ワスレナグサ  勿忘草

2019.5.15
豊平公園の北東角の樹林下を散策すると、淡青色の絨毯に出会います。
 
2019.5.15
ワスレナグサ(勿忘草)。 一度聞いたら忘れない印象に残る 名前です。 このワスレナグサという名前はイ行が入ってないので口語での響きも柔らかです。 花言葉は真実の愛。 英語名は don’t forget me ではなく、forget me not 。 名前だけで好きになりそうな花です。 一つ一つの花は1cmにも満たない小さな花ですが、それが無数に集まって敷き詰めたように咲く姿は、淡青色という清楚なイメージと相まって、一瞬、おとぎ話の世界に入ったような気分にさせられます。

しかし、ワスレナグサには別の一面もあります。 こんなことを書くとワスレナグサのイメージを台無しにしてしまうのですが、我家の庭では取っても取ってもなくならない厄介な雑草になっています。スギナやタンポポのように地下茎や根が残っていて直ぐに芽を出すわけではないのですが、ハコベのようにいつの間にか庭のあちこちに生えているのです。 繁殖力の旺盛な植物のようです。

最後に、ワスレナグサの神話・伝説を書き添えます。
英語では forget-not-me といい、この名前の由来にはいくつもの伝説がある。 ドイツの伝説に、恋人二人がドナウ河畔を散策中、男が水際の1輪の花を摘もうとして足をさらわれ、「我な忘れそ」と叫んだまま、摘んだ花を岸へ投げ返して波にのまれた。 以来、その花をこの名でんよんでるという。

 また、アダムが楽園の植物すべてに名をつけ終わると、神はアダムを連れて園内を巡回し、植物がそれぞれの名前を覚えているかどうかを調べて回った。 が、Myosotisという覚えにくい名をつけられた青い小さな花だけはうなだれて申し訳なさそうに小声で「忘れました」とわびた。神はこの小さな花を哀れんで、「自分の名を忘れたからとて気にするな。 でも、私を忘れてはいけないよ」と慰めて、改めて「我な忘れそ」の名前を与えたという。 

ワーテルローの戦い(1815)の直後、ひとりのイギリス兵の死体の胸からこの花が芽を出して、今でもこの古戦場一帯には、戦没兵を忘れるなといわんとばかりにこの花が咲き競うという。 この花は古くはうるう年の2月末日に旅立つ人への餞別としたが、後には、恋人がこの日にやりとりする花となった。 ドイツではこの花を親しい人の墓に植える。 こうしてこの花は誠実・友愛の表象とされている。
(園芸植物大辞典)