ニラ 芽だし

ニラ 2015.6.4
写真は、一昨年の春(2年前)にニラの種をまいて、その翌春(昨年)のニラの姿です。 草丈は30cmくらいでしょうか? 通常は種をまいた翌年から収穫で来るのですが、その年は収穫しないで株を大きくすることにしました。

ニラ 2016.5.3
そんなこともあって、今年は春先からニラが気になって時々見るようになっていました。 それで気づいたのですが、現在、我家の小さな畑には、アサツキ・ギョウジャニンニク・ニンニク・ニラのネギ属(Allium属:アリウム属)が4種類が植わっています。

それらの春先の生育状況を見ると、
①  アツキは畑の雪が解けて土が見える頃には新芽が出て、現在は15~20cmに成長。
② ジョウジャニンニクも昨年の地上部の葉は枯れ、4月上旬雪解けと同時に芽を吹いてきて、4月20日過ぎからは摘み取って酢味噌和えで楽しむ。 現在は蕾が上がってきている。
③ ニンニクは、昨秋植えた鱗茎から芽を出し、11月上旬の生育が止まるころまでに、草丈10~15cm、葉数は3~4枚に成長。 翌春、それらの葉先は少し枯れこむが、雪解けと同時に成長を始め、現在では葉数は6枚ほどになり約30cmに成長。

というように、これら3種はまだ気温の上がらない雪解け直後から成長を始めるのです。 それで、ネギ属は低温伸張性の高い植物の集まりであるのかな?と勝手に思っていたのですが、ニラはどうもそのようではなさそうで、雪解け時には地上部は完全に枯上がっていて、芽だしも4月下旬~5月上旬にかけてやっと出てきます。

それで、ニラについて調べてみると、
ニラはパキスタン、インド、東南アジア、中国、日本に分布する。日本産のものは、本来の自生種であるとも、弥生時代に渡来した栽培種が野生化したものといわれるが、おそらく後者であろう。 ・・・・・・・  ネギ類の多くが短日・低温で花芽分化するのに対し、ニラは長日・高温で花芽分化し、抽だい(とうだち)開花する。(園芸植物大百科)
とあります。 そういえば、ニラの花が咲くのは8月下旬?

ニラ 2016.5.9
草丈約10cm

一方、
① アサツキは北海道、本州北部、シベリア、ヨーロッパ
② ギョウジャニンニクは、奈良県以北、北海道、千島列島、朝鮮半島、シベリアに分布し、本州では深山や日本海側地域に多い
③ ニンニクは中央アジア原産と推定されているが、栽培種しか知られていない。 日本ではニンニクの栽培品種は、生態上暖地での栽培に適した暖地型品種と寒地での栽培に適した寒地型品種に大別される。
(園芸植物大百科)
ニンニクは暖地系と寒地系があるようですが、アサツキとギョウジャニンニクは北方系の作物のようです。 これらに比べてニラは、札幌では芽だしが4月下旬~5月上旬で、前述の3種類に比べると初期成育はかなり遅く、暖地系の作物のようです。 しかし、栽培については、弱アルカリ性の有機質に富んだ肥沃な排水のよい土壌が最適であるが、土質を選ばすよく生育する。 高温乾燥に強く、ネギ類中、熱帯で最も作りやすい、 のだそうです。(園芸植物大百科)
ニラは、暖かい地域でも寒い地域でもどこでも育つようで、家庭菜園にはうってつけの作物のようです。

ニラ 1年遅れの定植

昨年の6月にニラの種をまきました。 その年の秋に植え替えよう(定植)と思っていたのですが、いつでもできると思ったまま、今年の今頃になってしまいました。 1年遅れです。
ニラ2014.6
6月の種まきは2回目で、5月中旬に一度種をまいています。 しかし、芽が出なかったので他の作物の種をまいたのです。
調べてみると、ニラの種子は殻が硬く吸水しにくいので、乾燥すると発芽は遅れるとのこと。 札幌の5月~6月は比較的雨が少ないので、種をまいたときは、十分に潅水する必要があるようです。

