球根の花芽分化(その2) 春植え球根

前回のブログで投稿した秋植え球根類は北半球の温帯に分布(自生)していますが、春植え球根類は それより気温の高い亜熱帯や熱帯地域のものが多いようです。
春植え球根類には以下の種類があります。
アマリリス、カラー、ダリア、グラジオラス、カンナ、球根ベゴニア、グロリオサ、クルクマなど。 普段、札幌の公園や個人の庭で見かけるものは、カラー、ダリア、グラジオラス、カンナ、の4種でしょうか? アマリリスは鉢花としては見かけますが、花壇など屋外に植えられているものは見たみたことがありません。
これら球根の自生地、花芽分化の場所、開花期、球根の種類の項目を表にまとめてみると、

名称 球根の種類 花芽分化
の場所
開花期 自生地 備考
カラー 塊茎
地下茎が肥大したもの)
①湿地性;
茎葉の先端
②乾地性;
球根内
7~8月 南アフリカ カラーには
①湿地性
②乾地性
がある
ダリア 塊茎 球根内ではなく、茎葉の先 8月~霜が降りるまで 中米(メキシコ~ガテマラの高地)
グラジオラス 塊茎 球根内ではなく、葉が2枚出た頃 7~8月 ・地中海沿岸
・熱帯アフリカ~南アフリカ
カンナ 根茎 根茎dはなく、茎葉の先 熱帯アメリカ
アマリリス 球根 球根内 南アメリカ

上の表を見てわかるとおり、グラジオラスの自生地が北半球の地中海沿岸以外、すべて南半球で熱い地帯に生育するものです。 ちなみに、グロリオサは熱帯アメリカ、クルクマは熱帯アジアです。

秋植え球根類は、主に北半球の温帯地域に分布し、春に開花して、その年の夏までに花芽をつくって冬の寒さに備え、翌春に開花するタイプが多いのですが、春植え球根類は、南半球の亜熱帯~熱帯に分布してiしているものが多く 、花芽は球根内ではなく、そこから新芽を出してその先につくるものが多いようです。
考えてみれば、年中暑い、または、暖かいところに生育している植物は、やってくることのない冬に備える必要はなく、いつでも葉を出して花芽を形成して花を咲かせことが出来るのです。

〇 カンナ
札幌でのカンナの開花期間は、7月末~9月上旬までで、本州の関東以西では6月~~10月ですが、熱帯(条件が良いところ)に生育しているものはでは年中咲いているようです。

〇 アマリリス
アマリリスも南アメリカの熱帯に分布していますが、年中暑く雨の多いところではなく、 その生息域は南アメリカでも雨季と乾季のある地域や寒さのある高地のようです。 球根内に花芽をつくる植物は、温帯・熱帯に関わらす、雨の降らない乾季があることや標高の高い寒い場所で、それらに備えるために球根内に花芽をつくるようです。

〇 カラー
カラーは、乾地性と湿地性の2つのタイプがあります。 夏に、札幌の個人の庭で見かけるものは乾地性のカラーです。 乾地性は花芽を球根内につくります。 この種は、乾季と雨季のある比較的温暖な地中海性気候の環境に生息しています。
一方、湿地性タイプのカラーは、乾地性タイプより気温の高い、しかも、降水量の多い、高温多湿の気候域にしているようです。 このタイプは高しているので、花芽は球根内ではなく茎葉につくります。

〇 グラジオラス
「グラジオラスの球根は札幌でも越冬する」いう話を耳にします。
この話を最初効いたとき、「ええっ」と思ったのですが、調べてみると、
グラジオラスには春咲きと夏咲きの2つのタイプがあって、
〇 春咲きタイプ、
・本州では、球根の植込みは秋で、開花期は3~5月
・原産地は、南アフリカの最南端ケープ地方や地中海沿岸、地中海性気候帯に自生
〇 夏咲きi タイプ
・本州では春に植込み、夏に開花
・原産地は南アフリカで、春咲き種よりももう少し暖かい地域に生息している
・豪華な花が咲く種類が多い
北海道は寒いので、本州と違って春植え種・夏植え種の区別なく、この2種を春に植えてきたのではないでしょうか。 その中で、おそらく、春咲き種の中でも耐寒性のある品種が越冬するようになったのでしょう。

