街路樹の紅黄葉とストレス


2011.10.30    中央区北1条西10丁目       2011.11.26   中央区南4条西6丁目?
上2枚の写真は、中央区の都心部に植えられている街路樹 アメリカハナノキ(ルブルムカエデ、ベニカエデ)。 北アメリカ原産、ヤマモミジやサトウカエデと同じカエデ科に属し、きれいに紅葉する樹種です。
2011.10.24
南区澄川 精進川緑地
本来なら写真のようにきれいに紅葉するのですが、街路樹として植えられているアメリカハナノキはくすんだ色の紅葉にしかならない樹が多いようです。

長年、札幌市内の街路樹を見ていますが、5月の芽出しから新緑、この時期が一番新鮮で美しい、そして夏場の深緑と街路樹の良さを放つのですが、落葉期の紅黄葉はいまいちというか、樹木本来の持つ美しさを出せないでいます。 イチョウやシナノキなど黄葉する樹種でも、くすんだ黄葉が多いのです。

それは何故なのでしょうか?

人間は、職場での人間関係のもつれや家族の不幸など日常生活に急激な変化が起きると、夜寝られない、食欲がなくなる、便通が悪くなるなどの症状が現れて、体の不調を訴える人が多くなります。 ストレスが溜まってくるのです。 これが長引くとガンなどさまざまな病気の原因になります。「病は気から」と言いますが、ストレスは万病の元なのです。

これと同じように樹木にもストレスがあります。 樹木のストレスとは樹木の生長を阻害する要因のことを言います。 具体的には、夏場の成長期の少雨による乾燥や地下水が低下するなどの水不足、地下水の上昇や長雨による帯水による過湿、台風などの強風による幹枝の折損や塩害などのストレスがあります。
また、害虫による葉の食害やカビなど菌類による葉や維管束(水や養分の通り道:管をふさぐ)への侵入によるストレスもあります。 これらの要因は大きな括りとして自然がもたらすストレスと言えます。

しかし、樹木にとって自然が加えるストレス以外のストレスがあります。 それは、庭園樹や公園樹、街路樹などに人間が加えるストレスです。
①車から排出される有害な排気ガス、②踏圧による土壌の硬化、③これは雪国特有の事象ですが、冬期間道路脇に堆積された雪を排雪する際に、バックホウなどの重機で幹枝に傷をつけること、④定期的に行われる剪定、などです。

以上①~④に加えて、街路樹には、もう一つ、根に加えられるストレスがあります。 街路樹の根が伸びられる地下の環境は劣悪で、車道側は仕切石、アスファルトの舗装版と固く締められた砕石でせき止められるので、根はほとんど車道側には伸びていけません。 歩道側はアスファルトなどの舗装面で被われています。 街路樹が元気に成長しだすと歩道側の舗装面下に根を伸ばしますが、基本的に植えられた場所、植樹桝の中になります。 この根域の狭さは、夏場に雨が降らない日が何日も続くと乾燥害を引き起こします。石狩街道(創成側沿い)?に植えられている比較的若いカツラの街路樹が、夏場の7~8月にかけて葉が縮れる現象を2回程見たことがあります。 これは好天が続いたことによる水不足で、樹木とっては大変なストレスになります。
2012.8.15  カツラ 石狩街道?
写真右:葉の縁が褐色に変化し縮れている。 乾燥により葉先まで水分を十分に届けられない。

そしてもう一つ、紅黄葉の美しさに最も大きな影響を与える要素、人為的なストレスとして街路樹に定期的に行われる剪定があります。

2012.10.26
写真は南区の藤野川通の街路樹ヤマモミジ。 この通は藤野川を挟んで道路が2本走っています。写真左は剪定を行わなかった側の街路樹ヤマモミジ。 右は剪定を行ったもの。 左はヤマモミジの紅葉としてはそれほどでもないが、まあまあの紅葉で、右側の剪定を行ったヤマモミジは紅葉しきれなくてくすんだ赤黒い緑色をしています(真中のきれいに紅葉しているものは無剪定)。 2018.10.22
左側のきれいに黄葉しているイチョウは南区川沿にある藻岩高校の外構植栽で剪定が行われていない。 右側のまだ青々した葉をしているのは石山通(国道230号)の街路樹でその年の春かその前年の秋に剪定が行われた。

このように、本来10月末には紅黄葉するはずのヤマモミジやイチョウが、それができないでいるのです。 これは明らかに剪定による影響と考えられます。 落葉樹は秋になると、厳しい冬に備えて落葉します。 そのメカニズムは、葉で植物ホルモン(エチレンやアブシシン酸)がつくられ、それが作用して茎と葉柄の堺に離層を形成して時期になると落葉します。 その落葉前に葉にある養分 ー 樹木自身が自分で作れない栄養素(根から吸収しなければならない栄養素)の窒素やリン酸、微量要素など     ー を来春の芽出しや新葉の成長、蕾を膨らませて開花させるために再度樹体内に戻すのです。 葉緑素内にある窒素や微量要素が引き上げられるので葉緑素は壊れ葉は緑色を失い、もともと細胞内にあった※カロチン(カロテン)が出てくると黄葉になり、アントシアニンがつくられると紅葉します。

このように、川沿のイチョウや藤野のヤマモミジが時期になっても紅黄葉しない、出来ないのは、また落葉が遅れるのは、剪定という、人間でいえば大手術を受けているようなもので、それを受けたことにより樹体内のメカニズム(調整作用)が壊れた?乱れた?ために、植物ホルモンの生成も乱れるか、または出来なくなったのではないでしょうか。

紅黄葉がきれいに発現するのは、ストレスのない自然な状態で生育しているときであり、上述したように街路樹には様々なストレスを受けることが運命づけられているので、特に定期的に行われる剪定は致命的で、街路樹にきれいな紅黄葉を望むのは無理なこと、かなわぬ夢のことのようです。

※カロチン(カロテン)もアントシアニンと同様に生成されるともいわれている。

 

 

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