堆肥(15)  植物の根と菌類の関係(その4)

🔵 菌根菌とアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の関係

菌根菌とは、植物の根と共生する菌類の総称で、大きく分けると、外生菌根菌(ECM菌)と内生菌根菌(AM菌)があります。
・外生菌根菌は主に森林樹木(ブナ科・マツ科など)と共生する菌で種類は約7,000~10,000種以上と非常に多く、マツタケ、シメジ、テングタケのように秋になると立派なキノコ(子実体;植物の花に当たる生殖器官)を付けます。
・一方、内生菌根菌(AM菌)は、根の内部にアーバスキュール(樹枝状体)を作るのが特徴で、子実体(キノコ)を作らない種類です。土中に菌糸を拡げ地上には出てこないタイプです。繁殖は土壌中の胞子によって行われ、数は300~500種と少ないですが、全植物の約80%と共生しています。

この二つの菌根菌以外に、酸性土壌で栄養吸収を助けるツツジ科に特化したエリコイド菌根菌や、種子の発芽に必要な栄養を菌から得るラン科植物に必須のラン菌根などがあります。ラン科植物はこの菌がないと発芽・成長できないのです。

🔵 内生菌根菌(AM菌)=アーバスキュラー菌根菌は、なぜ、全植物の大半と共生することができたのか?

アーバスキュラー菌根菌(AM菌)が陸上植物の大半と共生できたのは、 植物の陸上進出初期から共生関係が始まり、その仕組みが植物界全体に 受け継がれてきたためでです。AM菌は植物を選ばない汎用的な共生システムを持ち植物の免疫反応を刺激しないで、リン酸などを供給するなど、植物にとって大きな利益をもたらしました。これらのことが植物とAM菌との共生を永続させる基盤となり、現在の植物の 約80%がAM菌と共生するようになったのです。

🔵「 AM菌は植物を選ばない汎用的な共生システムを持ち、・・・・・」 について
野菜を犯す病原菌は、例えばトマトを例にとると、うどんこ病は一つの種(しゅ)だけれども、トマトにつくうどんこ病はトマト専用のうどんこ病菌で、トマトについたうどんこ病が横に育っているキュウリにはつかないのです。 キュウリにはキュウリ専用のうどんこ病が付くのです。 これは病原菌の一つの特徴で、「宿主特異性」という性質を持っており、特定の植物にしか感染できない「専門家」のような進化を遂げています。かし、AM菌にはそのような特異性が病原菌のように強くはないのです。 このことは、植物側にとってAM菌には害がなく、反対に、栄養を供給してくれる、利益を与えれくれる存在だったので、植物が自分の身を守る防御的なシステムを作る必要がなかったのです。 植物側は、AM菌を認識すると根の細胞を緩めて菌を受け入れて、アーバスキュール(樹枝状の栄養交換器官)形成を誘導するような共通する遺伝子プログラムを持つようになったのです。これが全植物の大半がAM菌と共生している理由です。

堆肥(14) 植物の根と菌類の関係(その3)

今から5億年前弱(地球が誕生して41億年が経過)、ゼニゴケ様の植物が陸上に進出したとき、すでに陸上に進出していた菌類は菌糸で岩盤を溶かしながらその中に入り込み栄養素を取り出すことができていました。
一方、植物は仮根だけでは十分な栄養を吸収できず、菌類の菌糸が仮根に絡みついてリンなどの無機栄養を供給しました。 この原始的な菌根との共生こそが、陸上植物の生存と進化を可能にしたのです。植物が陸上に進出した当初から両者は共生関係にあったのです。言い換えれば、植物は菌類との共存無しにでは陸上への進出はできなかったのです。
堆肥(13)植物の根と菌類の関係(その2)で記述したように、ゼニゴケ様植物の仮根はリンや窒素、微量要素を吸収する能力を持っているのですが、仮根だけでは栄養を取り込む力が弱かったので、菌類の菌糸が仮根の周囲に絡みつき、栄養を届けるという関係が自然に成立したのです。

🔵アーバスキュラー菌根菌(AM菌)

植物の根と最初に共存した菌がアーバスキュラー菌根菌と考えられています。菌類は菌糸を土壌中の微細な隙間に入り込ませ、植物の根の届かない何倍もの範囲から栄養を吸収することができるのですが、このアーバスキュラー菌根菌は、その菌糸を植物の根の細胞内に入れて、アーバスキュール(樹枝状構造)を作り、土壌中から吸収したリン酸などの栄養分を植物に渡します。一方、植物は光合成で作った糖を菌に渡すというお互いが利益を得る「相利共存」の関係にあったのです。

〇 それでは、植物と菌根菌はお互いにどれくらいの量、割合を物々交換いていたのか?

