ハンノキ  円山公園

2014.4.19
北1条通を都心部(東)に向かって歩き、北海道神宮の鳥居を通り過ぎて少し歩くと円山公園へ行く入口があります。その近く、円山川沿いにハンノキが生えています。 写真は北1条通側から撮っています。 樹高は10m強、幹径は80cmくらいある立派な樹です。
2014.4.19
今から50年以上前?、私がまだ10代の頃見た田んぼの畔に整然と植えられているハンノキとその田園風景が記憶に残っていて、それらのハンノキはほっそりとした真っすぐな幹に樹冠の上部にだけ枝葉をつける特徴的な樹姿でした。 そんな記憶が強く残っているので、初めて円山公園内に生えているハンノキを見たときは、枝ぶりはハルニレのように太いものがニョキニョキと四方に伸びているし、自分の思っているハンノキとは全くイメージが違い、ハンノキってこんなに太くて立派な樹になるのか?、この樹は本当にハンノキ?と疑問に思うくらい堂々したものでした。 とりあえず枝先のまだ展葉していない芽を再度確認して、これはおそらくハンノキだと。 さらに、夏場の葉を見て、ハンノキだと確信しました。
2011.10.9
ハンノキと同じ仲間のケヤマハンノキは公園樹や街路樹は元より身近な自然林ではよく見かける樹木ですが、ハンノキは札幌市内でほとんど見かけません。 ハンノキは湿地帯に生える樹木なので、石狩川の河川敷(マクンベツ湿原等)、札幌市郊外の比較的湿地帯が残っている場所(星置緑地等)や自然林でも川沿いの湿地帯には生えているのでしょうが、札幌市の市街地ではほとんど見かけないです。

北大植物園で発行している ‘ 植物園だより ’ に園内に生えているハンノキについて、「絶対絶命!ハンノキ」という題名でハンノキの衰退について書かれています。

ハンノキは湿潤で肥沃な土壌を好んで生育する木です。 北大植物園とその周辺は、もともと水がたくさん沸いていて湿潤なため、ハンノキを含むハルニレ、ミズナラ、ヤチダモなどが生える森が広がっていました。 しかし、周辺の開発・都市化により泉が枯れてしまい、地下水が下がり、現在の植物園の池はポンプアップによって水位を保っています。

そのため、特に水分を好むハンノキの生育に適した環境が減り、北大植物園のハンノキは、1976年には107本ありましたが、2009年には29本まで本数が減ってしまいました。 ハンノキはこの30年間、他の種類と比べて本数が減っているだけではなく、直径が10cmを越える太さの新たな若木が生えてこないという問題があります。 本数が減っている他の種類の木では、多くはないものの新しい若木が現れていますが、ハンノキの子供たちだけが見つからないのです。 今残っているハンノキはタネをつけていますが、なぜか子孫が出てきません。 ハンノキは洪水や台風などで裸地が形成されると、発芽・成長するといわれています。 泉が枯れ、自然の小川がなくなった北大植物園では、もう洪水が起こることはありません。 このような絶体絶命のハンノキを救おうと、本園では2009年に園内湿性園のハンノキから種子を採り、苗を育成してきました。 また、日当たりや水辺を好むハンノキの植栽予定地とした幽庭湖の水辺環境整備を行ってきました。 2014年7月初旬に、ハンノキを含む湿性林の復活を期待して幽庭湖の水辺に植栽しました。 どうにか絶体絶命のハンノキを救おうと考えています。 ハンノキは園内中央の湿性園で観察することができます。
(植物園だより シリーズ⑯ 北大植物園の森の変化)

今から150年以上前、北海道の開拓が始まる前、現在のJR函館本線沿いの都心部は、ちょうど豊平川の扇状地の縁に当たり、北大植物園のようにあちこちで水が湧き上がる湿性地が多くあった場所のようです。 そこには円山公園の堂々たるハンノキのようなものが札幌都心部とその周辺のいたるところに生えていたのでしょう。 今ではそのような樹を見ることはできません。 再生することもほとんど不可能です。 その意味で、円山公園のハンノキは非常に貴重な存在で、現在は衰退するなどの症状は認められないようですが、それでもとりあえず、この樹木の存在とその意義は認識する必要があるように思えるのです。