カノコユリ  黄葉と球根の堀上


2024.10.17
カノコユリの葉が黄葉してきたので、球根の植替えの適期を迎えました。
右は地植えのカノコユリ。 鉢植えに比べて黄葉が遅い。 2024.10.17
植物、樹でも草花でもそれらの葉は秋になると紅黄葉します 。 紅黄葉するということは、葉緑体(葉が緑色をしている元で、光合成が行われる場所)が分解されて、元々葉の中にあった赤や黄の色素が発色する現象ですが、植物体内では、葉緑体の中に存在していた窒素や微量要素等が植物体に戻される作用です。 樹木ではそれら物質は幹や根に蓄えられ、来春の芽出しや展葉、新根を出すために使われます。 宿根草は地下茎や根に蓄えられて、来年の芽出しや新根を出すのに使われます。 それでは、翌春のために養分を蓄える必要のない1年草ではそれらの物質はどこへ行くのでしょうか? おそらく、葉にあった養分はすべて種子の肥大形成に回るのでしょう。

2024.10.21
話が逸れてしまいました。 写真はカノコユリを鉢から抜いて余計な土を取り除いた
ところです。
2024.10.21
鉢から取り出して上根を切除した球根。
ユリの球根は、茎が短縮して扁平になった底盤と呼ばれる部分に、葉が養分を蓄えるために変化した鱗片が重なってできたものです。 球根の内部にできた新しい鱗片が古い鱗片を外側へ押しやるような形で、球根が肥大していきます。
そのため、鱗片には皮が無く乾燥に弱いので、土の中から取り出したら、なるべく早く植えることがポイントです。 チューリップの球根のようにタマネギの赤いネットに入れて長期間の乾燥状態での保管は不可です。 なので、鉢の中から球根を取り出し、新しい土に入れ替え後直ぐ植えこみました。
2024.10.24
上根についていた木子。 木子にも根が生えてきています。 これも12cmの鉢に植えこみました。
木子とは、ユリの一部などで茎の下部の節のえき芽が肥大してできる小鱗茎。母球である球根よりもかなり小さいが、球根と同じように地中に植えると発芽する。
(ウィキペディアより)

⇒ カノコユリ
 カノコユリ(その2) ポット苗 
⇒ カノコユリ(その3) 開花 

 

  

 

球根の花芽分化(その2) 春植え球根

前回のブログで投稿した秋植え球根類は北半球の温帯に分布(自生)していますが、春植え球根類は それより気温の高い亜熱帯や熱帯地域のものが多いようです。
春植え球根類には以下の種類があります。
アマリリス、カラー、ダリア、グラジオラス、カンナ、球根ベゴニア、グロリオサ、クルクマなど。 普段、札幌の公園や個人の庭で見かけるものは、カラー、ダリア、グラジオラス、カンナ、の4種でしょうか? アマリリスは鉢花としては見かけますが、花壇など屋外に植えられているものは見たみたことがありません。
これら球根の自生地、花芽分化の場所、開花期、球根の種類の項目を表にまとめてみると、

名称 球根の種類 花芽分化
の場所
開花期 自生地 備考
カラー 塊茎
地下茎が肥大したもの)
①湿地性;
茎葉の先端
②乾地性;
球根内
7~8月 南アフリカ カラーには
①湿地性
②乾地性
がある
ダリア 塊茎 球根内ではなく、茎葉の先 8月~霜が降りるまで 中米(メキシコ~ガテマラの高地)
グラジオラス 塊茎 球根内ではなく、葉が2枚出た頃 7~8月 ・地中海沿岸
・熱帯アフリカ~南アフリカ
カンナ 根茎 根茎dはなく、茎葉の先 熱帯アメリカ
アマリリス 球根 球根内 南アメリカ

上の表を見てわかるとおり、グラジオラスの自生地が北半球の地中海沿岸以外、すべて南半球で熱い地帯に生育するものです。 ちなみに、グロリオサは熱帯アメリカ、クルクマは熱帯アジアです。

秋植え球根類は、主に北半球の温帯地域に分布し、春に開花して、その年の夏までに花芽をつくって冬の寒さに備え、翌春に開花するタイプが多いのですが、春植え球根類は、南半球の亜熱帯~熱帯に分布してiしているものが多く 、花芽は球根内ではなく、そこから新芽を出してその先につくるものが多いようです。
考えてみれば、年中暑い、または、暖かいところに生育している植物は、やってくることのない冬に備える必要はなく、いつでも葉を出して花芽を形成して花を咲かせことが出来るのです。

