ジュウガツザクラ  狂い咲きと二季咲き

2021.11.16
先月中旬に東京の新宿御苑に行ったときに咲いていたジュウガツザクラです。 樹の高さは4mくらいで横に広がる樹形のようです。 2021.11.16
花は八重咲で、直径は2cmほどの小さめです、
新宿御苑は二十数年?ぶりで、このジュウガツザクラを見るのも初めてなので、この花についてどうのこうのという評価は出来ないのですが、好意的な表現をすれば「花のない時期に咲いているので人目をひく」「秋らししみじみとした咲き方」、それと反対の言い方をすると、「ぱっとしない」「ちらほら咲いている」「ただ珍しいだけ」となるのでしょうか。

このジュウガツサクラは、春と秋に咲くニ季咲きで、春は4月、秋は10~4月にかけて断続的に咲き、春に7分、秋~冬にかけて3分開花し、花の大きさは、春に咲く方が大きく、秋は小さ目だそうです。

<狂い咲きと二季咲き>
樹木で二季咲きする植物は意外に多く、インターネットで調べると、ボタン(寒牡丹)、フジ、ツツジ、ヤマボウシ等多くの樹木で二季咲き性があるようです。
私がよく見かける二季咲き性樹木はエゾムラサキツツジで、これは個人の庭先や公園に多く植えられているために目につく機会が多いためですが、エゾムラサキツツジが春と秋に咲くのを見かけるのは数年に一度で、これは二季咲きではなく狂い咲きです。 狂い咲きでは、モクレンが7月の夏の暑い時期にポツンと咲いているのをときおり見かけます。 しかし、これは何らかの理由で春に咲けなかった花が時期がずれて咲いたもので、狂い咲きには当たらないのでないかと思っています。
その理由は、樹木が秋に花を咲かせるのは、春に花が終わった後翌年の花芽を形成するのですが、それが何らかの要因で花芽が完全に完成していない秋に開花するのが狂い咲きで、モクレンの花が夏に開花するのは、7月では次年度の花芽は形成途中で花を咲かせる段階まで至っていないので、おそらく前年にできた花芽が何らかの理由で春に咲き切れなかったのではないかと思われるのです。 なので、これは狂い咲きではなく、出遅れ咲きなのでしょう。 モクレンも花芽が完成形に近くなっている9月以降に咲けば狂い咲きになりますが・・・・・。
それでは、サクラの 狂い咲きと二季咲きの違いは何なんでしょうか?
サクラの二季咲きは、狂い咲きが何らかの要因により常態化したものを二季咲きと呼んでいるのではないか?と思っていたのですが、それは違うようです。
その前に狂い咲きのメカニズムについてですが、この現象が起こる理由は、秋口に樹木の花芽が形成された頃に、台風や害虫、異常な高温乾燥などの要因により葉が無くなる又は減少することで、葉で形成される花芽の成長を抑制するホルモンもなくなることで開花に至るようです。

 →  エゾムラサキツツジ  狂い咲き

しかし、サクラの二季咲きは、上述のメカニズムではなく、サクラの進化・歴史に関係があるようです。
日本に自生しているサクラの先祖はヒマラヤザクラと考えられており、このサクラの開花期は秋(日本では11月に開花、12月に見頃)です。
おおよそ2000万年前、アジア大陸から分離してできたのが現在の日本列島ですが、年間を通じて温暖なヒマラヤで秋に咲くサクラが、そのとてつもなく長い時間をかけて、寒い冬のある日本で生き延びるために春に花を咲かせる性質を獲得していったのです。
時は流れに流れて江戸時代後期です。 その頃にはジュウガツザクラの記録が残っているそうです。 生物(種)が生存繁栄する過程で突然変異が起こります。 日本に自生していたサクラにも、ある日、突然秋に花を咲かせるものが出てきたのです。 突然変異で先祖返りをするサクラが現れたのです。 人間はそれを見逃さずに何世代も大事に育て遺伝的に固定化することで、ジュウガツザクラのような秋咲き品種が生まれたと考えられてるそうです。
もし二季咲きが狂い咲きと先祖返りという二つのタイプで現れるのなら、ジュウガツザクラは後者のタイプであり、元々遺伝的に秋に咲く性質を内在していたために、それが突然変異で現れたいうことのようです。

<余談>
ボタン、フジ、ツツジなど樹木には二季咲きの樹種が多くあるようですが、それらは狂い咲きのタイプなのでしょうか?、それとも先祖に秋に咲く性質を持つものなのでしょうか? それともまったく別の要因なのでしょうか?

 

 

 

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