シラカバ並木  旧定山渓鉄道跡地

平岸通を車で南方面に向かって走り、地下鉄真駒内駅を過ぎると道路左手に樹林地が拡がっているのが見えます。 この樹林地は郊外の道路脇に見られる普通のありふれたものですが、道路に並行してシラカバが密集気味に生えているのが特徴的なところ
です。
2018.11.11
今から49年前、1969年(昭和47年)に、札幌の中心部と定山渓を結んでいた定山渓鉄道が廃止されました。 写真の道路沿いに落葉で茶褐色になっている法面とその上に緑色のクマザサが生えているのが見えます。 それを少し奥に入ったところに線路が敷設されていたようです。 この低い法面を乗り越えて廃線跡に行ってみまし
た。
2018.11.13
そこは落葉を敷き詰めた散策路になってます。  廃線跡地沿いに自然のシラカバ並木が出来上がっています。 園路に積み重なっている落葉はシラカバの他にホウノキ、ミズナラ、カエデ類などこの地域に多く生えている種類のものです。 落葉を払いのけると小石(砕石?)が敷き詰められたままで、当時の線路敷をそのまま残しているようです 。
この樹林地一帯にはシラカバが生えているのですが、特に園路脇に多く生えていて、約50年の歳月をかけて現在の姿になったようです。 幹の太さはまちまちで、太いもので30~40cm程に成長しています。 シラカバの下にはイタヤカエデなどのの幼木が思った以上にたくさん生えています。 この一帯は健康保安林に指定されているため、比較的人間の手が入らない状態で現在に至っているようです。2018.11.11
樹木関連の書物を読むと、シラカバは裸地に生えてすばやく生長する 「先駆種」 と書かれています。 「イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか」で、著者 渡辺一夫氏はシラカバの先駆種について以下のように説明しています。

〇成長が早い秘訣
シラカバは先駆種である。 先駆種の種子は風で散布するものが多い。 シラカバは翼のついた軽く小さい種子をたくさん作り、風に乗せて散布する。 大量の種子を広く散布して、種子が明るい場所に到達する確率を高めるためだ。 風に乗って散布された種子は、山火事の跡などの攪乱地に定着して大きくなる。
小さい種子は、攪乱地へ到達するには有利かもしれない。 しかし一方で種子に含まれる栄養が少ないので、森の中に落下してしまった場合、実生の生存率が低くなってしまう。 種子を小さくすると、実生の耐陰性、実生の成長速度、落葉を突き抜けて根を出す力、土中深くから発芽する力、病気に対する抵抗力、虫や動物の食害からの再生力、などの能力が、大きな種子よりも劣ってしまうからである。 しかし、運よく明るい場所に定着できれば、当初開いた葉で光合成を行い、そこで得られた栄養を投入して、次々に新しい枝と葉を作っていくことができる。 このように生産と投資を繰り返すことによって、種子が小さくても迅速に大きく成長することが可能なのだ。
〇放浪の一族
シラカバは、成長が速い代わりに寿命は短く、70年程度である。 また、種子も若いうち(10年生程度)からつけ始める。 生き急いでいる印象のある木である。 シラカバという種は、攪乱地を転々と放浪する一族である。 シラカバは寿命が短く延命の手段である萌芽力もあまり強くない。 早く成長して若いうちから種子を生産し、短いサイクルで世代交代を行う。 これは、環境の変化の激しい場所(たとえば山火事の起こりやすい場所)に多い種によく見られる特徴である。
先駆者であるシラカバの森が何百年も続くことはない。 やがては耐陰性の弱いシラカバの代わりに、ミズナラやブナなどの若い木が増え始め、彼らの森に変っていく。

 

上述のように、シラカバは環境の変化の激しい場所(がけ崩れが起きやすく裸地が出来やすい場所など)にタネを落としていち早く侵入して成長する樹木なのですが、今回も列車が走らなくなったという環境変化が起きて、線路跡地の細長い裸地がシラカバの小さな種子にとって絶好の生育地になったようです。
しかし、50年をかけて形成された現在の姿も、これから50~100年もすると、シラカバは見られなくなり、この地域の優先種であるイタヤカエデやミズナラなど耐陰性の樹木に取って代わられるのでしょうね。 それとも、人間が再度この地に手を加えて全く別の形態に変っているのでしょうか?
私たちが何気なく見ている、一見その姿を変えそうにない身近な樹林地も、50年、100年という単位で見ていくと劇的に変化をしているようです。

 

 

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