エゾニワトコ   満開

所用で札幌市の郊外、厚別区山本へ行ってきました。 山本排水路沿いにヤチダモの並木が続くところです。 その近辺で、満開のエゾニワトコを見つけました。
2017.5.23
樹高は4.0~5.0m、樹幅は7.0~8.0m。 地際から枝分かれして、扇状をなし、エゾニワトコとして大きなものです。
普段見るエゾニワトコは道路縁や空地などで、このように立派な樹姿のものはなかなか見かけません。 思わず車を止めて写真を撮りました。
2017.5.23
ちょうど満開。

あざやかな緑の新芽が、まだ葉にならない前、こずえにあわい黄緑色の細かな花が群をなして盛り上がるように咲く。 花言葉を「あわれみ」、「同情」というが、この半開きの花をとってきて、乾かしたものを接骨木花という。 この時にはエゾニワトコもニワトコも区別しない。 この花をせんじた汁はよいかおりがする。 これを内用したり、打撲傷の湿布などに使う。 ニワトコに接骨木(せっこつぼく)という字を当てるのは、花のせん汁や材の黒焼きが骨折の治療に効果があるからだ。 葉や茎を干したものは、発汗剤や利尿剤としてよくきくことが古くから知られ、家のまわりに植栽されていたらしい。 若葉を食用にすることがあるが、水洗いが不足だと、下痢をおこすことがある。
エゾニワトコは北海道の広葉樹林帯に多いが、どうかすると針葉樹林帯の林のふちに姿を見せることもある。 森のなか、林のふち、道ばたなど、日当たりのよいところに多く、分布は全道的にひろい。 実が赤くなり始めるも早く、夏の初め、青い葉にまじって赤い小さな実が密集し人目をひく。 カラスがよく食べ、うまそうに見えるが、味はまずい。
(北方植物園 エゾニワトコより抜粋)

上の文章をパソコンで打っていて気づいたことが二つあります。
一つは、新芽と花の関係です。 上文では、新芽が出て葉が大きくなる前に花が咲くように書かれていますが、実際は新芽と同時につぼみが出てきて、花が咲くときは葉も十分大きくなっています。
二つ目は、この北方植物園が発刊されたのが昭和43年で、今から49年前、約半世紀前のことです。 その当時は札幌の人口も今よりぐっと少なくて、自然林も身近にあり、エゾニワトコの実をカラスがつつくのを見る機会も多かったのでしょうか。
今見るカラスは、ゴミステーションを荒らすか、豊平川河川敷の広い芝生地で地中にいる虫を捜している姿か、道路の電線にとまって、そこからクルミ等硬いものを落し、通行する車がそれをタイヤで押しつぶした後、電線から降りてきてついばむ姿をよく見かけます。 半世紀経つと、カラスの食生活も人間同様、昔とは相当様変わりしているのでしょうかね。 

それともう一つ、アイヌの人々はエゾニワトコをどのように思い、どのように利用していたのでしょうか? 更科源蔵著「コタン生物記」にはエゾニワトコの項目はあるのですが少々長いので、北海道大百科大辞典に同氏が同項目で以下のように記しています。

アイヌ名で、この木をソコニシ(シコニの訛りで糞を持つ木)というのは、イヌエンジュと同じように固有の悪臭があるからである。 ところによって死者の木というところもある。 この木の髄が枯れ腐ったように見えるからで、人間が死ぬのは脊髄が腐るからといわれていた。 死者を包んだ筵(むしろ)を閉じる串にこの木を用いたのは、糞のようないやな匂いのする木であるため、死者が自分で閉じ込められた串を抜いて、死の世界から戻って来られないようにしたのもである。 
ところによっては、あの世について行くつえである墓標も、あの世に持って行く副葬品の小刀とか、火打石、女性には機織器などをこの木でつくった。  またあることろではソコンニ・カムイ(ニワトコ神)といって、家の入口の守り神にしたり、病気のときにこの木で木幣をつくり、病気の神を遠くに連れて行ってもらったり、心配事のあったときには身体をはらって川に流したりした。
春の芽出しのときの若葉を陰干しにしたのを腹痛の薬にしたり、赤く熟した実を酒に入れて肺病の薬にもしたという。 サハリン(樺太)ではこの木でセニシテ・ニポポ(それで丈夫になる木の子供)という人形をつくって、子供のお守りにして、その木特有の悪臭で魔物を近づけないようにした。

書き方によって、エゾニワトコのイメージが随分と変わるものですね。
更科源蔵氏がいう「糞のようないやな匂いがする木」を実際に嗅いで見ました。 上述の文章を読んでから嗅いでいるので、自分の中に相当臭いという先入観があるのか、手にとって嗅いで見ると、それ程でもないのです。 「クサギ」という名前の木がありますが、その木ほど臭くはなく、独特の臭さまで行かず、少し臭いかなという程度です。 糞の臭いというのは言いすぎのように思えます。 しかし、今は若葉の時期で、これが夏場になって成熟した葉になるともっと臭ってくるのでしょうか?

 

 

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