植物の耐寒性について(その3) ハーディネスゾーン(hardiness zone)

以下はアボック社から出版されている「日本名鑑」の植物耐寒ゾーン地図とその説明です。
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① この地図は、気象庁のデータを元に、各観測所における過去(1985年現在直近20~30年)の最低気温の平均値を算出し、USDA Hardiness Zoneに従って19のゾーンに分類したものを国土地理院の地図に重ね合わせたもの。
② 「日本名鑑」に掲載されている園芸植物の数(品種も含む)は6200種以上。 但し、ハーディネスゾーンの記載されていない種類も多数。

ハーディネスゾーンナンバーと温度hardiness_zone

3a:−37.2°C ~−40.0°C  4a:−34.4°C ~−31.7°C         5a:−28.9°C ~−26.1°C
3b:−37.2°C ~−34.4°C      4b:−31.7°C ~-28.9°C          5b:−26.1°C ~−23.3°C

6a:−23.3°C ~-20.6°C        7a:−17.8°C ~−15.0°C         8a:−12.2°C ~− 9.4°C
6b:−20.6°C ~−17.8°C       7b:−15.0°C ~−12.2°C         8b:− 9.4°C ~− 6.7°C

9a:− 6.7°C ~− 3.9°C         10a:− 1.1°C ~ 1.7°C
9b:− 3.9°C ~− 1.1°C         10b: 1.7℃~ 4.4℃

稚内;5、札幌;7b、東京;9a、大阪;9a、鹿児島;9b、那覇;11b

植物が寒さに対して露地栽培可能なゾーンをハーディネスゾーン(植物耐寒ゾーン)という。 すなわち、特別な防寒設備を施さなくても冬の寒い季節を生き延びられるかということで、当然ながら、植物の種類によってその耐寒温度は異なっている。 従って、これが問題になるのは、主に木本や多年草(常緑あるいは宿根~球根も含む)である。 つまり、好みの植物を庭に植えっぱなしにしておいてよいかどうか、である。「植物耐寒ゾーン地図」を利用すればその判断の目安が分かる。 そして、その土地の寒さに耐えられなければ、植栽を諦めるか何らかの防寒対策をとることになる。

 

利用の手順

① 植栽予定地のゾーンナンバー(a)を知る。
② 植物の特性情報のH;Hardiness に続けて示したその植物のゾーンナンバー(b)を確かめる。
abのナンバーの値を比べる。(a=b a≻b であればその土地寒さに耐えられる。)

例 居住地のゾーンナンバー:5
 (多年にわたる最低気温の平均値が-23.3℃~-28.9℃になることを意味する。 従って、単年では平均気値を下回ることもあることを忘れてはならない)
‘ b 植えたい植物のゾーンナンバー:4
 
(この植物は-28.9℃~34.4℃までの温度に耐えられることを意味する)
判定:a(5)>  b(4)なので、一応の目安として植えても大丈夫。

〇 植栽地を選ぶときの実際的ヒント
植栽地を選ぶにあたり、植栽地の地形、日当たり、風当たりなどの条件を考慮・加味すると、地図上のナンバーよりも、隣のナンバーを採用する方が適当な場合もある。
(1)乾燥気味の条件(土壌凍結を招きやすい過湿気味の条件よりもよい)。 たとえば、傾斜地、石垣の隙間、など。 また、日当たりの良い場所の石やコンクリートは日中に熱を貯めるので、夜間の気温低下を緩和する。

(2)建物の南側に植え場所がある。 屋根があればなおよい。 建物の南側は日当たりが良いので、より暖かい温度条件が得られるからである。 また、北風を防ぐので、寒害が緩和される。 張りだし屋根があると建物の暖気・保湿性の影響を受けることができる。

(3)斜面の中腹。 冷たい空気が滞留しないから、冷たい空気を防ぐ垣根などがあればなおよい。

(4)降雪条件。 深い雪の下は外気温の影響を受けにくく、「地図」上では耐寒温度を下回る地域でも、積雪地域であれば露地での冬越しが可能な場合がある。

これを「札幌にハナミズキを植える」に当てはめると、
a   居住地;札幌のハーディネスゾーンナンバーは6b(-17.8℃ ~ -20.6℃)となり、
b  植栽樹木;ハナミズキ の  H;ハーディネスゾーンナンバーは( -23.3℃ ~ -28.9℃)となります。

a(7b)>  b(5)なので、特別な防寒設備を施さなくても冬の寒い季節を生き延びられる ということになりまます。 しかし、札幌市内では冬場に最も気温の低くなる場所にある滝野すずらん公園のハナミズキは枝先の枯死もなく花を咲かせる一方、市内でも北風に晒されるような場所では、花芽や枝先の枯死が見られるものもあります。 このことは、上文(1)~(4)の中で、(2)が当てはまりそうです。 また、上文(2)の「屋根があればなおよい」には樹木なので無理がありますが、もし、建物のなど北風を防ぐものがない場合、防風ネットを張るなど何かしらの工夫が必要なようでです(特に幼木や植栽した最初の冬)。

次回、植物の耐寒性 その(4)では、札幌で見られるツツジ類の越冬性とハーディネスゾーンの関係を検討します。

 

 

 

 

 

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