札幌で見られるツツジ・シャクナゲ類の自生地と耐寒性(ハーディネス)
樹種名 | 分布(樹に咲く花) | ハーディネス | 札幌での越冬性
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備考 |
キバナシャクナゲ | 北海道、本州中部以北、千島、サハリン、カムチャッカ、朝鮮半島、東シベリア | なし | 耐寒性あり | ⇒ キバナシャクナゲ |
ハクサンシャクナゲ | 北海道、本州中部以北、四国(石鎚山)朝鮮半島北部 | なし | 耐寒性あり | ⇒ ハクサンシャクナゲ |
アズマシャクナゲ | 本州(東北、関東、中部地方南部 | なし | 耐寒性あり?(個人の庭で見かける) | |
セイヨウシャクナゲ | 東アジアが中心で、北はシベリア〜南インドネシアに分布する種を交配 | なし | 原種、品種共に種類によってマチマチ | ⇒ 西洋シャクナゲ(その1) |
エゾムラサキツツジ | 北海道、東シベリア、朝鮮半島北部、中国東北部、モンゴル | Z5 | 耐寒性あり | ⇒ 春を告げる樹の花(その2) |
ムラサキヤシオ | 北海道、本州(東北、中部の主に日本海側) | なし | 耐寒性あり | |
アカヤシオ | 本州(福島県~三重県の太平洋側 | なし | 耐寒性あり? (個人の庭でよく見かける) |
⇒ アカヤシオ(その1):その花色が好きで |
ヤマツツジ | 北海道(南部)、本州、四国、九州 | Z7 | 耐寒性あり、植栽場所による | ⇒ ヤマツツジ |
レンゲツツジ | 本州、四国、九州、本道では南西部に自生しているといわれているが、自生地は不明(樹に咲く花) | Z9 | 植栽場所による | |
エクスバリーアザレア | ヨーロッパ、中国産、アメリカ産のツツジや日本のレンゲツツジなどをもとに改良された品種群の総称(北海道樹木図鑑) | なし | 場所による | ⇒ エクスバリーアザレア |
ミヤマキリシマ | 九州(九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山) | Z9 | 植栽場所による | |
ヒノデキリシマ(キリシマ<クルメツツジ>)の改良種 | 九州 | Z8b | 植栽場所による | |
サツキ | 本州(関東、富山以西) | Z8 | 植栽場所による | ⇒ サツキ |
クロフネツツジ | 朝鮮半島〜中国北部原産の落葉樹 | Z4 | 耐寒性あり | ⇒ ツツジにしては異色の名前です:クロフネ |
ミツバツツジ | 本州(関東、東海、近畿地方) | なし | 場所による | ⇒ ミツバツツジ |
リュウキュウツツジ | キシツツジとモチツツジの雑種 | なし | 耐寒性あり、場所による | ⇒ リュウキュウツツジ |
ヨドガワツツジ | 朝鮮半島 チョウセンヤマツツジの園芸品種で、雄しべが花弁化 | なし | 耐寒性あり | ⇒ ヨドガワツツジ |
ドウダンツツジ |
本州(静岡、愛知、岐阜、紀伊半島)、四国(高知、徳島)、九州(鹿児島) |
Z5 | 耐寒性あり | ⇒ ドウダンツツジ 紅葉 |
サラサドウダン |
北海道(西南部)、本州(兵庫県以北、四国(徳島) |
Z5 |
耐寒性あり |
〇 札幌におけるハーディネス(Hardiness)と耐寒性(実際の越冬性)の関係性
① ハーディネス Z5 以下の樹種は、札幌の個人の庭や公園などでよく見かけるもので、 札幌で越冬し、耐寒性のある樹種でです。 その内のキバナシャクナゲ、ハクサンシャクナゲ、エゾムラサキツツジは北海道に自生しているので耐寒性があるのは当然ですが、一方、ドウダンツツジは本州の静岡以西に分布している樹種にも関わらず耐寒性があり。札幌で何の問題もなくに越冬します。
しかし、白いスズランのような花をつけるドウダンツツジは、一応ツツジの名前がついて同じツツジ科に属してはいるものの、サツキやカバレンゲのような筒状の大きな花弁をつける一般的なツツジの仲間、ロードデンドロン属(Rhododendron属)とは遠い関係?のツツジの仲間のようなので、同じレベルで越冬性、耐寒性を語るのは少し無理があるのかもしれません。
② リュウキュウツツジについては、ハーディネスの記載がないので何とも言えないのですが、その親であるキシツツジとモチツツジの自生地は、前者が本州(中国地方)、四国、九州(北部)で、後者が本州(静岡・山梨~岡山)、四国なので、ハーディネスも関東以西に分布するツツジと同程度と推測されます。 札幌で見る限り、その耐寒性・越冬性はそれらに比べるともう少しあるように思われます。