研究によれば、おおよそ、植物の光合成でつくられた有機物で4~20%を菌類が受け取っていて、反対に、植物が菌類から受け取るリン酸や微量要素などの栄養素、例えば最も量の多いリン酸では、植物が吸収するリン酸の50~90%をアーバスキュラー菌根菌が供給し、土壌がリン不足の場合はほぼ100%を菌が供給する例もあるそうです。

リン酸は土壌中の鉄(Fe)やアルミニウム(Al)といった金属イオンと結びついて、水に溶けない化合物(リン酸塩)になって、植物はそれを根から 吸収できなくなります。 例えば、畑にリン酸を含む肥料をまくと多く(70~90%)は数日~数週間で不溶化(根が吸収できなくなる)してしまいます。その意味で、植物にとってアーバスキュラー菌根菌は、切っても切れない大きな役割を果たしている存在だといえます。

 

 

堆肥(13) 植物の根と菌類の関係(その2)

植物と菌類は、どのようして共生関係を持つようになったか?

🔵 地球の誕生から植物が陸上に進出するまで

地球の誕生は、46億年前に超新星の爆発がきっかけで太陽系の形成が始まり、それから1,000~3,000万年の時間をかけて現在の地球の大きさになったようです。 その頃の地球は火の玉で、それがゆっくり冷えていって水蒸気ができ雨となり海ができます。海ができるまで1~2億年かかったと考えられています。
その海に原始生物が誕生し、次に有機物を生成する生物、つまり、光合成を行う生物(シナノバクテリア)が現われます。その生物は有機物をつくる過程で酸素を出します。 それが海に供給され、海が酸素を持ち切れなくってやっと海の外に出てきます。 そして、大気になるのですが、その密度になるまでの時間の長さはおおよそ30億年。 現在からすると約16億年前に現在私たちが吸っている空気、大気が出来上がったことになります。
地球が誕生してから30億年という途方もない年月をかけて陸上に生物が進出できる環境が整ったのです。植物が実際に陸上に進出したのはそれから11億年の年月を要します。現在から約5億年弱前です。地球誕生から約41億年が経っています。

🔵 最初に陸上に進出したのはどんな生物だったか?

生物が陸上に進出し始めたころ、海の中では三葉虫やオウムガイが生息し、コンブなどの藻類が繁茂していました。海の中はすでに生物で溢れて?いたのです。
一方、陸地は植物が存在しないので有機物などはなく、岩石の塊がごろごろしている火星や月のような状態だったのでしょう。 しかし、波打ち際など海岸線では海中で繁茂していた微生物の遺骸が岩の表面にマット状にあり、また、海中で育っていたコンブなどの海藻類や魚類等の死体が打ち上げられて有機物が存在していたのです。
実は、植物が陸上に進出する数千万年前には、菌類が陸上に進出していたと考えられています。菌類は細い菌糸を伸ばして岩石を酸で溶かしてミネラルを吸収する能力を持っていましたが、自らエネルギー(糖)を作り出す光合成はできませんでした。

🔵 それでは菌類はどのようにして生き延びていたのか?

菌類が陸上に進出したときには、既に海中には細菌や菌類などの微生物が大量に存在し、海藻類や三葉虫などの節足動物もいました。それらの遺体や残骸が波打ち際に打ち上げられ、特に微生物の遺骸が海岸などの水際や岩などにへばり?ついていて、菌類はそれを分解してエネルギーを得ていたようです。

植物が陸上に進出する時点で、海には既に大量の生物が存在し、海岸線にはそれらの遺骸が岩などにへばりつき、菌類はそれらをエサに繁殖していたのです。
このような条件の中で、植物が陸上に進出する形態がどのようなものであったのか?、現在最も有力な説は、地衣類が陸上に進出したのではないかと考えられています。

🔵 地衣類とは一体どんな植物なのか?

