トチノキ(その6)

22日(火)と23日(水)は、今冬の晴れた日の天気とは違う、春を思わせるようなまぶしい太陽と抜けるような青空が広がる本当にいい天気でした。日中の気温は最高でも0℃までしか上がらず、肌にあたる空気はまだまだきつく冷たいのですが、太陽光線の強さで幹線道路横に積まれた雪も溶け出し、南側の道路脇に雪解け水が流れ出していました。少し春が近づいてきているようです。
今回はトチノキです。
1-031 トチノキ2012.8.25
5月下旬に20cm前後もある大きな円錐状の花を咲かせ、8月下旬には1個の重さが60~80g、大きいものになると100gもあるなような手に持つとずっしり重い実を、少し大げさに表現すると鈴なりに生らせます。そして10月下旬に落葉します。
1-073 トチノキ2012.4.21
このトチノキは出葉前の4月下旬に撮っています。10月下旬~5月上旬まで、半年以上このような姿をしています。樹高は15m弱くらいでしょうか。樹齢は30~40年くらいは経っているのでしょう。独立樹だとこのような樹形になるのですね。中段にある枝は上段の枝に比べると横に広がっているというか、しなっているように見えます。これは、とちの実の重みでこのようになったようです、
1.冬芽
1-RIMG0007-001(赤字)2013.1.22
①頂芽 写真の頂芽は小さいほうで、1.5cm強ですが、大きいものになると3cmを超えるものもあります。
②側芽 頂芽に比べると極めて小さいです。
*冬芽を指で触るとくっついて離すのに少し力が必要なくらいねばねばべとべとしています。このネバネバは冬の寒さや害虫から身を守るためといわれていますが、はっきりしたことはわかってないようです。
③皮目 つぶつぶがたくさんで目立ちます。
④葉痕 形は、卵形、腎臓形、三角のおむすび形といろいろあるようです。
⑤維管束痕 トチノキの葉は、掌を広げたような、小葉を5~7枚もつ大きな葉だけあって、維管束痕も多いようです(5~7個くらい?)。
1-RIMG0008(赤字)2013.1.23
2 名前の由来
①“ト”は「十」、“チ”は「千」で、実がたくさんできるという意味であるとか、②アイヌの方言として「トチニ」という言葉があり、「ニ」は「木」なので 「トチ木」であるとか、③トチノキは日本固有種ですが、朝鮮語でドングリの意味であるトットリに由来するという説など、いろいろあるようです。が、牧野新日本植物図鑑では、「意味ははっきりしない」とばっさりときっています。
3 Data(北海道樹木図鑑)
科名 トチノキ科
属名 トチノキ属
学名 Aesculus turbinata 属名のAesculusは、果実が食用や家畜の飼料になるという意味
花期 5月下旬~6月上旬
分布 日本、本道では南西部以南に自生する

にほんブログ村 写真ブログ 植物・花写真へ
にほんブログ村

トチノキの黄葉

トチノキの紅葉は、かすんだような、ぼけたような、早く落ちてもいいような見栄えのしない褐色です。それは、おそらくいつも見慣れている街路樹のトチノキのせいなんだろうと思います。
1-063 トチノキ 国道230号線
2012.10.27
これは、国道230号線(石山通)の街路樹トチノキです。毎年、7月下旬頃から葉縁が褐色に変わり、8月下旬ともなると、ほとんど緑色を失い、灰色混じりの褐葉になります。都心部のトチノキはこのような紅葉が多い、いやほとんどがこのようです。
1-032 トチノキ
2011.10.28
そして、トチノキの紅葉は、通常はこれぐらいの褐色をイメージする人が多いのではないでしょうか?
1-007 トチノキ
2011.10.28
でも、このように美しく黄葉するトチノキもあるのです。これぐらいきれいに黄葉すると見るに値します。
1-057 トチノキ
2012.10.27
これは、知事公館の中あるトチノキです。橙色というより鮮黄色です。太陽の光を浴びて鮮やかさが一層増しています。
1-057.jpg
2012.10.27
トチノキの黄葉というイメージからかけ離れています。
樹木の紅葉は、その年によって、気温や降水量などの違い、特に紅葉前の天候が大きく左右します。また、場所による違いもあります。、樹木の種類によっての違い、同じ種類でも個々の樹木によってかなりの差が出てきます。面白いですね。これって、葉の中でどのような変化がおこっているのでしょうか?すこし調べてみたいと思います。

