ニラ

4月に入り、真冬の弱々しい太陽の光に比べて、その輝きは格段に眩しくて強く、本当に春の太陽です。 頬をすり抜ける風も冷たさはなくなり、日中は心地よいものがあります。 今年の2月中旬以降から3月にかけて、当地札幌は比較的暖かい日が続きました。 その中心部や周辺では、もうほとんど雪もなくなり春を待つばかりとなっています。 ところが、窓から眺める我家の庭は、大分解けたといっても、まだ全面雪に覆われています。 当方の住んでいる南区の外れは、今年は雪が多かったようで、完全に解けるにはもう少し時間が必要なようです。  気持ちは十分に春なんですが、我家には春が来ているような来てないような、もどかしい気分です。

今回は、「野菜の花」シリーズの “ニラ” です。

<神話の昔から利用される>
ニラはアジア原産といわれ、記録によると現在の栽培種は中国から渡来したようですが、わが国にも古代から野生種が分布していました。
ニラ 土木センター

漢字で韮、古名を、くくみら、かみら、こみら、みら、などと呼び、これがなまってニラとなったといわれています。

古事記には香韮(かみら)と記され、萬葉集には、

「伎波都久(きわつく:地名)の岡の茎韮(くくみら)われ摘めど 籠(こ)にも満た無ふ 夫(せな)と摘まさね」

と無名の農婦の作と思われるものがあります。 いつかのNHKテレビ番組、“邪馬台国幻想”  によると、女王卑弥呼のメニューの中には、自然薯(じねんじょ)やニラもあったであろうということでした。 神話の遠い昔や萬葉の時代から、私たちの先祖とともにあったこの植物を思うとき、いっそうの親近感を覚えずにいられません。

「鹿みちや韮に交じりて蕗の薹」
の句からもわかるように、かつては山野に多く自生しており、それを裏付けるかのように、韮崎(山梨県)、韮山(静岡県)などの地名も見うけられます。

<人を温める性よき菜なり>
農業全書(元禄元年)によると、「にらは古来名高き物に賞翫※1(しょうはん)なり、陽起草※2とて、人を補ひ温むる性よき菜なり。 又一度うへをけば、幾年も其のままをき付けしてさかゆる故、怠り無性な者のうゆべき物として・・・・・・・」 中略。

※1 賞翫 : 1 そのものの よさを楽しむこと。珍重すること。 2 味のよさを楽しむこと。賞味すること。(コトバンク)
※2 陽起草 : ニラのこと

中国のたとえによると、ニラ千畦を栽培するものは、千戸の農民をかかえる大名にも等しいといわれていると書き、さらに作り方にもふれ、ニラは植えてから根が上がりやすいので、少し深く植えるようにと注意しています。 また、冬になったら株を掘って、小屋陰など風の当たらないところに並べ、馬屋ごえ(堆肥)にて作ると、その暖かさで軟らかな韮黄(黄色い軟化ニラ)を作ることができ、それはとても美味であると述べています。・・・・・・」 中略。

中国のたとえによると、ニラ千畦を栽培するものは、千戸の農民をかかえる大名にも等しいといわれていると書き、さらに、作り方にもふれ、ニラは植えてから根が上がりやすいので、少し深く植えるようにと注意しています。 また、冬になったら株を掘って、小屋陰など風の当たらないところに並べ、馬屋ごえ(堆肥)にて作ると、その暖かさで軟らかな韮黄(黄色い軟化ニラ)をつくることができ、それは珍しくとても美味であると述べています。

古書にはニラの薬効もあげられており、韮雑炊は病人の食事に用いられたばかりではなく、高貴な方も保険食として、好んで口にしたとか。 種子の乾燥したものを韮子といい、秘尿疾患に漢方薬として使われたそうです。

ユリ科の多年草、8月になると花茎を伸ばし、半球状の散茎花序をつけます。小花は径数ミリ、6花被片よりなり純白で平開。若い蕾と花茎は花ニラとして珍重され、ひたしもの、油いため、酢のものにして逸品、テンダーボールという花ニラ専用種もあります。
ニラ

<強い生活力に野生をしのぶ>
私(林 繁)は、かつて戦後開拓として、さる土地に入植したとき、笹薮の中にやせ細ったニラを見つけ、これを肥培して立派に育てたことがありました。 聞くと、そこは第一次世界大戦のころ無願で開墾されたところ。 人去って30年、荒廃した山野にただニラだけが残る、そのわびしさを思い、生命力の偉大さに驚嘆しました。 まさしく野生の照明―性強くシベリアやサハリンの極寒の地でも越冬し、南洋やインドの熱帯でも生育します。

ニラ  土木センター

北国の人たちは、ことのほかお気に入り。四季を通じて食膳に供され、札幌市の一人当たりの年間消費量は、1kgを越えるようになりました。

みなさんも、ぜひ、庭の片隅に数株のニラを植えられ、そのたくましい生活力にあやかり、この日本古来の野菜を口と心で味わっていただきたいものです。(札幌市農業センター 林 繁)

我家の家庭菜園で、昨年6月、ニラの種をまきました。 1本の細い茎がスッーと伸びただけでひと夏を終えて冬を迎えました。 今はまだ雪の下で眠っていますが、今年は幅広い葉が大きく育ってくれると思います。 食べられるようになるには、もう一夏の成長が必要なようで、おそらく来年になると思っています。 
酷寒から熱帯まで生育できるニラの生命力、陽起草と呼ばれる体を温め、強精・強壮効果のあるニラ、朝食にニラの卵とじ、 夕食には野菜炒めの具材として、ニラのもつあの特有の臭味を楽しみたいと思っています。 

 

 

 

 

 

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