〇 カンナ
札幌でのカンナの開花期間は、7月末~9月上旬までで、本州の関東以西では6月~~10月ですが、熱帯(条件が良いところ)に生育しているものはでは年中咲いているようです。

〇 アマリリス
アマリリスも南アメリカの熱帯に分布していますが、年中暑く雨の多いところではなく、 その生息域は南アメリカでも雨季と乾季のある地域や寒さのある高地のようです。 球根内に花芽をつくる植物は、温帯・熱帯に関わらす、雨の降らない乾季があることや標高の高い寒い場所で、それらに備えるために球根内に花芽をつくるようです。

〇 カラー
カラーは、乾地性と湿地性の2つのタイプがあります。 夏に、札幌の個人の庭で見かけるものは乾地性のカラーです。 乾地性は花芽を球根内につくります。 この種は、乾季と雨季のある比較的温暖な地中海性気候の環境に生息しています。
一方、湿地性タイプのカラーは、乾地性タイプより気温の高い、しかも、降水量の多い、高温多湿の気候域にしているようです。 このタイプは高しているので、花芽は球根内ではなく茎葉につくります。

〇 グラジオラス
「グラジオラスの球根は札幌でも越冬する」いう話を耳にします。
この話を最初効いたとき、「ええっ」と思ったのですが、調べてみると、
グラジオラスには春咲きと夏咲きの2つのタイプがあって、
〇 春咲きタイプ、
・本州では、球根の植込みは秋で、開花期は3~5月
・原産地は、南アフリカの最南端ケープ地方や地中海沿岸、地中海性気候帯に自生
〇 夏咲きi タイプ
・本州では春に植込み、夏に開花
・原産地は南アフリカで、春咲き種よりももう少し暖かい地域に生息している
・豪華な花が咲く種類が多い
北海道は寒いので、本州と違って春植え種・夏植え種の区別なく、この2種を春に植えてきたのではないでしょうか。 その中で、おそらく、春咲き種の中でも耐寒性のある品種が越冬するようになったのでしょう。

球根の花芽分化(その1) 秋植え球根 

チューリップの球根を秋に植えると、翌春に花が咲きます。ムスカリやスイセンなどの他の 秋植え球根類も秋に植えると翌春に花を咲かせます。 うっかりチューリップの球根を秋に植えるのを忘れてしまって、春に植えても花はその年の春に咲きます。 それは、球根の中に花芽ができていて、暖かくなるとその花芽が成長して球根から伸びだして花を咲かせるのです。 この現象は他の秋植え球根でも同じように起こります。
チューリップは、札幌の場合、雪解け後春早く4月上中旬から葉を出し、5月中旬~下旬に花を咲かせ、7月に葉が枯れるまでの間に球根を太らせて、その中に来年の花芽を準備するのです。
このことが頭に刷り込まれていたために、勘違いをしたことがあります。
私は豊平公園の緑のセンターで相談員をしているのですが、夏半ばを過ぎた頃に、
「カンナの花が咲かないのはどうしてか」
という質問を隣に座っている相談員が受けていました。
その電話でのやり取りを聞いていると、相談者は
「葉はすごく立派に成長しているのだが、花が全く上がってこない」
とカンナの生育状況を説明、
「肥料をやり過ぎると栄養成長が勝り。花が咲き実が生る生殖成長が抑えられることがある」
というような内容で答えている相談員の声が聞こえてきました。  電話が終わってから、
「球根類は球根の中に花芽をつくるので、花が咲かない原因は別にあるのではないか」と私の考えを述べると、
「そうなの?」といまいち納得のいかなそうな生半可な答が返ってきました。それで、こちらも心配になってカンナの花芽分化について調べてみました。
答えは、
「カンナは春に球根(根茎)を植えて芽を出して成長し、茎が伸びてその先端に花芽を形成する」
です。
カンナは球根内に花芽をつくらないのです。 上述した「球根類は球根内に花芽を持っている」という私の思い込みが間違っていました。 確かに、カンナは夏から初秋にかけて次から次に花が咲き続けるので、球根にある花芽だけでは咲き続けられる訳がないですよね。

