ポプラ:丸太にされたポプラに何が起きたか?

個人はもとより学校などの公共施設でも、樹が大きくなるとその大きさを持て余し、樹姿を見て剪定するなどという考えは全くないように、ばっさりと太い幹の途中から切られる樹を見かけます。 おそらく、近接の方から「落葉が家の中まで入ってくる」、「落葉の掃除が大変だ」などの苦情で、或いは、その樹を所有する施設の内部の中からも「あの樹は大きすぎて管理するのが大変だ」とか、「剪定する費用が高い」などの意見が出て、ばっさりと切られるんじゃないかと思っています。
1-055 ポプラ 自衛隊2011.7.1
写真の樹はポプラです。 目通り幹径は60~70cmはありそうで、植えられたのは昭和50年代と思います。 もう20年以上前でしょうか、通勤途中に車窓から見た細くすらっとした樹姿が記憶に残っています。
撮影日が2011年7月1日ですので、おそらく、2010年(平成22年)?、今から4~5年前にばっさり切られたようです。 このポプラは30本くらい列に植えられているのですが、これほど凄い剪定をされても、ショックで枯れた樹は3~4本程度です。 ポプラは萌芽力が強いようで、このような酷い仕打ちにあっても、切断された面や太い幹の途中からと芽を吹き出し、健気に生きながらえることができるようです。
1-017 ポプラ 自衛隊真駒内駐屯地2014.7.13
当施設の管理者は、ポプラを寸胴にしても 緑が復活するという見込みがあって、このような思い切った剪定をしたかどうかは分かりませんが、伐採に等しい剪定から4~5年も経つと、健気なポプラは枝葉を元気よく出してこんもりとした緑の樹姿をつくりだします。 切断された傷跡も葉に隠れてしまい普通?の樹のようにしてしまいます(落葉する冬場は別)。
1-006 ポプラ2014.11.22
しかし、1本1本に近づいてみると、その幹には大きな変化が起こっています。 写真の寸胴のポプラは、幹の上部から胴吹きして4年間で枝が大きく成長しています。 その枝の基部から一筋の線が樹幹中央を走って地際まで達しています。 その筋に沿って樹肌が割れているように見えます。
1-008.jpg2014.11.22
よく見ると、割れた樹肌の奥から新しい滑らかな樹肌が筋状に盛り上がってきています。 この部分は生きていて、根から水や養分を吸い上げ(木部)、葉でできた養分を根に降ろす(師部)部分です。
近づいて見ることができないのではっきりしたことは言えないのですが、幹の左半分は生きているのですが、右半分は樹肌に精彩がなく、死んでいるようです。 死んでいるように見えるその樹肌部分は、上方に葉がないために水をあげる必要がないからです。 樹木の細胞は水や養分を運ぶために縦の流れはスムーズですが、横の細胞とは小さな穴でつながってはいるものの、その連携は上部に枝葉のない細胞まで面倒を見るほど緊密ではないようです。 確かにそれらの細胞を生かしておいても、本来の役割を果たせないで、ただ、葉でつくった養分(エネルギー)を消費するだけなのですから、仕方がないのかもしれません。 「働かざるもの食うべからず」というところでしょうか。
上述の生きている部分は樹幹の左半分と記しましたが、正確には、上部の枝葉が生きていくために必要な水分を上に揚げ、栄養を根に降ろしてくれる幅さえあれば十分なので、もしかして、生きている部分はもっと少ない(幅が狭い)かも知れません。
今後、この樹はどのようになるのでしょうか?
枝葉がある下方の樹肌の部分は、毎年年輪をつくって太って盛り上がっていき、一方、右半分は枯死しているので幹は太れず、今までの円い幹がだんだんと歪んだ円形に変わっていきます。
現在、死んだ部分の樹肌は幹から剥がれているように見えないですが、 今後、縦に走る筋の部分から樹肌が浮き上がって、だんだんと剥がれ落ちるのでしょう。 死んだ部分(木部)にはキノコが生えるようになり、また、カミキリムシやキクイムシなど枝や幹に潜る昆虫(害虫)が進入してきます。 これらの害虫は弱った樹をよく知っているので、もしかして、既に入っているかもしれません。 このようにして 枯死した部分は腐朽が進んでいきます。
幹の途中から成長した枝は、主幹の片側だけで枝葉を伸ばすために樹冠のバランスが悪く、、台風など強風で枝の基部から折れる可能性が通常の樹より高いです。 枝が大きく成長するのと併行して主幹右半分の腐朽も進行してくるので強風による幹折れの可能性も大きくなっていきます。
樹木に伐採に近い剪定(強烈なストレスを与える)をすると、表に見える樹姿の変化だけではなく、樹冠内部にも大きな変化がおきます。 樹木は必死になって生きようとしますが、害虫の侵入、強風による幹枝の折損など外部環境に対する抵抗力は極端に落ちます(弱くなる)。

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