菌類が藻類(またはシアノバクテリア)を体内に住まわせてできた「二者一体の共生体」で、菌類が体の形をつくり、一方、藻類が光合成で糖を合成し菌類に提供していました。
2015.4.8
アオダモの樹皮についている白や灰色の模様が地衣類と思われるもの。 AIにこの写真を添付して尋ねると、地衣類と回答。

地衣類は植物の祖先ではないのですが、陸上生態系のごく初期に出現した 重要な生物のひとつです。菌類と藻類が共生することで乾燥に強く、 栄養の乏しい岩肌でも生育できたため、岩石の風化や初期の土壌形成に 大きく貢献しました。 このような地衣類や菌類の活動によって陸上環境が整えられたことが、 後に植物が陸上へ進出するための重要な土台となったのです。

🔵 陸上に最初に進出した植物

最初に陸上に進出した植物は、少しじめじめした日陰に育つゼニゴケのような形状したコケの仲間だったようです。
植物が陸上に進出した頃(今から約5億年弱前)には、既に菌類や地衣類が陸上に進出していました。
海に生息するコンブやワカメは海水で生きていけますが、陸上の植物は真水が必要です。しかし、内陸には海のように有機物はほとんどなく無味乾燥な石の世界です。
しかし、ゼニゴケに似たコケ類は、菌類や地衣類が増殖することによって有機物が堆積した場所、河川の岩場・河原や湧水の傍など常に水分があって湿気っている場所、そんな場所で生き延びていたのです。

植物が陸上に進出したときには、海には既に菌類、一時的に海水に浸かるような海岸には地衣類が生息していました。 しかし、陸上に上がるには、塩分を含んだ海水ではなく真水が必須です。両者は陸上に上がる前に海水から真水に適応する必要があったのです。 その場所は、川が海に注ぐ河口付近や湖でした。そのような汽水域で徐々に真水に適応していったのです。

ゼニゴケに似たコケ類は、自身を体を定着・支えるために仮根を出し、その仮根は栄養源を吸収できないと言われていたのですが、最近の研究で、リン酸を始めとする栄養源を吸収できることが判ってきました。 なので、ゼニゴケ様コケ類は仮根を含めた体全体で栄養を吸収していたようです。

そして、ゼニゴケ様の初期陸上植物=コケ類は、すでに陸上にいた菌類と共生し、リン酸などの栄養吸収を助けてもらうこと、言い換えれば、菌糸が植物の根の役割を果たすことで陸上生活が可能になったのです。

🔵 最初に陸上に進出した植物と共生した菌はアーバスキュラー菌根菌(AM菌)。

 

堆肥(12) 植物の根と菌類の関係(その1)

植物は光合成で有機物をつくり、それを使って自分の体を大きくしています。一方、菌類は植物がつくった有機物を利用して菌糸の増殖とそれの維持をしています。樹木がボロボロになるということは、物が腐る、分解するということで、菌類が有機物(樹木)を分解して、その中の栄養を利用していることです。馬や牛が草(植物)をエサにして生きているのと同じ関係にあります。
これは、与える側(植物)と搾取する側(動物)の関係ですが、植物と菌類の関係はそれ以外の側面も持っています。 それは「共生」の関係です。 菌類は有機物を分解するだけではなく、植物に土壌から取り込んだ栄養を植物に供給し、反対に植物からも必要な栄養をもらっています。

植物と菌類の関係を大まかにまとめると以下のようになります。
① 枯死した植物を分解し、そこから栄養分を得る菌類(腐生菌)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・70~80%
② 生きた植物と共生する菌(共生菌;相互に栄養交換を行う)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10~20%
③ 生きている植物に侵入して栄養分を得ることで、植物を病気又は枯死させる菌(うどんこ病やえき病菌)・・・・5~10%

植物に悪さをする菌類はごく僅か(5~10%)で、その他多くの菌類は枯死した植物を分解して自分の栄養にしています。その割合は菌類全体の70~80%です。残りの10~20%の菌類が植物と相互に栄養を交換する共生の関係にあるのです。ちなみに、地球上に存在する菌類の種類は約15万種といわれています。これは正式に名前がついているもの、ちゃんと学名があるものです。推定では、まだ知られていないものがおおよそ300万種あるといわれています。

次回からは、
・植物と菌類がどのようして共生関係を持つようになったのか?
・共生菌にはどのような種類があるのか?
・植物と菌類は具体的にどのように共生しているのか?
などを調べてみたいと思っています。

 

 

堆肥(11)団粒構造はどのようにして形成されるのか?