球根類の花芽について調べていると、いろいろなことが分かってきました。
球根類は植込み時期が、①秋植え、②春植え、③夏植えの3パターンがあります。

① 秋植え球根は秋に植えて春に花が咲く種類で、チューリップ、ヒヤシンス、クロッカス、ムスカリ、ヒヤシンス、オキザリス、スイセン、ジャーマンアイリス、シラー、アリウム、 チオノドグサ、アスストロメリア、スノーフレーク、スノードロップ、ユリ

② 春植え球根は春に植えて夏に花が咲く種類で、アマリリス、ダリア、カンナ、カラー、グラジオラス 、球根ベゴニアなど

③ 夏植え球根は夏に植えてその年の秋に花が咲く種類で、ヒガンバナ(リコリス)、コルチカム、ネリネ、サフラン(秋咲きクロッカス)

などがあります。

①の秋植え球根類は、花芽がその夏?までに球根内に出来上がって、冬を越して翌春に花が咲くタイプです。分布域はヨーロッパ、アジア、北アメリカなど北半球の温帯地域で温かい時期と寒い時期のある地帯です。 上述の球根類の多くが、スペインやイタリア、ギリシャなどの南ヨーロッパ、モロッコ、アルジェリア、リビアなどの北アフリカ、イスラエル、イラン、カスピ海沿岸地域などの中東に自生している球根類です。
この地域の気候は地中海性気候で、年間の雨量が400~700mm、冬場は100mm弱?/月、夏場は30mm/月程度で、ほとんど雨が降らず、晴れた日が多いようです。 なので、これらの球根類は、秋から春に葉を成長させ花を咲かせるのです。春の終わりには十分に球根が太り、その中には秋から冬に花咲かせる花芽が準備されているのです。 そして、もうすぐやってくる夏場の高温と乾燥をしのぐために休眠に入るのです。
ちなみに、札幌の年間降雨量は約1,100mm、東京は約1,600mm弱です。

シクラメンの原種にヘデリフォリウムとコウムという種類があります。 この2つの原種シクラメンは地中海沿岸地域に自生する球根植物です。 この2種は、球根内に花芽を形成するタイプではないのですが、札幌ではフェデリフォリウムは秋に、コウムは翌年の春に花を咲かせます。

⇒ シクラメン コウム(原種) 春咲き種 

百合が原公園内にあるロックガーデンの片隅にこの2種が樹の下に混植されています。夏の終わりから葉が出て、ヘデリフォリウムは秋に花が咲きます。 その後冬の間4か月近くすっぽり雪に覆われます。 雪が解けて4月下旬にコウムの花が咲きます。 花が終わり、夏が来ると地上部は枯れあがります。
この2種は開花時期が異なるので、デリフォリウムは夏植え球根で、コウムは秋植え球根になるのでしょうかね。 関東以西では夏にヘデリフォリウムの球根を植付けるには暑すぎるので、9月下旬に植付け、開花は11月以降になるのでしょか?  そうなると、秋植え球根になるのでしょうか?
面白いですね。 当たり前のことですが、植物は場所によって生育状況に早晩が出てきて、それに伴い栽培方法も当然に違ってくるのです。

上述①秋植え球根類の中で、地中海沿岸地域以外を自生地とする球根は、アルストロメリアとユリです。
アルストロメリアは、チリやペルーを主な自生地とする南アメリカ原産の球根です。この種は、湿地帯、森林、砂漠など幅広い環境に適応している植物で、札幌で越冬する種類としない種類があります。
ユリ(ユリ属)は日本に15種が自生し、東アジアを中心に北アメリカやヨーロッパなど北半球に広く分布している植物です。 茶碗蒸しなどに入っているゆり根(鱗片)がお馴染みですが、ユリ属の球根は鱗片が重なってできたもので、その鱗片は皮がない?薄いため?、に乾燥に弱いのです。 この球根を保存する場合、園芸店で売られているように湿ったおがくずの中に入れます。ちなみに、北半球に広く分布しているのですが、夏場乾燥する地中海沿岸にはその分布域はないようです。

②春植え球根と③夏植え球根は次回にします。

 

 

 

カノコユリ(その3) 開花 

4月に頂いたカノコユリの球根が順調に育ち、8月9日に開花しました。 2024.8.9
花は直径が8cm程の大きさで、ピンクの花弁に濃いピンクの斑点があります。 カノコユリの名前の由来は、カノコユリの「カノコ」を漢字で書くと「鹿の子」で、この斑点が鹿の背のまだら模様に似ていることから来ているようです。
雄しべの赤い「やく」が目立ちます。