ニラ2015.6.4 昨年6月に種をまいた株
北海道では、4月~6月に種をまいて、その年の8下旬~9月上旬頃に定植します。 その年は食べずに、翌年、新しく出た葉を5月下旬頃から食べるのが一般的なようです。

ニラ2015.9.20
これは、植えつける前のニラ
掘取り前の株は、茎(白い部分)が地際から少し上がっていて、植付けは15cmほど掘って、深植えにしています。(物の本にもそのように書かれています)
茎の部分を土に埋めないと(深植えしないと)、刈取るときに茎の部分から切ってしまいそうです。

ニラ2015.9.20
5株を束ねて植えています なぜ、束ねて植えるのか?、本にそのように書いてあるからですが、いまいちはっきりした理由は分かりません。おそらく、その方が収穫しやすいからなのでしょうね。 料理に少ししか使わない家庭菜園では、束ねて定植する必要はないかもしれません。種をまいて、そのまま植えっぱなしでいいように思います。
写真手前の白い茎はアサツキ。 7月に球根を掘り起こして陰干しして置いたものを、ニラの定植に併せて植え付け。

我家でニラを一番使うのはキムチ鍋。 10月~11月に柔らかい葉を使うには、8月のお盆頃に一度刈る必要があるのでしょうかね。 もう少し遅くてもいいのかな? 来年試す必要がありそうです。

<余談>
ニラはユリ科?、ネギ科?の宿根多年草の植物で、生育適温は16~23℃であり、5℃以下での低温で生育が停止する。 また、25℃以上で葉は徒長的となり、30℃以上で生育は緩慢となる(正しく、北海道向き)。
しかし、比較的温度には鈍感な作物である。種子の発芽は20℃前後が適温で25℃以上および10℃以下ではほとんど発芽しない。
ニラの根は浅根性で通気性を好むので、排水不良土では湿害が出やすい。 酸性土壌は好まず、最適PHは6.0~6.5である。(北海道の野菜づくり全書より)

栽培農家さんは、4年間くらい収穫して、その後廃耕にするそうですが、家庭菜園では、いっぺんに刈取らなければ、ずっ~~と持つのでしょうね。

<追記 2015.9.28>
野菜に詳しい知人に、この話をしたら、
「4~5年に一度、株分けして植え替えればいいよ」
そうですよね、良質なニラを食べようと思えば、手抜きしないで、株分けして植え替えればいいんですよね。 その時に、堆肥を入れて置けば、さらにおいしいニラが食べられのです。

ニラ

4月に入り、真冬の弱々しい太陽の光に比べて、その輝きは格段に眩しくて強く、本当に春の太陽です。 頬をすり抜ける風も冷たさはなくなり、日中は心地よいものがあります。 今年の2月中旬以降から3月にかけて、当地札幌は比較的暖かい日が続きました。 その中心部や周辺では、もうほとんど雪もなくなり春を待つばかりとなっています。 ところが、窓から眺める我家の庭は、大分解けたといっても、まだ全面雪に覆われています。 当方の住んでいる南区の外れは、今年は雪が多かったようで、完全に解けるにはもう少し時間が必要なようです。  気持ちは十分に春なんですが、我家には春が来ているような来てないような、もどかしい気分です。

今回は、「野菜の花」シリーズの “ニラ” です。

<神話の昔から利用される>
ニラはアジア原産といわれ、記録によると現在の栽培種は中国から渡来したようですが、わが国にも古代から野生種が分布していました。
ニラ 土木センター

漢字で韮、古名を、くくみら、かみら、こみら、みら、などと呼び、これがなまってニラとなったといわれています。

古事記には香韮(かみら)と記され、萬葉集には、

「伎波都久(きわつく:地名)の岡の茎韮(くくみら)われ摘めど 籠(こ)にも満た無ふ 夫(せな)と摘まさね」

と無名の農婦の作と思われるものがあります。 いつかのNHKテレビ番組、“邪馬台国幻想”  によると、女王卑弥呼のメニューの中には、自然薯(じねんじょ)やニラもあったであろうということでした。 神話の遠い昔や萬葉の時代から、私たちの先祖とともにあったこの植物を思うとき、いっそうの親近感を覚えずにいられません。