ブドウ   紅葉

2024.9.29

ブドウ(品種;バッファロー)が紅葉しました。 今年は例年に比べてかなり早い紅葉です。 ブドウの収穫を9月10日過ぎに終えたのですが、その前の8月下旬から、まだ辺りの草花や樹木には秋の気配を感じない時期から葉色のつやが無くなり、赤黒く変色する葉で出てきて、全体的に葉が垂れ下がるようになっていました。
「随分と早いのでは?」と思いながら、その原因を考えてみました。

早期紅葉の原因には夏場の高温や乾燥、病虫害や栄養不足があげられますが、今回の早期紅葉には思い当たるふしがあります。

紅葉とは、葉の中にある葉緑素が分解されて、その中にある窒素リン酸、微量要素など自分では作れない、根から吸収しなければならい栄養素をブドウの樹体(幹枝や根)に戻す作業で、葉緑素(クロロフィル)の緑色が分解された結果、葉に残った物質、例えば黄葉する葉はカロテノイドが、紅葉する葉はアントシアンなどが目立つようになるのです。

この早期紅葉について、「そうではないか」と思い当たることがあります。
一つは、今年は6月に新梢を摘心したことで、ブドウ花房の花ぶるいが少なく、実つきの良い房、スーパーで売っているようなびしっと粒が詰まった房、それに近いような房が比較的多かったことです。
二つ目は、ジベレリン処理をすると粒の肥大化が可能で、1粒が4~5gになります。 無処理の場合は2g程です。 このジベレリン処理による粒の肥大化は、ブドウの樹体に大きな負担をかけることになります。 これを2年連続でやっている、しかも、本来将来に備えて充実させなければならない苗木を植えて2年目から大きな粒を実らせたのですから、ブドウ本体に大きな負担をかけていたことは間違いないのです。
これらのことがストレスとなり、ブドウ自身が早めに余計な?活動を止めて冬に備えようとしているのではないか?と思っているのです。

ブドウは通常、新梢が伸びるてその先に3つ花房をつけるのですが、来年は花房を持たない新梢や、たとえ花房を持ったにしても1花房か2花房のものが多いように思います。 今年も、1新梢につき2花房のものが多かったのですから。
来年は、ブドウ本体に負担をかけないように、全体に生らせる花房数を少なくしたり、1果房(花房)につける粒数を少なくするなど、樹にストレスをかけないようにする必要がありそうです。

⇒ ヤマブドウ  紅葉 

 

 

 

球根の花芽分化(その1) 秋植え球根 

チューリップの球根を秋に植えると、翌春に花が咲きます。ムスカリやスイセンなどの他の 秋植え球根類も秋に植えると翌春に花を咲かせます。 うっかりチューリップの球根を秋に植えるのを忘れてしまって、春に植えても花はその年の春に咲きます。 それは、球根の中に花芽ができていて、暖かくなるとその花芽が成長して球根から伸びだして花を咲かせるのです。 この現象は他の秋植え球根でも同じように起こります。
チューリップは、札幌の場合、雪解け後春早く4月上中旬から葉を出し、5月中旬~下旬に花を咲かせ、7月に葉が枯れるまでの間に球根を太らせて、その中に来年の花芽を準備するのです。
このことが頭に刷り込まれていたために、勘違いをしたことがあります。
私は豊平公園の緑のセンターで相談員をしているのですが、夏半ばを過ぎた頃に、
「カンナの花が咲かないのはどうしてか」
という質問を隣に座っている相談員が受けていました。
その電話でのやり取りを聞いていると、相談者は
「葉はすごく立派に成長しているのだが、花が全く上がってこない」
とカンナの生育状況を説明、
「肥料をやり過ぎると栄養成長が勝り。花が咲き実が生る生殖成長が抑えられることがある」
というような内容で答えている相談員の声が聞こえてきました。  電話が終わってから、
「球根類は球根の中に花芽をつくるので、花が咲かない原因は別にあるのではないか」と私の考えを述べると、
「そうなの?」といまいち納得のいかなそうな生半可な答が返ってきました。それで、こちらも心配になってカンナの花芽分化について調べてみました。
答えは、
「カンナは春に球根(根茎)を植えて芽を出して成長し、茎が伸びてその先端に花芽を形成する」
です。
カンナは球根内に花芽をつくらないのです。 上述した「球根類は球根内に花芽を持っている」という私の思い込みが間違っていました。 確かに、カンナは夏から初秋にかけて次から次に花が咲き続けるので、球根にある花芽だけでは咲き続けられる訳がないですよね。

