ポプラ:超強風台風は樹木にどのように作用したか?

台風15号が九州に近づいています。夏の終りになってやっと台風が来るという感じです。“やっと”という言い方も変ですが、例年なら1~2個日本(本州・四国・九州)に上陸するか接近してきます。今年は台風が来るのが遅いようです。中国や日本に異常な暑さをもたらしている東シナ海の太平洋高気圧が影響しているのでしょうか?
台風シーズンはこれからが本番です。明後日9月1日は防災の日です。
今から59年前(昭和29年:1954年9月26日)、洞爺丸台風で青函連絡船が遭難しています。1100名以上の犠牲者がでています。この台風の進路は九州にいったん上陸してから中国地方を通って日本海に抜け、その後猛スピードで北海道西方に近づき、積丹半島?付近に再上陸して北海道を通り抜けています。この台風は典型的な風台風で、道内は猛烈な風に襲われ、北海道の森林に壊滅的な被害を与えたといわれています。
次に、平成16年9月8日、今から9年前、台風18号が北海道を襲っています。札幌で最大瞬間風速50mを記録した台風です。この台風も道内の森林に強烈な被害をもたらしています。しかし、自分に強く残っている印象は、幹径が1m前後あるポプラなどの大木が根こそぎひっくり返っているのをあちこちで見かけたり、大きな樹木が倒れて高層マンションが急に現れて周辺の景色が一変するなど、公園や街路樹など身近な緑がそれまで見たこともない惨状になっているのを記憶しています。
この二つの台風の共通点は3つあります。一つは風台風です。しかも並みの風ではありません。超強風です。二つ目は時期です。8月ではなく9月に入ってから来る台風です。三つ目は台風の通り道です。九州付近に近づいてから日本海に抜け、その後猛スピードで北海道に近づいてきて、北海道の日本海側に上陸する台風です。札幌で言えば、日本海を南西から北上してきて、積丹半島から留萌付近の海岸に上陸する、札幌の南側ではなく北側を通り抜ける台風です。このコースを取る台風は特別に気をつけなければなりません。
今回の話題は、平成16年台風18号の超強風が樹木にどのような影響を与えて、それがどのように作用し、その後の樹木にどのような現象として現れたかについてです。
021 ポプラ 改良ポプラ 真駒内川領地(赤字) 
写真は、真駒内緑地(南区真駒内南町)の道路沿いに列植されているポプラ(改良ポプラ)です。平成の始めには幹径が20~30cm、樹高は現在の高さ(20m前後)はあったように記憶しています。おそらく、昭和40年代に植えられたのではないでしょうか?。樹齢は50年前後と推測します。その当時(台風18号が襲った年)の樹木の大きさは、現在とあまり変わらない樹高約20~25m、幹径70~100cm弱です。
(以下の写真は昨年、平成24年8月6日に撮ったもので、台風18号が襲ってから8年が経過しています。)
007 ポプラ 真駒内川緑地(赤字)2012.8.2
樹皮が幹から浮き上がって剥離しています。これは、台風の強風が枝を上下左右揺さぶったためにできたもののようです。。普通の風なら少々の揺れでは樹皮が剥離することはありません。しかし、瞬間最大風速が50mに達するような風が吹くと、枝の揺れにより樹木がねじれて、樹皮はその力に耐え切れなくて剥離するようです。
015 改良ポプラ(赤字)2012.8.2
これは、剥離した樹皮が剥がれ落ちて、木部が露出した部分のようです。幹から剥離しなかった樹皮がその周りの部分にカルスを形成して修復しているのが解ります。この樹を見上げると、樹皮が剥がれた部分の上層部には緑葉がありません。樹皮の剥離により水と養分が絶たれて枝が枯れ上がってしまったようです。
008 改良ポプラ(赤字)2012.8.2
拡大して見ると、木部に直径5mm~1cm弱の孔と筋が見えます。孔の大きさからして、おそらく、カミキリムシの幼虫がつくった穿孔痕ではないでしょうか。
平成16年の夏に襲ってきた18号台風は、樹木の葉を吹く飛ばし、大小多くの枝を折り、さらに幹から樹皮を剥がして樹木をズタズタにして通り去ったのです。“樹木を枯らすには盆過ぎの強剪定”といわれますが、台風18号は北海道の樹木にそれ以上のことをしたのです。樹木は弱ります。カミキリムシなどの昆虫は、そのような樹木を好んで卵を産み付けます。一般的に元気のいい樹木は、昆虫に卵を産み付けられても、樹脂など抵抗物質を出して自分の体を守ろうとします。それで被害をある程度抑えることができます。しかし、傷つけられ体力を失った樹木は抵抗する力も弱まっています。弱り目に祟り目です。
012 改良ポプラ(赤字)2012.8.2
これは、樹木の繊維が何らかの原因で破壊された痕です。台風18号は、その強風はポプラの主幹を揺さります。主幹は大きく反返るか湾曲します。そのとき風上に面する主幹表面には引張りの力が働き、反対に、風下側には圧縮の力が加わります。ある限界点を超えると、前者では樹木繊維の断裂が起き、後者では圧縮する力により樹木細胞が押しつぶされる座屈がおきます。台風の風は一方向だけから吹きません。時間と共にその向きを変えていきます。この樹木繊維の破壊痕は、断裂と座屈が交互に繰り返してできたものではないでしょうか。
9年前の台風18号のような超風台風(ちょうかぜたいふう)は、根こそぎ樹木を倒す“根がえり”や幹枝折れだけではなく、樹の内部組織まで破壊しているのです。
011 改良ポプラ(赤字)2012.8.2
台風18号が襲ってから4~5年が過ぎた頃、真駒内緑地の道路沿いで、強風が吹いた翌日に、直径10cm前後、長さが2~3mもある大きな枯れ枝が落ちることがありました。樹高20mの上層部の枝が枯れてきたのです。台風が樹木に被害を与えた直後は、枝が折れたりして無残な姿を晒します。しかし、翌春には新葉が出て夏の見た目には例年通り元気に成長しているように見えます。まだそのときは樹木にも体内に蓄積した養分があり、その蓄えで新しい根を出し新しい葉を出して成長できるのです。しかし、樹木の内部では害虫の攻撃が始まっており、樹皮が隔離した部分では養分と水分が供給されにないために、その上部にある枝が枯れ始めます。そして、ある時、強風が吹くと大きな枝が道路に落下するのです。
台風で傷つけられた樹木は葉を出して精一杯生きているのですが、満身創痍の樹木の中には徐々に衰弱していくものも現れます。、
その後、この道路沿いのポプラの多くが伐採されました。台風18号が札幌を襲ってから5~7年が経過しています。