「鹿みちや韮に交じりて蕗の薹」
の句からもわかるように、かつては山野に多く自生しており、それを裏付けるかのように、韮崎(山梨県)、韮山(静岡県)などの地名も見うけられます。

<人を温める性よき菜なり>
農業全書(元禄元年)によると、「にらは古来名高き物に賞翫※1(しょうはん)なり、陽起草※2とて、人を補ひ温むる性よき菜なり。 又一度うへをけば、幾年も其のままをき付けしてさかゆる故、怠り無性な者のうゆべき物として・・・・・・・」 中略。

※1 賞翫 : 1 そのものの よさを楽しむこと。珍重すること。 2 味のよさを楽しむこと。賞味すること。(コトバンク)
※2 陽起草 : ニラのこと

中国のたとえによると、ニラ千畦を栽培するものは、千戸の農民をかかえる大名にも等しいといわれていると書き、さらに作り方にもふれ、ニラは植えてから根が上がりやすいので、少し深く植えるようにと注意しています。 また、冬になったら株を掘って、小屋陰など風の当たらないところに並べ、馬屋ごえ(堆肥)にて作ると、その暖かさで軟らかな韮黄(黄色い軟化ニラ)を作ることができ、それはとても美味であると述べています。・・・・・・」 中略。

中国のたとえによると、ニラ千畦を栽培するものは、千戸の農民をかかえる大名にも等しいといわれていると書き、さらに、作り方にもふれ、ニラは植えてから根が上がりやすいので、少し深く植えるようにと注意しています。 また、冬になったら株を掘って、小屋陰など風の当たらないところに並べ、馬屋ごえ(堆肥)にて作ると、その暖かさで軟らかな韮黄(黄色い軟化ニラ)をつくることができ、それは珍しくとても美味であると述べています。

古書にはニラの薬効もあげられており、韮雑炊は病人の食事に用いられたばかりではなく、高貴な方も保険食として、好んで口にしたとか。 種子の乾燥したものを韮子といい、秘尿疾患に漢方薬として使われたそうです。

ユリ科の多年草、8月になると花茎を伸ばし、半球状の散茎花序をつけます。小花は径数ミリ、6花被片よりなり純白で平開。若い蕾と花茎は花ニラとして珍重され、ひたしもの、油いため、酢のものにして逸品、テンダーボールという花ニラ専用種もあります。
ニラ

<強い生活力に野生をしのぶ>
私(林 繁)は、かつて戦後開拓として、さる土地に入植したとき、笹薮の中にやせ細ったニラを見つけ、これを肥培して立派に育てたことがありました。 聞くと、そこは第一次世界大戦のころ無願で開墾されたところ。 人去って30年、荒廃した山野にただニラだけが残る、そのわびしさを思い、生命力の偉大さに驚嘆しました。 まさしく野生の照明―性強くシベリアやサハリンの極寒の地でも越冬し、南洋やインドの熱帯でも生育します。

ニラ  土木センター

北国の人たちは、ことのほかお気に入り。四季を通じて食膳に供され、札幌市の一人当たりの年間消費量は、1kgを越えるようになりました。

みなさんも、ぜひ、庭の片隅に数株のニラを植えられ、そのたくましい生活力にあやかり、この日本古来の野菜を口と心で味わっていただきたいものです。(札幌市農業センター 林 繁)

我家の家庭菜園で、昨年6月、ニラの種をまきました。 1本の細い茎がスッーと伸びただけでひと夏を終えて冬を迎えました。 今はまだ雪の下で眠っていますが、今年は幅広い葉が大きく育ってくれると思います。 食べられるようになるには、もう一夏の成長が必要なようで、おそらく来年になると思っています。 
酷寒から熱帯まで生育できるニラの生命力、陽起草と呼ばれる体を温め、強精・強壮効果のあるニラ、朝食にニラの卵とじ、 夕食には野菜炒めの具材として、ニラのもつあの特有の臭味を楽しみたいと思っています。