栃の実


追記:9月10日
とちの実を生で食べてみました。
包丁でとちの実を半分に割ると少し黄色味を帯びた白い果肉が出てきます。見た目はくりそっくりですが、その一塊を口に入れ噛み砕くと、えぐみ(渋みと苦味)がじわっと拡がります。本当に食べられたものではありません。山の動物たちにとって冬を越すための貴重な食料ですが、この渋みと苦味をどのように感じて食べているのでしょうね。
美味しいとち餅をつくるには、このえぐみを、灰汁(あく)をどれだけ丁寧に抜くかにかかっているようです。そのやり方は、
①天日で乾かしたとちの実を川の清流に1週間以上浸けておき、
②堅い外皮がむきやすくなったら、それを取り出して外皮を除く(この皮をむくときに、すごい悪臭(発酵臭)がして、作業は大変らしいです。)
③それを、さらに3日間水に浸けて洗い、
④そして、さらにさらに、草木灰を入れた水に1日間浸けて灰汁をぬき、水でさらす。
⑤この灰汁抜きのとちの実1に対してもち米2の割合で混ぜてふかす
⑥それを餅つき器などでとち餅をつくる。
以上がとち餅ができるまでの一連の作業工程です。
遠い昔の子供のころ、毎年、母方の実家から届けてもらうとち餅を、何気なく当然のように食べていましたが、それをつくるには、先ず山に行ってとちの実を集め、下拵えの灰汁抜きに2週間近くをかけ、その中には悪臭が伴う皮むきもあり、そんな手間ひまかけて作られたお餅には、人知れぬ苦労が混ざりこんでいたのです。もうとうの昔に亡くなったおばあちゃんに改めて感謝です。
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栃の実の写真を撮りに羊ヶ丘にある森林総合研究所に行ってきました。
1-015 トチノキ2012.9.8
樹の高さは8~10m程です。春先の実がなってない時期は、枝が上に伸びていましたが、この時期になると、実の重さで、枝がたわってきています。樹形が正三角形から横長の二等辺三角形になっています。今年は豊作の年のようです。実がたくさんなっています。
1-018 トチノキ2012.9.8
トチノキの実です。
1-031 トチノキ
トチノキの花穂(円錐花序)は15~25cmになります。写真はその花軸です。細い枝先のように鋭く伸びています。果実はその先には付けないで、必ず花軸の基部に付けます。樹木図鑑(樹に咲く花)では、「ほとんどが雄花で、両性花は花序の下部につく」と書かれていますが、正しくそのとおりです。
数年前、秋にかかろうとするこの時期に北大植物園へ行ったとき、樹林傍を歩いていると、背中の後で「どすん」と音がするのです(すこし大げさですが、静かな園内ではそのように聞こえます)。振り返っても何もないのです。辺りを見渡すととちの実がたくさん落ちています。上を見上げると、20mを超える大きなトチノキがあるのです。音の原因は芝生に落ちたとちの実です。
道路を走行中の車に街路樹のとちの実が落ちて、屋根が凹んだという事件を聞いたことがありますが、とちの実を手に持ってみるとずっしりと思いのです。重さは60~80g/個あります。ゴルフボールが約46gですので、大きいとちの実ならその倍の重さもありそうです。100g近い重さのとちの実が10m以上の高さから落ちてくると、車の屋根の鋼板をへこますのは有り得る話だと思います。
1-052 トチノキ2012.9.8
* つまようじの長さは6㎝
果実を割って取り出したばかりのとちの実です。果実は3裂し、その中に1~2個のくりそっくりの実が入っています。表面は黒光りのチョコレート色をしています。しかし、時が経つと、実の一部がへこみ、色も黒光りのチョコレート色から色あせた茶褐色に変わってしまします。
トチノキで思い出すのが栃もちです。毎年、年の暮れになると母親の実家からおもちを届けてもらうのです。それはいつも決まっていて、白もちとよもぎもちと栃もちの3種類です。小学生の頃は白もちを好んで食べていたのですが、中学生の頃からか、栃もちの食べる割合が増えてきました。
栃もちは、取り立てて美味しいというものではありませんが、食べていくうちにその味に慣れるというか、いぶし銀の味といおうか、その良さがだんだんと分かってくるのです。食べ方は、焼いたお餅に砂糖醤油などを付けて食べるのが一般的と思いますが、それを食べる前に、何もつけずにそのまま食べると、とちの実の味がより新鮮に口の中にひろがります。

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