イチイ(オンコ)  赤い実

 2017.115
自転車で歩道を走っていると、前方にぼんやりとした赤い塊のようなものが見えたので、近づいて確認するとイチイ(オンコ)の赤い果実です。 集団でこんなに落ちているのはあまり見かけません。 見上げると、樹冠の一部の枝に固まって生っています。

2017.11.5
イチイ(オンコ)の赤い実は、口に入れるととろっとした甘さが口中に残ります。 「甘くて美味しい」という人もいますが、美味しと言うほど口にしたくなるほど美味しいものでもありません。
2011.9.24
この赤い果肉の内側に球形の黒い種子がおさまっています。 大きさは5~6mmくらいでしょうか。 この種子はタキシンという猛毒を含んでいます。

先日、テレビで、沢口靖子が主演する「科捜研の女」を見ていたら、イチイの種子を使った殺人事件を放送していました。 殺人犯はスムージーの中に細かく砕いた種子入れて飲ませたのですが、相当苦いらしいとのこと。 このイチイの猛毒について詳しく解説している “ 毒草大百科 ” を読むと、
「イチイの保有する毒の成分はタキシン。 主に種子や葉に含まれている。 葉に含まれているタキシンの量は、約4パーセントになる。 致死量は体重50kgの人間であれば、約0.25gといわれている。 赤い実は甘くて美味しいため、ついつい食べてしまうことが多い。 しかし、果肉には毒性を含んでいないため、いくら食べても問題はない。 ただ、その中に入っている種子に強烈な毒を含んでいる。 そのため、果肉だけ食べていれば問題はない。 しかし、丸ごと食べてしまうことによって中毒を起してしまうことが多くある。 事実、アメリカの植物による中毒事故のベスト3には、いつもイチイが入っているという。 また、種子3~4粒で死ぬこともあって、意外と危険性の高い植物である。」

ということで、赤い果肉は食しても大丈夫ですが、黒い種子を誤って飲み込んだり、噛み砕いた拍子に飲み込まないように、重々注意して下さい。

“毒草大百科” には葉についても詳しく解説しています。 書き方が具体的で推理小説を読むような、少しぞっとする内容です。

興味のある方はぞうぞ

「さて、葉からはタキシンが抽出できる。 まず、184.5gの葉を用意する。 その葉と一緒に2,373ミリリットルのアルコール(濃度50%)で煮る。 タキシンは水に溶けないため、アルコールを利用するのである。 そうして1/158になるまで煮詰める。 ここで注意してほしいことは、アルコールは燃えやすいので強火にせず、あせることなくとろ火でゆっくりと時間をかけて煮詰め、アルコールを蒸発させるようにしなくてならない。 このとき、むせるような強烈な悪臭がするようだが、そんな臭いにはくじけないで我慢しよう。 こうして煮詰まったアルコールからイチイの葉を取り出してタキシンの抽出は完成である。 致死量に達する量を口にすると、一瞬にして心臓麻痺を起して心臓が停止してしまう非常に恐ろしい毒だ。」

 

 

イチイ 黄金山のオンコ

先週週末に1泊2日の樹木研修会があり、石狩市浜益にある黄金山のイチイ(オンコ)を見に行ってきました。
[map]石狩市黄金山[/map]
国道451を浜益に向って走ると、実田辺りで道路沿い右側に黄金山登山入り口の小さな案内板を見つけることができます。 そこから砂利道を2~3km?走ると黄金山登山口駐車場(5~6台駐車可)に着きます。 そこには、「黄金山のイチイ」の説明板が設置されています。
イチイ 黄金山 2015.9.19

黄金山への登山道とは別に、駐車場からイチイの巨木へ通じる一筋の山道を歩きます。 周りは鬱蒼とした森林(国有林)です。 500mほど進むと、樹林の間から
イチイ2015.9.19
黄金山のイチイが現れます。 樹林帯のなかで、このイチイの周囲直径30mほどは草地になっていて、周りにロープ柵が回っています。 周辺の景色を含めたその場の雰囲気を撮りたかったのですが、残念ながら場所が狭いために、樹の全体像も撮れませんでした。 樹高18m、幹周5.4m(直径1.72m)、樹齢1500年の大きな樹です。
樹幹中程で主幹が折れた痕が見えます。 落雷によるものか、台風などの強風で折れたのでしょうか? その脇から数本の太い幹枝が伸びています。

イチイ2015.9.19 写真は幹周を測っているところ。 環境省の巨樹・巨木調査では、原則として地上から1.3mの高さでの幹周りが3m以上の木を調査対象としている。

この巨木を見上げながら近づいていきます。 樹肌を見るとこぶ状に隆起していて、その上に苔が生えています。 触ると柔らかいのです。 普段庭木に植えられているイチイ(オンコ)の樹肌はガサガサしているのですが、この黄金山のオンコのものは、極細糸が繊維状に被っていてしっとりとした感触です。

イチイ2015.9.19
このような大きな空洞が。 高さは3mくらいで、奥行きも40~50cmはあるのでしょうか?中には、不定根が出ています。
この空洞は、その昔、大枝が折れてその下の樹皮に大きな傷が出来たことが原因ではないでしょうか? 太枝が折れるとその下の樹皮部分は枯死してしまいます。 そうすると木部は腐朽が進み、一方、樹皮は傷口の脇から巻き込みを形成して盛り上がってきて、その枯れた部分を覆うとします。 その結果、長い長い年月をかけて、このような空洞ができたもののようです。
イチイ
2015.9.19
太古の森の守主
秀峰 「黄金山」 のふもとで、壮大な自然の精気を宿し、幾星霜を重ね、厳しい風雪に耐えながら、深く美しい森の主として、今も凛とした樹姿で森に生き続けている。
・幹周り : 5.4m
・樹高  : 18m
・樹齢  : 1,500年
(説明板より)