シナノキ  樹皮・樹肌


幹径:20cm                   幹径:25cm
写真左の幹径20cmの樹皮(若木)は、縦に細かい筋が入っていますが表面は滑らかです。 ところが、写真右の幹径25cmになると、樹皮は縦に割れ表面はざらつき成木の趣があります。 しかし、当木の右上枝は若木の滑らかな樹皮で、ざらついている樹皮との境界がはっきりしています。
 
幹径:20~40cm                       幹径:65~70cm
写真左のシナノキは、幹径20~40cmのものが数本立ち上がる株立で、樹皮も幹径によって趣を異にしています。
写真右は、幹径が65~70cmある老木。 樹皮の表面は縦に割れ、溝も深くなります。

<余談 その1>
シナノキの樹皮は「シナ皮」とよばれ、繊維が強く主に昔はロープの材料として利用されてきました。 アイヌの人々もシナノキの樹皮を利用したようで、 「コタン生物記」 に以下の記述があります。

新潟県の北部山岳地帯では、今日でもシナノキの内皮の繊維で織るシナ布という布をつくっているということであるが、厚司(あつし:オヒョウの樹皮からとった繊維で織った織物)を織るオヒョウの樹皮が容易に入手できなくなってからは、コタン(集落、部落)でも近年はもっぱらこの木の皮を代用している。 昔は織物にはぜずに細い縄にして魚をとる掬い網(すくいあみ)や、袋網などをつくる材料にした。 草小屋をつくるときの縄はこれを用いたし。狩に行くときの脚絆もこれで編んだ。

この木の皮をニペとかシ・ニペという。 知里辞典によればニペとは「木からもぎとった裂片 」 という意味らしいとある。 たしかにこの木の皮を剥ぐところを見ていると、オヒョウのように下から上に剥ぎとり、梢までも剥げるのではなしに、上のほうに傷をつけて下の方に引き剥がすのである。 だからそう長くは剥げない。 たしかに木からむしりといったという感じである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
(コタン生物記 更科源蔵著(明治37年~昭和60年:1904~1985)

 

<余談 その2>
2011.11.3
伐採後切り株断面を見ると、中心部の心材は赤黒く、辺材は白っぽいものが多いのですが、シナノキは心材と辺材の区別が全くと言っていいほどできないようです。

シナノキ  甘酸っぱい香り

シナノキ 2016.7.12 街路樹 シナノキ
ちょうどこの時期、7月中旬に街路樹の下を歩いていると、甘酸っぱい香りが漂ってくることがあります。 それはシナノキかオオバボダイジュの花の香りです。
シナノキ 2016.7.12
写真は、大通西20~23丁目?辺り。 歩道を自転車でゆっくり走っていると甘酸っぱい香りが風に乗って漂ってきます。
ビルの上に広がる7月の青い空と強い日差し。 しかし、からっとしたさわやかな風。 そして、シナノキの甘酸っぱい香り。 札幌の香りある夏の風景です。

中央分離帯に植えられている樹木はオオバボダイジュ。 中央に白っぽい樹が見えます。 シナノキです。 オオバボダイジュに混じって植えられたようです。 オオバボダイジュはシナノキとほとんど同じ花を咲かせるのですが、シナノキに比べて少し開花は遅れるようです。

シナノキ 2016.7.12
福住桑園通り(南28~30条西11丁目辺り)沿いの藻岩山。 赤い丸で囲ってある白っぽい樹がシナノキ。

<追記 2016.7.18  葉が隠れて見えないくらい花が咲いている >
シナノキ 2016.7.18
南区真駒内 五輪記念公園内
シナノキ 2016.7.18

シナノキ 冬芽

シナノキ :冬芽
シナノキ2012.3.18
冬芽は二列互生して、大きく、長さ7~10mmあり、卵形で、先が鈍く、無毛である。 芽鱗は明褐色ないし帯赤褐色をし、つやがあり、托葉起源で、見える2枚のうち、内側のものが大きい。仮頂芽はやや大きく、広卵形である。側芽は開出し、下位ほど小さい。(落葉広葉樹図譜)

 

シナノキとオオバボダイジュ(その3)

