サクラ  桜セミナー in 岩見沢

1.桜は、典型的な陽樹で、「朝日から西日までガンガン日の当たることが大好きな太陽の子」です。 したがって、林間内に植えられた桜の幼木は、育つことはありません。 防風林沿いに併植された桜も被圧を受け、満足な生育が望めません。 最適環境を整えることが大切です。

2. 桜と桜の離れ(植栽間隔)は、8~10m必要といわれています。 本数を多く植えたい、でも将来を考えて少し我慢しましょう(道内に千本桜の植栽地があります。 1000本より100本、100本より10本、 10本より1本を植えて、育てる気持ちが大切です)。

3.道内は、春5月頃きれいな花が、チシマザクラ、エゾヤマザクラ、ソメイヨシノ、ヤエザクラの順で咲きます。 花が終わったなら、来年もまたの気持ちを込めて、お礼肥をやりましょう(八重桜の名前を持つ桜はありません。 前3種は、5枚の花びらを持つ桜で、それ以上の花びらを持つ桜を八重咲き、 栽培種の桜と言います)。

4.桜の根は、浅く土の表面に広がっています。 枝先外端の真下に水や栄養を吸う根系(吸水根)が広がります。 ここへ肥料をやりましょう。  幹の際(根元)にに肥料をやっても意味がありません(爛漫の花を咲かす桜は、散った後かない弱ります。 その後の緑葉を育て、来年の花芽を作らなければなりません。 そのための施肥になります)。

5.根系付近の土が固く、グランドのようになっている場合があります。 根は呼吸しています。酸素(O)を吸って、炭酸ガス(CO)を吐き出しています。 私たちと同じです。 この場合、酸欠になって苦しい。 できるだけ広く耕うんし、フカフカの土にしてやりましょう。 また、根のまわりに盛土をする場合が見受けられます。 深植え状態になり、その後の生育が不良になります。

6.水はけの悪い土地も大嫌いです。 桜の根は、周辺の地盤より低く平らな土地が苦手です(水溜りができる)。 実は傾斜地や小高い丘が好きなので、そのような場所を探して植栽いましょう。

7.害虫(幼虫)や病気(カビ等)に攻撃されやすいのが、桜類の最大の欠点です。 少しくらい葉が食べられても、病気にかかっても平気な樹勢(元気な体)を作ってやりましょう。

8.「桜切る馬鹿・・・・・・・」の諺があります。 直径5cm以上の枝の切口はなかなか塞がりません。 その間にカビや虫に攻撃されます。 若木のうちに早めの枝抜き、枝切りを行いましょう。 正しい位置の枝を切り、必ず保護剤トップジンMペーストを塗布することが大切です。 又、桜類の剪定は、専門性が求められます。 樹木医や桜研究家の意見を聞いて行うと良いでしょう。

9.近年、鳥獣害(エゾシカ、ノウサギ、ノネズミ、野鳥のウソ等)の食害が増加しています。 河川敷地や山間地に桜を植栽する場合、事前の獣情報を考慮して計画しましょう。  忌避剤、ネット張り等対策があります。 しかし、費用労力共にかかり、頭の痛い問題です。

10.管理上の問題点があります。 「草刈機械で地際の幹に傷をつける。 除雪時、重機で幹枝に傷をつける。 花が咲いているとき手で枝を折る。 桜の下で花見をして踏みつける」、これらは厳禁です。 地際付近は、きれいに土が出ていると良く、花(スイセン)や草花を植えて人の侵入を防ぎます。
風除支柱は、いつまでも付けていると、桜が過保護になり自根を出しません。 また、支柱と桜が擦れ、傷つき病虫害侵入の原因になります。 1~3年の間に必ず撤去したいものです。

11.防除方法を考えてみましょう。
被害にあってしまった桜に、外科治療や薬剤散布をする対処法があります。 上記の桜の育て方を試してください。 すなわち今一番注目されている予防治療があります。 常日頃から健全な桜に育てていれば、病虫害、気象害に負けることはありません。

