クサノオウ  黄色い乳液

2020.6.2
写真は藻岩山の北東斜面の裾野、場所は福住桑園通南29条辺り。 5月、自然林の林床にニリンソウなど春早めに咲く花が終わった頃、この黄色の花に気がつきます。 クサノオウは身近な自然林の林床、林縁、道端などでよく見かけます。

2014.6.5
高さ50cm前後になる2年草で、茎はよく分岐し、はじめ毛があるが、後に
落ちる。 花の径は2.5cmほどで花弁は4枚、がく弁は2枚あるが開花と同時に落ちる。(新北海道の花)
2018.6.30
葉は軟らかく、長さ10cm前後で不規則な円い切れ込みが入り、裏面は灰白色。
(新北海道の花)
2020.6.2
写真黄色い球は茎を切り口から黄色の汁が出たところ。葉を切っても黄色い汁が出る。

<余談>
葉や茎に傷をつけると乳液を出す植物は意外と多く、身近なもので直ぐに思いつくものでは、タンポポやゴムノキが、それ以外にも、ウルシ(漆)の仲間でヤマウルシやヌルデ(紅葉がきれい)、サツマイモ、コシアブラ(ハリギリの仲間、新芽をてんぷらにして食べられる)などがあります。

タンポポなど切り口から白い乳液が出てくるのは見慣れているのですが、クサノオウは黄色の乳液なので、切った瞬間出てきた色が朱色という非日常的な一種異様さを感じさせる色なので、初めて見たときは一瞬驚きというか、あれっと思った記憶があります。

以下は更科源蔵著、「コタン生物記」のクサノオウに関する記述です。
茎をちぎると黄色い液を出すこの草を、オトンプイ・キナとか、オトイプン・キナと呼んでいる。 オトンプイ・キナとか、オトイプン・キナとは肛門のことで、肛門草の意味である。 ちぎると黄色い液がでるので肛門草といったものが、肛門の病気に効くから肛門草というのだと感ちがいしたらしいともいわれている。 いずれにしても痔の悪いときとか便秘のときにはこれを煎じて、飲んだり、患部を洗ったり、肛門にさし込んだりした。 本当に効くものかどうかはわからない。

以下は、北大植物園内草本分科園のクサノオウの説明。
葉や汁を打撲や捻挫、ヘビによる噛み傷に塗り当て、便秘や痔、婦人病には温湿布をし患部を洗う。

更科源蔵のアイヌ文化に深く入り込んだ人間にしか知り得ない情報、具体的な記述がおもしろい。