草丈は80cm程です。

⇒ カノコユリ
⇒ カノコユリ(その2) ポット苗 


開花直前に撮影したもので、つぼみは8個ついています。 もう1個頂いた球根は地植えにしたのですが、それは3個のつぼみでした。
この写真を見て何か気づきませんか?
開花が近いつぼみは下を向いているのですが、まだ小さいものは上を向いています。
他種 のユリは分かりませんが、カノコユリのつぼみは、最初上を向いているのですが、それが大きくなるにつれて次第に水平になり、花が咲く直前は真下を向くのです。
面白いですね。
下の表は、鉢植えのカノコユリの8個のつぼみがいつ咲いたかを表したものです。
1番花 8月9日
2番花 8月10日
3番花 8月11日
4番花 8月14日
5番花 8月17日
6番花 8月18日
7番花 8月23日
8番花 8月28日
最初のつぼみが8月9日に咲いて、最後の8個目のつぼみが花開いたのは8月28日の今日ですので、9月上旬まで楽しめそうです。 一つの花が咲いている期間(花弁が褐色を帯びて観賞価値bが無くなる)は約1週間です。

8月28日に咲いた最後のつぼみも9月初めには観賞価値が無くなります。 なので、8月の2番目の開花からは、常に2~3個の花がが咲いている状態で、鑑賞期間は約1ヵ月弱ということになります。

〇 地植えしたカノコユリ
地植えしたカノコユリは、開花始めが8月12日(鉢より3日遅れ)で、鉢に植えたものに比べて草丈は低く、つぼみの数も3個と少なかったのですが、花色(ピンクの濃さ、鮮やかさ)は、より増していたように思います。

〇  カノコユリを含む日本のヤマユリについて
日本には10種以上のユリが自生しています。中で園芸的に最も重要なユリの原種がヤマユリです。
ヤマユリは本州の平地から山地に分布し、日陰がちの斜面や、明るい林、草原に見られる球根植物です。7月から8月に、強い香りのある、花径20cm強の大きな花を1~10輪ほど咲かせます。花弁には白地に黄色い帯状の筋が入り、えんじ色か紫褐色の細かい斑点が散ります。まれに斑点のない「白星(しろぼし)」と呼ばれるものや、花弁の筋が紅色になった「紅筋(べにすじ)」などがあり、少量ですが生産されて市販されています。茎は斜めに伸びて高さ120~200cmになり、その先端に開花します。
ヤマユリと同様に栽培できる野生のユリに、カノコユリ(Lilium speciosum)やタモトユリ(L. nobilissimum)などがあります。ヤマユリとこれらを交配して、豪華な花を咲かせる園芸品種の系統、オリエンタル・ハイブリッドがつくられています。
(NHKみんなの趣味の園芸より)

 

 

 

ヤブレガサ 破れ傘

豊平公園の野草園に植えられているヤブレガサの花が咲き始めました。
2017.7.18
ヤブレガサは地際から掌状の根出葉を出し、その中から1~1.5mくらいの細長い花茎を伸ばします。
2024,7.6
その先に、白い花を咲かせます。
ヤブレガサはキク科ヤブレガサ属で、本州、四国、九州の雑木林に生えてます。 北海道には自生していません。
ヤブレガサは大きな花や色鮮やかな色の花を咲かせる訳でもなく、道路の傍らに生い茂っている雑草の花と変わらない見栄えのしないもので、わざわざ立ち止まって見入るほどの魅力的な花ではありません。 もし誉め言葉でいうなら、自然の趣のある素朴な花を咲かせる植物 というところでしょうか。

しかし、この植物の魅力は早春に顔を出す幼葉にあります。 白い綿毛に被われたその姿は何とも言えないユーモラスがあって、どこかのアニメに出てきそうな愛らしい草姿をしています。
2024.4.19
名前のとおり、垂れ下がった葉は破れた傘のように見えます。 そして、それは成長するにつれ垂れ下がっていた葉を傘を開けるように持ち上げて横に広げていきます。
2024.4.262019.5.14
早春に芽を出して約1ヵ月後の葉姿です。 この頃になると葉の形状も はっきりと分かるようになり、葉は7~9個の深い切込みの裂片葉になります。 各裂片はしばし
ば2~3中裂します。
2024.5.19
ヤブレガサは葉が開き始める新芽を収穫して、おひたしやあえもの、てんぷらなど山菜料理として利用されているようです。  北海道でいうギョウジャニンニクやタラの芽のような存在でしょうか?