ブドウ この時期の枝の切断

2023.5.9
豊平川に沿って連なる山々で新芽が吹いて新緑の美しい季節になっています。 それと時を合わせるように我が家のブドウの芽が膨らみ始めました。

ブドウの剪定時期は晩秋の落葉後と言われています。 その理由は、春夏に枝を切ると切り口から樹液が出るからです。 それは樹勢を弱めることを意味します。 それで我家で育ているブドウ(品種;バッファロー、デラウェア)も毎年葉が落ちる11月に入ってから剪定しています。

しかし、本当にそうなのか?と思って、この時期(5月6日)に枝を切ってみました。 そうすると、一昨年伸びた少し太めの枝も昨年伸びた少し細めの枝も、それらを切ったとたん、その切り口は樹液で丸く膨らみ、そしてぽたぽたと樹液が滴り落ち始めました。
2023.5.9
写真は枝を切断した5月6日から3日後の5月9日に撮ったものです。 切り口から大きな水滴(樹液)2つがもうすぐ垂れ落ちそうに膨らんでいます。
2023.5.12
これは枝を切断してから6日後のものです。 まだ切り口に水滴(樹液)はありますが、ほとんど落ちなくなったようです。ブドウの枝をこの時期切断すると、樹液が1週間近く落ち続けるようです。
2016.5.8
この写真は、北大植物園の北方民族植物標本園で見つけたコクワ(サルナシ)で、アーチ状のトレリスに絡まっています。 5月上旬のちょうどこの時期に枝が切られて、樹液が雫のように垂れ下がっています。

ブドウやコクワ、フジなどつる性樹木の剪定時期について、参考図書では本州でも北海道でも落葉後に行うことになっています。 その理由は枝を切ると樹液が出て樹勢を弱めるからです。

それではなぜつる性樹木はこの時期に剪定すると樹液が滴り落ちるのでしょうか? 逆に言うと、30m以上になる針葉樹や高性落葉樹はなぜこの時期に剪定しても樹液が出ない?出にくい?のでしょうか?

高性樹木は自分の大きな体を支えるために、また、台風など強風に耐えるために幹枝を頑丈につくっておく必要があります。 細胞レベルで見ると植物特有の細胞壁(動物には細胞壁はない)を頑丈につくっておく必要があります。

「細胞壁リグニンの分子構造を変える新しい方法を開発」のページを参照

上図は4つの細胞を拡大したものです。水色の部分がそれぞれの細胞で、黒色と茶色の部分が細胞壁です。 黒色が一次壁で茶色が二次壁です。
植物の細胞壁は,細胞分裂時に細胞膜の周囲に構築され る一次細胞壁と細胞成長終了時に一次細胞壁の内側に構築される二次細胞壁に分類されます。 上図の茶色の部分の二次壁にはセルロースとリグニンが生成されます。 この細胞壁は鉄筋とコンクリートの関係に例えられ、コンクリートに該当するのがリグニンと呼ばれる高分子で、鉄筋に該当するのがセルロースで、この鉄筋コンクリート構造が巨大な樹木の重量を支えているのです。

一方、つる性樹木はつるを伸ばして他の樹木の枝に巻き付いたり、若しくは持たれかかったりして自分の重さを支えてもらっています。 つる性樹木は頑丈な細胞壁を他の樹木に比べて厚くつくる必要がないのです。高性樹木は光合成でつくったデンプンを細胞壁に多くを費やしていますが、別の言い方をすると、多くのエネルギーを細胞壁の生成に費やしているのですが、つる性樹木はその必要性がないのです。

このことは、つる性樹木の枝の断面積に占める水の通る面積の割合が大きいのではないか? 導管(根で吸い上げた水を樹上の葉まで通す管)の面積の割合ではなく、その内側にある細胞壁の内側を通る水の断面積の割合が大きいのではないか? と思えるのですがどうでしょうか?
なので、上述のブドウのように、枝を切ったとたん枝の切断面から水がにじみ出し水滴をつくり滴り落ちるのです。

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA