ハルニレ 開花

2017.4.24
ハルニレ  真駒内曙中学校校庭
樹冠全体がなんとなくもやっ~ぁとしてしている感じがしませんか? 冬の枝ぶりとはちょっと雰囲気が違います。 ハルニレの花が咲いているようです。

2017.4.24
近づいて撮ってみました。 開花しているようです。

2013.5.4
そして、10日も経つと、種子ができています。 緑色の葉っぱのように見えるのが種子です。
遠くから見ると、この種子が新葉のように見え、勘違いします。

 

ハルニレ 景観重要樹木

 



ハルニレ2014.6.15

このハルニレは、札幌で唯一景観重要樹木に指定されている樹です。 所在地は、北1条西1丁目、市民会館前にあり、南側に大通公園、西側に札幌市役所、東側にテレビ塔がある札幌市の中心部に位置しています。 大きさは、樹高約19m、幹径1.22m(幹周3.82m)で、ハルニレとしては風格のある大樹です。 しかし、この手の大きさのハルニレは、エルムの森で有名な北海道大学の構内や北大植物園、札幌市中心部の歩道上に何十本とあり、また、市内には保存樹として指定されているハルニレも多く存在するので、この樹がが札幌市内のハルニレのなかで、特別に他を圧倒するような樹という訳ではなく、それらの樹の中の1本という感じです。


ハルニレ2015.5.29  背後に建つ灰褐色?の建物は札幌市役所、左側は北洋銀行

ハルニレ
2015.5.29 道路用地と市民会館の用地を跨いで立っているようです。

しかし、この樹が札幌で唯一の景観重要樹木に指定されている理由は、その制度(景観法)によるためです。

国土交通省で作っている景観法の解説なかで、景観重要樹木について、以下のように説明しています。
「景観重要樹木とは、景観法に基づき、景観計画区域内において特に良好な景観を形成している樹木 を適正に保全していくために指定するものである。景観重要樹木は、特に「景観的な価値」が重視されており、指定にあたっては必ずしも特出した樹木 の大きさや、遺伝的、生物学的、歴史的、文化的な価値が問われるものではなく、地域の景観にとって 重要なものであれば指定可能なことが特徴である。そのため、樹木の姿が地域を特色づけるシンボルと なっていて、かつ誰でも容易に見ることのできる樹木、地域住民等にとって親しみや愛着の深い樹木が 対象となる。」
というように、天然記念物のように年数を経た老木とか巨木であるなどの “特別” が必要ではなく、地域のシンボルとなるような地域住民にとって親しみや愛着の深い樹であると書かれています。

その意味で、この樹は札幌市の中心部にあって、多くの市民に常時見てもらえるという点ではぴったりのようです。

上の斜め文字の文章の中に※景観計画区域内という用語がありますが、これは、景観計画区域内では、建物を新築・改築する等の場合、面積が10,000㎡以上か、高さが景観法で定める基準を超えている場合に届出が必要になります。 その届出の内容が基準を満たさない場合には、勧告や変更命令が行われます。 札幌市の場合は市全域がその対象となっています。 この他に、景観計画重点区域というのがあり、景観計画区域と違う点は、規制内容が厳しくなって、建物の規模に関わらず届出が必要なところです。 札幌市の場合、札幌南北駅前、駅前通、大通公園地区が対象です。 この地区のビル所有者は、外壁の修繕でも届出が必要になるのでしょうかね?

話はそれてしまいましたが、このハルニレが景観重要樹木に選ばれたのは、札幌市の中心部に計画された景観重点区域の中に位置することも、大きな要素になっているようです。

ハルニレ 北1条西1丁目
2014.4.19
ハルニレの冬姿。 悠然と伸びる太い幹枝が ハルニレの古木を表しています。

ハルニレ  冬芽

ハルニレ : 冬芽
ハルニレ2012.11.25
冬芽は二列互生して、卵形ないし卵状円錐形で、やや扁平し、先がとがり、長さ3~5mmある。芽鱗は托葉起源で、、3対がみえ、覆瓦状に重なり、栗褐色ないし暗褐色をし、短毛がはえ、、とくに縁は濃褐色をし、やや長い毛がはえる。仮頂芽と上位の側芽との大きさはほとんど違わないが、下位の側芽は小さい。花芽は大きく、球形ないし広卵形で、長さ4~6mm、幅3~5mmあり、3~4対の芽鱗につつまれ、側生する。

