樹まぐれ日記

四季折々に変化する樹木など植物を観察して樹まぐれに日記を書いています。

ダイコン  とう立ち

ニンニクを今日(7月2日)収穫したので、隣家におすそわけしました。 そのときに、隣家の主人が、
「ダイコンに花が咲いてね。 これ食べられる?」
と聞くので、
「花が咲いたダイコンは筋が入って硬くなり、美味しくないですよ」
「やっぱりね」
「いつ、タネをまきました?」
「5月8日」
「ダイコンは春早めにタネをまくと、これが出ることがあるんですよ。今年は3~4月は暖かかったのですが、5月中下旬~6月にかけて気温の低い不順な天候の日が多かったので、おそらく、それが原因ですよ」
2023.7.2
写真のダイコンの葉の真ん中から茎がすっーと立ち上がって、その先に白い花が咲いています。 これが※「とう立ち」です。

※とう立ち;通常花を咲かせない葉菜類・根菜類では、開花することを「とう立ち(抽苔)」と言い、その過程で起きる「花芽分化」もセットで含まれています。そのため、花芽分化 = とう立ち と解釈してしまいますが、それぞれ具体的には次の現象のことを指します。
花芽分化とは、植物が栄養成長から生殖成長へ移行する初期段階として、茎頂部でそれまで葉や茎を分化していた部分が、花に分化する現象。
とう立ち(抽苔)とは、栄養成長時には節間が詰まった状態で、葉の展開を続ける植物の短い茎が、花芽分化に伴って急速に伸長する現象。
とう立ちの原因は野菜によってさまざまで、温度の高低や日長の長短が影響してスイッチが入ります。(やまむファームより)
今回のダイコンのとう立ちの原因はタネまき後の低温です。 2023.7.2
ダイコンの花。 アブラナ科特有の4枚の花弁と、花が十字に咲くので十字架植物とも言います。 アブラナ科野菜はダイコンの他に、キャベツ、ハクサイ、ミズナ(京菜)、コマツナ、カブ、ブロッコリー、カリフラワー、チンゲンサイ、ターサイ、ナバナ(菜の花)、クレソンと思いのほか多いです。

<ダイコンのとう立ち>
ダイコンのトウ立ちは、種子が吸水し動き始めた時から低温に感応し、一定期間低温が続くと花茎が伸び出す現象のことですが、一定期間の低温とは一般的に12℃以下を指し、特に敏感なのは5~7℃と言われています。
今回、隣家人は5月8日にタネをまいたと言ってましたが、平均気温(2023.5)(クリックするとグラフが出る)を見ると、5月6日~13日までは平年の気温よりぐっと低い日が多く、これが今回のとう立ちに影響したように思われます。
我家は札幌の郊外にあるので、札幌の中心部より気温が2度くらい低めです。5月上旬には最低気温が5~7℃になる日はよくあるので、この時期にダイコンのタネをまくと、この現象がしばしば現れます。

下の写真は、5月12日にタネをまいたチンゲンサイです。 2023.7.3
15~17株が大きくなったのですが、その内の1株に花が咲きました。

2023.7.3
アブラナ科野菜の特徴である4枚の花弁で十字に咲いています。
もしかして、5月8日前後にタネをまいたら、全株に花が咲いたかもしれません。

ダイコン  長い根

漬物用として8月13日にダイコンのタネをまきました。 1ヵ所に4~5粒タネをまいて、8月20日頃?(本葉で出てきた頃)に一度間引きして良い2株を残しました。 その後葉の枚数も増えて7~8枚程になった(参考書では3~4枚になる頃に再度間引きして1本にすると記載)ので1株にしました。 その時に撮ったのが下の写真。

地上部の葉は10cm程度ですが、根(直根)は19cmまで地中深く伸びています。 写真の根の先は途中で切れているので、実際はもっと深く、25cm以上はあると思います。 ダイコンは根を食べるので根が地中深く伸びるのは当然なのですが、苗の段階で30cm近くまで伸びるのは少々驚きです。
(背景の黒マットのマス目は1cm)

ダイコンの根は、土壌環境が良いと生育末期には主根で180~200cm、側根で60~100cmに達する(㈱秀農業経営コンサルタント 技術情報)のだそうです。 これにはびっくりしました。

ダイコンは2年草なので、もし、今年タネをまいたダイコンを秋に収穫しないでそのまま冬越しさせると太った根はさらに太り、春に花を咲かせ、タネを付けます。 そうするとそれらに養分をとられ、最後はダイコンもスカスカになって枯れてしまうのでしょう。

上述の生育末期には主根で180~200cm、側根で60~100cmに達すると記しましたが、これを我家のダイコンに当てはめると、それは花の咲く前の頃で、その時期が最もダイコンが太くなっている時期なのでしょう。 もし、我家の畑を2m掘り起こして土を十分に柔らかくして肥料もたっぷり与えれば、太さは30~40cm?、長さが2m近くのお化けダイコンが穫れるのでしょうかね?