団粒構造がしっかり発達した畑土は、
① 色は黒々としており、
➁ 握ると湿り気を感じ、ぎゅっと締まるが、手を開くとほろっと崩れ、
③ 湿っていてもべたつかず、
④ つまむと粒粒とした感触があり、指先で押しつぶすと、しっとりと指腹に沿ってやわらかく広がる

というような感じの土です。
そして、その働き・作用は前回の投稿で説明したとおりです。

⇒ 堆肥 (9) 有機物を分解すると最後に何が残るのか?

では、本題の「団粒構造はどのようにして形成されるのか?」
についてです。

土壌の「団粒構造」は、単なる土の塊ではなく、微生物や植物、そして、それらが作り出す物質が複雑に絡み合ってできる「ミクロの建築物」で、それは、細菌や菌類、植物の根などの相互作用によって作り出されていくようです。

🔵 細菌(バクテリア)の役割
・最小単位の粘土や砂の粒子をくっつけるのが細菌の仕事。
・細菌はエサ(有機物)を分解する際や、自分たちの身を守るために「バイオフィルム」と呼ばれるネバネバした物質を放出。
・このネバネバ物質が接着剤となり、バラバラだった粘土粒子などをつなぎ合わせ、ごく小さな塊(ミクロ団粒)を作る。

🔵 菌類(カビ・キノコ)の役割
・細菌が作った小さな塊を、さらに大きく、丈夫な「団粒」へと成長させるのが菌類の役割。
・菌類は土壌中に細長い菌糸を縦横無尽に張り巡らせ、これがネットのように土の粒子やミクロ団粒を包み込み、物理的にバラバラにならないよう縛り上げる。
・特に植物と共生する「菌根菌」は非常に分解されにくい粘着性のあるタンパク質を放出し、これが強力な「防水性ワニス」のように働き、水に濡れても崩れない強い団粒(マクロ団粒)を作り上げる。

🔵 植物の根の役割
・根が土の中に伸びていくとき、周囲の土を押し固め、また、根が水を吸うことで土が一時的に乾燥・収縮をする。この「押す」「縮む」の繰り返しが、土を適度な塊に成形するプレス機のような役割を果す。
・植物の根の先端からは糖やアミノ酸などの「根端分泌物」が放出され、これが微生物(細菌や菌類)にとっての重要なエサとなり、根の周り(根圏)で微生物の活動が爆発的に活発になる。

以上のことをまとめると、

植物の根が伸長するとき分泌物を出し、また周りの土を押す。その分泌物が細菌のエサになり、ネバネバを出し、小さな粒を接着し、菌類の糸(菌糸)がその粒を網で包み込み、大きな塊にする。
ミミズなどの小動物がそこを通ることで、さらに隙間(団粒間孔隙)が生まれ、ふかふかの土になる。
団粒構造とは、微生物(菌類や細菌)と植物が織りなす、土の中の小さな芸術作品です。

しかし、
団粒構造は一度できたら終わりではなく、微生物が活動し続けることで維持される「動的な構造」です。耕しすぎたり、化学肥料だけで微生物のエサ(有機物)がなくなると、この「接着剤」や「網」が失われ、土は再びカチカチの単粒構造に戻ってしまいます。

野菜を育てるための家庭園芸の書物には、堆肥(完熟堆肥)を毎年2kg/㎡入れることを推奨しています。
病気が出にくい、しっかり根を生やせる土、別の言い方をすると、畑が痩せるのを防ぎ、安定して作物が収穫できる土を保持することは、団粒構造を保つことを意味します。