ハルニレ2011.4.24
ハルニレの花芽が膨らんで、開花直前。
ハルニレの花は、4月下旬の葉が開くまえに開花し、5月上中旬には緑色の果実(翼果)になります。 それが枝先を被うので、新葉の展開と勘違いします。

 

 

ハルニレ(その3) 

冬芽
1-009-001(赤字)
①冬芽は水滴の形で、芽鱗の色は、赤紫から黒紫の幅があります。 枝先にあるのは頂芽ではなく、仮頂芽です。c中央にある冬芽は側芽になります。
※仮頂芽 : 枝の先端の芽を頂芽といい、春先、頂芽が発達せず側芽が分岐するすものを仮頂芽という。
②半円形の葉痕の中に、2~3個の維管束痕(水や養分を通す管)が見えます。
○小枝には、白い毛が沢山生えています。
名前の由来
牧野新日本植物図鑑より
春ニレで、春に花が咲くからである。ニレは滑れ(ヌレ)の意味で皮をはがすとぬるぬるするからである。古名はヤニレというが、これは脂滑すなわちヤニヌレの略だと言われる。樹皮の下の汁が粘滑だからである。
Data
科名 ニレ科
属名 ニレ属
学名 Ulmus davidiana var.japonica
花期 4月下旬~5月上旬
分布 日本、千島、サハリン、朝鮮、中国など
ニレの仲間 ハルニレの仲間には、ハルニレ、アキニレ、オヒョウなどがありますが、アキニレは北海道になく本州の東北以南の暖地性で、ハルニレはそれよりも北に生え寒地性で、春に花が咲きます。
1-040.jpg2012.12.23
樹高:20m、胸高直径:133cm(幹周:418cm)、樹齢:350年 後方建物:アイスアリーナ
アイヌの人々とハルニレ (北海道大百科事典:ハルニレの項目:更級源蔵)
ハルニレのことをアイヌ語でチキサニという。“チ・キサ・ニ”とは、“われわれが・こすり合わせる・木”ということで、昔はこの木の乾いたもので火きり臼と火きり杵をつくり、それをこすり合わせて火を作った。このことは松浦武四郎の「久摺日記」の中に詳しく記載されている。カラ・二(発火器の木)と呼ぶところもある。発火器にして火をつくるばかりではなく、この木の枯れたのに落雷して燃え出した火は容易に消えることがないので、炉の中のたき火には必ずこの木の枯れた丸太を1本入れてたき、その丸太についた火は1本でけになっても消えないので、マッチなどの発火器ない時代には、火を守る上になくてはならない大事な木であった。
地上に最初に生えたハルニレがあまりに美しかったので、天上界でも評判になり、中でも雷神が最も熱心にハルニレの姿を見ていた。そこで、他の神が悪戯をして雷神を押したので雷が真っ逆さまにハルニレの上に落ち、そのためにハルニレが懐妊して生まれたのが、人間の始祖のアィヌラックル(人間くさい方)であったいう。これはハルニレに落雷して火が燃えたことによって、この島で人間生活が可能になったこことから発生した伝承であろう。・・・・・・・・・
アイヌの人々はハルニレを神様の位では最高の「火の神」として敬ったそうです。
1-045 ハルニレ2012.6.3
樹高:19m、胸高直径:89cm、(幹周:280cm)、樹齢:280年

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ハルニレ(その2):真駒内のハルニレ(冬)

