ホウレンソウ

連想ゲームでホウレンソウがヒントなら、ポパイとか、ビタミンなどという答えが返ってくるのかもしれません。 ポパイがホウレンソウの缶詰を食べると、たちまちにして筋肉が盛り上がり、恋敵のブルーとをノックアウトしてしまう。 実は、アメリカの子供の多くは、栄養豊富なこの野菜が嫌いとか。 大人の知恵が生んだ漫画なのでしょうか。
ホウレンソウ2015.6.16
<原産地は地中海沿岸、中国を経て渡来>
アカザ科の1年草本。 典型的な長日性植物で、雌雄異株、なかには両性花を交えるものもあります。 風媒花なので昆虫を魅惑する美しさもなく、地味で目立たない花です。

ホウレンソウ2015.6.16
漢字で菠薐草と書き、菠薐とはペルシャ国のことと辞書にあります。 原産地は地中海沿岸地方で、回教徒によって東西にもたれされ、7世紀のころ、すでに華北まで伝ぱされていたといわれています。

わが国へは、これよりはるかに遅れ、300年前に書かれた多識篇に記されているのが最古のもので、日本在来種に品種分化が少ないことからも、栽培歴史の浅いことがうかがわれます。

<剣葉の東洋種と丸葉の西洋種>
中国から渡来した、いわゆる日本在来種は、とげ種で葉に刻みのある剣葉系のものです。この種類は、寒さに強いけれどもとう立ちが早く、秋から早春にかけて低温短日条件でよく生育します。

だから、本州の人にとってホウレンソウは、低温期の野菜であり、剣葉で株元の赤みの強い東洋系ホウレンソウの嗜好の習慣ができてしまいました。

一方、明治になって欧米から導入されたのが、主として丸葉系の西洋種、生育は遅いけれど葉が大きく、厚みがあってとう立ちの遅いもの。 「大きくて作りやすいことは良いことだ」 というどさんこ(道産子)気質に合致。 たちまちにして本道に普及、‘札幌大葉’ などの改良種も育成されました。

<翔んでる野菜のひとつ>
ホウレンソウの需要は、ビタミンの知識普及とともに拡大されたともいえましょう。 鉄分、ビタミンなどの含有が高く、病人、妊婦、乳幼児の保険食品として、現代の食生活には年中欠かせない重要な野菜です。

でも、低温を好むホウレンソウは、真夏の本州では栽培が難しく、高温期の供給は冷涼地に依存しなければなりません。 この端境期の需要を補っているのは、長野県の標高1000m地帯と北海道。 昭和53年札幌から京浜市場に空輸を試みたことが始まり。 その後、年を追って増加。 移出野菜として脚光を浴びています※1。

<和洋種の交配によって、よりよいものが>
日進月歩の世のように、ホウレンソウの品種も変わりました。 かっての名品種 ‘キング・オブ・デンマーク’ ‘札幌大葉’ なども、去り行く老兵の運命をたどり、病気に強い品種に代わりました。 ことに、東洋種と西洋種、それぞれの長所を取り入れ、短所を補い一段と優れた交配種も多くできました。

さて、人の世もホウレンソウのように、洋の東西を問わず仲良くして、より良いものを作り出す努力がほしいものですね。(札幌市農業センター 林 繁)

<ホウレンソウ : Spinacia.oleracea スピナキア  オレラケア>
栽培品種のみが知られている種(シュ)で、その野生種はまだ発見されていない。 しかし、カスピ海南西部沿岸部に、近縁な2種の野生種が分布しているので、この地域が現在の栽培ホウレンソウの発祥中心地であるとみなされている。 ただし、インドからネパールにかけての地域を発祥地とする研究もある。(園芸植物大辞典)

※1 かつては、夏に出荷できる札幌産のホウレンソウは需要が高く、東京市場では高値で売れたため、栽培が清田区の真栄地区で本格化しました。 しかし、農業技術の発達で道外でもホウレンソウ栽培が拡大して、価格競争も激しくなり、輸送費(空輸)が上乗せとなる札幌産は厳しい状況に追い込まれました。 こうしたなか、行政のPR活動などで札幌市内での認知度が高まり、「道外向け作物から地元で生産して地元で消費する地産地消」の考え方が広がり、清田区役所の食堂や清田区の小中学校の学校給食に提供され、また、近くの食品スーパーで販売されています。

 

 

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