キンモクセイ 百合が原公園

百合が原公園の温室にあるキンモクセイの花が咲いていました。 残念ながら、温室内には良い香りは漂っていませんでした。 近寄って嗅いでみると、微かにそれらしき香りがしたかな?っていう感じです。
2023.10.8
百合が原公園の温室には3本?のキンモクセイが植えられています。 大きさは1.5mくらいで、思いのほかこじんまりとしています。 本州では4mくらいがよく見る大きさで、大きいものでは10mになるようです。 当公園の方の話によると、
「10月1日に咲き始めて、3日~4日に香りがした。 今でも、朝と夕方には香りは(少し?)ある」とのこと。2023.10.8
パソコンでキンモクセイの開花について調べると、本州では開花期間は9月下旬~10月中旬の1週間程で、良い香りもそれと同じく極めて短い期間のようです。 温室に植えられている(冬場の温度設定は最低温度を5℃くらい?)百合が原公園のキンモクセイも本州と同じ時期に花を咲かせ、同じころに匂うようです。 しかし、香りの強さは本州に比べて格段に落ちるようですが・・・・・・。 2023.10.8
キンモクセイの花は、
花冠は深く4裂し、裂片は倒卵形で円頭、表面は凹み、質は厚い。 雄しべは2本、雌しべは1本、雌雄異株で、わが国にあるものは雄株であるため、子房は縮小していて結実しない。(牧野新日本植物図鑑)
サクラやニセアカシアなどの多くの樹木は、その年に伸びた枝に花芽をつけて、翌年その花芽が膨らんで開花するのですが、キンモクセイは、バラやムクゲと同じように
その年に伸びた枝に花芽をつけて、その年内に花を咲かせる、樹木の開花習性としてマイナーな部類に属します。 夏以降に開花する樹木がこれに当たります。

〇 キンモクセイの思い出
キンモクセイの香りで最も印象に残っているのは、学生のころ人通りの少なくなった夜道を自転車で走っていると、どこからともなく良い香りがしてきました。 辺りを見回しても夜なので暗くて探し出せないのか、屋敷の塀の奥に植えられていて見えないのか、それらしき樹木を見つけられず下宿に帰ったことがありました。 そのとき初めてキンモクセイの香りに遭遇?出会ったのですが、その香りの良さと辺りに拡がる香りの強さから直ぐにキンモクセイと判ったことを記憶しています。

〇 キンモクセイの香りについて
植物の花が香りを放つ理由・目的はいくつかあるようですが、最もよく知られているのが受粉のためにミツバチなどに近寄ってきてもらうためです。 ミツバチが最も活動の盛んなのはで朝のようで、隣家の主人が言っていたことがあります。
「数年前までは、サクランボの樹にミツバチがたくさんやって来て、ぶんぶんとうるさくて朝目が覚めるほどでした」と、
このようにミツバチの活動が盛んなのは朝なので、匂いを出す植物もおそらく朝ミツバチの行動に併せて最も強く香りを放つように思うのです。
ところが、キンモクセイの場合、パソコンで調べると夜であるとか、朝であるとか、百合が原公園の方は朝と夕方と言っていますし、自分自身も一番印象に残っているのは夜であったのです。 人の感覚はそれぞれ違い、実際に匂いを計る機器で調べたわけではないと思うので、実態は判らないというところなのでしょう。 でも、受粉という観点で考えれば、朝が一番香りを強く放つのが理に適っていると思うのですが、どうでしょう?

 

 

ヤマグルマ  百合が原公園

2023.6.18
写真のヤマグルマは、前回(6月24日)投稿したマグノリア  アシェイの数メートル横に植えられています。樹高は3m程のこじんまりとした樹姿で、強いて言うなら同じ常緑樹のアセビ(馬酔木)に似ているのでしょうか。
2012.4.6
⇒ アセビ  ツツジ科の常緑低木2023.6.18
ヤマグルマは、ヤマグルマ科ヤマグルマ属の 1科1属1種の常緑広葉樹で、大きいものは20mにもなるそうです。 日本では本州の東北南部~九州に分布しています。
百合が原公園の方に、どれぐらい大きさのものをいつ頃植えたのかを尋ねたのですが、分からないとのことです。 見た感じ、このヤマグルマは植えられてからある程度の 年数を経ているようなので、樹木の成長はゆっくりしたしたもののようです。
2023.6.18
ヤマグルマの花は花弁もガクもなく、写真の花の中心にある緑色の半球状体の回りから糸のようなものがたくさん出ていますが、それらは雄しべのようです。 ヤマグルマの名前は、葉が枝先に車輪状につくことから名付けられたようです。