 

 

 

ダイコン干し

2018.11.3
先週の土曜日、百合が原公園へ行く途中で見つけました。
この漬け物用のダイコンを干す姿を見るのは久しぶりです。 なにか懐かしいものに出会った気分になりました。 それほどにこの光景を見るのは久しぶりのように思います。

20~30年前までは我家の周辺でも、ベランダの手すりや物干し 竿に吊るす姿を見かけたものです。 スーパーの店先に泥付きのダイコンや袋詰めのダイコンがうず高く積まれていたのを憶えています。 しかし、いまではその量もぐんと減っているというか、ほとんど見かけなくなりました。

我家の名シェフが、12月からお正月にかけて食べる漬物、ダイコンのビール漬けを少量ですが毎年作っています。 作りかけの頃は、写真のようにダイコンを物干し竿に吊るしていたのですが、かなり前から2階のべランダに並べて干しています。 1本が1kg以上あるダイコンを数本1組にして紐で括って吊るすとなると、少量であるにせよ女性、特に60代を過ぎた女性には相当重い物になるようです。 そんなことも重なってか、今ではこの初冬の風物詩をほとんど見かけなくなりました。

 

 

 

ダイコン

宗次郎に
おかねが泣きて口説き居り
大根の花白きゆうぐれ
夫の宗次郎に女房のおかねが泣きながらよく生活の苦しさを訴えていた。大根の花が白く咲いている故郷の夕暮れよ。 モデルは渋民の農業沼田惣次郎夫婦で、通称おかねさんと呼ばれた女房のイチが酒飲みの夫をつかまえて泣きながら処世の苦しみを訴えていたある日の光景を歌ったもの。(「石川啄木必携」 岩城之徳・編)

貧しい農村の哀愁を歌ったものでしょうか。
1~2年生草本で花茎は60~100cmくらい、長楕円形のがく片と、卵形の花弁がそれぞれ4枚の、典型的なアブラナ科(十字架)の花です。 花色は白、まれに黄色や紫混じりのものがあります。
2018.9.1      写真はミニダイコンの花
原産地には諸説がありますが、ダイコン属の野生種は地中海沿岸に多く、栽培の起源はエジプトと言われています。学者の考証によると、シルクロードを経て中国には2,400年前、わが国には1,200年前に渡来したとされ、かなり古い時代に分布を完了したことから、形態の変化が非常に大きい作物です。

<世界一のダイコン国日本>
於朋 禰(おほね)、須々志呂(すずしろ)などとも呼ばれ、これほど四季を通じて米食と密着した野菜は数多くありません。 獅子文六は『食味歳時記』、に

ダイコンなんて、明日からなくなってもいいという、若い人は多いだろうが、・・・・・ 大根ほど、日本的な味わいを持っている野菜は、少ないのである。  そして日本ほど、ダイコンの食べ方の研究が進んだ国もないのである。

と書いています。 明治38年に農林統計が始まって以来、常に作付面積の王座を譲らないのがダイコン。汁の実、煮食はいうに及ばす、おろし、なます、切り干し、そしておでんには欠かせないもの。 漬物には万能選手。なかでも有名なのはたくあん漬けで、臨済宗の高僧沢庵が始祖として知られていますが、定かではなく、“ 蓄え漬け ” が転じたものともいわれています。

<ダイコン仲間の変わりだね>
変異が起きやすく風土によく馴染むので、特色のある地方種が沢山できました。 三浦、練馬、聖護院、阿波、美濃など、地方に由来するものだけでも枚挙にいとまないほどです。
世界でも一番長いといわれる守口大根は、長さ120cmに及ぶものがあるそうで、長良川や木曽川の流域に堆積された肥沃な砂質土に限られて生産されています。 直径3~4cmで細く、辛みが強いことから生食には不向きで、もっぱら守口漬けとして愛好され、土産品として有名です。
世界一ジャンボなのは桜島大根。 40kgを超えるものもあって、一番小さな二十日大根に比べると300~400倍もあるという代物。 生育期間も長く、6~8ヵ月もかかるそうです。 冬暖かく、噴火で堆積した軟石層という環境でよく肥大します。

<冬来たりなば漬物で>
かつて、札幌では、新琴似がダイコンの名産地。 霜置くころ、ダイコンを満載した馬車が街を往来した風景は、昭和30年代まで見られた、冬近い北の街の風物詩でもありました。 そして、葉も干したり漬けたりして、厳しい冬の生活に懸命に備えたものです。
世は移り食生活も変わりました。 そして今、日本最大で最長の不景気を迎えています。 冬の食生活、昔の人たちの方が賢かったような気もしますね。
(札幌市農業センター 林 繁)

<余談>
我家ではダイコンのビール漬けを毎年ほんの少し作っています。 かれこれ30年近くになります。 お盆の頃にタネをまいて11月上旬に収穫します。 タネをまいてから約80~85日で収穫です。 それを1週間~10日程天日干しにします。 10月中旬過ぎ頃から、我家の周りでも個人の庭先にこれを見かけることが出来ました。 しかし、10年程前から、この天日干しの姿が見られなくなったと感じていたのですが、最近では、スーパーや食品店の店先にも10本入りの袋詰め漬け物用ダイコンを見かけなくなりました。 泥の付いたダイコンなどはほとんど見かけません。 以前は店先に山のように積み上げられていたのですが、それがなくなってしましまた。

