豊平公園の緑の相談で9月末ごろから、時折尋ねられる質問に、
「肥料をいつやったら良いか?」
というのがあります。
札幌のこの時期は、漬物用のダイコン、キャベツ、ハクサイ以外の野菜はほとんど終わっているので、樹木や草花(宿根草類)に対する肥料と思いきや、野菜も含めての質問のようなのです。
質問者に話をよく聞くと、
「本を読むと、お礼肥や寒肥を入れたほうが良いと書いてあるので、それで質問した」
とのこと。
この人は肥料と堆肥を一括りにする、混同しているようなのです。
市販されている園芸書は、関東以西を基準に植物のタネまき・植付け・移植・施肥などの時期を記載しているので、札幌のように寒い地域では当てはまらないことが多いのです。以下は関東以西と札幌の樹木の開花時期です。
| 開花時期 | ||
| 札幌 | 関東以西 | |
| サクラ | 4月下旬~5月上旬 | 3月下旬~4月上旬 |
| サツキ | 6月下旬~7月上旬 | 5月下旬~6月上旬 |
| ムクゲ | 8月上旬~10月上旬 | 7月上旬~10月上旬 |
札幌の樹木の開花期は関東以西に比べて約1か月遅く、秋の紅葉は関東以西での平野部で11月中旬~12月上旬になり、札幌では10月中下旬で1か月ほど早くなます。このことは、植物の植込み、剪定、施肥など植物管理すべてに影響します。
肥料<窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)など>は施されたらすぐに植物の根に吸収されるわけではなく、まず水に溶ける必要があります。また、植物に肥料を施す時期は植物が成長している時期、つまり、春から夏です。植物の成長が遅くなる若しくは成長しない秋や冬に夏と同じように肥料を与えても、根から吸収しきれません。土壌中に溶けた肥料成分は地下に浸透するか外側に拡がっていくだけです。 その意味で、どの種類の肥料をいつやるか?は、肥料の性質を理解しておくことが重要になります。
その前に、お礼肥と寒肥の意味を確認しておきます。
〇 お礼肥
・対象;主に花木・果樹、草花類
・目的;花が咲いた後や実を収穫した後に、翌年の花や実の準備を助けるため
・資材;油粕、骨粉、化成肥料、鶏糞など
〇 寒肥
・対象;花木、果樹
・目的;冬の寒い時期に与える肥料のことで、春からの成長や花・実つきを良くするための施肥
・資材;油粕、骨粉、堆肥など
野菜の施肥用語に元肥(基肥)、追肥が一般的使われますが、お礼肥や寒肥は主に花木や果樹で用いる用語です。宿根草類もこちらの部類に入るのでしょう。
上述の質問者が尋ねた秋以降にまく肥料という意味での、具体的な肥料はどんなものがあるでしょうか? 代表的なものを挙げると
〇 肥料
①化学(化成)肥料

写真の肥料は、20kg/1袋、 数字の8-8-8は、窒素(N)ーリン酸(P)-カリ(K)がそれぞれ8%づつ入っているを表しています。
1袋が20kgなので
20kg × 8% = 1.6kg
一袋に窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)がそれぞれ1.6kgづつ含まれています。
この化成肥料の袋の中には、白い小さな粒が入っています。 化成肥料は即効性と言われますが、その意味は、雨が降ったり、水をかけると直ぐ水に溶けて根から吸収されるのです(窒素などの養分は水に溶けて初めて根から吸収されます)。
・札幌のような寒冷地は、植物の生育期間が短いので、野菜など5月からのタネまきや植付後の初期生育を促進するために、即効性のある化成肥料を使います。 また、花木や果樹のお礼肥的な意味合いでの化成肥料の使用は一般的には行いません。
②有機質肥料
・油粕、骨粉、米ぬかなど
・これらは、細かい粉状なので、比較的早く根から吸収されますが、化成肥料に比べると遅いです。
・化成肥料は畑にまいてから数日以内に根から吸収され始めます。 一方、有機質肥料は肥料の種類や土壌条件によって異なりますが、土壌微生物の分解を経て、アンモニア態窒素や硝酸態窒素に変化して吸収去されるため、一般的には7~14日程かかります。
・有機質肥料の成分比率
| 窒素 | リン酸 | カリ | |
| 油粕 | 5~7% | 1~2% | 1~2% |
| 骨粉 | 4% | 17~20% | 0% |
| 米ぬか | 2~3% | 4~6% | 1~2% |
有機質肥料は、化成肥料(代表的な8-8-8)に比べると肥料成分は少なめです。
・有機化成肥料という名前の肥料も販売されていますが、これは化成肥料と油粕や骨粉などの有機質肥料を混ぜたもので、化成肥料に比べると肥効期間が長くなります。
〇堆肥
①植物性堆肥
・材料;落ち葉、わら、バーク(樹皮、剪定枝など)
・特徴;土壌の通気性や保水性の改善、肥料分は少ない
②動物性堆肥
・材料;牛糞、馬糞
※鶏糞は即効性があり、化成肥料に近い
・特徴;植物性堆肥と同様に土壌改良(土をふかふかにする、微生物の活動を盛んにする)効果と、有機質肥料に劣るが肥料効果もある。
・牛糞堆肥の肥料成分(窒素・リン酸・カリ)は1~2%
・馬糞堆肥の肥料成分は0.5%前後
・化成肥料(8%-8%-8%)に比べると堆肥の肥料成分はかなり低い
③ 堆肥の特性
・堆肥は、堆肥に含まれる有機部が微生物によって分解されると、粘着性の物質が生成されて、それが土壌の※団粒構造を形成します。これが、土壌の通気性・保水性・排水性を高め、根の伸長を促進します。
※団粒構造;土の微細な粒子が微生物や有機物の働きによって結びつき、小さな団子状の塊(団粒)を形成した状態のこと

画像はヤンマーさんのサイトからお借りしました
https://www.yanmar.com/jp/agri/agrilife/kitchen_garden/field/soil/
上図の一番右側の図で、大きい丸が団粒で、その中の小さな丸が単粒。 単粒と単粒の隙間には水分が保持されるが、団粒と団粒の隙間は空気が埋める。ので、植物の根は単粒と単粒の隙間を埋めている水分を吸収し、団粒と団粒の隙間にある空気から酸素を吸っている。
④ 堆肥の投入時期
・札幌のような寒冷地では10月中旬が適期
・その理由 9月に堆肥を投入すると、まだ気温が高いため堆肥の分解が急速に進み、分解で生じた窒素やリンなどの栄養分が冬の雪解け水で地下に浸透・流出してしまうため。
また、11月以降に堆肥を入れないのは、すでに地温が低下しているので、分解がほとんど進まず、翌年の春に投入するのと同じ効果しか得られないため。
また、11月に入ると3時過ぎには暗くなり作業時間が極端に短くなることや、わざわざ寒さの厳しいこの時期に行うメリットがないことが挙げられる。
以上が肥料(化成肥料・有機質肥料)と堆肥の特性と違いです。次回は、実際に園芸店で販売されている堆肥について検討します。