先日、パソコンで興味深い記事を読みました。
40歳の会社員が、お米、肉、野菜などは一切食せず、果物だけで生活しているという話です。
その人の話によれば、
・この特異な食生活を6年間続けている
・これを始めた当初は苦しかったけれど、自分にはこの食生活が合っているというか慣れてしまったが、普通の人はやらない方が良い。 忘年会なのどの会食には行けないし、人付き合いが大変である
・これを始めてから、すね毛が無くなった
・骨密度が普通の人より高く、医者が驚いた
・普通の食事よりお金がかかる
など、果物だけの食生活をンタービュー形式で語っています。
⇒ https://toyokeizai.net/articles/-/115076
食生活でよく言われるのが、
・1日に違う種類の食べ物を30種食べなさい
・タンパク質は、1日に体重1g/1kg、60kgの体重の人は60g取りなさい
・野菜は350g/1日摂りなさい
など,これらは健康な体でいるための指標で 、そうしなければならないというものではなく、また、そうしなければ病気になるなどというものでもありません。
しかし、私を含めて普通の人は、
「この頃、ラーメンなど麺類系が多く、野菜や肉類が少ないな」
などと食事内容の偏りを多少なりとも気にしてしまうものです。
ところが、ここに出てくる果物だけで生活をしている男性は、写真を見ると髪は普通にふさふさとしているし、骨密度に関しては、医者が驚くほど良いそうで、彼は至って健康体のようです。
人間の体の構成要素は、水分;60%、たんぱく質;16%、脂肪;16%。※ミネラル;4%、その他(炭水化物、ビタミン);4% です。
※ミネラル:カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リン(P)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)
髪の毛や皮膚、血管、内臓など体のほとんどを形作っているたんぱく質は、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、硫黄(S)でできています。
ところが、果物は水分がほとんどで、どれくらいのタンパク質がふくまれているかというと、タンパク質を多く含むアボガドで100g当たり2gの2%です。 果物全体を平均すると1~2%で、私たちが日頃食べているリンゴは0.3%、ミカンは0.8%だそうです。
人は前述の体重1kg当たり1gのタンパク質を必要とすると、果物だけで生きていくためには何キロの果物を食べると必要量のタンパク質が摂取できるのでしょうか?
果物のタンパク質量を1%で計算すると、
1kgの果物を食べると10gのタンパク質を摂ることができ、体重60kgの人は1日当たり60gのタンパク質が必要なので、6kgの果物を食べる必要があります。
ところが、当人の話では1日に冬で1kg、夏で2kgと言っています。 一般的に言われている1日に必要なタンパク質は体重60kgの人で60gで、果物だけで生活している彼は果物を多く食べる夏で2kgなので20g/日です。 必要量の1/3程度です。 その不足分をどのように補っているのでしょうか?
彼は言っています。「すね毛がほとんど無くなった」
というように、タンパク質の減失を防ぐために、生命維持にとって重要でないものは造らない、体外に排出しない体質に変わっていったのでしょう。
人間の体で、骨は7~10年で古い骨が新しい骨に入れ替わり、赤血球は120日で古いものは壊され、新しいものが骨髄内で造られます。 腸(小腸?)は1週間程度で新しい細胞に入れ替わるようです。
話は少し横道に逸れて植物になります。
落葉樹は毎年秋に紅黄葉しては葉を落とします。 この現象の意味は、葉の中にある葉緑体が壊れて、その中にある窒素(N)やカルシュウム(Ca)や亜鉛(Zn)などの微量要素が樹体内に戻されることです。 これらの物質は植物にとって光合成でつくれるデンプンと違って、自ら作ることのできないもので、それらを翌年の春の芽出しなどに再利用するのです。
それと同じように、人間も骨や赤血球、内臓などの壊された細胞から再利用できる物質を尿や便、汗などから余分に排出しないようにしているのではないのでしょうか?
おそらく、彼の体から排出される物質、例えば、ひげは普通の人に比べると伸びはかなり遅く、便はほとんど臭いのしない、しかも、体内に必要な栄養分をより多く残すために、その量は少なく、その中に含まれる栄養分もかなり低いレベルなものではないでしょうか。
少し見方を変えて、人間に近いゴリラ、彼らは草食系で、タンパク質を多く含む昆虫なども少し食べるようですが、主食、そのほとんどは熱帯の果物や葉っぱです。 それでも彼らはあの筋肉隆々とした体を形作っています。 私たちはタンパク質を多く摂らないと筋肉はつくれない というイメージを持っていますが、そうではないようです。
果物だけで生きている彼はこの生活を始めて6年ですが、ゴリラの食生活を見てみれば、彼はこの生活を70才まで続けても普通の老人と変わらない生活を送っているのではないかと想像します。
面白いというか、不思議というか、人間の体は既存の知識では想像のつかない適応能力があるようです。 興味深いですね。