ヤマグルマは、花が特別にきれいでもなく、葉の形状に特徴があるわけでもない至って普通の樹木なのですが、他の広葉樹と違う特異的な形質を持っていることで知られています。 通常、広葉樹は根から吸い上げた水や養分を導管と呼ばれる管を通して樹上若しくは葉に運ぶのですが、このヤマグルマは針葉樹と同じ仮道管と呼ばれる菅によって運ばれるのです。
それでは、導管と仮道管はどう違うのでしょうか?
広葉樹で一般的な導管は、個々の細胞をつなぐ上下の壁が無くなって1本の長い菅になり、菅の中を水はスムーズに流れるのですが、仮道管(紡錘形)は、導管のように上下の壁が無くなるわけではなく、上下の細胞に壁口(へきこう)という穴が開いていて、その部分から水が流れるのです。 なので、水の流れは仮道管より導管の方がスムーズです。
しかし、導管にもデメリットがあり、冬に気温が下がり導管内の水が凍結すると細かい気泡できて、春先に氷が解けると、それが集まって大きな気泡になり、導管内の水柱が途切れて樹冠上部に水を吸い上げることができなくなるのです。
一方、仮道管は内部の水分が凍結しても、それぞれの細胞は導管のものより細く、しかも上下細胞が壁口という穴で繋がっているだけなので、小さな気泡が集合せずに大きな気泡を作りにくく、斜めに接しながら繋がっているため、水柱が途切れることは少ないのです。

話は少し逸れて「樹木の進化」になります。

今から4億数千年前、海中から陸上に進出した原始的な生命体は、長い長い時間を経て維管束を持つシダ類に発達し、今から約3億5000万年前(古生代石炭紀)に木性シダ類によって森林が形成されます(現代の我々はこの遺体を化石燃料として利用)。
シダ類は湿った環境での生繁殖が可能で環境への耐性が低かったのですが、今から約2億5000万年前(中世代初期;三畳紀)、シダ類の次に現れる針葉樹類、イチョウやソテツなどの裸子植物は、胞子で繁殖するのではなく、種子を形成して水気の少ない場所でも繁殖生存できるようになったのです。
シダ植物の繁茂した場所は湿潤な地域に限定されるのですが、種子植物の出現により陸上のより乾燥した場所や高山のより高い場所にまで生息域を拡げることができたのです。 想像するに、その当時宇宙から見た地球の赤茶けた?陸上が緑色に徐々に拡大していくのが見えたのでしょうね。
そして、裸子植物の出現から約1億年を経て、今から約1億5000万年前、導管を持つ樹木(広葉樹)の出現です。 それまで地球を覆っていたマツなど針葉樹類は成長の早い広葉樹に追われて、寒い地域や高い場所に追いやられていったのです。

樹木の進化を辿ると、ヤマグルマは針葉樹から広葉樹に移行する時代に出現した樹木のようで、常緑広葉樹より成長は緩慢だけれど、針葉樹には劣るけれど導管を持つ広葉樹よりも耐寒性はある植物と考えてもよさそうです。
常緑広葉樹が生息するには札幌は厳しい条件の場所なのですが、維管束に仮道管を持っているヤマグルマだから越冬できる、それが大きな要因の一つと考えられます。ヤマグルマは樹高が20mを超えるものもある高木性樹木なので、百合が原公園にあるヤマグルマが今後どのように成長するかが楽しみです。 このヤマグルマが植えてから何年くらい経つのかが分からないのが少々残念です。

<追記>
常緑広葉樹で仮道管を持つ樹木は、ヤマグルマのほかに、お正月に飾り物の切り枝として使われるセンリョウがあります。

 

