イタヤカエデ 倒木伐採

9月29日(金)に樹木医会北海道支部の研修会が札幌市中央区の円山公園でありました。 研修内容は、当公園内にある大きな樹を観察・診断して、その樹に内在する危険性を見つけ、今後の対策を検討するという内容でした。 大きな樹木は年を重ねるにつれ、台風などの強風で太枝が折れるなどの危険性が高まり、それが原因で幹の腐朽が進んだり、樹木のバランスが崩れたりと倒木など様々な問題が発生して、公園の利用者に危害を加える可能性が出てきます。
樹木を数本診断した最後に、当公園の管理者から根元直径が1.4m×1.3mある大きなイタヤカエデの切株についての説明がありました。
2023.9.29
説明によると、
・このイタヤカエデは樹高が20m以上で、地際から高さ1.0m~1.5mの高さで6~7本くらいの太い枝に分かれている巨大な樹木であった。
・樹齢は200年くらいと推定している。
・太い樹木で根元周が大きく、きれいな断面で伐採できず、年輪が不明瞭になった。
・最初に樹幹の東側半分の3本が倒木して、その後残った部分が北東側に倒れた。
・倒木の原因は強風ではなく大雨であった。

説明では、強風ではなく、大雨で倒木したとのこと。 倒木後の画像をスマホで見せてもらいました。 概略図で示すと以下の通り。

このイタヤカエデは、地際から1.5m前後の高さで6本ほどの太い幹に分かれていたので、太幹の付け根の部分が入り皮であったり、亀裂が生じていたのでしょうか? 概略図のとおり、太い幹の付け根から雨水が染み込んで樹幹内部に腐朽が進行したのです。 腐朽した部分は、内材が黒褐色でボロボロになった状態。
通常、樹木は太枝が折れたり切断されても、切断された断面より内側に雨水の浸透や菌による内部腐朽を防ぐ防御層を形成するのですが、※入り皮や強風による太枝の付け根に亀裂が生じた場合、樹冠上部が大きいと風による太幹の揺れで容易に破断面の修復ができないのでしょう。 それが長年続くと樹幹内部で腐朽が進み、樹幹の重みに耐えきれず大雨でも倒壊してしまうようです。

※入り皮;分枝角度が25度より狭い幹と枝、あるいは双幹木ではしばしば又の部分に樹皮が挟まる “入り皮” 状態になっている。入り皮になると形成層が圧迫されて死ぬが、圧迫し合っている部分に抗菌性物質が蓄積されて腐朽菌などの侵入を防ぐ。そして材が連絡し合っている脇の部分が張り出すような膨らみができる。しかし、挟まった樹皮は “くさび” ような形をしており。強風などで大きな加重がかかると、わずかにつながっている両脇の材から裂け、幹の半分近くまで引き裂かれてしまう。さらに、入り皮部分は引き裂かれる前から微妙な亀裂が入っていることがあり、腐朽の侵入門戸となりやすい。 絵でわかる樹木の知識(堀 大才著)

以下の写真は、2013.03.06に当ブログで紹介した、今回倒木したイタヤカエデのその当時の姿です。
2011.10.9
写真中央よりやや左手に青っぽい公園照明のポールが見えます。 この高さは約7~8mなので、このイタヤカエデの高さ、樹幅、樹冠の大きさを想像してください。
2012.9.15
樹齢を重ねたイタヤカエデでは、写真のように根元で幾筋も縦に線(亀裂?)が入っている樹を見かけますが、このイタヤカエデも同様に線が入り、根元に樹木内部に大きな空洞があることを連想させる「うろ」や、縦に入った線の地際には腐朽を疑いたくなるような部分もあります。
このように、このイタヤカエデを含めて樹齢を重ねた巨木は、外観は元気なように見えても、太幹が集まった部分や地際には樹幹内部に腐朽した部分が存在(隠れて)していて、風や雨で倒壊する危険性を常時秘めているのです。

⇒ イタヤカエデ(その2) 

 

 

イタヤカエデ  冬芽

2012.3.11
冬芽は、対生であり、卵形ないし広卵形で、やや扁平し、先が鈍く、長さ3~7mmあり、暗赤紫色をし、3~5対の芽鱗に覆瓦状につつまれる。 芽鱗は葉柄起源であり、対生して 縁に短軟毛が生える。 頂芽は大きく、やや4稜をもち(頂芽が四角錐のように角を持つ)、ほぼ無毛で、2個の予備芽(頂生側芽)伴う。(落葉広葉図譜より抜粋)
⇒ イタヤカエデ(その1)
⇒ イタヤカエデ(その2)

