ニセアカシア 谷間に拡がる白い花

ニセアカシア2015.6.12
5月下旬に咲き始めたニセアカシアの花は満開を過ぎて、公園や街路樹などでは、花びらが地面を白く覆っているのを見かけます。 美しいという花ではないのですが、街中には高い樹が多いので、遠くからでも目立ちます。

ニセアカシア
2015.6.14
この写真は、南区豊滝、国道230号沿いから撮ったものです。国道から北側を撮っています。
写真中段左から右へ、山沿いに豊平川が流れています。 そして、写真全体に白っぽい樹林が見えます。 花が咲いたニセアカシアです。 写真手前から豊平川に注ぎ込む支流に沿って繁茂しているようです。
普段、この道路はよく通るのですが、このような景色、ニセアカシアの花が谷間を埋め尽くすように咲いているのを見るのは初めてのことです。
夏場にこの辺りを見ると何の変哲もない青々とした普通の樹林地帯に見えるのですが、このように眼下に遠くまで拡がるニセアカシアの花を見ると、
「えっえっえっ!!、こんなにニセアカシアが生えていたの?」
とある種驚きの気持ちで見てしまいました。 おそらく、豊平川に流れ込む支流の上流で治山事業が行われ、そこでニセアカシアが植えられて、それが大きく育った樹の種が流れたてきたものなのでしょう。
しかし、この樹林を国道縁からほとんど真横に見ているので、ニセアカシアの花が樹林全面を覆っているように見えますが、これを真上から見ると、ニセアカシアの密度はどれくらいなのか、全体の何割くらいをニセアカシアが占めているのか?、それほどでもないかもしれません。 それでも、この景色を見ると、ニセアカシアがもともとこの地域に自生している樹々を凌駕して蔓延ってしまったように見えてしまいます。

ニセアカシアは、北アメリカ原産で約100年以上前の明治初期に日本に移入されています。また、マメ科に属し、空気中の窒素を固定するバクテリア、窒素固定菌を根に持っており、自ら肥料を作ることができることや、成長が早いことから、街路樹・公園樹として、また密源として利用され、特に森林の保全、治山事業に多く利用されてきました。

しかし、ニセアカシアは在来植物を駆逐するという理由で、2002年に日本生態学会によって“日本の侵略的外来種ワースト100”に認定され、2006年には環境省によって“要注意外来生物” に指定されています。 これに呼応するかのように 全国各地の河川などでニセアカシアの除去を目的に伐採がなされています。

この豊平川で、河川の流れを阻害するということでニセアカシアを含めて樹木を整理する伐採は行われていますが、ニセアカシアの除去を目的に伐採が行われたという話は聞いたことがありません。 それでも、インターネットを見ると、札幌市中心部に街路樹としてニセアカシアを植えることについて、それの撤回を求める著名活動がウェブページに載っているので、札幌でもニセアカシアは在来生物を侵略・駆逐する悪しき樹木で、それらは取り除かなければならないという活動はあるようです。

ニセアカシア
2015.6.14 豊平川上流方向の山間

しかし、この写真で見るように、これらのニセアカシアを伐採除去することは、膨大は費用がかかることもありますが、物理的に不可能のようです。 その理由は、これらの樹木は、その上流に植えられたニセアカシアの種から育ったもので、これからもその樹がある限り、種子は供給され続けて、伐採しても伐採してもニセアカシアは育ち続けるからです。

ニセアカシアが生えているところは、耕されなくなった農地や道路整備に伴い既存樹木が伐採された法面など人間が土地を改変したところか、河川など土地が安定していないけれどもいつも開けて明るい土地のどちらかです。

ニセアカシアは北アメリカ原産ですが、そのアメリカで、原産地以外において耕作放棄地などに現れたニセアカシア林は、次第に在来の広葉樹に置き換わり、当初の現れた面積よりも縮小しているということを書物で読んだことがあります。

この事例からすると、豊平川の支流に治山事業で植えられたニセアカシアも、この地域に多く生えているイタヤカエデやオニグルミなどの既存樹木に次第に置き換わっていき、最後には、その下流にも種子が供給されなくなっていくだろうと思います。
蜜源などとして利用され人間の生活に密接に係わっているニセアカシア、人間が良しと思って植えたニセアカシアも移入されてから100年も過ぎると良い面ばかりだけではなく、悪い面も出てきてしまいました。 しかし、人間が一度その土地に植えてしまった以上 、この問題は、100年、200年、いやそれ以上の長いスパンで捉える必要があるように思います。

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