ネギ

初夏のころ、葉の間から中空の花軸が伸び、頂部に白い小花が密集した球状の花序をつけます。 俗にいう葱坊主です。 最初は緑色の薄い総包に包まれています。 裂開した花球に近づいてみると美しい幾何学的な小花の集合は自然の妙を思わせます。

ネギ 2016.5.30  総苞につつまれているネギの花

■ 古く、中国の野菜
ユリ科の多年草草花ですが、栽培上は1・2年生。 ネギ属は世界に約300種あり、北半球、特に中央アジアの高山地帯に多く分布しています。 わが国で栽培されているネギは、中国西部、シベリア、アルタイあたりの原産と考えられていますが、野生種は不明です。 中国では、2000年以上も前の書に葱という字が見られるそうです。 わが国への渡来も随分古く、昔は『き』と呼ばれており、一字であることから<ひともじ>ともいい、これに対してニラを<ふたもじ>といいました。
『き』の根を賞味することから根葱(ねぎ)と名付けられたという説もあり、別名を根深(ねぶか)ともいいます。

■ 東の千住、西の九条寒さに強い加賀ネギ
あまりにも渡来が古く、日本人の好みに合ったネギは、地方によって特異な発達を示しました。 九条ネギの歴史は1000年以上といわれており、京都九条(現在の下京区)が栽培の中心でした。 分けつ性が強く、白根の少ない葉ネギとして関西や九州で愛好されています。 い法、関東では白根の多いものが好まれます。 千住ネギは白根の長い1本ネギとして改良され、明治のころ、すでに金町村(現在の東京都葛飾区)が特産地として知られていました。
加賀ネギは太くてがっちりした耐寒型、越年して2年ネギとしても利用されます。 “札幌1本” といわれる品種もこの群に属します。 群馬県の耕土の浅い下仁田地方には、太くて短い殿様ネギと呼ばれるものがあります。 食味がよく、将軍家に献上されたという話です。

■ 料理の脇役、庶民の野菜
上品といわれる日本料理には、ネギはあまり使われないという話です。 これは、五辛を戒めた仏教の影響なのでしょう。 <鴨が葱を背負って来る> という洒落は、ネギが無くては肉の調味が出来ないこを意味します。 そば・うどんなどのめん類の薬味には欠かせません。 汁の実にもよく、とうふともよく調和します。 ネギ無くして庶民の味は成立しません。
しかし、ネギが主役となる料理となるとほとんどなく、あくまでも他を引き立たせる奥ゆかしい野菜なのです。
うら町に葱うる声や宵の月 <蕪村>
<札幌市農業センター 林 繁>

ネギ 2016.7.5
花はすっかり終り、花梗の先には実(タネ)がなっています。

<余談:ネギ属>
ネギ属(Allium属)は、ユリ科で北半球を中心に400種とも800種近くもあるといわれ、単子葉植物では最大の属だそうです。その中には、大きな紫色の花を咲かせるアリウム ギガンチウムもありますが、やはり、ネギ属はネギを初めとして野菜として知られているものが多いです。 タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、ギョウジャニンニク(アイヌネギ)、ニラ、ラッキョウ、アサツキ、リーキなどがあります。

その内、我家の家庭菜園で栽培しているのは、ネギ、ニンニク、ギョウジャニンニク、ニラ、アサツキの5種です。 栽培しているといっても、ギョウジャニンニクは一度植えたきりで放ったらかしなのですが元気に育ち、毎年 “ ギョウジャニンニクの酢味噌和え ” を楽しんでいます。アサツキは球根なので秋に植替えが必要ですが、そのときに散らばって庭のあちこちに生えて雑草化しています。 ニラも種を蒔けば何年も葉を刈り取ることができます。 ネギ属は至って丈夫な作物の仲間のようで、札幌、北国向きの作物のようです。

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