影響力が弱い)と思いますが、平成18年に炭疽病が発生する前の数年間の暖かい気候が病気に対する抵抗力を鈍感にさせたのではないかと推測するのです。
以上、上述した4つの炭疽病を発生しやすくさせる条件(要因)が整ったところに、荒川氏が指摘する、前年度の天候不順など炭疽病が発生しやすい条件が上積みされて、平成18年の久しぶりの寒さ、12℃~13℃/日平均の低温が続いたこと(主因)が炭疽病の大発生に繋がったのではないかと考えています。
2-② 今後も平成18年(2006年)のような炭疽病が大発生するのか?
本州では気候が温暖なためプラタナス炭疽病は発生しないそうですが、欧米では普通の病気であると聞いています。平成18年の大発生で、札幌のプラタナスは炭疽病に対して系統的に弱い樹は枯死したり、炭疽病が発生して6年を過ぎても、いまだに新芽が枯損して夏になってやっと主幹から展葉している街路樹を多く見かけます。
1-013 プラタナス(赤字)
芽吹いた葉が炭疽病に罹り枯死しています。
これらの現状から、平成18年のような大発生は起こらず、芽出し時期の寒さの程度によって病気に強弱は出てくるものの、現在生き残っているプラタナスの中で、炭疽病に弱い系統が毎年発病し、その中から枯死する樹も出てくるというパターンを繰り返すのではないか、言い換えれば、欧米のように普通の病気になるのではないか、と思っています。
このレポートは自分の観察に基づく思い込みで書いています。勘違いや間違いがあると思います。遠慮のないご意見をいただければありがたいと思います。

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