シナノキとオオバボダイジュの花が7月中旬頃から咲き始めて、約1ヶ月が過ぎました。果実も実ってきています。
シナノキ科シナノキ属(Tilia属)で似たもの同士、シナノキとオオバボダイジュの違いを見てみます。先ず最初は花です。
1-008 シナノキ2012.7.22
二つの樹は似ているという先入観念があるのですが、拡大して見ると様相がだいぶ違います。シナノキの花は、雄しべが花弁より長く飛び出しているため、一見した感じ、ナナカマドやアズキナシの花を連想させます。一方、オオバボダイジュは雄しべが花弁より短いため、こじんまりとした花になっています。このように比較してみると、だいぶ違うものですね。
5月中旬の出葉は、シナノキがオオバボダイジュに比べて1週間前後早いのですが、反対に、開花時期はシナノキが1週間程度遅いようです。場所や樹木の個体によって開花時期は異なるのですが、南区内の両樹を観察していると、全般的にそれぐらいの差はあるようです。
1-013 オオバボダイジュ 2012.7.14
1-001 シナノキ20128.9
果実はシナノキよりオオバボダイジュのほうが一回り大きいです。樹木図鑑では、シナノキの果実の大きさを5~7mm、オオバボダイジュを1cmと記載しています。果実の大きさは、一目見て両樹の違いがわかります。一回り大きいという表現はそれぐらいの違いです。
1-005 オオバボダイジュ2012.8.11
1-031 シナノキ オオバボダイジュ2011.7.21
左がシナノキ、右がオオバボダイジュです。両樹を同時に見ることができる場合は、花や実がない時期でも直ぐその違いが判るのですが、単木の場合、特に街路樹や剪定されている樹は葉が大きくなり、その違いが判りづらくなります。その場合は、葉柄や葉裏の毛の有無を見て判断するすることになります。右側のオオバボダイジュの葉柄が白っぽいのは、毛(蜜毛)によるものです。

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シナノキとオオバボダイジュ(その1)

今、シナノキの花が満開です。街を歩いているとき、公園などを散策しているとき、甘酸っぱいような香りがほのかに漂ってくることがあります。近くにシナノキかオオバボダイジュの花が咲いています。
023 シナノキ2011.7.22
ミュンヘン大橋近くの藻岩下公園にあるシナノキです。ちょうど満開のときに撮っています。白っぽく見えるのは、花の集まり(集散花序)と苞と呼ばれる細長い舌のようなものです。
017 シナノキ2012.7.17
拡大写真です。
042 シナノキ2012.714
苞がはっきり見えます。なぜこんなものをつけているのかと疑問に思いますが、実が落ちるとき、この苞ごと落ちるため、苞がプロペラの役割をして実全体が回転して落ち、種を遠くまで散布することができる のだそうです。樹木も意味のないものをつけていないのですね。
シナノキとオオバボダイジュは北海道を代表する樹木で、ここ藻岩山では、イタヤカエデ、ハリギリ、カツラ、ミズナラ、ホオノキ、エゾヤマザクラ、イヌエンジュ、キタコブシなどと混交しています。
006 藻岩山2012.7.17
これは毎月初め定点観測している藻岩山です。赤い○の付いている白っぽく見える樹がシナノキかオオバボダイジュです。実は、この写真には写ってないのですが、右側の山の斜面には、ここ以上に白っぽい部分が多く見られます(シナノキ・オオバボダイジュが生えています)。円山に登ると、途中で大きなシナノキに何本も出会いますが、円山から藻岩山にかけて、シナノキ・オオバボダイジュが多いようです。この時期に白い花を咲かせる樹としてクリがありますが、双眼鏡で確認する限り、ここ藻岩山の斜面には見当たりませんでした。2012.7.17
シナノキは公園や街路樹にもよく植えられる樹です。
024 オオバボダイジュ 真駒内めぐみ公園2012.7.1
これは、真駒内めぐみ公園(街区公園)にあるオオバボダイジュです。樹高は15~20m、幹径は1m弱です。真駒内団地造成時の昭和40年前後に植えられていますので、樹齢は50~60年と思います。3年前に剪定されていますが、それ以前から、このように丸くコンパクトにまとまっています。右下にある樹は、ツリバナです。
050 シナノキ2012.7.14
これは、真駒内公園にあるシナノキです。花の咲く前で、白っぽく見えるのは、さきほどの苞とつぼみです。この樹はおそらく剪定など人間の手は加えられていない思います。まとまりのある、実に端正な樹形を作ります。ヨーロッパで街路樹や公園樹として最も多く利用されている樹の一つであることに納得します。

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