球根類の花芽について調べていると、いろいろなことが分かってきました。
球根類は植込み時期が、①秋植え、②春植え、③夏植えの3パターンがあります。

① 秋植え球根は秋に植えて春に花が咲く種類で、チューリップ、ヒヤシンス、クロッカス、ムスカリ、ヒヤシンス、オキザリス、スイセン、ジャーマンアイリス、シラー、アリウム、 チオノドグサ、アスストロメリア、スノーフレーク、スノードロップ、ユリ

② 春植え球根は春に植えて夏に花が咲く種類で、アマリリス、ダリア、カンナ、カラー、グラジオラス 、球根ベゴニアなど

③ 夏植え球根は夏に植えてその年の秋に花が咲く種類で、ヒガンバナ(リコリス)、コルチカム、ネリネ、サフラン(秋咲きクロッカス)

などがあります。

①の秋植え球根類は、花芽がその夏?までに球根内に出来上がって、冬を越して翌春に花が咲くタイプです。分布域はヨーロッパ、アジア、北アメリカなど北半球の温帯地域で温かい時期と寒い時期のある地帯です。 上述の球根類の多くが、スペインやイタリア、ギリシャなどの南ヨーロッパ、モロッコ、アルジェリア、リビアなどの北アフリカ、イスラエル、イラン、カスピ海沿岸地域などの中東に自生している球根類です。
この地域の気候は地中海性気候で、年間の雨量が400~700mm、冬場は100mm弱?/月、夏場は30mm/月程度で、ほとんど雨が降らず、晴れた日が多いようです。 なので、これらの球根類は、秋から春に葉を成長させ花を咲かせるのです。春の終わりには十分に球根が太り、その中には秋から冬に花咲かせる花芽が準備されているのです。 そして、もうすぐやってくる夏場の高温と乾燥をしのぐために休眠に入るのです。
ちなみに、札幌の年間降雨量は約1,100mm、東京は約1,600mm弱です。

シクラメンの原種にヘデリフォリウムとコウムという種類があります。 この2つの原種シクラメンは地中海沿岸地域に自生する球根植物です。 この2種は、球根内に花芽を形成するタイプではないのですが、札幌ではフェデリフォリウムは秋に、コウムは翌年の春に花を咲かせます。

⇒ シクラメン コウム(原種) 春咲き種 

百合が原公園内にあるロックガーデンの片隅にこの2種が樹の下に混植されています。夏の終わりから葉が出て、ヘデリフォリウムは秋に花が咲きます。 その後冬の間4か月近くすっぽり雪に覆われます。 雪が解けて4月下旬にコウムの花が咲きます。 花が終わり、夏が来ると地上部は枯れあがります。
この2種は開花時期が異なるので、デリフォリウムは夏植え球根で、コウムは秋植え球根になるのでしょうかね。 関東以西では夏にヘデリフォリウムの球根を植付けるには暑すぎるので、9月下旬に植付け、開花は11月以降になるのでしょか?  そうなると、秋植え球根になるのでしょうか?
面白いですね。 当たり前のことですが、植物は場所によって生育状況に早晩が出てきて、それに伴い栽培方法も当然に違ってくるのです。