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ポプラ:超強風台風は樹木にどのように作用したか?」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
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    こんばんは~。
    樹齢50年でここまで太く、大きく育つとは、ポプラの成長はとても早いんですね。
    地元の市街地にある、緑あふれる大きな運動公園に育つフウの大木たちを彷彿とさせます。
    こちらも成長が早いようですね。
    台風で傷つきながらも生き残ったポプラはより風格が出てきたように感じられます。
    自然界では自然淘汰に委ねることができますが、街中ではそうはいきませんね。
    急に倒れたりして、何か起こってからでは遅いわけで・・・
    安定した環境で発達していくのが自然の姿であれば、逆に何らかの攪乱を受けて崩壊するのもまた本来の自然・・・
    まさに自然とは変化そのものだと聞いたことがありましたが、
    カメラを持って散策するたびに、せめてもとその時の自然の姿を記録していきたいと考えさせられます。

  2. SECRET: 0
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    こんばんは。
    いつもコメントありがとうございます。
    平成16年の風台風は市内の樹木に計り知れない被害をもたらしました。
    街中の倒れた樹木やその後衰弱した樹木は処分され、、その傷跡はなくなっています。
    しかし、郊外や山間部の道路沿いには、未だ立ち枯れた樹を見かけます。
    それに気付いた今から3~4年前は、その理由がなんだかわからなかったのですが、
    ポプラの被害樹を見て、そのことが解った次第です。
    大きな台風が樹木に与えた傷、被害は、
    それが癒えるまでに長い年月が必要なようです。  

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