私は昭和20~24年生まれの団塊世代後の生まれなのですが、団塊世代と私の世代も含めて現在65才以上の人々は、子供たちは親元を離れて独立して家に残っているのは老夫婦二人だけになっている世帯が多いのではないでしょうか。 お漬物を大量に作る必要もなくなってきたのでしょう。 スーパーに行けば多種多様な漬け物が袋入りで売っているので、敢えて手間暇かけて漬け物を作る必要性、動機が薄れてきているのです。 親元を離れた子供たちも、それは懐かしい味でお母さんが作ってくれるなら食べるけれど、お母さんに教えてもらって再度作ろうという気持ちはさらさらなさそうです。
30~40年前は街のあちこちでダイコンの天日干しを見かけました。 現在はその姿を見かけることはなかなか難しくなっています。 昔ながらの初冬の風景が一つ消えていきます。

 

 

ダイコン  モンシロチョウ

2017.9.10
写真は、我家の家庭菜園に8月11日にタネをまいたダイコンです。 は種後約1ヶ月です。 このダイコンは漬け物用です。 は種後約2ヶ月で太いダイコンが収穫できます。 しかし、しっかり管理しないと(しばらく見ていないと)、葉がアオムシに主葉脈だけ残してきれいに食害されてしまします。

当地札幌は9月に入っても暖かい日が続いていて、晴れた日の午前中にモンシロチョウがチラチラと、このダイコンの周りを飛んでいるのを見かけます。 卵を産み付けに来ているのです。 気を付けて見ていないと、葉が食害されてしまいます。 それで、は種後本葉が少し大きくなる頃に浸透性の殺虫剤をかけます。 これでしばらくは持つのですが、薬が効かなくなると、また、食害されてしまいます。

具体的には、8月下旬(は種後15~20日前後)に薬を1回散布しています。 農薬の使用方法を見ると、浸透性殺虫剤の場合、作物の種類による違いはあるのですが、農薬散布後約20日で収穫可能となっているのでこれを判断基準にして、ちょうど今頃、9月10日頃に農薬の効力が無くなると判断して、2回目をかけています。 今年は暖かい日が続いているので9月5日?にかけました。
2017.9.10
写真は、ダイコンの葉裏です。 葉の中央に少し黄色がかった楕円形の小さなものが立っているのが見えます。 大きさは1mm程のごく小さなものです。これがモンシロチョウの卵です。

昨日、畑でモンシロチョウがダイコンの周りを飛んでいるのを観察してました。 モンシロチョウは、卵を産む場所を捜してこっちの葉あっちの葉と飛び回るのですが、卵を産むときはしばらくその場所に留まっています。 時間にすると1分弱?程度でしょうか? その葉を確認して撮ったのがこの写真です。

昆虫に関することは知らないのですが、樹木に被害を与える多くの昆虫の卵の産み方は、集団というか、かためて産むことが多いのです。 その点、モンシロチョウはご丁寧に1個1個葉裏に産み付けていくのです。 だから、あのようなチラチラというかフワフワした飛び方をするのですね。 すっーすぅーと飛んでいたら、1個1個は産んでいられないですよね。

家庭菜園に関する図書やウェブページなどでは、「卵や幼虫を見つけたら手で除去しましょう」と書かれていますが、1mm程度と非常に小さい卵を確認して取り除くのは、ダイコン2~3株程度ならなんとかやってみようと思いますが、35株(今年の株数)となるとほとんど不可能です。 他にすることがたくさんある家庭菜園をする者にとっては、農薬の散布も収穫するためには大事な農作業の一つです。

以下はある参考図書の「農薬を使わない防除」の説明。
「畑にモンシロチョウが飛んでいれば産卵して発生する可能性があります。 日ごろから葉の裏表をよく確かめ、卵や幼虫を見つけしだい捕殺します。 苗の定植後に防虫ネットや寒冷紗で株全体を覆って成虫の産卵を防ぎます。 その際、防虫ネットや寒冷紗と土の間に隙間ができないようにします。」
防除ネットを張った後の管理(風で吹き飛ばされることやネットの除去)を考えると、防虫ネットを張ってまでダイコンやキャベツを作る気はしませんね。

とりあえず、今のところモンシロチョウの被害に遭っていないのですが、まだ、安心は出来ません。 9月中旬以降でも暖かい日があると、モンシロチョウは飛んできます。 9月上旬に農薬をかけていますが、20日後の9月下旬には薬はかけたくありません。 その頃にはダイコンの株も大きくなっているので、様子を見ながら、アオムシを見つけたら捕殺するつもりです。

<余談:その後生き残った幼虫は?>
暖かい時期はモンシロチョウの卵は1週間で孵化し、1ヶ月ほどで成虫になるのですが、札幌のこの時期に産み付けられた卵は蛹で越冬するそうです。葉裏にくっ付いた蛹は 葉が枯れると地面に落ち、そのまま雪の中で4ヶ月間過ごすのでしょうか? ちなみに、蛹から羽化してモンシロチョウで生きている期間は1~2週間だそうです。