にほんブログ村 写真ブログ 植物・花写真へ
にほんブログ村

ベニバナトチノキの実

1-023.jpg2012.5.31
6月上旬に、龍谷学園前のベニバナトチノキを紹介しましたが、あれから3ヶ月ちょっと過ぎています。早いですね、月日が経つのは。
1-091 ベニバナトチノキ2012.7.1
ベニバナトチノキの実です。花が終わってから2~3週間経っているのでしょうか? まだ、実は小さいです。
1-005 ベニバナトチノキ 石山緑地横2012.6.19
ベニバナトチノキの実の特徴は、果皮に短い毛?があることです。
1-014 ベニバナトチノキ2012.9.13
これは、最近撮ったものです。実の大きさは3~5cmです。見た感じ、とちの実より幾分小さいような気がします。実に触ると、ちくりとします。小さい実の果皮にあった毛?が棘化しているようです。
ベニバナトチノキはセイヨウトチノキ(白花)とアカバナトチノキをかけ合せてできた種間雑種ですが、セイヨウトチノキの果皮には棘があるようで、実についてはそちらの血を引いたようです。
おせっかいな話。
こんなことは誰もしないと思いますが、とりあえず一言。
ベニバナトチノキはセイヨウトチノキとアカバナトチノキの種間雑種ですから、ベニバナトチノキからできた種子を播いても、ベニバナトチノキと同じ花は咲かないと思います。おそらく、先祖がえりをして、1本はアカバナトチノキの花が、別の1本はセイヨウトチノキの白花が咲くといったように、ばらばらに咲くと思います。(昔、高校時代の生物で習ったメンデルの法則のようになるのではないでしょうか?)
アカバナトチノキとセイヨウトチノキの写真は6月11日のブログです。

にほんブログ村 写真ブログ 植物・花写真へ
にほんブログ村

栃の実


追記:9月10日
とちの実を生で食べてみました。
包丁でとちの実を半分に割ると少し黄色味を帯びた白い果肉が出てきます。見た目はくりそっくりですが、その一塊を口に入れ噛み砕くと、えぐみ(渋みと苦味)がじわっと拡がります。本当に食べられたものではありません。山の動物たちにとって冬を越すための貴重な食料ですが、この渋みと苦味をどのように感じて食べているのでしょうね。
美味しいとち餅をつくるには、このえぐみを、灰汁(あく)をどれだけ丁寧に抜くかにかかっているようです。そのやり方は、
①天日で乾かしたとちの実を川の清流に1週間以上浸けておき、
②堅い外皮がむきやすくなったら、それを取り出して外皮を除く(この皮をむくときに、すごい悪臭(発酵臭)がして、作業は大変らしいです。)
③それを、さらに3日間水に浸けて洗い、
④そして、さらにさらに、草木灰を入れた水に1日間浸けて灰汁をぬき、水でさらす。
⑤この灰汁抜きのとちの実1に対してもち米2の割合で混ぜてふかす
⑥それを餅つき器などでとち餅をつくる。
以上がとち餅ができるまでの一連の作業工程です。
遠い昔の子供のころ、毎年、母方の実家から届けてもらうとち餅を、何気なく当然のように食べていましたが、それをつくるには、先ず山に行ってとちの実を集め、下拵えの灰汁抜きに2週間近くをかけ、その中には悪臭が伴う皮むきもあり、そんな手間ひまかけて作られたお餅には、人知れぬ苦労が混ざりこんでいたのです。もうとうの昔に亡くなったおばあちゃんに改めて感謝です。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~  
栃の実の写真を撮りに羊ヶ丘にある森林総合研究所に行ってきました。
1-015 トチノキ2012.9.8
樹の高さは8~10m程です。春先の実がなってない時期は、枝が上に伸びていましたが、この時期になると、実の重さで、枝がたわってきています。樹形が正三角形から横長の二等辺三角形になっています。今年は豊作の年のようです。実がたくさんなっています。
1-018 トチノキ2012.9.8
トチノキの実です。
1-031 トチノキ
トチノキの花穂(円錐花序)は15~25cmになります。写真はその花軸です。細い枝先のように鋭く伸びています。果実はその先には付けないで、必ず花軸の基部に付けます。樹木図鑑(樹に咲く花)では、「ほとんどが雄花で、両性花は花序の下部につく」と書かれていますが、正しくそのとおりです。
数年前、秋にかかろうとするこの時期に北大植物園へ行ったとき、樹林傍を歩いていると、背中の後で「どすん」と音がするのです(すこし大げさですが、静かな園内ではそのように聞こえます)。振り返っても何もないのです。辺りを見渡すととちの実がたくさん落ちています。上を見上げると、20mを超える大きなトチノキがあるのです。音の原因は芝生に落ちたとちの実です。
道路を走行中の車に街路樹のとちの実が落ちて、屋根が凹んだという事件を聞いたことがありますが、とちの実を手に持ってみるとずっしりと思いのです。重さは60~80g/個あります。ゴルフボールが約46gですので、大きいとちの実ならその倍の重さもありそうです。100g近い重さのとちの実が10m以上の高さから落ちてくると、車の屋根の鋼板をへこますのは有り得る話だと思います。
1-052 トチノキ2012.9.8
* つまようじの長さは6㎝
果実を割って取り出したばかりのとちの実です。果実は3裂し、その中に1~2個のくりそっくりの実が入っています。表面は黒光りのチョコレート色をしています。しかし、時が経つと、実の一部がへこみ、色も黒光りのチョコレート色から色あせた茶褐色に変わってしまします。
トチノキで思い出すのが栃もちです。毎年、年の暮れになると母親の実家からおもちを届けてもらうのです。それはいつも決まっていて、白もちとよもぎもちと栃もちの3種類です。小学生の頃は白もちを好んで食べていたのですが、中学生の頃からか、栃もちの食べる割合が増えてきました。
栃もちは、取り立てて美味しいというものではありませんが、食べていくうちにその味に慣れるというか、いぶし銀の味といおうか、その良さがだんだんと分かってくるのです。食べ方は、焼いたお餅に砂糖醤油などを付けて食べるのが一般的と思いますが、それを食べる前に、何もつけずにそのまま食べると、とちの実の味がより新鮮に口の中にひろがります。