1-RIMG0022.jpg2013.2.10
真駒内公園のアイスアリーナの横にあるハルニレです。高さ:22m、胸高直径:120cm、樹齢:320年の大樹です。真駒内公園には、イタヤカエデ、ミズナラ、カシワ、ハリギリなど推定樹齢135年以上の大樹が25本あります。その中で、ハルニレが17本を占めています。そのうちの1本です。 左下に歩いている人が見えますが、樹の大きさがよくわかります。
1-010 同左2011.2.23
1-RIMG0005.jpg2013.2.10
真駒内公園に接して南北に走る国道の向い側に真駒内」曙中学があります。この学校の校庭には3本の大きなハルニレが残っています。
1-RIMG0016(赤字)2013.2.10
これは、3本のうちの1本で校庭の真ん中にあるハルニレです。高さは20mはあるのでしょか、幹径は幹が二つに分かれるところで1.5mくらいはありそうです。樹齢は300年を超えます。円形の樹冠とその中を幹枝が走る線模様がなかなか美しく、絵になっています。ハルニレの大樹は葉をつけている夏の樹姿より、厳しい冬の白い景色に太い枝を拡げて孤独に立っているのが似合っています。というか、私はそんなハルニレが好きです。
*NHKのホームページ「ダーウィンが来た」では樹齢300年、真駒内中学のホームページでは400年と記載されています。
<余談>
NHKの日曜日夜に放送される「ダーウィンが来た」で、数年前に、このハルニレが取り上げられました。内容は、この大樹にモモンガが住み着いているという話題です。
興味のある方は以下のページへどうぞ
http://cgi2.nhk.or.jp/darwin/broadcasting/detail.cgi?sp=p050
1-083 ハルニレ 真駒内曙中学2011.7.1
1-054 ハルニレ 五輪通2013.2.10
真駒内公園を東西に分けるように走っている五輪通です。そこに植えられているハルニレです。昭和40年代後半から昭和50年代前半に植えられています。ちょうど札幌で行われた冬季オリンピックの前後です。樹齢は50年前後と思います。この五輪通は歩道幅が広く、両サイドとも7~8mくらいはあるのでしょうか、そのため、街路樹ハルニレは自由に枝を伸ばして大きく育っています。そして、周辺はプラタナスなどの公園の大きな樹々に囲まれているため、夏にこの通りを車で走ると、緑のトンネルの中を潜っているような気分になります。
真駒内地区のハルニレ(ハルニレの巨木が多く残っている理由)
(その1)今から百数十年前、開拓使がこの地を牧場にするために原野を切り開きました。そこにはハルニレをはじめイタヤカエデ、ミズナラ、オニグルミ、ドロノキなど大きな樹がたくさん生えていたと思います。その中でハルニレの大木が多く残ったのは、切り倒すには大きすぎて持て余されたためか、それとも周りの樹々に比べて立派すぎて切れなかったか などいろいろな理由はあったのでしょうが、やはりハルニレはこの地では一番大きく立派に成長する樹だったからだと思います。
(その2)真駒内公園とその周辺が、ちょうど豊平川とその支流である真駒内川が合流する上流側に位置し、西側には藻岩山、東側には西岡の丘陵地帯に挟まれ、この地域が二つの川の氾濫域で、上流から栄養豊富な土壌が堆積する肥沃な土地であったために、それを好むハルニレが多く生えていたのでしょう。
(その3)真駒内が行政=北海道によって街づくり(団地造成)が行われたことも大きな要因だと思います。真駒内団地の造成は、昭和30年代から始められましたが、その当時の団地造成に伴う苦労話をふりかえる座談会を地元町内会で作成されたCDで聞いたことがあります。その中で、当時公園や緑地の整備を担当する係長さんが、①真駒団地の全体的な緑地に係る基本計画は大学に依頼していること、②その当時の道庁には公園・緑地造成の専門職がいなくて、係長さん自身は自然保護関係の仕事に携わった方であること ③公園や緑地の整備の考え方は、なるべくそこにある樹木を生かすようにしている という話の内容だっと記憶しています。
真駒内が札幌の中で最も緑豊かな街の一つで、真駒内公園や真駒内中学の校庭の真ん中にハルニレの大樹が残っているのは、地形的な好条件はもとより、街づくりのなかで、それに関わる人々のその土地にある緑を生かそうとする考え方が基本にあった、そしてそれが地域人々に受け継がれているからだろうと思います。

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