シクラメン  20年

2020.3.26
このシクラメンは、我家の窓の片隅で20年近く生き続けているものです。 札幌市東区にある札幌市農業支援センター(さとランドに隣接)で購入したものです。 買った当初は、葉数は何十枚もあり、その中央からは多くの花梗が上がっている、11月頃に花屋さんで買う立派なシクラメンと同じでした。 しかし、現在は、葉数が9枚で、花数は7個です。しかも、葉柄、花梗とも短く、コンパクトに咲いているというよりもやっと生き延びて花を咲かせているという状態です。 それでも、とりあえず、冬場は数輪花を咲かせます。

このシクラメンの管理は、私は何も手をかけていなくて、妻が水やりだけをしています。 花が終わった後に種子を付けないように花を取り除いているようです。 肥料は一度も与えたことがないようです。 鉢替えも一度もしていません。 鉢土の表面に生えていたコケも現在では真っ黒になっています。 このシクラメンの根元にあるいも(塊茎)は表現しがたい形状になっています。 シクラメンは葉1枚に一つ花芽を付けるので、葉が出てくれば、とりあえず、大きさは別にして、このように健気に花を咲かせてくれます。

通常、鉢花は2〜3年に1回鉢替えが必要と言われています。 それをしないと根づまりを起こして株が弱る、花が咲かなくなる という理由だからです。 しかし、このシクラメンの場合(多くの鉢花に当てはまる)、鉢替えをしなくても、株や花は貧弱になって見栄えが悪くなっても、とりあえず何年経っても花を咲かせることはできるようです。

我家のシクラメンは20年間一度も肥料を与えられなくても、一度も鉢替えをしなくても、とりあえず葉を出し、花を咲かせています。 それは何故でしょうか? この鉢の中で何が起こっているのでしょうか?

購入してからしばらくすると鉢の中は根で一杯になります。 鉢の内側に根がぐるぐる巻きの状態です。 それも最初は白い根でしょうが、だんだん古くなると褐色に変わり、最後は枯死していきます。 根の先端にある根毛、これは水分や養分を吸収する組織ですが、それが生きている期間は長いものでせいぜいで1週間ほどだそうで、植物は常に新しい根毛を出し続けなければ生きられないのです。
根毛が少なくなって水分と養分が吸えなくなると、株も弱ってきます。 葉の枚数は少なくなり、葉も小さくなって 花は当然のように咲かなくなります。
それでも、葉を出して花を咲かせることができるのは、鉢中の全部の根毛が死ぬのではなく、鉢のどこかに根毛を出して水分と養分を吸収できるところがあり、また、シクラメンは塊茎という養分を貯蔵できる場所(組織)があるので、そこからの養分で根毛を出すことができるのです。

それでも数年はそれで何とかなるのでしょうが、20年近くもそれを続けることは無理のように思えます。 それでは、その後の十数年は、葉を出して花を咲かせるための、根毛を出し続けるための養分はどのようにして賄っているのでしょうか?

樹木は秋に落葉しますが、その時、窒素を主体にリン酸やカリ、鉄や亜鉛など微量要素などを葉から樹体内に戻してから落葉します。 それと同じように、シクラメンを含めて宿根草や球根類も樹木と同じように、葉が枯れる前に必要な栄養素(自分では作れない栄養素)を体に戻して葉を枯らします。 そして、芽出しに再度それらを使うのです。

もう一つは、鉢の中に一杯に回った根は枯れます。 その後はどうなるのでしょうか? それらは鉢土にいる微生物によって分解され、元々根に存在する養分が根から吸収される状態の土に戻るのです。 鉢内では常に新しく根毛が出来ているので、それが再び吸収するのです。

我家の窓の片隅に置いてあるシクラメンは、水は補給しなければなりませんが、養分は鉢内にあるもので賄いながら、おそらく、これから10年先も軟腐病など致命的な病気に罹らないかぎり、小さな花をぽつりぽつりと咲かせながら細々と生き続けると思っています。

<原種シクラメン>
2019.9.22
百合が原公園内のロックガーデンに咲いていた原種シクラメン。 鉢花のシクラメンに比べると花も葉も小さくてかわいいです。 カタクリと同じように群生させると、この種の特徴が出るようです。
2019.9.22
原種シクラメンには春咲き種、秋咲き種、冬咲き種があるようですが、写真は9月下旬に撮っているので、おそらく、秋咲き種なのでしょう。 秋咲きの代表種 シクラメン ヘデリフォリウム(Cyclamen.hederifolium)の原生地は南ヨーロッパから少アジア西部(トルコ)で、花期は晩夏〜秋。

 

 

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