この樹はどのようにして生きているのか?

1-022 ヒメリンゴ?2012.8.26
この樹は、芸術の森に植えられている樹です。樹種はおそらくヒメリンゴ(エゾノコリンゴ?)と思うのですが、定かではありません。このヒメリンゴについてどうこう言うつもりでここに取り上げたわけではありません。
この樹の地際を見てください。
拡大したのが、下の写真です。
1-021 ヒメリンゴ?2012.8.26
地際から高さ約50cmのとこところまで樹皮がないのです。ぐるっと1周、ぜんぜん樹皮がないのです。それでも、樹上ではたくさんの果実が実っています。
1-024 ヒメリンゴ2012.8.26
この樹の樹皮がなくなったのは、病気によるものか、いたずら等人為的に剥がされたのか原因はわかりませんが、ここ1~2ヶ月前など最近にこの状態になったのではなく、今年の春先か、もしかすると昨年のいずれかの時期に、この状態になったように見えます。
ということは、この樹は樹皮(形成層と師部)がない状態で葉を出し、果実を実らせたのです。確かに、師部がなくても、木部 ※1 が生きていれば、根から水分と養分は上がっていき、葉で光合成を行えます。しかし、葉でできた栄養分は根にはいけません。そのため、根の成長は止まります。おそらく、根は成長はできないけれど、しばらくの間は(どれくらいの期間かはわかりませんが)生きていけるのでしょう。
今年は、根に回るはずの養分が樹上に留まっているために、通常の年より大きい実がたくさん成っているかも知れません。
※1:木部でもその年に新しく形成される水をよく通す部分は、この樹には存在しない。それ以前にできた木部(辺材)の生きている部分が水と養分を根から吸い上げている。
zakkan2202_1.jpgグーグル画像より
この樹が生き続けられる絶対に必要な条件は、一つには根が生きていることです。このことを言い換えると、水分や養分を吸収できる新しい根を常に出し続けられるかどうかです。葉からの養分が途絶えても根の内部に貯めてある養分でしばらくは新根を出せるのでしょう。どれくらいかは判りませんが・・・・。二つ目は、根で吸い上げた水分等を樹上に揚げられるかどうかです。この役目は木部が担っています。その木部も死んでいる部分(心材)と生きている部分(辺材)があります。その辺材でも、水分等を通せるのは、主に2~3年までの若い組織で、古い組織はほとんどその役目を果たしていないと言われています。この樹の場合、一番水を通せることのできる組織、今年でできるはすの木部はありません。また比較的新しい2~3年の木部も樹皮を剥がされたことによる影響を受けて、それほど機能していない可能性が高いよう思われます。そうすると、古めの木部がまだ頑張って働いているのでしょう。きっと。
これらのことを考えると、この樹の寿命はせいぜい後1~2年が限度ではないのでしょうか?
この樹を見た感じでは、実が少し多いかなという気もしますが、ヒメリンゴならこれくらいの実をつけます。ただ、ヒメリンゴの場合、通常、春に短枝に花と葉をつけ、その後、長枝を出しますが、この樹に長枝はほとんど見当たりません。樹皮を剥がされたことによる影響を確実に受けているようです。経過観察要の樹木です。
それにしても、幹周りの樹皮を全て剥がされても元気に生き続けている樹があるのですね。驚きです。

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