 

 

 

 

 

ビワ  開花

2021.11.6
先日、東京に立ち寄ったついでに新宿御苑に行って、そこで撮ったビワの樹。樹高は4m強?、ウェキペディアでは5~10m、NHK趣味の園芸では2~5mと書かれているので、写真のビワは成木に近いと言っていいのではないでしょうか
2021.11.16
写真の中央にビワの花が咲いています。 その左右全面に奥の濃緑の葉と違う薄緑色の葉が見えます。最近芽出しした若葉のようにも見えます。 調べてみると、多くのwebページに、ビワは春・夏・秋と3回し伸長すると書かれています。ので、写真の若葉も秋に芽出しした葉なのでしょうか。
2021.11.16
ビワは11月~翌年の1月にかけて温度の低い時期にゆっくりと開花していくようです。 花は良い香りがするそうですが、残念ながら、今回はその香りを嗅ぐことはできませんでした。
ビワの花は一見するとあまり目立たず寂しい印象ですが、暖かそうな綿毛に包まれた小さな花には風情があります。12月頃から枝の先に白色五弁の小花をたくさん付け、花の色が白から黄みを帯びてくるにしたがって、香りが徐々に強くなってきます。

<余談>
地球の北半球に育つ樹木のほとんど?は春から夏にかけて花を咲かせ、その年の秋にに実を生らせます。 わざわざ寒くなる冬に向かって花を咲かせ、その翌年に実を生らせる樹木は、珍しい部類に入ると思うのです。 日本では、サザンカ、チャの部類でしょうか。 しかし、東京よりもっともっと寒い札幌でも、ビワと同じ生活史を持つ樹木があるのです。
2011.11.4
それはアメリカマンサクです。 日本に自生するマンサクは札幌では4月に花を咲かせるのですが、webページで検索すると、本州ではアメリカマンサクはマンサクと同じ時期の2〜3月に咲くらしいのです。 しかし、札幌では原生地の北アメリカと同じ秋です。

⇒ アメリカマンサク:2年越しの結実

 

 

ツバキ 百合が原公園温室

ツバキは道内で越冬できるところは道南の松前付近で、札幌ではツバキを冬囲いをして雪の中で越冬させても、葉が褐色に変色したり、つぼみはついているものの花が咲かない(冬の間に枯死)のが通常のパターンです。 しかし、最近は地球温暖化の恩恵?なのでしょうか、札幌でも花を咲かせている方がいるようです。 2021.4.29
今回は百合が原公園の温室に咲いているツバキです。 当公園の大温室には200本くらいは植えられているのでしょうか?、4月末になると花が咲き終わって新芽~新梢になっている株が多く、現在開花中の株はその内の3~4割程でしょうか? 2021.4.29
温室で植物管理をしている方に話を聞くと、見頃(最盛期)は3月だそうです。 冬場の温室内の温度を最高温度10℃、最低温度0℃に設定しているそうで、これは東京の1月、2月、真冬の気温と同じくらいです。  品種名;エリザベス ウィーバー     塩見白花(しおみはっか)

ツバキの仲間でサザンカは晩秋から初冬の11~12月に、ツバキは早春の2~3月に花が咲くというイメージがあったのですが、ネットで調べると、ツバキも11月~翌年の4月頃まで咲くようです。 近年のユキツバキやサザンカなどの交配で多種多様な品種が生み出されて開花期もそれに併せて伸びたのでしょう。 それでも本州のツバキ展の開催日を見ると3月を中心に2~4月に開催されており、百合が原公園のツバキ展とほぼ同時期で、やはり、ツバキの見頃、多くの品種が開花する最盛期は3月なのでしょう。

<余談> ツバキとサザンカの違い
1 ツバキの花は花全体がポロリと落ちるが、サザンカは花弁が一枚一枚散る。
2 ツバキの雄しべの下半分はつながっているが、サザンカはバラバラ
花が咲いていないとき、葉での見分け方は、
3 サザンカは葉の縁にある鋸歯が目立つが、ツバキは目立たない
4 葉の大きさはサザンカが小ぶり

だそうです。