上述①秋植え球根類の中で、地中海沿岸地域以外を自生地とする球根は、アルストロメリアとユリです。
アルストロメリアは、チリやペルーを主な自生地とする南アメリカ原産の球根です。この種は、湿地帯、森林、砂漠など幅広い環境に適応している植物で、札幌で越冬する種類としない種類があります。
ユリ(ユリ属)は日本に15種が自生し、東アジアを中心に北アメリカやヨーロッパなど北半球に広く分布している植物です。 茶碗蒸しなどに入っているゆり根(鱗片)がお馴染みですが、ユリ属の球根は鱗片が重なってできたもので、その鱗片は皮がない?薄いため?、に乾燥に弱いのです。 この球根を保存する場合、園芸店で売られているように湿ったおがくずの中に入れます。ちなみに、北半球に広く分布しているのですが、夏場乾燥する地中海沿岸にはその分布域はないようです。

②春植え球根と③夏植え球根は次回にします。

 

 

 

サツキ 盆栽

2024.9.19
百合が原公園の緑のセンター温室で、9月18日から盆栽展が開かれていましす。 立派なさつき盆栽と季節の花や実をつけた小物盆栽合わせて64鉢が展示されています。
サツキ展は、通常花の咲く6月中下旬に開催されることが多いのですが、この時期のサツキ展は花が開いたサツキ盆栽の見事さは見られないものの、均整の取れた樹形の美しさ、滑らか樹肌、太い幹とそこからコケに食い込むように伸びる根張、それぞれの葉の付き方などに目が行きます。
2024.9.19
北海道盆栽会の方がいらしたので、いくつか質問をしました。
「この盆栽(上の写真)は樹齢何年くらいですか?」
「このサツキ(下の写真)は畑から掘り出して15年ほど経つけれど、それ間、幹はほとんど太くなってないのです。」
2024.9.19
「そう考えると、これは(上の上の写真))畑から掘り出してから少なくとも50年は立っているのではないか? 樹齢にすると80年?100年くらいになるのかな?」
と説明してくださいました。
話はサツキの樹形に移って、
「サツキ盆栽は何十年も株の大きさを一定にして、尚且つ、毎年花を咲かせるために、春先、葉がなくなるくらい刈り込みます。 そうしないと、樹形を一定の大きさに保てないからです。 そして、5月になると枝から一斉に新芽が吹きだします。」
2024.9.19
「暖かくなってきたら、ハウス(無加温?)で管理していたサツキを屋外に出すのですが、初夏の太陽に直接当てると葉が焼けるので、雨の日に出して徐々に慣らしていきます。 その後の7~8月にかけては、それぞれの枝面の高さを揃えるために徒長的に伸び出た枝をこまめに摘んで(剪定)います。」
というお話でした。

上の写真は、春に刈り込んだ枝から出た新梢です。 新梢の長さは3~4cmです。
この枝先に花芽ができていて、来年6月に開花します。

百合が原公園 サツキ展 ⇒ ttps://yuri-park.jp/exhibit/38879/

 

 

 

2029.9.19

2024.9.19

2024.9.19

2029.9.19

 

 

 

ドロノキ うどんこ病

南区に真駒内公園を南北に分けて横断する道路、五輪通があります。 この通りは豊平川と真駒内川を横切るのですが、その真駒内川を渡る手前で 大きな樹の葉が何やら白いものをつけている、,マタタビの葉が半分白くなるように、葉に斑が入っている樹
を見つけました。
⇒ マタタビの葉は夏に白くなる
2024.9.11
この樹はドロノキで、真駒内川の河岸に生えていて、樹高は12~3m、橋の欄干(道路)からは6~7m 立ち上が っています。

2024.9.11 橋の欄干から見下ろして撮ったもの
葉の斑入りに似た白い模様は、うどんこ病がついているようです。 欄干から上の部分にはうどんこ病は出ていないのですが、 2024.9.11
橋の欄干(道路)の下側は写真のように真っ白です。 うどんこ病の付いてるドロノキの下に見える樹木の葉はニセアカシアのようです。
欄干(道路)より上に出ている部分は風通しが良いので病気の発生が抑えられているようです。
⇒ ドロノキ  うどんこ病