 2017.11.2
アカイタヤの冬芽
冬芽は、対生し、卵形で、長さ3~8mmあり、帯緑褐色ないし黄褐色をし、無毛である。
⇒ アカイタヤ  大通西4丁目

<余談 イタヤカエデの冬芽の色>
自然林ではイタヤカエデとアカイタヤが混じって生えているので落葉期に自然林の冬芽を見ると両者の区別がつかない ので、その色の違い(傾向)はつかめないのです。 しかし、公園内はほとんどがイタヤカエデなので、それらの冬芽を見ると必ずしも赤紫色だけではなく、緑ががかった茶褐色をした冬芽もあるようです。

イタヤカエデ(その1)
イタヤカエデ(その2)
イタヤカエデ 倒木伐採

 

 

イタヤカエデ(その2)

1-008 イタヤカエデ 石山大橋付近2012.6.16
国道230号線(川沿石山大橋付近)沿いに生えているイタヤカエデです。国道沿いに流れる豊平川の河床近くにはヤナギの仲間やニセアカシアが繁茂していますが、道路と川との間の法面にはイタヤカエデが実に多いです。写真の黄緑色の葉はすべてイタヤカデです。
5月のゴールデンウィークを少し過ぎたころ、国道230号線を定山渓に向かって走り、石山、藤野の住宅街を通り過ぎて民家も少なくなり、豊平川沿いの山々が連なって見える辺りから道路沿いに生えている樹々のなかに、黄緑色の花をつけたイタヤカエデを見ることができます。イタヤカエデの花はエゾヤマザクラと同じ時期に咲くために、サクラに目を引かれ見過ごすことが多いのですが、車の窓からよく見るとイタヤカエデの花が何本も珠繋ぎに咲いているのを見かけます。
1-033 イタヤカエデ(赤字)2011.3.16
冬の真駒内公園を散策していると、広い雪原の中に数人が集まってiいるのが見えます。その横にはカメラが脚立に設置してあり、なにかな?と思ってその集団に近づいて話を聞くと、「向こうの太い樹を見なさい」とのこと。双眼鏡を覗いてみると、そこから50m以上離れているところ立っている古木の“うろ”に白いものが見えます。ふくろうです。じっとしていて動きません。このような光景を見るのは初めてです。
1-036 イタヤカエデ フクロウ2011.3.16
笑っているような怒っているようなフクロウ独特の顔が見えます。うろの大きさはどれくらいでしょうか?フクロウの大きさを50cmとすると、うろの穴はたて60~70cm、横幅30~40cmになります。
1-048 イタヤカエデ アカイタヤ?2011.3.16
この樹の樹種を確認したのはその年の夏です。
樹種:イタヤカエデ 樹高:13m、目通幹径:1.4m(幹周440cm)、樹齢:390年(真駒内公園HPより)
フクロウは、古木の中程より上の辺り、幹径80cm部分のうろの中にいたのです。
1-002 イタヤカエデ2011.6.29
真駒内南町、真駒内川沿いに走る道路の歩道上にあるイタヤカエデです。おそらく、道路造成時に大きくて立派な樹のために伐採を免れたのです。幹が二股に分かれる部分で1.5m近くあるのでしょうか。
1-012 イタヤカエデ2012.8.25
このイタヤカエデに近接して住宅はないのですが、道路管理上何らかの理由で強めの剪定がされています。大きくて立派な樹がその姿のままで存在できる場所は、人が生活する都会の中ではそう多くはないようです。
1-064 イタヤカエデ 円山公園2012.6.16
円山公園には、アカナラ、ハンノキ、アサダ、ヤチダモなどの大きくて重量感のある樹が多く生えています。このイタヤカエデもそのうちの1本です。高さは優に20mは超え、幹径は1.0×1.5の楕円形をしており、地上1.8m程のところで6本の幹に分かれています。樹冠の拡がりはイタヤカエデのイメージを通り越しています。
1-026 イタヤカエデ 円山公園2011.10.9
樹齢はどれくらいなのでしょうね?
強いて言うなら、根張りがないのが残念です。公園として整備されるときに根張りの上に盛り土されたのでしょうか?
1-074(赤字)2011.8.9
東区の大覚寺というお寺に生えているイタヤカエデです。見上げて見ているので高さは定かではありませんが、20m前後はありそうです。目通幹径も1mはありそうです。
大覚寺は明治時代に創建された札幌では古刹になります。その境内には、法律に基づいて指定された保存樹(イチョウ3本、シダレヤナギ2本、ヤチダモ1本)があります。しかし、不思議なことに、このイタヤカエデはその対象から外れています。確かに、立派な山門や本堂のある表側に生えている?植えられた?樹は保存樹になっているのですが、このイタヤカエデはお寺の裏側にあるので、見過ごされたのでしょうか?
1-077(赤字)2011.8.9

