ナナカマド(その4)

1-011 ナナカマド 南郷通2012.10.31
先週水曜日、厚別方面に所用があり、南郷通を車で走ってきました。街路樹ナナカマドが色づいています。なかなか鮮やかです。ナナカマドは、札幌市で街路樹として1番多く使われている樹種ですが、都心部に近い幹線道路のナナカマで、このように樹形が揃っていて鮮やかに色づく街路樹はそうお目にかかれません。この場所は、中心部から約15km弱離れた郊外で、北広島市に近いところです。
ここのナナカマドが鮮やかに色づくのは、道路が広い割りに交通量が少なく、排気ガスなどの悪影響を受けないことや、中央分離帯に植えられているために根を十分に張れる土壌環境があることなど、街路樹としてはストレスの少ない環境(比較的すくすくと成長できる環境)が大きな要因なんでしょね。

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1-053 ナナカマド 真駒内公園2012.9.22
ナナカマドの実は8月下旬頃から赤みを増してきます。そして、9月に入ると緑色の葉に赤い実がよく目立つようになり、季節が夏から秋に進んでいることを感じさせます。それからしばらくすると、周りはまだ夏の緑の葉でいっぱいの中で、ぽつんと赤く紅葉しているナナカマドを見かけることがあります。しかし、それは少数派で本格的な紅葉は10月に入ってからになります。
1-003 ナナカマド
2012.10.21
今年の紅葉は遅めでしかもいまいちですが、ナナカマドも本格的な紅葉が始まっています。
1-008 ナナカマド 真駒内公園
2011.10.14
<トリビアな話>
今から数年前、
「ナナカマドって、公園にはたくさんあるけど、私の近くの山では見かけないんだけど」
とその当時、同じ職場で円山に自宅のある職員が言うのです。
公園を散歩しても街中を車で走っても、この時期ならナナカマドが一番目立ちます。札幌市の街路樹で一番多く植えられているのはナナカマドです。本州では生花に使われるぐらいでほとんどお目にかかれない木で、北国の木というイメージが定着していて、そんな木が札幌の地に、周辺の山々に元々生えてないことを想像することもなかったのです。
そのときはそれほど意識はしなかったのですが、それでもその言葉が頭の片隅にあって、職場近くにあった藻岩山や自宅の近くの山や真駒内周辺の自然林を見るときなど、それなりにナナカマドを意識して樹林を見るようになっていました。先ほどのナナカマドの実が、夏の終りに赤くなることや、春先、周りの樹木より比較的芽出しが早いことを意識しながら。
1-029 ナナkマド 芽出し
2011.5.8  5月上旬には葉が開き始める
自宅近くの山を見ても、円山に登っても、藻岩山を双眼鏡で観察しても、自分の見た目では、藻岩山を中心とした近辺の山では、ナナカマドにお目にかかれないのです。北大植物園には年に数回行くのですが、開拓以前の樹もよく残っていて、もし、札幌の平地にもナナカマドが生えていたのなら、同植物園にも1本くらいあっても良さそうなものですが、見当たらないのです。
あるとき、森林行政に長く携わった市職員の方に、
「ナナカマドは春先の芽出しが早いことと、9月に入ると赤い実がなるので他の樹と区別がつきやすい。これらを目安に石山通(国道230号線)から見える藻岩山の斜面を見るが、ナナカマドの樹が見当たらない」という旨の話をすると、
「それは、渡り鳥にしろ、留鳥にしろ、冬場、猛禽類から自分の身を守るために、エゾマツやトドマツのような冬でも葉のある樹(針葉樹)に身を寄せる必要がある。藻岩山のように落葉樹がほとんどの山では、鳥にとって安心して身を隠す場所がないため、藻岩山に行かずに身を寄せることのできる針葉樹の山かその近辺で過すことが多い。だから、エサであるナナカマドの実を糞と一緒にその近辺で落とすので、ナナカマドは針葉樹林の中かその近辺の森林で見る機会が多いのではないか」という話をしてくれました。
なかなか説得力のある説明だと関心しました。
1-001 ナナカマド 精進川公園 2011.11.1
2011.11.1  真っ赤な葉に真っ赤な実をつけたナナカマド
自分でも調べてみると、北方植物園(朝日新聞:昭和43年発行)には
「北海道で庭に植えられるようになったのは、昭和7~8年ごろからで、高山植物収集に興味をもっていたときの道長官佐上信一氏が、この木を好み、「植えろ、植えろ」と大いにすすめた、という。札幌の高裁庁舎のまわりにあるナナカマドは、同11年の陸軍大演習を記念して、翌12年に植えたものだ。北海道のナナカマドは、こうして庭や公園などに植えられ、脇役をつとめてきたが、最近街路樹の並木にとりあげられ、主役としてはなやかに登場してきた。」
とあり、やっぱりそうなんだ。ナナカマドは、高山植物が生えるような高い山に生え、北国であるといっても、札幌のような平地にはナナカマドは降りてきていないのだ、と自分なりに納得していたのです。
ところがです。原 松次編著「札幌の植物」(北海道大学図書刊行会:1992年発行)という書物があるのですが、この本は、札幌とその近郊53ヶ所(真駒内公園や野幌森林公園、札幌岳や八剣山、そのた他札幌の主な地点)の草木を調べたものです。具体的には、それぞれの地点にどの植物が生えているかを表にまとめたものです。これを見ると、53ヶ所の内、43ヶ所でナナカマドが確認されており、その中には、市内はもちろん藻岩山、円山、八剣山、硬石山など南区周辺の山々には全てナナカマドが確認されているのです(ただし、これらは、自生しているものか、植えられたものかは不明で、そこにあったということです)
これには、やっぱりそうなんだ、ただ漫然と樹々を見ているだけで、しっかりと観察していなんだ という少々残念な気分にさせられました。樹木に関心のある方や林業関係の方には、「そんなこと当たり前じゃないか」と言われそうですが。しかし、ここ数年、自分なりに観察をしても見当たらないので、ナナカマドが生えているにしても藻岩山の高いところか、若しくは他の樹木に較べて密度の低い樹で、見つけにくい樹なのかもしれません。元々高山性の樹木なので、札幌から少し離れた山々にはあるにしても、円山や藻岩山などの身近な山、平地に近い山にはほとんど生えていないのではないか と思いながら、今でも近くの山々を見て、ナナカマド探しをしているのです。
追伸:自分なりの結論づけは、
ナナカマドは高山性の植物(樹木)で、北海道の山地には普通に見られるが、札幌の平地に近い山には生えていないか、あるにしてもまれな樹木、なかなか見かけない樹木
というぐらいに思っているのですが、いかがでしょう?

ナナカマド(その4)」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
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    おはようございます。
    ナナカマドの紅葉綺麗ですね~。
    街中のいたるところでこんなに紅葉しているとは驚きです。
    確かにナナカマドは発達した落葉樹林内にそれほど多く見られる樹木ではないですね。
    極相を形成する樹種よりも先駆樹種の性格の方が強いようです。
    よって火災、伐採、崩壊跡地や高山帯などの日射条件の良い場所に多く、前者の場所では森林が発達するにつれて個体数が減少していくそうです。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 今年の札幌の紅葉は、10日前後遅れているのでしょうか、
    > ここ2~3日、郊外では最低気温が0℃近くまで下がって、
    > 今が、ちょうど紅葉の満開です。見頃です。
    > 郊外の山々はイタヤカエデ、カツラ、シナノキなどの黄葉が美しいです。
    >
    > 貴重な情報ありがとうございます。
    > 折りにつけコメントをいただけるとありがたいです。
    > 今後ともよろしくお願いします。

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