にほんブログ村 写真ブログ 植物・花写真へ
にほんブログ村

小さい文字

トチノキ (その2) ベニバナトチノキ

追記:6月11日
北4条西20丁目のベニバナトチノキについて、元中央区土木センターに勤務していた方から情報をいただきました。2007年6月頃の農業新聞に掲載された記事だそうです。
1982年、今から25年前(現在では30年前)、地域の人たちが環境保全にと市に頼んで高さ2~3mの「幼木」植えたのが始まり。樹齢を重ねて高さ14~15mもある成木になり、5月末から6月半ばにかけて赤い房状の花を咲かせる(新聞記事の一部を抜粋)
この記事から推測すると、今から30年前に、数年かけてトチノキの幼木を植えて、順次ベニバナトチノキを接ぎ木したのでしょう。接ぎ木後25~28・9年は経っているのでしょうか。
誰が接ぎ木をして、その後の世話を誰がしたのか?この記事には書かれていませんが、白花のトチノキが幅を利かせるようになっているにせよ、ベニバナトチノキがここまで立派に育ったのは、地域の方の日頃の目配りが大きな要因ではないでしょうか。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
018.jpg2012.5.31
街路樹の樹冠に赤い点々が見えます。ベニバナトチノキの花です。場所は北4条西20丁目。正面の建物は龍谷学園です。
深緑で緑量感のある樹冠の中に、赤い花が点々と咲いている光景は、なかなか見ごたえがあります。私が写真を撮りに行ったときも、2組の女性が同じように写真を取りに来ていました。
街路樹の延長が250m程あり、そこに、正確に数えなかったのですが、両側併せて約50本ほど植えられているのでしょうか。樹高は6~10m弱、トチノキのように枝を上に伸ばさないで横に広げるタイプで、樹形は、球形に近い感じです。
046 ベニバナトチノキ2012.5.31
ベニバナトチノキの花です。ベニバナトチノキは、アカバナトチノキとセイヨウトチノキの種間雑種です。
ある書物では、「ベニバナトチノキは、セイヨウトチノキ(マロニエ)とアカバナトチノキを交配し、その結実した種子を実生から育て、その木から咲いた花に、さらにもう一度セイヨウトチノキの花粉を戻し交配して人工的に作った品種である」書かれています。
400pxAesculus paviaL.(Dwarf_Red_Buckeye)Hippocastanaceae(1657458344)
アカバナトチノキ  wikimedia commonsより転写
450px-Aesculus_hippocastanum_flowers.jpg
セイヨウトチノキ  wikimedia commonsより転写
ベニバナトチノキは、アカバナトチノキの赤色とセイヨウトチノキの花の形態を持ち合わせており、両種の良いところを受け継いでいるようです。
話を街路樹に戻します。
樹幹を見ると、1.5~2mの高さに、樹肌が明確に分かれる線が一周しています。これは、この位置でトチノキを台木にベニバナトチノキを接木した痕です。ここのベニバナトチノキは幹径が30~40cmはありますので、30年、いや、それ以上前に接木されたのでしょうか?
2012.5.31
ベニバナトチノキ2012.5.31
もう少し歩くと、こんな樹に出会います。
1-021.jpg2012.5.31
1-020.jpg
これは、接木をした後に、台木から出てくる芽を取り除かなかったために起きた現象です。ライラックの台木のイボタが地際からたくさん出ているのを見たことがあると思いますが、台木から出てくる芽を欠かないと最後はイボタになってしまう、あれと同じです。
左側の幹にトチノキの台木にベニバナトチノキを接いだ位置(線)が見えます。その位置からトチノキが芽を出して、ここまで太くなったのです。最後はトチノキになってしまうでしょう。当初は、全てのトチノキの苗木(街路樹)にベニバナトチノキを接木したと思うのですが、現在では、1/3はトチノキに化けてしまっています。

にほんブログ村 写真ブログ 植物・花写真へ
にほんブログ村