昨年度(令和元年度)の札幌は降雪が少なく、灌木でも1月半ばを過ぎても寒風に晒されていました。 しかし、翌春には葉が褐色になったり、蕾が枯死して開花できなかったものもあったのですが、とりあえず、葉が枯れたのも部分的で、白い花を咲かせていました。
その耐寒性は、リュウキュウツツジの枝、葉、冬芽には茶褐色の比較的長めの毛が蜜に生えており、それが防寒の役目を果たしているのではないか と思っています。
③ ハーディネスZ8、Z9に属するサツキ、ミヤマキリシマ、ヒノデキリシマは、ときおり街中で見かけます。 特にサツキについては、ビルやマンションの外構植栽に使われるので頻繁に見かけます。 しかし、それらを見ていると、いつの間にかその場から無くなっているのに気付くのです。 おそらく、鑑賞に値しなくなって処分せざるを得なかったのでしょう。 昭和の終わりから平成初めにかけて新しく造成された公園に植えられたサツキやヒノデキリシマはとっくの昔に消えています。
ツツジ類の根は他の樹木の根に比べると特異的で、透明で細い繊細な根を持っていて、掘り上げると根が団子状態になります。 これらの根は乾燥に弱く、公園などで1日中根元に陽が当たるような場所に植えられたツツジ類は、数年もするとほとんどの株がなくなっていることが多々あります。 現在でも生きながら得ているツツジ類は、午前中だけ陽が当たるところや、高木の下に植えられているなど、地面が比較的乾燥しづらい場所に植えられているものが多いように思います。
ハーディネスがZ8、Z9に属するツツジ類は関東以西に分布するものが多く、成長期の6月は梅雨時で、7〜8月にかけては夕立や台風など十分すぎる程の水を浴びます。 一方、札幌を含めた北海道は、夏場の成長期間が短い上に、オホーツク海高気圧に覆われることが多く、7月には公園や河川敷の芝生が黄ばむほど雨が降らないことがあります。
ツツジ類の耐寒性を語る前段として、札幌の夏場はツツジ類にとって本来の生育を促すための十分な環境に無いように思うのです。 その意味では、個人の庭のツツジ類は、近くに建物があるので1日中陽が当たる環境ではなく、また、夏場に乾燥が続いた場合には潅水をしてもらえるなど、公園などに比べて夏場に十分成長できる条件が整っていて樹木の樹勢を保つことができ、冬囲いもしてもらえるので、冬越しもその体力で耐えられる可能性が大きいのです。
以上のことから、ハーディネス Z8、Z9 のツツジ類は、公園など環境の整わない場所では数年は生きながらえることはできても、その後は枯死する場合が多い(ほとんど)。 一方、個人の庭に植えられている類は、比較的長く生き延びているのです。
④ ヨドガワツツジは、札幌市内の公園で見かけるツツジで、ハーディネスの記載はないものの、ハーディネスZ8、Z9 のツツジ類に比べて十分な耐寒性を持っており、越冬性も高いようです。 ヨドガワツツジの分布域は朝鮮半島で、その中央に近いソウルやピョンヤンは、前者が仙台市、後者が秋田市と同じくらいの緯度に位置しています。 日本との違いは冬場は大陸性気候の影響をより強く受け、ピョンヤンの冬季(12月〜2月)の平均気温はマイナスで札幌と同程度の気温になり、しかも、降雪量が少ないので、そこに生息している植物は寒さに対する抵抗性を十分に持っているはずで、ヨドガワツツジが札幌の公園で生きながらえることができるのも当然かもしれません。
⑤ ヤマツツジの自生地は日本全国に分布し、北海道では道南で、エサンツツジが有名です。 なので、ハーディネスゾーンのZ7と耐寒性はあります、 しかし、個人の庭では立派に育っているものを見かけますが、公園などでは1日中陽が照るような、生育環境が厳しい場所に植えられているものは最終的に無くなっているものが多いようです。
⑥ シャクナゲ類については、キバナシャクナゲとハクサンシャクナゲは北海道に自生しているので耐寒性は十分にあり、生育環境を整えればどこに植えても育つようです。 アズマシャクナゲも個人の庭で見かけますので、キバナシャクナゲやハクサンシャクナゲほどの耐寒性はないにしても、札幌で十分育つようです。
一方、セイヨウシャクナゲは、東アジアの亜寒帯~熱帯?亜熱帯?まで広範囲に分布している原種及び品種を交配して作出されてるので、個々の種類によってその耐寒性(ハーディネス)は異なってきます。
また、シャクナゲ類は常緑性なので、耐寒性の高い種類でも通常の冬では葉に異常なく越冬するのですが、初冬期に異常な寒さに見舞われたり、例年になく降雪量の少ない年は、葉や花芽が枯死することがあります。