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イタヤカエデ(その1)

2月上旬に近くの河川敷から採取してきたイタヤカエデです。葉が展葉するまでに1ヶ月弱かかっています 。花芽と思っていたのですが、葉芽でした。
088 イタヤカエデ(赤字)2013.3.1
イタヤカエデの葉は掌状に5~7裂します。今回採取した枝は5裂の葉でした。
1-003 イタヤカエデ?2012.2.5
ニセアカシアやシンジュなど冬季間も樹上に種子をつけたままの樹は以外多く、このイタヤカエデも種子(翼果)を沢山つけて冬を越す樹が多いです。
※翼果:果皮の一端が伸びてできた膜状の翼があり、風に乗って飛散する。カエデ・ニレなどにみられる。
1 冬芽 ~ 新葉
)1-006 イタヤカエデ(イタヤカエデ (赤字)2012.3.11
イタヤカエデの冬芽の色は赤味を帯びたものから緑がかったものまで幅があり、この写真の冬芽は黒に近い紺色?群青色?という感じです。
1-093 イタヤカエデ(赤字)2011.5.5
5月上旬、ちょうどゴールデンウィークの頃、冬芽が大きく膨らみ、そこから葉と同時に蕾も顔を出します。
1-177 イタヤカエデ2011.5.15
このような花の咲き方を散房状円錐花序というそうです。
1-010 イタヤカエデ2011.5.7
花色は緑色帯びた黄色で、花は小さく、5mm程度です。
1-013 イタヤカエデ2011.5.7
この花をよく見ると、雌しべがなく、雄しべだけです。雄花のようです。
カエデの仲間は花の形態がいつくかあって、
①ネグンドカエデやアメリカハナノキなどは雌雄異株で、雄花と雌花は別々の樹に花を咲かせる。
②ノルウェーカエデは同じ花序に雄花と雌花をつける。
③イタヤカエデは、同じ樹に雄花と両性花(雌しべと雄しべがある花)を咲かせる。③のパターンが一番多くて、ヤマモミジ、ハウチワカエデ、アカイタヤ、カラコギカエデなどがあります。、
1-023 アカイタヤ?2012.5.6 エドウィン・ダン記念公園
イタヤカエデはエゾヤマザクラとちょうど同じ時期に花を咲かせます。満開のときでも遠くから見るとぼやぁーと黄色く見えるので、サクラに負けてしまうのですが、それでもこの時期は他の樹木は葉も出ていないので、エゾヤマザクラのピンクとイタヤカエデの黄緑色は目を引きます。
1-024 アカイタヤ2012.5.6
近くで撮ると、このように鮮やかに見えます。
1-013 イタヤカエデ 藻岩山2012.5.7
中央の黄緑色の樹がイタヤカエデです。藻岩山の斜面です。
1-001 イタヤカエデ プンゲンストウヒ 藻岩山2012.5.7
前面にほんの少し顔を出しているエゾムラサキツツジ、背景に霞がかったように見える藻岩山、そして、プンゲンストウヒの緑色に挟まれて、黄緑色のイタヤカデが花を咲かせています。イタヤカデが美しいと思って撮った写真を見ると、晴れてはいないけれど暗くはない明るめの雲の日が多いです。青空をバックに太陽に照らされて鮮やかに映し出されるイタヤカエデより、パステル調の景色に納まったイタヤカエデが似合っているようです。
2 名前の由来
辻井達一著「日本の樹木」より
牧野富太郎博士は、葉がよく茂って板屋根のようになり、雨露の漏れることのないところから来たと言い、民俗学にも造詣の深かった武田久吉博士は、イタヤギあるいはイタヤと呼ばれているが、その語源については明確なものはないと言う。板谷という地名があるがこれとの関係も明らかではない。カエデの仲間では大木になる種類であり、材として用いられたから、あるいは単純に板の木という意味で呼ばれたのかと思われる。
3 Data
・科名 カエデ科
・属名 カエデ属
・学名 Acer mono
・花期 5月上旬
・分布 日本、サハリン、朝鮮、中国

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