ミツバ

セリ科多年草、細長い葉柄の先に葉を互生します。 葉は鋸歯のある3小葉から成るところから、単純に三葉と呼ばれるようになったのでしょう。 
2017.8.1
北海道では、冬を越した株が成育し、夏になるころ茎を伸ばして、その先端に5弁の可憐な白い花をつけます。
2017.8.1
■  日本人好みの芳香野菜
わが国では、北海道から沖縄まで広く自生が見られます。 フキやウドと同じように、改良の進んでいない野菜の一つで、野菜の原型を保っています。 世界には2種ありますが、栽培しているのは日本と中国だけ。 漢字では野蜀葵、塘蒿と書き、漢名は鴨児芹です。
ミツバは日本人好みの香りで、吸い物、浸し物、添え物など、和風料理には年中欠かせない脇役です。 香気は植物体のすべての部分に含まれており、主成分はクリプトテーネンとミツバエンといわれるもので、種子にも含まれています。

■ 作り方はさまざまに分化
雪が解け、前年の株から新芽が萌えて成長したものを収穫するのが刈りミツバといわれるもので、5~6月になると豊富に出回ります。 葉が大きく、茎太で野の香り十分。 値段も手ごろなので、ふんだんに賞味したい季節です。
タネを蜜にまいて、50~60日くらいで収穫する青ミツバ。 関西で発達した栽培ですが、道内でも多く作られるようになりました。
正月近くなると、軟化ミツバが多くなります。 根株を寄せて、暗い場所で温度を与えて伸ばしてから日に当てて葉を緑化します。 茎が白く30cmくらいもあり、ミツバのスタイリストとでもいえるでしょう。 価格もぐんと高く高級料理向きです。
近年は根ミツバが減り、これに代わって水耕ミツバが盛んに作られるようになりました。 肥料分の含まれた溶液で、半ば工業化された栽培ともいえます。

■ 家庭菜園のお薦め品
農業全書(1697)に、『水湿の辺り、樹下、其外陰湿の肥たる所に、畔作りうへたるハ猶よし。・・・・・・・・・・・』 と書かれているのが書物に記載された最初のものです。 したがって、作物としての歴史は300年余、野生に近いだけに栽培は容易といえましょう。
1年に何回かタネをまいて青ミツバとして利用するもよし、秋に根株を掘って箱や鉢に植え、真冬に緑と味覚を楽しむのもよし。 雪解けた庭に新緑を摘むのもまたよし。 庭の片隅のミツバは、きっと日本古来の香りを豊かに伝えてくれることでしょう。
(札幌市農業センター 林 繁)