12.「さくら類こぶ病」というエゾヤマザクラ、カスミザクラ特有の病害があることをご存知ですか。 札幌周辺が発生起源といわれる恐ろしい病害です。 細菌(バクテリア)性等の病害で、現在、防除方法がありません。 こぶの付いた病枝を切除すれば良いのですが、切り取り刃物に病原菌が着き、逆に感染を広める危険性があります(刃物のアルコール消毒が必要)。 現在、この病害の感染域調査、菌の系統試験(森林総研)が行われています。 また、感染しづらいエゾヤマザクラ(耐病性の苗木)を探しています(帯広周辺は、サクラ類こぶ病が発生していない?)。 皆さんの情報提供をお願いします。

13.近年、新しい桜の品種が市場に出てきました。 ソメイヨシに代わる神代曙(じんだいあけぼの)、小松乙女(こまつおとめ)等で、てんぐす病に感染しない品種といわれています。 道内では、小樽、浦河、苫小牧で生育できることが確認できました(開花も見る)。
温暖化の影響でしょうか、暖地(本州)で育つ桜(里桜類)が道内(道央以北)で見られるようです。函館や松前、札幌圏、道東や道北を考えると気候区の異なる北海道です。 松前公園は、260種内外の品種桜があるようです。 松前固有の桜は、一部ですが、私のフィールドで育てています(紅豊、紅華、紅時雨、蘭蘭、紅笠、花笠)。 これ以外に情報があればお知らせ下さい(ホームセンターに河津桜、陽光等、寒緋桜系の苗木が売られています。 試しに植えてみると、耐寒性がなく育ちません。

14.サクラを育てる。 それは、桜の性質を知り、今まで述べて留意事項を参考にして、考え計画することです。 皆さんが、地域の桜名所作りに取り組み、成功することを祈っています。

2013.5.4 エゾヤマザクラ 北海道森林総合研究所

上記の1~14の箇条書きは、先月3月14日に開催された、「桜セミナーin岩見沢『桜の保育管理技術入門』~植栽重視から保育重視への転換~」で配布された資料の一部を書き写したものです。
書かれている内容は、サクラの育成管理に関するもので、サクラに関心のある方なら、本を読んだり見聞きした、すでにご存知の事柄が多いと思います。

しかし、この箇条書きの中で、普段読んでいる書物ではサクラは陽樹とだけ書かれている場合が多いのですがここでは、サクラは極め付けの陽樹で周りからの被圧に弱いことを表現するために、「朝日から西日までガンガン日の当たることが大好きな太陽の子」というように、作者は、道内の被圧を受けたサクラや老木で花の咲かなくなったサクラの再生を数多く手がけられており、それらの経験から得られたから知見や教訓から出てきた言葉で、作者の思いが伝わってくる表現だと思います。
また、サクラの好きな人なら、サクラの枝を切ると、その切口の癒着組織の形成が遅いため、カビなどが原因で腐朽が進みやすいことは知っています。 しかし、どのくらいの太さの枝まで切っても大丈夫かは、なかなか具体的な数値が出てきません。 それをこの箇条書きでは、「直径5cm以上の枝の切口はなかなか塞がりません。」とはっきりと書いています。 これは、実際に太い枝から細い枝まで数多くサクラの枝を切って、その後もきちんと経過観察してきた者でしか表現できない数値・言葉です。

以上のように、この14の箇条書きは、作者が長年取り組んできたサクラの治療・再生から得られた具体的で貴重な情報です。 それに加えて、 作者が現在、サクラが直面する課題を取り上げ、情報の共有を求めています。 サクラに関心のある方は、参考にしていただければありがたいです。

〇 作者:金田正弘氏のプロフィール
・昭和45年3月   弘前大学農学部植物病理教室卒業
・昭和45年4月   青森木材防腐(株) 勤務
・平成13年12月  財団法人日本緑化センター認定 樹木医登録
・平成16年10月  グリーンコンサルタント緑の総合研究所設立
・現在に至る

〇桜セミナーin岩見沢について
このセミナーは、公益社団法人 北海道森と緑の会 の後援を得て、空知地区さくら保育管理実行委員会と北海道さくらの会の共催で行われています。
空知地区さくら保育管理実行委員会は、桜の保育管理技術の普及を目的に、空知地区指導林家連絡協議会と北海道空知総合振興局森林室とで設置されています。 
 (桜セミナーin岩見沢配布資料より)

 

 

 

 

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